2024.05.02 UP
脱炭素社会の実現に向けて、2050年を目標にCO₂排出実質ゼロをめざす動きが加速しています。その一環として、双日はアメリカとオーストラリアにおいて、CO₂排出量を削減しながらクリーンな循環に移行していくサステナブル・エネルギー・ソリューション事業に取り組んでいます。グローバルな課題と向き合う国内外の双日パーソンたち。それぞれの想いから見えてくる双日の未来とは。
Text&Edit _Shota Kato
これまでは化石燃料を主要なエネルギー源として生産活動が行われ、経済活動の発展とともに大量のCO₂が排出されてきました。環境問題への認識が高まり、持続可能な社会への移行が急務となっているいま、CO₂排出を実質ゼロとするカーボンニュートラルの実現をめざし、多くの企業は新たなビジネスに取り組んでいます。
双日のエネルギー事業マップ
世界各地で多彩なエネルギー事業を展開している双日にとって、カーボンニュートラルの実現は重点課題のひとつ。電力インフラソリューション事業部長の浅野泰史は説明します。
「国や地域によって脱炭素化のステージが異なるなか、双日はそれぞれのニーズ・課題に合わせたやり方で、カーボンニュートラルの実現に挑んでいきたいと考えています。また、単なるCO₂排出削減に留まらず、エネルギー変革をもたらす『グリーントランスフォーメーション*』にも取り組んでいきます。脱炭素化と同時に社会や産業構造も変わってくることが国や地域の発展において重要なんです」
* 化石エネルギーを中心とした、現在の産業構造・社会構造を、クリーンエネルギー中心へ転換する取組み
双日がサステナブル・エネルギー・ソリューション事業をスタートする舞台として選んだのはアメリカ。世界第2位のCO₂排出国であるアメリカでは、設備の老朽化が深刻に進んでおり、エネルギー効率の悪い設備が多く存在します。エネルギー効率の高いものに変えていくことにビジネスチャンスを見出した双日は、ペンシルベニア州の省エネサービス会社であるマクルーアと手を組みました。
1953年創業のマクルーアは主に自治体、学校、病院向けに省エネサービスを提供し、州内トップシェアの実績を誇ります。優秀な技術者を多く擁し、地元顧客からの信頼も厚い。省エネ機器や空調機器の工事に関しては、自社で設計から施工まで行える能力を持っています。マクルーアに出向している武岡脩は省エネサービスの狙いを次のように語ります。
「これまで双日は発電所を中心に事業投資を行ってきましたが、ビジネスの広がりに限界を感じていました。電力のエンドユーザーである産業、公的機関などが意識しているのは、高騰している光熱費です。省エネはユーザーである顧客にとって費用の削減になり魅力的です。顧客がいま現在必要としている電力を再生可能エネルギーで供給することは、コストをかければいくらでもできるかもしれません。ただし、実際に使えるコストは限られていて、顧客の電力使用量を削減したうえで必要な電力を供給することが求められる。そこに私たちの提供するソリューションの大きな価値があると考えています」
双日がマクルーアをバックアップすることによって、顧客に設備を導入する際、さまざまなファイナンスオプションや最新技術を提供できるようになりました。良い会社を発掘し、より良い会社にしていく。それはM&Aの経験が豊富な双日の強みです。
「顧客にとっては設備投資による負担が無く、自分たちが使った分の光熱費を月々支払えばいい。このようなビジネスモデルを設計したことで、電気に関わるあらゆることをマクルーアがワンストップで提供できるようになりました。グローバル企業の双日と、地域の顧客から信頼を勝ち得ているマクルーアが一緒になって、多様なサービスを提供する共同体になっていきたいです」
マクルーアは双日との協業によって、省エネ設備やソーラーパネルを設置する工事を行うことで売上を上げる従来のビジネスから、設置した設備を自社保有のものとし、電気という形で顧客に提供、保守点検サービスも行う長期的な取引が可能なビジネスモデルを獲得したのです。武岡にとって、マクルーアとのサステナブル・エネルギー・ソリューション事業は、10年前からやりたかった理想のビジネスだといいます。
「10年前はドバイに駐在していて、現地の工事会社と共にアブダビにある世界最大のアルミ精錬所の工事に携わっていました。工事会社に対してもっと提案できることがあるんじゃないかと、当時の上司と何度も議論していました。マクルーアの案件も、同じ上司と一緒に取り組んでいます。10年かけて共にこの事業を実現できたという実感がありますし、10年前の自分に原点回帰できました」
Photograph_Yukitaka Amemiya
マクルーアの事業に関わっているのは駐在員だけではありません。双日本社のブーンミー・ナッタブット(スティーブン)もそのひとり。マクルーアの手がける個別プロジェクトの分析、財務面のモニタリング、新しいビジネスモデルやM&A投資機会の検討など、幅広くサポートしています。
「エネルギービジネスは社会的なインパクトが大きい。これまで人類が文明をつくり発展させるためには、石炭など化石燃料からの莫大なエネルギー消費が欠かせませんでした。しかしいま、技術革新が目覚ましく進展し、エネルギー消費のパラダイムを根底から覆すのがカーボンニュートラル。歴史的なエネルギートランジションに仕事で関われていることに興奮しています」
Photograph_Yukitaka Amemiya
双日がめざしているのは、マクルーアがさまざまな電力関連サービスをワンストップで提供できる会社になるよう、成長させていくこと。学校でのサービス展開を例に、スティーブンはその構想を明かしてくれました。
「敷地にソーラーパネルを敷設、発電した電気を学校に供給してスクールバスのEV化をサポートする。さらにはバスの充電設備も提供していく。こうした複合的なビジネスの広がりを大切にしていきたいです。輸送車両を用いる事業領域には同じニーズが当てはまるので、そうした領域への展開も視野に入れています」
将来は母国タイでもサステナブル・エネルギー・ソリューション事業に取り組みたい。多くの人々の生活を支えるサービスづくりに深く関わることに、ほかには代えられないやりがいを感じていると語りました。
オーストラリアは人口1人あたりの年間CO₂排出量がG20参加国中第2位を記録しています。排出量のうち発電に起因するものが最大であり、先進国の中では人口成長率が高いことから、電力需要のさらなる増加が見込まれています。オーストラリアでもサステナブル・エネルギー・ソリューション事業を展開すべく、空調設備設計・施工と省エネ電力を提供するエリスエアーを連結子会社としました。
エリスエアーに出向し、新規事業の開発に取り組む黒田健太は同社との交渉を振り返ります。
「M&A交渉段階から、エリスエアーの新しい事業をやっていきたいという想いを感じていました。双日が保有する発電事業の知見と、エリスエアーの空調関連の設計・施工技術力と実績。この二社がタッグを組めば、新しい電力・省エネビジネスができるに違いないと期待しました」
(上)空調設備工事の現場。双日・エリスエアーのチームと。(下)技術者たちが作業する施設内の様子。
顧客に省エネサービスを提供するために、黒田とエリスエアーの経営層は、ビジネスモデルの設計と付加価値の創出を模索しています。
「経営層と『エリスエアーの技術力と、双日の事業創出力やアセットファイナンス力を発揮して、『こんな新しいビジネスをやろう』『こんな経営方針で取り組めば会社を成長させていける』と熱く議論することは日本ではなかなかできない経験です。自分の視野が広がっていることを実感しています」
エリスエアーが空調設備設計・施工を手がける施設。商業ビル・病院などの建築物をはじめ、トンネル・データセンターなどのあらゆる社会インフラ設備に携わっている。
家族経営企業であるエリスエアー。双日の出資参画後もアットホームでフラットな組織体制の良さは引き継がれています。2023年6月から出向している黒田も組織に早く溶け込むことができました。
「社員の皆さんとも和気あいあいと会話することができて、良い雰囲気の会社だと感じています。100人規模の社内クリスマスパーティーにも参加しました。メルボルンでの駐在生活は充実しています」
(上)アットホームなエリスエアーのメンバーたちと。(下)自然豊かなメルボルンは暮らしやすく、家族との時間も充実している。
太陽光発電所や病院の運営など、双日がオーストラリアで展開する多岐にわたるビジネス。黒田はどんなシナジーを生み出せると考えているのでしょうか。
「双日はオーストラリアに石炭や金属資源のアセットを所有していますし、日系のデベロッパー、ゼネコン、メーカー、ビール会社、食品メーカーなども多く進出しています。これらの建物や工場でも空調設備の更新や最適化、省エネのニーズはあります。また、エリスエアーはニュージーランドにも進出しました。事業基盤を大きくしていきたいと考えています」
地球温暖化を食い止める脱炭素社会の実現は、環境だけでなくエネルギー課題の解決の鍵でもあります。双日は再生可能エネルギーの効率的な使い方を追求する省エネを軸に、サステナブル・エネルギー・ソリューション事業に取り組み、この実現に貢献していきます。
サステナブル・エネルギー・ソリューション事業紹介動画
(所属組織、役職名等は記事掲載当時のものです)
浅野泰史
双日株式会社 インフラ・ヘルスケア本部 電力インフラソリューション事業部 部長
武岡脩
双日米国会社 Energy & Infrastructure Department, Vice President & General Manager
ブーンミー・ナッタブット(スティーブン)
双日株式会社 インフラ・ヘルスケア本部 電力インフラソリューション事業部
黒田健太
Sojitz Energy Solution Australia アソシエイトダイレクター