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※所属組織、役職名等は2023年9月発刊時のものです


  • cfo概要
  • 持続的な価値創造にこだわり続ける

    2023年4月よりCFOに就任した渋谷です。当社の価値創造に向けた軌跡を実績、実例をもってお示しすることで市場の皆様との積極的な対話を推進し、ご評価につなげていきたいと考えております。

    Profile

    1994年、当社(当時、日商岩井株式会社)入社。会計業務や、欧州の当社グループ子会社における組織再編業務などを経験後、経営企画部長、経営企画担当本部長として中計2023を含め、過去3回の中期経営計画の策定を担当。2023年4月より現職。

企業価値向上にこだわった中計2023

まずは、経営企画担当本部長として携わった中期経営計画2023(2021年4月よりスタート、以下、中計2023)策定の背景からご説明します。策定以前から、中期経営計画は、最終年度に向けて単に右肩上がりの収益計画ではなく、双日にとっての真の企業価値とは何かを真剣に検討し、中長期的に向上させていくための計画であるべきと考えていました。外部環境の追い風がある1年であれば、単年度の目標を達成して満足するのではなく、目標以上の上積みを目指す。逆風だったとしても、次の年に花開くようにしっかりと準備をする。こうした考え方のもと、定量計画の設定にあたっては、外部環境の変化があったとしても中期的に一定の水準を達成することを重視し、最終年度の目標ではなく、3ヶ年での目標達成を目指す形にしました。加えて、資本コストを上回るリターンを創出する決意を込め、ROA及びROE目標を掲げ、その達成のために、キャッシュリターンベースでのROICであるキャッシュロイック(CROIC)※1の導入や投資基準の整備も中計2023に織り込みました。「企業価値向上」といっても、人それぞれで解釈も異なる抽象的な概念になってしまうため、エクイティスプレッドの拡大を共通の目標として、それが企業価値向上に直結するという考え方を社内に改めて浸透させる狙いもありました。また、人材戦略や脱炭素社会の実現、ガバナンス等のESGに関する取り組みも、中計2023の主要テーマの一つとしました。これは、ESGをはじめとした非財務面の取り組みが将来の財務にインパクトを与える、つまり将来の企業価値に影響を及ぼす重要な要素であるとの認識のもと、社内外に明示することでその進捗を共有し、可視化することを目的としたものです。

  • CROIC:基礎的営業キャッシュ・フロー÷投下資本

規律あるBS・CFマネジメント

規律あるBS・CFマネジメント概要

中計2023の2年目を終えての進捗評価

中計2023の2年目である2023年3月期を振り返ると、定量計画で掲げた業績に関する目標の水準を、全て超えることができました。資源価格高騰による収益の押し上げ効果もありましたが、市況の要因に左右されにくい非資源事業の分野においても、全体の収益力が底上げされたことが、過去最高業績という結果に表れたと評価しています。収益性という観点でも、ROEで2022年3月期は12.2%、2023年3月期は14.2%と、堅調に推移しています。定量計画のうち、残された課題はPBR1倍超の達成のみとなっている状況です(2023年8月末現在PBR 0.82倍)。

また、本部の事業特性や足元の資本効率性を踏まえ、3ヶ年平均で最低限達成すべきCROICの水準を「価値創造ライン」として本部別に設定しています。事業のボラティリティが高い本部は比較的高い水準とした一方で、中計2023期間中において集中的に投資を行う本部、ポートフォリオの変革を大きく進める本部は比較的低めの水準で設定しました。2023年3月期において価値創造ラインに到達しなかったのは、後者に属しているインフラ・ヘルスケア本部とリテール・コンシューマーサービス本部です。この傾向は2022年3月期より変わっていませんが、注力事業領域として将来のさらなる成長のために新規投資を継続していることが要因となっています。今後それら新規投資からの収益貢献額が上昇するにつれて改善されるものと考えております。特にリテール・コンシューマーサービス本部については、コロナ禍からの回復に加えて、国内不動産や繊維事業などの資産入替を積極的に行っており、2024年3月期末には価値創造ラインに近い水準まで押し上げられると見ています。このように価値創造ライン導入以降、超過達成している本部も含め、「いかにキャッシュと期待されるリターンを創出し、持続的な成長戦略を実現していくか」といったCROICの考え方が浸透してきており、CROICを向上させるための具体的なアクションが加速しております。先に申し上げた国内の不動産事業からの撤退についても、長きにわたり取り組み、収益が出ていた事業ではありましたが、当社グループの将来の成長にとってどこに資金と人を配分していくのが最適かという観点で議論がなされ、資産の入替を聖域なく断行しています。

個別投資案件の評価の仕方も、中計2023の策定に合わせて整理し直しており、「企業価値の向上に資するものなのかどうか」を基準として、最重視しています。これにより、前提としている仮説も含めて、事業計画の透明性が高まり、客観的な見方を加えながら投資判断の議論を行うことが当たり前になってきています。買収価格の判断材料の一つとして、ターミナルバリューの計算を行っていますが、どうしたらそれを向上させることができるのか、定量的、客観的な議論も一層明確になされるようになってきました。実際に投資を実行した案件、検討を進めている案件を見ていても、企業価値向上に対する意識が格段に上がっていると感じています。また、投資検討段階からPMI※2までのワンストップソリューションを提供すべく設置している組織では、外部の知見を入れてさらに高度化する取り組みを新たに進めています。非財務面の取り組みにおいても、基本となる人材戦略、サステナビリティやDXについての施策の実行が加速しており、「組織と人のトランスフォーメーション」の足場固めが着実に進捗しています。

  • ※2PMI(Post Merger Integration):買収後の統合プロセス

本部別CROIC実績

本部別CROIC実績概要

資本コストを超過するリターンの創出を追求し続ける

中計2023は2021年3月期に策定したものですが、この時期は、コロナパンデミックによる需要の急減、物流の混乱等により、当社の収益も大幅な減少を余儀なくされた時期でした。当社は過去の経営再建の経験から、「規律ある財務マネジメントを徹底すること」、それを前提に「市況変化への耐性力強化を目的とした資産入替を継続的に行い、資産の質を向上させること」、そして「収益の塊となる事業領域の拡大・創出を図り続けること」を基本施策として取り組んできましたが、この未曽有の状況においても、財務健全性への問題は全く発生せず、成長に必要な投資も実行できた点は、真の意味で当社が経営再建や基盤固めの段階を終え、成長という未来を見据えたステージに入っていく、新たに2030年という次の10年に向けた持続的な成長を図っていくことに重心を置いた中計2023を策定することにつながりました。

2024年3月期は、次期中計に向けてやるべきことを整理し、準備していく1年と位置づけていますが、今中計においては、過去の中計と比較し、投資機会が格段に増えていると感じます。過去においては、資金力の問題や実績が不十分であることから、新規投資の実行機会が限られ、事業領域の拡大や幅出しが困難なこともありました。このような中でも、単なる資金の出し手としてではなく、顧客やマーケットのニーズにさまざまな工夫で応えることで、数多の案件や事業を創出してきました。最近になって投資余力が向上し、さらにこのような経験やスキルを持った人材がいること、またその中で広がったグローバルな人的ネットワークが現在の投資機会の拡大に繋がってきていると考えています。これらの投資機会をしっかりと捉え、次の成長につなげるため、健全な経営姿勢を堅持し、競争優位性・成長マーケットの追求から事業を見極め、俯瞰しながら、事業を点から線、線から面へと広げていくことで大きな成長につなげます。そのための投資の実行やリソースの配分が、中計最終年度から次期中計にかけて取り組むポイントと考えています。

加えて、マーケットが考える株主資本コストとのギャップを縮める努力も引き続き進めます。以前は、当社のビジネスを十分にご理解いただくことができれば、そのギャップを縮めることができると考えていた部分がありました。しかし、情報開示を強化してご評価をいただけるようになっても、ギャップは想定していたようには縮まっていません。またこれまでは一定の計算のもと、株主資本コスト8%程度を意識していましたが、世界的な金利の上昇などの外部環境変化を考慮すると、9%を前提に考えるべきと見ています。情報開示の充実化と強化に向けた不断の努力を続けていきますが、加えて一段と高い収益力を有する事業を創造し、それを起点としてその事業領域のさらなる成長、幅出しができるような投資に注力していかなくてはなりません。着実に実績を積み上げ、次の成長への期待を持っていただけるような戦略、仕組みをお示しすることが重要であると考えています。外部環境や、市場からの当社の見られ方も変化し続けていますので、当社の成長ストーリーに共感していただけるよう、2024年3月期以降も、投資家やステークホルダーの皆様との直接のコミュニケーションの機会を大切にしていきます。

財務基盤の安定性を保ちながら新規投資を加速する

当社における財務規律の考え方はシンプルで、稼いだキャッシュと資産入替によって回収したキャッシュで、新規投資と株主還元を行うことを基本としています。新たな事業を始めるにあたって必要になる運転資金には、借入も活用しますが、借入金で巨額なのれんを伴う新規投資を行い、回収ができなくなるリスクを負う考えはありません。中計2023における「成長と財務規律」の観点での計画にも「基礎的キャッシュ・フロー6年間累計での黒字を維持」を設定しており、財務規律の考え方は社内にも浸透しています。中計2023においては、最初の2年で収益の創出と資産入替の加速により、投資に回せる多くのキャッシュを生み出すことができたため、2023年5月時点で、中計2023期間中の投資実行予定額を、策定当初の「3,000億円+非財務投資300億円」よりも大幅に増やし、5,000億円としました。さらなる成長の実現に向けて、中計2023における注力領域「インフラ・ヘルスケア」「成長市場×マーケットイン志向」「素材・サーキュラーエコノミー」を中心として、戦略に裏づけられた規模感のある新規投資の実行を加速していきます。

株主還元においては、安定的かつ継続的な配当の実施が基本的な考え方です。連結配当性向を30%程度とすることを基本に、各期末時点でPBRが1倍未満の場合は、時価ベースのDOE※3 4%を下限配当とし、PBRが1倍以上の場合は、簿価ベースのDOE※4 (株主資本配当率)4%を下限配当としています。中長期的に右肩上がりの成長を目指すのは当然ですが、単年度の業績に左右されるのではなく、中期的な業績をもとにした株主還元の方針を、株主の皆様にご納得いただける形でお伝えする努力を続けていきたいと考えています。

  • ※3時価ベースのDOE:年間配当総額÷(当社株価日々の終値の当該年度の年間平均×期末発行済株式総数)
  • ※4簿価ベースのDOE:年間配当総額÷当該年度末の株主資本(簿価)

株主還元

株主還元概要

今の双日に求められるCFOの役割を果たしていく

双日らしさ、つまりは当社の企業文化はどのようなものかと聞かれることがよくあります。これまで培ってきた、自由な発想を大切にすることや、額に汗する仕事を厭わないことなどは、双日の大切な企業文化であるといえるでしょう。会社のステージが変わってきたと述べましたが、強くなった資本力に頼れるようになったとしても、このような企業文化は大事にしたいですし、一方で、企業文化は不変のものではなく、変わっていくもの、 創っていくものだと考えています。

では、どのように双日らしさである企業文化を、双日の強みに昇華させていくべきなのか。その解の一つが、2030年に目指す姿として掲げる「事業や人材を創造し続ける総合商社」という言葉に表されています。また、私は双日が2030年になってようやくそれを実現するのではなく、2030年には当たり前に事業と人材を創造し続けている姿を思い描いています。その実現のために大切なのは、過去に固執することなく、変化し続けることです。

その時々の外部環境や会社のステージによって、CFOに求められる役割も変わると考えています。これまでは、過去の苦い教訓から、再び経営破綻に陥らないための資金調達やリスクマネジメントといった「守り」がCFOの役割の中でも大きな部分を占めていました。もちろんその考えは変わりませんが、会社のステージが変わってきた今、守るだけではなく、攻めていくことが求められるのは明確です。サステナブルに成長の原資である価値を創出し続けることで企業価値を向上することにこだわり、エクイティスプレッドを拡大していくこと、それに資するようなバランスシートを形成し続けることが、今の双日のCFOに求められる役割だと認識しています。私にとっての企業価値の向上は、将来の財務インパクトも含めてROEの分子であるリターンをいかに向上させていくか、そしていかに将来に対する期待を醸成していくか。それに尽きると思っています。

当社は1,000億円を超える水準で当期純利益を創出する基盤を整え、新たな成長ステージに到達したと捉えています。これからも持続的な成長を果たすため、変化を止めず、安定的に価値を創造できる事業ポートフォリオを作り続けていきます。当社の魅力、価値創造に向けた道筋をしっかりと投資家の皆様にお示ししてまいります。今後の双日の成長にどうぞご期待ください。

キャッシュ・フローマネジメント

前中計に引き続き、中計2023でも基礎的キャッシュ・フロー6年間累計での黒字を維持

キャッシュ・フローマネジメント概要

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