リスクマネジメント

方針・基本的な考え方

双日グループは、経営の健全性確保と企業価値の維持・向上を図るべく、業務遂行に伴い不測の損失を発生させうる事象、または、当社グループの純資産を毀損しうる様々なリスクを識別・分類するとともに、新たな事業や環境の変化から生じると予想されるリスクを十分に検討したうえで、必要な体制等の整備を行い、適切に管理していきます。

体制と取り組み

当社グループでは、3線ディフェンス(第1線:営業本部、第2線:コーポレート、第3線:監査部)における第1線および第2線のリスクマネジメント力の強化や、当社グループ全体のリスク評価・可視化等に関し、経営における議論を進めています。

こうした取り組みのもと、「リスク管理基本規程」に則り、主要なリスクに分類・定義した上で、各リスクの性質に応じた管理を行っています。

各リスクについてはよりきめ細かく分類し、責任部署(リスク主管部)、リスク管理責任者(担当本部長)を定め、網羅性を担保するとともに、それぞれの重要性評価を行った上でPDCAサイクルを回しています。特に、昨今における外部環境や事業領域の変化を踏まえ、サイバーセキュリティ、安全保障貿易管理、およびBtoCビジネスに関するリスク対応について、重要性を鑑みた管理体制強化に努めています。

PDCAサイクルでは、期初にリスク管理責任者が「リスク管理運営方針・運営計画」を策定します。計画の進捗は、四半期ごとに内部統制委員会がモニタリングを行い、必要に応じて改善施策の協議、担当部署への指示を行うほか、結果を経営会議、取締役会に報告しています。取締役会は、定例報告などを通じてリスク管理運営状況を監督し、リスク管理体制・プロセスの実効性を評価しています。

なお、当社グループ資産が晒されるリスクをリスクアセットとして市場、事業、信用、カントリーの4つのカテゴリーで計測し、リスクに対する収益性を確認する指標として活用するほか、財務の健全性を維持すべく自己資本の1倍以内に収めることを目標としています。

3線ディフェンス
リスク管理基本規程におけるリスク管理PDCA活動のイメージ図

リスク管理運営にあたっては、重要性評価を通じて主要なリスクの見直しを定期的に行っております。こうした主要リスクの一部は、取り組むべき経営事項を推進する社長管下の業務執行機関である各種社内委員会や、特定テーマの実務・取り組みにつき議論・検討する検討部会が、リスクの特性に応じた協議や、具体的なリスク対応を組織横断的に行っています。

主要なリスクと各委員会等

2024年6月18日現在

委員会等 委員長等
内部統制委員会 専務執行役員 CFO兼コーポレート管掌
兼 経営企画担当本部長
コンプライアンス委員会 常務執行役員 CCO兼CISO
兼 法務、内部統制統括担当本部長
サステナビリティ委員会 代表取締役 社長COO
安全保障貿易管理委員会 専務執行役員 CFO兼コーポレート管掌
兼 経営企画担当本部長
DX推進委員会 代表取締役 社長COO
品質管理委員会 常務執行役員 リテール・コンシューマーサービス本部長
情報・ITシステムセキュリティ委員会 常務執行役員 CCO兼CISO
兼 法務、内部統制統括担当本部長
事業継続マネジメント検討部会 常務執行役員 人事担当本部長
開示検討部会 執行役員 広報、IR、サステナビリティ推進担当本部長

リスクの計測とコントロール

当社グループ資産が晒されるリスクをリスクアセットとして市場、事業、信用、カントリーの4つカテゴリーで計測しています。

リスクを計測する目的は、①数値化されたリスクアセットを自社の体力(=自己資本)の範囲内に抑える経営を行うこと、②リスクに見合った収益の極大化を図ること。リスクアセットの計測は半期ごとに実施し、取締役会及び経営会議に報告するほか、増減要因の分析結果について各営業部にフィードバックを行い、日常のリスク管理活動に活用しています。当社は、「リスクアセット自己資本倍率を1倍以内に収める」ことを目標としており、同倍率は2010年3月期以降、目標内に収まっています。

リスクアセット推移

サプライチェーンの強靭化に向けて

経済安全保障、災害・異常気象、人権・環境への配慮など、ビジネスのリスクは多様化しています。複雑な外部環境下、双日がお客様や社会への責任を果たすためには、サプライチェーン全体のリスクを捉えることが重要だと考えます。

双日は、与信管理・在庫管理など、トレードビジネスにおける伝統的なリスク管理のみならず、リスク発現時の対応力やレジリエンス(回復力)強化のため、災害・環境などの重大リスクに関するシナリオを想定し、リスクの定量化とモニタリングを実施しています。なお今年度は重大リスクとして、仕入リスクを追加しました。高リスク取引のチェック、新たな取引管理プロセスの導入、社内教育などの対応策を実施しています。

サプライチェーン全体の管理イメージ

投融資案件

投融資案件は、案件創出段階で「目指す姿、ビジョンと企業価値向上への道筋」、「事業領域の成長性」、「当社と各事業の優位性、機能」などの事項が当社の方針に則っているか、方針に合わない不得意な分野で過度なリスクを取ろうとしていないか、事前にチェックする仕組みを導入しています。

これらのチェックがなされた上で各方針に合致した案件につき、社長が任命した議長、審議員で構成する投融資審議会に上程され、そこで事業計画の蓋然性について分析し、リスクを可視化させ、投資実行可否を判断しています。具体的には、キャッシュ・フローを含めた事業計画全体を精査し、事業性を評価するとともに、案件ごとに内部収益率(IRR)とハードルレートを比較することで、当社グループの株主価値を向上させ、かつリスクに見合ったリターンが得られる案件を選別する仕組みとなっています。

投資実行後の事業会社経営では、早い段階で双日グループにふさわしい経営管理体制の構築整備を実現する為、PMI(買収後経営統合)を徹底し、バリューアップ施策を実行し、事業価値向上を図っています。

投融資案件を成功させる為、「事業計画進捗状況モニタリングに関するガイドライン」を設け適切なKPI、アクションプランを設定し、一方リスクシナリオ発動時には機動的に対応できる体制を構築しています。

この中でバリューアップが実現できず、業績が不芳な事業会社については「モニタリング・撤退基準」を適用し、ROICやCROICが資本コストを超過していない事業については原則撤退を進め、継続的な資産の入れ替えを図っています。

投資プロセス概要図

ポートフォリオ管理サイクル

持続的な価値創造を実現するためには、リスク・リターンを踏まえた資産マネジメントが重要です。双日では、営業本部ごとのリスクアセットの状況を定期的に確認の上、本部別リスク・リターン並びに投資モニタリング結果などに基づき、本部ポートフォリオの現状認識や将来像などについて、リスク管理担当本部長と営業本部長が半期ごとに対話する取り組みを、2022年度に開始しています。また、この活動状況を経営会議にて報告・議論し、優良なポートフォリオ構築を促進します。

ポートフォリオ管理サイクル

リスク管理研修

徹底したリスク管理の実現には組織としての仕組み・体制の整備だけでなく、一人一人のリスク管理マインド醸成とスキル習得が土台となります。そのため、双日グループではリスク管理研修にも注力しており、「基礎知識」「トレーディング」「事業投資」等のテーマごとに、足許のリスク管理課題に応じて様々な研修コンテンツを企画・実施しています。

社内のリスク管理ナレッジ共有を目的として、トレーディング及び事業投資の成功・失敗事例を紹介し、案件担当者とリスク管理担当者のトークセッション形式で学びポイントの深掘りを行う動画研修(『学びの多い事例研修』)を展開し、各人の担当案件への過去からの学びの応用を促しています。2023年度は4事例を取り上げ、営業・コーポレート部門から多くの社員が視聴しました。

また社外有識者を招いての講義を通じ、知見を高めることも実施しております(例:リスクコミュニケーションなど)。

商社ビジネスがさらされているリスクは刻一刻と変化していきます。社員がタイムリーにリスクの性質の変化や新たなリスクの発現に対応できることを支援すべく、研修コンテンツの見直し・工夫は今後も継続的に行っていきます。

リスク管理研修

情報セキュリティリスクへの対応

方針・基本的な考え方

当社では「情報管理規程」、「ITセキュリティ規程」を中心とした情報管理に関する規程、情報セキュリティ対策に関する規程といった各種規程を整備し、双日グループとして一貫した情報セキュリティリスクへの対策を推進し、全ての役職員がIT資産を適切に利用、管理、保護すべく努めています。

体制

当社では常務執行役員CCO兼CISOを委員長とした「情報・ITシステムセキュリティ委員会」を設置し、情報セキュリティを維持するグループ全体の管理体制を構築し、情報セキュリティに関する様々な課題に対しての検討や経営への提言を行っています。また情報セキュリティに関わる各種規程の遵守状況を適宜モニタリングし、有事の際には、情報を一元管理し、迅速な対応を可能とする体制をとっています。

体制概要図

取り組み

災害等リスクへの対応

方針・基本的な考え方

当社では、地震や水害、テロ、感染症等の重大有事における事業継続、及びグループ役職員・家族・関係者の安全確保は重要な課題であると認識しており、危機管理の方針及び体制について「双日グループ危機管理基本方針」を定め、重大有事の際、迅速にグループ役職員・家族・関係者の安全を確保できるよう、平常時より危機管理を行っています。

双日グループの危機管理基本方針

  • 社員等の安全確保 (身の安全)
  • 会社資産の保全と業務の早期再開 (業務サービスの安定供給)
  • ステークホルダー・地域社会への貢献 (協力・助け合いの心)
  • 危機発生時の対応強化と危機管理意識の高揚 (定期的な教育・訓練の実施)

体制

当社では、双日グループ危機管理基本方針、危機管理運営要領に基づき、有事の際の体制と役割を定めています。加えて常務執行役員 人事担当本部長が部会長を務める「事業継続マネジメント検討部会」を設置し、定期的に経営会議に報告し、各種施策の実効性の担保と、経営環境の変化に対応すべく、継続的に見直し、改善、発展させています。

体制概要図

取り組み

BCMの運用

事業継続計画に実効性を持たせるため、年間活動計画を策定、定期的にレビューを実施しています。

また緊急対策本部メンバーによる訓練、役職員向け普通救命講習、徒歩帰宅訓練など各種訓練を実施しています(業務時間中での発災と休日夜間での発災の2ケースを想定)。その他、安否確認システムを活用し、全社員を対象に発災時の報告訓練を行っています。

減災/防災体制の整備

首都直下地震でも本社機能が維持できるよう、72時間分の非常用電源を確保しているほか、一斉帰宅抑制に備え5日分の食料等を備蓄しており、東京都から一斉帰宅抑制推進モデル企業に認定されています。