高強度鋼の添加材として不可欠なニオブ
安定供給を実現している双日の取り組み
2025年9月8日
2025年9月8日
双日は、ブラジルCBMMの日本市場向け総代理店として、国内需要家にCBMM製ニオブ製品を供給しています。ニオブは世界の埋蔵・産出量の9割をブラジルが占めており、現地でフェロニオブをはじめとする製品に加工され、主に鉄鋼メーカーに提供されています。用途は鉄鋼製品への添加材が9割以上を占め、自動車鋼板や建築鋼材、パイプライン、耐熱・特殊合金など、高機能鋼材には不可欠な存在となっています。身近なところでは、東京スカイツリーで使用されている鋼材にもニオブが使用されています。
CBMMは世界有数のニオブ生産企業で、ブラジル・ミナスジェライス州アラシャで1961年に鉱山の操業を開始後、現在まで高品位のニオブ鉱石を採鉱、製錬、販売しています。アラシャのニオブ埋蔵量は現在の需要に換算して200年分以上に及ぶとされ、長期にわたる安定供給が可能です。双日は旧日商岩井時代の1967年に日本向け輸入代理店業務を開始以降、現在まで国内鉄鋼メーカーをはじめとする需要家にニオブ製品を供給しており、日本に輸入されるニオブ製品の9割以上を扱っています。また、一部アジア地域においても販売代理店業務を行い、CBMMとともに日本以外でのニオブ市場の拡大にも取り組んでいます。
双日は鉄鋼メーカーを中心とした需要家向け安定供給を最優先にした輸入販売体制を整備しています。ニオブ製品はブラジルから船で輸送されるため、日本に到着するまで2カ月ほどかかります。輸送中にトラブルがあり到着遅延が生じると、需要家の要望に沿った供給ができません。そのため、双日は横浜、名古屋、神戸、北九州に流通在庫を持ち、ニオブ製品をジャストインタイムで供給できる体制を構築しています。
ニオブは偏在性が高く、全世界で見てもCBMM以外の主要サプライヤーは特定国に2社しかありません。全世界の採掘量の内、8割ほどがCBMMの操業するアラシャ鉱山から採掘されています。圧倒的な埋蔵量、および採鉱条件による高いコスト競争力に加えて、他社の鉱山と比べると、鉱石中のニオブ分含有率が平均2.3%と極めて高く、品質の面でもCBMMの優位性に大きくつながっています。
双日は、国内に在庫しているニオブ製品を需要家にジャストインタイムで供給できることに加えて、需要家との長年に渡る取引で築いた関係性をもとにマーケットの需要動向に関する情報を得ています。例えば、日本では、時期によって需要に変動があったり、工場ごとで異なる梱包での納入を依頼されたりしますが、需要予測に基づく在庫コントロールや需要家の要望に応じた製品の詰め替えなど、きめ細かいオペレーションを行うとともに、CBMMにも日本の需要動向や要望をフィードバックすることで、単なる製品販売ではなくCBMM、需要家の双方に対する価値のある機能提供に繋がっています。
双日は2011年に、双日と新日本製鐵株式会社(現日本製鉄株式会社)、JFEスチール株式会社、JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)、韓国の鉄鋼メーカーPOSCO Co., Ltd.、National Pension Service(国民年金基金)とで日韓コンソーシアムを組成し、CBMMの株式15%を取得しました。総代理店業務に加えて、権益投資も併せて行うことでニオブ製品の安定供給体制を一層強化しました。
また昨今、日本国内の鉄鋼生産量の縮小に伴い、ニオブ製品の需要が遁減することが予見される中、ニオブ製品の新たな活用方法を見出すべく、双日はCBMMの技術開発プロジェクトによる新規市場の開拓やアプリケーションの開発を支援しています。鉄鋼用途のみならず電子部品や化学分野などニオブ製品の用途の拡大に向け、CBMM・需要家双方のニーズを適切に理解し、プロジェクトの組成・実行へとつなげます。具体的には、CBMMや需要家の研究開発部門との開発テーマに関する議論や契約の締結、さらには需要家の購買部門や研究開発部門などとのコミュニケーションをサポートし、需要家・CBMM双方にとってwin-winのプロジェクトを組成できるように働きかけます。加えて、将来の技術開発プロジェクト組成へ向けて、CBMMからの技術提案を需要家の研究開発部門や大学など研究機関への提案も継続して行っています。
現在、ニオブ製品の用途拡大に向けた具体的な動きとして、ニオブチタン(超伝導磁石の母材として使用することでMRIやリニアモーターカー向け)、ニオブ酸化物光学グレード(車載カメラ、監視カメラなどのレンズ用)、各種ニオブ酸化物(リチウムイオン電池など電気・電子材料、触媒向け)などの製品及び需要技術開発が進められています。
その中で双日、株式会社東芝、CBMMの3者は、共同開発したニオブチタン酸化物(NTO)を負極に用いた次世代リチウムイオン電池を搭載した電気バスの実走行をアラシャ鉱山で実証実験をしています。NTOを負極に用いたリチウムイオン電池搭載の電気自動車の走行は世界で初めて(*1)で、本実証実験を通じて、NTOを用いた次世代リチウムイオン電池の特性および車両運行データの収集を行い、将来の商業化に向けた取り組みを進めています。現在、早期の製品化とグローバルでの販売に向けた準備が進められています。
双日は、CBMMと次世代リチウムイオン電池以外にも、航空機向けの超合金、液化水素輸送用パイプなどの技術開発に携わっています。今後も安定供給の継続と多角的な用途拡大を通して、ニオブ事業の発展により一層貢献していきたいと考えています。
(*1)2024年6月20日現在。株式会社東芝、双日、CBMM調べ