開国、創業へ

【日本綿花】日本綿花発起人の顔ぶれ

近代日本の礎をつくった大阪の有力財界人

日本綿花の発起人は、発起人代表の佐野常樹以下25人だが、官僚出身の佐野を除いた24人は、いずれも大阪で活躍する有力経済人であった。その職業は紡績会社の経営者、銀行家、肥料商、綿糸布商などで占められ、大阪財界の有力者をあげての会社設立であった。

佐野常樹(1853~1899)は、元老院議長などを務めた佐野常民伯爵の養子で、菅吏の道を歩んだ。農商務省書記官から内務省参事官に進み、明治22(1889)年5月、インド綿調査のため外務書記官兼務を命じられ、日本人として初めてインド綿業の調査にあたった。 帰国後、大阪経済界の懇請により、官を辞して日本綿花設立に参加した。創立委員長を務めるなど中心的役割を果たし、初代社長に就任した。

実業界からは、江戸時代からの豪商「錢屋」の8代当主木原忠兵衞(1853~1918)、「加島屋」本家の二男廣岡信五郎(1841~1904)、大阪最大の干鰯問屋の当主田中市兵衞(1838~1910)、御朱印貿易の末吉船で有名な末吉家14代当主末吉勘四郎(1859~1922)、大阪の唐物問屋「羽州屋」の当主2代伊藤九兵衞(1863~1900)らの多彩な顔が並んでいる。彼らは、日本の資本主義創成期にあたって、銀行、鉄道、電力、紡績、海運会社などを興し、産業界の近代化に貢献した先駆者たちであった。

木原忠兵衞は、木原銀行を設立したほか尼崎紡績の設立に参加し、第2代社長となった。廣岡信五郎は、加島銀行と尼崎紡績設立の中心となり、尼崎紡績の初代社長として活躍した。田中市兵衞は、第四十二國立銀行を設立して初代頭取となり、大阪商船会社社長、大阪商業会議所会頭、衆議院議員などの要職を歴任、大阪財界3巨頭のひとりといわれた。のち、日本綿花第2代、第5代社長を務めた。末吉勘四郎は、平野紡績会社を設立して初代社長となった。伊藤九兵衞は、わが国最初の綿毛布製造会社を設立した。

このほか、尾州銀行の創立者岩田惣三郎(1843~1933)、尼崎銀行の創立者で尼崎紡績設立発起人の本咲利一郎(1867~1929)、大阪有数の木綿問屋で第三十四國立銀行の初代頭取の岡橋治助(初代、1924~1913)、木綿商で日本紡績や大阪電燈などの役員を兼ね、衆議院議員を2回当選した初代亀岡德太郎(1840~1913)、呉服商で第三十四國立銀行や天滿紡績の設立に参画した2代野田吉兵衞(1845~1910)、売薬商で天滿紡績創設などに参画したほか大阪商業会議所会頭を務めた浮田桂造(1844~1926)、肥料商で平野紡績社長、日本紡績社長を歴任した金澤仁兵衞(1847~1899)などの実力者が名を連ねている。

発起人群像
氏 名 家 業 創立前後に関係した会社
 池田 仁左衛門 洋綛糸商 天滿紡創立発起人、日本綿花退社後、綿花商
 池谷 忠藏 不明 天滿紡取締役
○伊藤 九兵衞(2代) 唐物問屋 攝津紡取締役、大阪毛布製造社長
○岩田 惣三郎 綿糸商 尾州銀行頭取、大阪絲綿木綿取引所創立発起人、攝津紡取締役
○本咲 利一郎 銀行 尼崎銀行頭取、尼崎紡取締役、攝津紡取締役
○富村 三郎吉 繰綿問屋 攝津紡創立発起人、綿花商
○岡橋 治助(初代) 木綿問屋 天滿紡初代社長、
日本紡監査役
第三十四國立銀行頭取、日本生命保険創立発起人
○岡崎 榮次郎 木綿問屋 大阪銀行創立発起人、攝津紡監査役、日本紡取締役
○川上 利助(2代) 銀行 川上銀行創立発起人、尼崎紡取締役
○亀岡 德太郎(初代) 足袋商 大阪電燈取締役、中央セメント取締役、尼崎紡取締役、日本紡取締役
○金澤 仁兵衞 肥料商 第四十二國立銀行創立発起人、大阪商船副社長 平野紡2代社長、日本紡初代社長
○竹尾 治右衞門(10代) 呉服太物問屋 日本中立銀行創立発起人、攝津紡3代社長、日本紡2代社長
○田中 市兵衞 干鰯問屋 第四十二國立銀行頭取、大阪商船社長、神戸棧橋社長、日本紡監査役
○中村 利七郎 不明
○浮田 桂造 売薬商 内外綿監査役、天滿紡取締役
○野田 吉兵衞(2代) 呉服太物問屋 天滿紡取締役、第三十四國立銀行支配人、大阪鐵道取締役、大阪電燈取締役
 山本 治兵衞 農具商 攝津紡取締役、野田紡社長
○福本 元之助 銀行 逸見銀行創立発起人、尼崎紡3代社長
○木原 忠兵衞(8代) 銀行 木原銀行頭取、尼崎紡2代社長
○廣岡 信五郎 絹布商 加島銀行創立発起人、尼崎紡初代社長、大阪株式取引所理事
○平野 平兵衞 呉服太物問屋 攝津紡2代社長
 赤城 友次郎 漢学者 和歌山紡初代社長
○末吉 勘四郎(14代) 不明 平野紡初代社長
○末吉 平三郎 酒商 平野紡創立発起人、日本紡支配人
 佐野 常樹 農商務書記官

※氏名の前の○は日本紡績設立発起人として参画。日本紡績は、大日本紡績(現ユニチカ)の前身のひとつである。

木原忠兵衞、廣岡信五郎、田中市兵衞
末吉勘四郎、岡橋治助、亀岡德太郎
野田吉兵衞、浮田桂造、金澤仁兵衞