米国と豪州で展開するエネルギーソリューション事業
地域の課題に寄り添うことで事業拡大と収益力強化を図る
2025年9月8日
2025年9月8日
国や地域が経済成長を遂げる過程で、人々の生活を豊かにするために欠かせないのが電力です。双日は長年にわたり、様々な国や地域で電力インフラ事業に取り組んできました。電力設備の建設では、日系や韓国系のメーカーやエンジニアリング会社とともに、東南アジアで発電所や変電所の建設を請け負ってきました。2000年頃からは、建設請負市場での競争が激しくなったことから、発電所への投資と運営を行うIPP(Independent Power Producer:独立系発電事業者)事業に重点を移してきました。しかし、東南アジアや中東を中心にしたIPP事業も競争が激化したことから、電力を含むエネルギー分野で多くの事業機会が期待できる米国での展開にシフトし、2017年には初めて米国の発電所への投資を行いました。
こうした中、電力需要の高まりと共に、地球温暖化対策とCO2排出量削減が社会的に大きな課題になっています。とりわけ世界第2位のCO2排出国である米国ではCO2排出量削減のための省エネルギーのニーズが着実に拡大しています。そこで双日は、米国で成長が見込める省エネルギーサービスに着目し、2021年ペンシルベニア州のMcClureの株式を取得し、エネルギーソリューション事業に参入しました。
省エネルギーサービスは、ESCO(Energy Service Company)事業と呼ばれ、顧客の光熱費や維持費の削減、効率化に向け、空調や照明の交換などの補修プランを提案し、設計や機器の調達、取り付け工事などを行います。McClureは1953年からペンシルベニア州を中心に事業を展開、省エネ機器や空調設備に関する優れた技術・提案力を持ち、州内の学校・病院でトップシェアの実績を誇ります。
双日のエネルギーソリューション事業は出資先であるMcClureと双日が、それぞれの専門性やこれまでに築き上げてきた知見・ネットワークを融合させて事業を進めていることが最大の特長です。省エネサービス業界のプロフェッショナルであるMcClureの経営者と社員を尊重しながら、双日からは多くの知見と実績を有する太陽光発電設備に関する新しいサービス提案などを行うことで、McClureにこれまでなかった付加価値を提供し、同社の企業価値向上を図っています。そして、現場を尊重し、現場に入り込むことで、McClureにとって双日は株主と子会社という関係性ではなく、一緒に事業を拡大していくパートナーとして認知されるようになりました。いまでは、McClureの社員から双日の社員に色々な相談も持ちかけられるようになっています。McClureは双日が提案した太陽光発電設備を新たなサービスメニューに加えた結果、学校などからの受注が増え、双日が出資した2021年から3年ほどで、売上・利益、社員数は倍以上になるまでに成長してきています。
さらに双日は2024年にワシントンD.C.を含む米国首都圏で教育機関、データセンター、病院、公共施設などの幅広い分野で電気設備工事と保守点検サービスを手がけるメリーランド州のFreestateに出資をおこないました。米国では、建物の老朽化に伴う施設・設備更新の増加や脱炭素化に向けて、電気設備工事と保守点検サービスに対する需要が高まっています。特にFreestateが展開する地域ではデータセンターの新規建設ラッシュにより、電気設備工事の需要が急増しています。
設備業界で不可欠なMEP(Mechanical, Electrical and Plumbing:機械・電気・配管)領域においてMcClureは機械と配管については自社で機能を有していましたが、電気は外注していました。Freestateが持つ電気設備工事の機能を取り込むことで、双日グループとしてMEPすべての機能提供が実現できることもメリットでした。何より企業文化が似ており、インフラを支えるサービスを提供するという共通点を持っていることから、一体としてエネルギーソリューション事業に取り組むことができると確信したことが一番大きな後押しとなりました。
こうした米国でのエネルギーソリューション事業の経験を踏まえ、双日は2023年、豪州ビクトリア州とクイーンズランド州を中心に空調設計設備・施工及び省エネルギー事業を行うEllis Air Group Pty Ltd.(以下、Ellis Air)に出資しました。さらに25年にはEllis Airを通じて、ニューサウスウェールズ州に拠点を置く、同業のClimatech Group Holdings Pty Ltd.(以下、Climatech)の株式の70%を取得しました。ビクトリア州とクイーンズランド州に強みを持つEllis Airとニューサウスウェールズ州に強みを持つClimatechの2社に出資することで、豪州全人口の約8割が集中する東部3州を網羅することが可能です。両社の売上高は合計約450億円規模となり、豪州の冷暖房空調設備市場において売上高トップ(*1)になります。
(*1)双日調べ
双日のエネルギーソリューション事業における最大の強みはフレキシビリティです。電力設備の建設請負から発電事業、事業投資など長年にわたる電力インフラ事業を通じてエネルギーソリューション事業に関する幅広い知見を持っています。そのバックボーンをもっているからこそ、出資先企業のこれまでのやり方や考え方を尊重しながらも対等なパートナーとして新しい分野を開拓することができると考えています。手綱を取って走るのではなく、出資先の経営陣と二人三脚で事業拡大を実現していき、最終的には出資した企業が自律的に経営を行うことを目指しています。
双日は、米国と豪州での経験を踏まえ、新たに展開する地域における課題解決をともに推進していけるパートナー企業を選びながら、その地域に最適なエネルギーソリューション事業に取り組んで行く考えです。