汚染防止
方針・基本的な考え方
世界的に経済発展が進む中で、化学物質による汚染、土壌・地下水汚染や水質汚濁等の汚染、有害廃棄物による大気汚染、海洋汚染などは深刻な課題となっており、世界中の国々が防止策に取り組むとともに、様々な規範・法律の策定が進んでいます。双日は、事業活動を行う上での、企業の責任として、汚染の防止、廃棄物の発生抑制、再利用、再資源化など、環境負荷の低減と環境保全への取り組みは非常に重要であると考えています。
化学原料や製品の取り扱いをはじめ、世界中で様々な事業を行う双日グループにとって、「汚染防止」は、事業のサステナビリティを確保する上で、最も基本的かつ細心の注意を払う事項の一つです。双日グループでは汚染防止に関する様々な取組みを推進し、社会への責任を果たしていきます。
マテリアリティの一つである環境「事業を通じた地球環境への貢献」において、「事業に関わる環境面の持続可能性を追求し、環境保全に努めるとともに環境性能の高い競争力ある事業に取り組む」ことを方針としています。また、当社の環境方針(「3.環境負荷の最小化」、及び「5.新規事業における環境配慮」)においても、「環境負荷の低減および汚染の予防」に取り組むことを掲げています。
ご参照:
目標
環境汚染の防止
双日グループ(化学本部)は、化学事業において、①各種化学物質に係る関連法規を遵守すること、②安全管理の推進により事故の未然防止に努めること、③環境に配慮した企業活動と行動を図ることを目標とし、化学物質の取り扱いについては、関連する事業現場での対応の漏れが無いよう、具体的な手順書を作成し対応しています。手順書においては、化学物質取扱指針が規定され、確認すべき法律や、有害化学物質の取り扱いなどについて定めています。
また、化学物質の管理体制や、緊急時の対応を定めることで、事故の未然防止と、事故発生時の被害の最小化に努めます。
環境関連法令等の順守
当社が順守すべき法規制のみならず、グループ会社が適用を受ける法規制も把握し、定期的に順守状況をチェックしています。また、グループ会社の監査の際に、環境法規制順守状況などについても確認します。
このような定期確認と併せ、専用の管理ツールの社内利用の普及などにより、当社は廃棄物処理法をはじめとした環境関連法令違反の撲滅を目指しています。
啓発活動の推進
本方針を全役員・従業員に周知するとともに、教育・啓発活動を継続的に実施します。
体制
汚染防止を含めたサステナビリティに関する全社方針や目標の策定、それらを実践するための体制の構築・整備、及びISO14001の管理体制を活用した各種施策のモニタリングはサステナビリティ委員会にて討議し、経営会議、及び取締役会に報告のうえ、取締役会より監督・指示を受けています。
加えて、投融資を審議する投融資審議会では、個別案件の審議においてサステナビリティの観点からの推進意義、及び環境・社会(人権)リスクの確認を行っています。尚、サステナビリティ委員会にて策定された方針や目標、及び環境・社会(人権)リスクに関するモニタリングについては、専任組織であるサステナビリティ推進部が担当しています。
サステナビリティ委員会メンバー(2024年6月18日現在)
委員長 |
|
---|---|
委員 |
|
オブザーバー |
|
事務局 |
|
リスク管理体制
新規事業投融資における環境・社会リスク管理
-
新規投融資案件の審議にあたっては、申請部署に『環境・社会リスクチェックシート』の作成を義務付けています。申請部署は、『環境・社会リスクチェックシート』を活用して、土壌・地下水汚染や水質汚濁の可能性などの各種リスクについて、必要なデューデリジェンスを行い、環境汚染の防止に努めています。
既存事業のモニタリング
外部分析と内部分析を通じて、グループ会社(連結子会社・持ち分会社)と取引先を含め、双日グループの事業の中から、環境汚染や排水汚染等のリスクが高い事業分野を特定し、川上から川下までの一連のサプライチェーンにおいて、一般的に環境・社会課題が発生し易いのはどの位置で、当グループの事業はサプライチェーンのどの位置を担っているのかを分析・確認しています。今後も外部専門家による第三者意見を踏まえ、リスク対応のPDCAを実行し、課題認識の風化を防ぐとともに、新たなリスクの確認など、取り組みを深化させていきます。
また、双日単体では、環境マネジメントシステムとして国際規格であるISO14001を採用しています。汚染防止の取り組みの観点についてもモニタリングします。
ISO14001によるモニタリング
法規等の順守状況チェック
Rohs規制、Reach規制、産業廃棄物処理法など、化学物質や、汚染対策関連の法規について、当社の全ての部署、及び法規の対象となるグループ会社の順守状況を確認しています。また、社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会にて、これらの順守状況を含めた各種問題点の確認と、是正指示を行うマネジメントレビューを実施しています。
各部・室における活動計画の策定
サステナビリティ委員会で了承され、経営会議や取締役会に報告された各種施策や決定事項については、社内イントラで全社に周知する外、サステナビリティ委員会事務局より社内各部署との定期報告会を通じ共有されています。
そして、その決定事項に基づき、期初に、各部・室において1)国内外の事業活動に伴う環境影響、及びそれに関わる法規の分析、2)汚染防止を含む『環境』の改善に向けた目標設定、及び目標を達成する為の実効計画を策定し、半期毎に各部・室にてレビューを実施の上、その総括を翌年度期初のサステナビリティ委員会にて評価し、経営会議に報告しています。
化学品事業に関する化学物質安全管理
双日グループ(化学本部)は、上述の方針・目標に則り、化学物質の安全管理を以下の通り実施しています。
化学品管理に関する規制への対応および化学物質の安全管理に対する取組み
化学本部では、「化学物質取扱指針」を策定し、その中で「化学物質管理要領」および各法令の規定に基づく「化学物質管理細則」を定めています。これにより法規制に準拠した管理体制を構築し、取得している各種許認可および法定責任者を一覧表にして明確にするとともに、緊急時の連絡体制を整備し、継続的な教育により本部全員への周知を徹底しています。
化学本部では、化学物質審査規制法(化審法)、労働安全衛生法(安衛法)、化学物質排出把握管理促進法(化管法)、毒物及び劇物取締法(毒劇法)、消防法、高圧ガス保安法等、多岐にわたる環境マネジメントシステム等に関する特定法令を遵守しています。
また、サプライチェーン上の関係者に対して化学物質の危険有害性情報を適切に伝達するため、商品ごとにSafety Data Sheet(SDS)を交付することにより通知しています。輸入品に関しては、日本の法規制に基づく表示も適切に行い、使用者が安全に商品を使用できるように情報伝達しています。SDSにはPCB処理特別措置法/フロン排出抑制法/水質汚濁防止法/土壌汚染対策法/大気汚染防止法/悪臭防止法など、環境保護に関わる各種該当法令も記載しています。尚、2024年3月期において環境関連法令違反の報告はありませんでした。
取扱い化学品の一元管理
化学本部では、取り扱っている化学品商品につき、含有されている化学物質のCAS登録番号、含有率をSDSごとにリスト化し、一元管理しています。これにより安衛法、化管法、毒劇法など、どの商品がそれらの規制対象となっているかすぐに把握できるようになっています。また、法令改正の場合にも対応が必要な商品をすぐに確認できる仕組みとなっています。
化学物質管理に関する研修
化学本部では、役職員を対象に、化学物質管理・環境法令に関する研修を継続的に実施しています。2023年度は、化学物質管理に関する研修を実地・オンライン形式で実施し、のべ251名が参加しました。
特に重要な内容については、受講者のレベルに応じた少人数での対面研修を複数回設定して実施し、理解を向上させる取り組みを行っています。
(2024年3月現在)
研修内容 | 研修人数 |
---|---|
新人研修:基礎編 | 11名 |
初任者研修:輸出入取引・物質登録 | 32名 |
化学物質管理指針(e-ラーニング) | 186名 |
毒劇物管理:基礎・応用編 | 97名 |
タンク事業会社における現場研修 | 25名 |
段階的に廃止する計画が定められている化学物質の範囲
化学本部は「段階的に廃止する必要がある化学物質」を取り扱っていません。
懸念物質の代替品を導入した実績有無およびその管理
化学本部において懸念物質の代替品を導入した実績はありません。
環境事故およびリスク管理体制:一報制度
化学本部では、予期せぬ事故が発生した場合、迅速に関係部署ならびに監督官庁に報告を行う体制としています。化学物質管理体制組織図と緊急連絡表を整備することで、経営および関係部署に迅速な報告を行い、原因の特定、適切な是正処置・予防措置の検討を図ると共に、被害の拡大を最小限に留め、再発防止に向けた対策を徹底しています。
尚、2024年3月期は、単体および連結子会社での環境事故は0件でした。
取り組み
双日グループでは、上記の方針に基づき、汚染防止に関する様々な取り組みを行っていますので、ご紹介します。
エヌアイケミカル株式会社の取り組み
-
双日のグループ会社『エヌアイケミカル株式会社』は、タンク・油槽施設の賃貸、および引火性液体を中心とした危険物の保管業務を行っています。同社の汚染防止や環境配慮に向けた取り組みをご紹介します。
① VOC対策
-
光化学オキシダント*の原因となるVOC(揮発性有機化合物)を回収する装置を導入し、大気への放出を抑えています。
VOC回収量:2021年度83トン、2022年度76トン、2023年度93トン* 光化学オキシダントとは、揮発性有機化合物などが、太陽からの紫外線をうけ光化学反応を起こして作り出される物質の総称。濃度が高くなり、空が白く「もや」がかかったような状態を「光化学スモッグ」とよび、目や喉が痛くなるなどの健康被害を引き起こす可能性があります。
② 有害廃棄物の管理
-
タンクの洗浄を行う際に、引火しやすい特定化学物質などを含む有害廃棄物が発生することがあります。同社は特定された保管場所にて、法令に基づいた保管・管理および廃棄を徹底しています。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、同社はこのような有害廃棄物を含む産業廃棄物処理計画書および実績書の提出が必要な事業者となっており、計画に対する実績管理および行政への報告を行っています。タンク洗浄方法の工夫や、洗浄が必要な残留物発生の抑制等の対策実施により、産業廃棄物の発生低減に取り組んでいます。
③ オイルフェンスの設置
-
エヌアイケミカルは、タンカー船を横付けし、お客様の化学原料などをタンクに移送していますが、万一の漏えい事故時に海洋汚染の防止を徹底すべく、敷地内にオイルフェンスを設置しています。
更に、海上共同防災組織を設置しており、万一漏えい事故が発生した場合には、当該組織で所有するオイルフェンス展張船を出動させます。
尚、エヌアイケミカルでは、創業以来、海洋汚染に限らず、汚染事故は発生していません。
④ 近隣企業と共同防災組織を設置。定期的な防災訓練を実施
-
近隣企業と合同で共同防災組織を設置し、放水を始めとした合同訓練を定期的に実施することで、防災力の強化に努めています。
共同防災組織には年間を通して常時3名が常駐、消防車2台を保有しています。
⑤ ISO9001
品質維持・安全・効率的取扱の確保のため、ISO9001:2015認証を取得し、20年に亘り認証登録の維持更新を図っています。
パフォーマンス
双日グループの取水・排水に関する法令違反の件数
2023年度 0件
社内研修
廃棄物処理法については、2023年8月に外部の専門家を招いてセミナーを開催、グループ会社も含め約100名が受講しました。また、産業廃棄物処理法に関するe-learningを毎年実施しています。23年度はグループ会社も含め約1,200名が受講しました。