リスク管理

リスク管理の基本方針

当社グループは、総合商社としてグローバルかつ多角的な事業を行っており、展開する事業の性質上、さまざまなリスクにさらされています。

リスクの管理は「リスク管理基本規程」に則り、リスクを分類・定義した上で各々のリスクの性質に応じた管理を行っています。このうち、定量化が可能なリスク(市場リスク、信用リスク、事業投資リスク、カントリーリスク)に関しては、リスク量(リスクアセット)を計測し、経営に報告しています。また、法務リスク、コンプライアンスリスク、環境・社会(人権)リスク、資金調達リスク、災害等リスク、システムリスクなどといった、定量化が困難なリスク項目に関しても、定量化が可能なリスクと同様にリスク管理責任者(各担当役員)を任命し、当責任者が策定した「リスク管理運営方針・運営計画」に基づいて、管理しています。

なお、中期経営計画2020において、新興リスクとして、Webサイト・SNSによるリスク(個人情報保護・炎上対策等の危機管理)、品質管理に関するリスク(事業領域多様化に伴う新たな製造物責任リスクへの対応等)やイノベーションに関するリスク(AI等の技術革新に取り残され、既存ビジネスモデルが陳腐化するリスク)を新たにリスク項目に追加し、モニタリング管理を開始しました。

これらの管理状況は、内部統制委員会(委員長:代表取締役社長)がモニタリングすると共に、取締役会は、内部統制委員会による定期的な報告を受け、対応の指示を行うことによりリスクの監督を行っています。

事業等のリスクとその対応状況

  リスクの概要 対応状況
市場リスク
  • トレーディングや事業投資を通じた外貨建の取引などに伴う為替変動リスク
  • 資金の調達や運用などに伴う金利変動リスク
  • 営業活動における売買契約・在庫商品などに伴う商品価格変動リスク
  • 上場有価証券の価格変動リスク
  • 商品の売買残高などの資産・負債のマッチングや、先物為替予約取引、商品先物・先渡し取引、金利スワップ取引などのヘッジ取引によって極小化。
信用リスク
  • 国内外の取引先に対する信用状況の悪化や、取引先の経営破綻などにより債権が回収不能となるリスク
  • 取引先ごとの信用格付けの付与および取引限度額の設定により、リスクをコントロール。
  • 取引先の信用状態に応じて必要な担保・保証などの保全措置を実施。
  • 債権査定制度による信用リスクの状況把握と個別貸倒引当金算定の実施。
  • 延払・融資・保証行為に伴うリスクは、収益性が見合うかを定期的に評価し、収益性改善または信用リスク抑制の措置を実施。
事業投資リスク
  • 事業投資や権益投資などにおいて、投資価値が変動するリスク
  • 流動性の低さなどの理由により、当初意図していた採算で投資を回収できないリスク
  • 事業投資案件の審議において厳格にスクリーニングを実施。投資実行後も基準を設け管理。
カントリーリスク
  • 取引先所在国や事業活動を行う国の政治・経済・法制度・社会情勢の変化によって、計画どおりの事業活動が行えない、または損失が発生するリスク
  • 特定の国・地域に対するエクスポージャーの集中を避けるため、リスクの大きさに応じて、国格付けを付与および上限枠を設定。
  • カントリーリスクが大きい国では、貿易保険などを活用し案件ごとにカントリーリスクヘッジ策を実施。
資金調達リスク
  • 金融システム・金融資本市場の混乱や、格付会社による当社グループの信用格付けの大幅な引き下げなどの事態が発生した場合等における資金調達の制約や資金調達コスト増加のリスク
  • 金融機関との取引関係の維持、一定の長期調達比率の確保などによる安定的な資金調達の実施。
  • 長期コミットメントライン契約および実行可能期間付長期外貨ファシリティ契約により、機動性・流動性確保を補完。
環境・社会(人権)に関するリスク
  • 環境や労働安全衛生、人権などの問題が発生した場合の事業活動の停止・中止、汚染除去・浄化への対応、訴訟の発生や損害賠償の負担、社会的評価の低下などのリスク、及びパリ協定などの気候変動関連の規制による事業継続リスク
  • サステナビリティ重要課題(人権、環境、資源、地域社会、人材、ガバナンス)、に対応する長期ビジョンや中期経営計画時間中の目標を定め、サステナビリティ委員会にて進捗モニタリングを実施。また、投融資審議会において、審議条件の環境・社会リスク、及びサステナビリティの観点からの推進意義を確認。加えて、環境方針、人権、サプライチェーンCSR行動指針を定め、グループ役職員へ周知徹底。
法務・コンプライアンスリスク訴訟などに関するリスク
  • 事業活動に関係する法律や規制の大幅な変更、予期しない解釈の適用などが起こるリスク
  • 国内または海外において訴訟、仲裁などの法的手続きの被告または当事者となるリスク
  • コンプライアンスプログラム、双日グループ・コンプライアンス行動基準の制定およびコンプライアンス委員会によるグループ全体のコンプライアンスの徹底。
情報システム・情報セキュリティに関するリスク
  • サイバー攻撃や、コンピュータへの不正アクセスなどにより、個人情報を含めた重要な情報資産が漏洩または毀損するリスク
  • 予期できない自然災害や障害を原因として情報通信システムが不稼働の状態に陥るリスク
  • 情報資産の適切な保護・管理に係る各種規定を整備し、情報セキュリティ分科会などを中心とした管理体制を構築。
  • 重要な情報システムやネットワーク設備については、二重化など障害対策を施すとともに、ファイヤーウォールなどによる外部からの不正アクセスの防止、ウイルス対策、暗号化技術の採用などによる情報投漏洩策を強化。
災害リスク
  • 地震、風水害などの災害により、事務所・設備・社員とその家族などに被害が発生するリスク
  • 災害対策マニュアルの作成、防災訓練、社員安否確認システムの整備、事業継続計画(BCP)の策定。
Web・SNS等に関するリスク
  • Webサイト・SNSを介した、企業情報発信に関するリスク(個人情報保護、危機管理等)
  • 本社・グループにおける公式Webサイト、SNS公式アカウントの新設や利用規約、個人情報保護規定等の制定・開示に関する運営要領の整備モニター。
  • グループ役職員に対し、ソーシャルメディアに関する注意点の周知・徹底を図る。

リスクの計測とコントロール

リスクを計測する目的は、①数値化されたリスクアセットを自社の体力(=自己資本)の範囲内に抑える経営を行うこと、②リスクに見合った収益の極大化を図ること、との認識の下、安全性と収益性を両輪として管理しています。当社では、「リスクアセット自己資本倍率を1倍以内に収める」ことを目標としており、2018年3月期における同倍率は0.5倍と、目標内に収まっています。リスクアセットを四半期ごとに計測し、取締役会および経営会議に報告するほか、リスクアセットの増減要因の分析結果について各営業部にフィードバックを行い、日常のリスク管理活動に活用しています。不確実性が高まりつつある環境下においても、引き続き1倍以内に収めるように、リスクコントロールしていく方針です。

世界政治の不透明性や地政学的リスク、マクロ経済、マーケット(為替・金利・株式・コモディティなど)のボラティリティは高まっており、当社のビジネスを取り巻く外部環境も、日々変化しています。そのような外部環境に対して、スピード感を持ちつつ、適切にリスクマネジメントを行っています。具体的な対応としては、株・為替のボラティリティ、カントリー格付にストレスを加えたリスクアセットを試算し、ストレス環境下においても、リスクアセットが自己資本の1倍以内に収まることを確認しています。加えて、テールリスクへの対応策として、主要事業のストレスシナリオを作成し、ストレス発生時の事業ポートフォリオへのインパクト分析を行っています。中期経営計画2020にて規律ある投資を進める中、2018年度より、成長投資に更に適した形での計量方法の見直しを行っております。

投融資案件

投融資案件は、社長が任命した議長、審議員で構成する投融資審議会で審議を行っています。リスクを可視化して議論を行う目的で、ベースケースだけでなくダウンサイドケースも検証し、投資可否を判断しています。具体的には、キャッシュ・フロー計画を含めた事業計画全体を精査し、事業性を評価するとともに、内部収益率(IRR)のハードルを設定、リスクに見合ったリターンが得られる案件を選別する仕組みとなっています。各コーポレート部署はそれぞれの専門的見地から事前に審議を行っています。

投資実行後の事業会社経営では、従前以上に「双日が得る価値」と「社会に還元する価値」の『2つの価値』の最大化を追求していきます。事業の競争力と収益力強化を実現し、事業価値向上(事業のバリューアップ)を図っています。実行済みの事業投資案件については、外部環境の変化にも注意しつつ、事業性や収益性の評価を行うなど、プロセス管理を徹底して、事業継続判断の意思決定をしています。実行済み案件の問題点を早期に把握し、撤退・整理損を極小化する目的で撤退基準を設定し、リスクに見合った収益を生まない投資から撤退するための意思決定に活用しています。

リスク管理研修

全社のリスクマネジメント能力向上には、ルール整備だけでは不十分であり、リスクマインドを社員全員に浸透させることが必要です。社内研修に関しては、ルールの周知を目的としたe-learningによる研修等に加え、実際に起こった失敗事例を取り上げたケースメソッド研修、カントリーリスクの抑止・軽減策に関する研修、在庫取引などの市場リスクが内在する取引の抑止・軽減策に関する研修などを行っています。入社3~10年目の若手社員、管理職昇格前の社員、管理職社員、グループ会社管理者といった多様な階層に対して研修を実施しています。現場社員の知識・経験を基に構成されており、実務に裏打ちされた内容となっています。これまでの受講者数は延べ2,070名となります。そのほかにも、商社パーソンとして、ビジネス環境の変化に柔軟に対応できる力を養うため、外部講師を招いた政治・経済情勢などの勉強会を定期的に開催しています。また、営業部や海外拠点現地スタッフからのリスク管理部署への受入れや、本社リスク管理部署と関係会社間の人材交流を通じた、リスク管理マインドのさらなる浸透にも取り組んでいます。

 

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