様々な産業で使われる工業塩をインドから供給
長い歴史と実績を持つ双日の工業塩事業の全容
2025年9月8日
2025年9月8日
世界の工業塩の市場規模は2023年現在で約3億トン、日用品や工業製品の原料としての需要があり、今後もGDPに連動して拡大していくと予測されています。そのうち、双日が工業塩を供給している主な市場であるアジアの輸入量は約2,800万トン、市場成長率は年平均3%程度です。塩の用途は食用が多いと思われがちですが、日本における最大の用途は様々な製品の原料や反応剤などで使われる化学薬品を作るソーダ工業向けで、全体の約8割を占めます。残りが食用、融雪剤などその他の用途です。世界全体で見ても、工業用が圧倒的な比率を占めています。
工業塩の生産量が最も多いのは中国で、次が米国、インドと続きます。アジア向け主要輸出国としては他にオーストラリアやメキシコもあります。いずれも広大な面積を持つ国々が工業塩の生産を支えています。
双日は2004年に日商岩井とニチメンが合併して誕生しましたが、それ以前から両社とも、工業塩を取り扱っていました。日商岩井はオーストラリアのDampier Salt Limitedに出資、現在もその資本の10%を保有しています。ニチメンは中東、エジプト、インド、メキシコから工業塩を輸入、1968年頃は日本の需要全体の4割ほどを占めていました。1988年頃からはインド塩の取り扱いを開始し、それが現在のインド塩の供給につながっています。
双日の工業塩の年間取扱量は約400~500万トン(2024年現在)、日本、韓国、台湾、インドネシアに供給しており、アジアの工業塩国際取引の2割程度のシェアを有しています。日商岩井、ニチメン時代から半世紀以上積み重ねてきた工業塩取り扱いの歴史と幅広い顧客ネットワークを構築してきたことで、双日の工業塩事業は総合商社ではトップクラスの規模です。
工業塩は自然の産物です。特に双日が取り扱う天日塩は自然に頼る部分が大きく、気候変動による自然災害の発生を織り込んだ形で供給体制の維持することを重視しています。天日塩は海水や地下かん水を塩田に引き込み、太陽光と風によって水分を蒸発させ結晶化させる塩種です。製造工程では主に再生可能エネルギーを使用するため、他塩種(岩塩、せんごう塩など)と比べて地球環境への影響は軽微といえます。ただし、その生産現場は、①広大な土地が確保できること、②高温で乾燥して雨が降りにくいこと、を満たす場所であることから、おのずと生産に適した地域は限られてきます。
双日のサプライヤーはその条件すべてを満たす西インドのグジャラート州に生産拠点を置いています。インドは日本の約9倍の面積を持つ国ですが、工業塩の生産に適している場所は限られており、インド産工業塩の9割近くがグジャラート州で生産されています。双日は3つのサプライヤーの5か所の塩田から生産される工業塩を4か所の港で船積みしています。複数の塩田と港を利用することで、豪雨などの自然災害による出荷への影響の低減を図っています。
工業塩を製品として出荷するためには多くの時間と手間を要します。まず、海水の濃縮と結晶化に1~2年ほどかかり、収穫から出荷まで最短でも1~2か月の期間が必要です。顧客の求める品質の工業塩を供給するために、サプライヤーに対して品質向上・改善の指導を継続して行うことで、最適な工業塩の供給を可能としています。
また、天産品かつバルク貨物であることから、生産や輸送の工程で異物の混入が発生してしまう可能性もあります。そのため、洗浄工程で不純物を除去した上で、船積みの際に敷いたメッシュ(網)を通すことで、異物を取り除くなど、品質向上に向けた処理も欠かせません。
工業塩は、あらゆる産業の基礎中の基礎ともいえる原料のため、価格上昇は製品価格の上昇要因となってしまいます。そのため、双日では安定した価格での供給を実現するため、様々な取り組みを行ってきました。
双日では30年以上にわたってアジアに工業塩を供給してきた実績から、ほぼすべての需要家との強力なネットワークを有しています。加えて、工業塩の輸送のための傭船(運送用に船舶を借り入れること)も自社で行っており、多くの船会社との関係を構築しています。工業塩は価格に対して運賃が占める割合が高いため、その安定供給には傭船も非常に重要となっています。長期契約をしている10社ほどの船会社も含めて、現在40社を超える船会社とコンタクトがあります。さらに、メーカーへの安定供給のため、国内に複数の在庫拠点を設けています。
こうした双日独自のネットワークと船会社の関係構築を進めてきたこと、安定供給に向けた環境作りを進めてきたことが双日の塩事業の強みです。そしてこの強みが、それぞれの産業の競争力の強化や安定操業に大きく貢献しています。