社長メッセージ

株価情報

東証プライム市場:2768

現在値


(%)

(リアルタイム)

年間配当予想

配当利回り

%

時価総額

億円

社長CEO

本当に、勝てる事業だったのか

私たちは、その事業で本当に勝てるのか。「双日らしい成長ストーリー」の実現を追い求める中で、この問いに十分に向き合いきれていたのかを改めて問い直しました。そして、その答えは必ずしも十分ではなかったと認識しています。

中期経営計画2026で掲げたNext Stageに向けて、当社は着実に歩みを進めています。その2年目に当たる2026年3月期では豪州のインフラ開発会社Capella Capital Pty Ltd(以下、Capella社)の買収など2倍成長に向けた大型投資を着実に進める一方、当社として継続的に価値を出すことが難しい事業については、他のパートナーとの共同事業に転換することも含めた撤退判断、また、事業そのものだけでなく、それを管理する本部の抜本的な体制変更といったところまで、合理的に行っています。

そうした、勝ち筋を十分に見極められない事業については、不振事業として内外に開示しました。市場の成長を見込んで参入したものの、「自分たちがどこで価値を発揮し、どのように収益を伸ばしていくのか」という勝ち筋を詰め切れていないまま投資判断した結果、市場の成長性に陰りが見えると収益が伸び悩み、投資を回収しきれない事業がありました。また、市況の追い風がなければアップサイドが限られる収益構造にもかかわらず、ダウンサイドを最小化するための運営力やコスト管理が十分でなく、ここ数年続いていた市況が良い局面では見えにくかった課題が、環境の変化とともに顕在化した事業もありました。これらの事業に共通していたのは、市場の成長性や市況といった不確実性の高い外的要因に依拠する一方で、自分たちの強みや勝ち筋を起点とした検討が不十分であった点です。どこか「頑張れば何とかなる」という発想のもと、目指すシナリオとのギャップのうち、「自分たちが何を埋められ、どこで勝てるのか」といった勝ち筋が見えないまま投資していた部分があったと認識しています。このような課題をしっかりと社内で共有し現場に意識してもらうという観点でも、不振事業という打ち出し方は効果があったと考えています。

業績が芳しくない事業を分析するにあたっては、市場環境の変化そのものを失敗の理由にするのではなく、自らコントロールできる判断の質にこそ向き合うべきだと考えています。突き詰めると、これらの案件に欠けていたのは、当社がその事業で本当に価値を発揮できる立場にあるのか、すなわちベストオーナーであるのかという視点でした。この視点を徹底することが、新規投資に限らず、既存事業の見直しにおいても重要です。「当社が保有し続けることに本当に意味があるのか」を問い直し、事業価値の最大化という観点を重視した判断を行うことにより、事業ポートフォリオの最適化につなげていきます。

当社がやる意味は、本当にあるのかを問う

  • 社長CEO
  • もともと当社は、特定の事業に依存するのではなく、変化の中で新たな事業を創出し続けてきた会社です。

    源流から100年以上にわたって培ってきた「先読み」「変革」「挑戦」のDNAは、今も事業判断の土台にあります。環境は変化するものという前提をもとに、自らの立ち位置を見直しながら、勝てる領域で価値を発揮していくという考え方は、このDNAの延長線上にあるものです。

    当社の競争優位について、他の総合商社との比較では考えていません。業態が同じでも、一つひとつの事業で競合することは少ないからです。それよりも、それぞれの事業領域にいるプレーヤーの中で、自分たちがどのポジションに立てるのかを見なくてはなりません。私が重視しているのは、ニッチトップになれるかどうかです。特定領域で優位性を持ち、それを維持し続けられるかを見極めることが重要です。その前提となるのが、事業構造への深い理解です。どこで価値が生まれているのかを構造的に理解することが必要です。そこまで理解して初めて、自分たちが優位に立てる余地が見えてきます。

こうした前提に立てば、「双日の強み」を固定的に捉えるべきではないことも分かります。環境が変われば、優位性を発揮できる領域も変わっていくものです。だからこそ、変化に応じて事業を入れ替えながらも、当社が本当に勝てる事業分野を積み重ねていくことが重要だと考えています。

これらの考え方は単なる方針として掲げるものではなく、実際の投資判断においても共通の基準として運用しています。客観的に見て勝ち筋を説明できない案件については、投資の入り口の段階で対象から外すようにしています。その結果、投資判断は従来よりも厳選されていますが、これはリスクを取らないという意味ではありません。むしろ、勝ち筋が明確に描ける案件については、これまで以上に確信を持って踏み込むというメリハリのある投資判断へと変わっています。

一人称で語る限り、判断は歪む

  • 社員にまず求めているのは、一人ひとりが自律的に考えることです。与えられた前提をそのまま受け入れるのではなく、その事業にとって何が最適なのか、自分たちがどこで価値を発揮できるのかを整理し、説明できなければなりません。その際に重視しているのが、「一人称で語らない」という姿勢です。仕事にかける熱意は不可欠ですが、それだけでは事業はうまくいきません。自分たちがやりたいかどうかではなく、その事業にとって最も適した形は何か、誰が担い手としてふさわしいのかを客観的に捉えることを求めています。

    こうした見方ができているかどうかは、個々の案件の判断だけを見ても十分に把握できるものではありません。日常の対話や議論の積み重ねの中で、その人がどのような前提で物事を捉えているのか、どこまで自分の頭で考えているのかが見えてきます。私自身も、日々のやり取りの中で、社員それぞれの思考の質と判断の前提を把握するよう心掛けています。

    2026年4月の機構改革・役員人事についても、単なる成果の多寡ではなく、どのように事業を捉え、戦略を整理し、説明できるかという観点で見直しを行いました。求めているのは、単発の案件を処理する力ではありません。例えば、既存事業との関係の中で何を積み重ねるべきか、短期・中長期でどのような価値を生み出すのか、将来の社会にとって必要なものなのかを整理し、説明できる力を重視しています。

  • 社長CEO

組織として、判断の質を底上げする

一方で、個人に自律性を求めるだけでは、組織としての意思決定の質を高めるのに限界があります。客観性を高めることで思考のばらつきを抑え、判断の質を底上げしていくためには、多面的な見方を他者から積極的に取り入れ、またそれを咀嚼し、受容する必要があります。こうした思考を組織として実現するために、現在フィードバック文化の醸成や、コーチャビリティを高める施策に取り組んでいます。

具体的には、フィードバックのルールを整備し、ガイドブックとして社員一人ひとりに配布するなど、オンライン・オフラインの両方でトレーニングを進めています。定例の人事評価や1on1面談にとどまらず、日常の中で継続的にフィードバックを行うことで、個々の思考の質を引き上げていきます。

こうした取り組みは、単なる人材育成ではなく、結果として事業への投資判断の質を高め、資本効率の向上につながるものです。自律的に考え、客観的に判断できる人材が増えることで、事業の意思決定の質が高まり、利益成長につながっていきます。何も考えずに事業を進めても価値は生まれません。だからこそ、人材への投資を通じて組織全体の意思決定の質を高めていくことが、中長期的な成長を実現する原動力になると確信しています。人が育ち、自ら考えて動けるようになることが、働き甲斐にもつながり、組織の力を底上げしていきます。

足元の意思決定における判断軸の徹底

こうした取り組みを通じて磨かれつつある組織としての判断基準は、足元の投資や事業の見直しにも具体的に表れています。共通しているのは、単に成長領域かどうかではなく、当社がどの立ち位置で関与し、どのように価値を発揮できるのかという観点から整理している点です。

豪州のインフラ開発会社Capella社の買収は、その象徴的な例の一つです。これまでの類似案件の検討で得た知見を踏まえ、PPP事業の開発領域へ参入することで、過去に当社が培った知見を転用、さらに昇華することができ、課題であったパイプラインの厚みが増すとともに、フェーズごとに複数の収益機会を得られるため、収益の安定化と拡大を期待できると判断しました。

化学事業における日本エイアンドエル株式会社への投資についても同様です。本案件は20年以上取り組んできた電池関連ビジネスの延長線上に位置づけており、長年培ってきた知見や顧客との関係を踏まえ、トレードにとどまらず製造領域まで関与することで、より高い付加価値を創出できると判断しています。

また、既存事業の見直しにおいても、同様の判断基準で取り組んでいます。ベトナムリテール事業については、これまでのハンズオンでの運営では十分に成長させきれていなかったという認識がありました。そのため、現地の小売・流通大手と協業を行い、同社の持つ多数の流通チャネルや知見などを活用することで事業の成長を図っていくことを検討しています。「この事業を伸ばしていくために最適な施策は何なのか」を突き詰め、当社単独では実現が難しい領域についてはパートナーとの連携を通じて、最適な事業運営体制を構築していきます。

いずれの案件についても重要なのは、「当社がどの領域で、どの立ち位置で価値を発揮するのか」を明確にすることです。この考え方に基づき、新規投資と既存事業の見直しを進めています。加えて、当社が担う必然性が見出せない場合には、関与し続けることにこだわらず、見直しや撤退も含めて判断・実行しています。

不確実性の高い時代ほど、判断基準が問われる

足元の事業環境は、引き続き不確実性の高い状況にあります。資源、エネルギー、物流、サプライチェーンといった領域において、経済合理性だけでは整理しきれない変化が強まっています。国家間の関係や政策の動きが、事業の前提そのものを左右する場面も増えてきました。

例えば、レアアースやウランといった資源は、単なる需給や価格だけでなく、特定国への依存や調達の安定性といった経済安全保障の観点からも、その重要性が大きく変わってきています。また、カーボンニュートラルについても、従来のように脱炭素だけを軸に語れる段階ではなくなってきており、エネルギー安全保障や供給の安定性とのバランスをどう取るのかという観点が重みを増しています。

これまで述べてきたように、当社は投資や事業の見直しにおいて、自分たちがどこで価値を発揮できるのかという判断基準を重視しています。このような判断基準が重要になるのは、個別案件を投資判断する場面だけではありません。前提条件そのものが変わり続ける時代だからこそ、自らの判断軸を持って対応していく必要があります。外部環境が不透明であるほど、判断軸の明確さが問われるということです。

その中でも、特にエネルギーに関しては考え方に変化が出てきています。脱炭素の流れは引き続き重要であり、再生可能エネルギーも着実に進めていく必要がありますが、それだけで成り立つものではないという認識が広がっています。特に日本においては、安定供給の観点を踏まえ、電源の選択肢をより現実的に捉える必要があります。原子力についても、長期的に一定の役割を担う電源として、その重要性は改めて高まっていくと見ています。当社としても、現実的な選択肢の一つとして、どのような役割を果たせるのかを見極めていきます。それが、不確実性の高い世界における日本のサプライチェーン強靭化や、脱炭素社会の現実的なトランジションに貢献することにつながります。

  • また、こうした時代の変化を象徴しているのがAIです。その進化が示しているのは、業務が効率化されるということ以上に、判断の前提そのものが短い期間で更新され続ける時代に入っているということです。これは、従来の経験や知識だけでは意思決定が成り立たなくなることを意味しています。自分の知識だけに基づいた判断は、すぐに陳腐化します。だからこそ、人の判断力を高めることに加え、デジタルやAIを活用して、判断の質とスピードを引き上げていくことが重要です。当社としては、変化の大きい時代における判断力そのものを強化する基盤として、デジタルやAIを位置づけていきたいと考えています。

  • 社長CEO

Next Stageに向けた成長領域を、明確に打ち出す

Next Stageとして掲げている「2倍成長」は、単に規模を拡大するという意味ではありません。これまでの延長線上で積み上げていくのではなく、双日としてどのような成長を実現していくのか、その形をより明確に示していく段階に入っていると考えています。

そのためには、個別案件の積み上げではなく、判断の軸を揃えた上で、どこに経営資源を配分していくのかを決めていくことが不可欠です。これまで述べてきたように、当社は「ベストオーナー」の視点に基づき、保有する資産の見直しと新規投資の選別を進めています。資産の入れ替えと収益性の向上を同時に進めることで、資本効率を高め、企業価値の向上につなげていく考えです。

Next Stageにおいては、当期純利益2,000億円、ROE15%、時価総額2兆円という目標を掲げています。これらは単なる数値目標ではなく、事業ポートフォリオの見直しと、勝ち筋に基づいた投資の積み重ねによって達成すべき水準と捉えています。

Next Stageに向けて伸ばしていく分野として、今見えている取り組みに加え、2027年3月期中に、Capella社への投資のような案件を少なくとも新たに3つは示していく考えです。これらを通じて、当社の成長の方向性と実行力を、より明確に示していきます。

私の役割は、その成長の道筋を明確に示し、成果を着実に形にしていくことで、ステークホルダーの皆様の期待に応えていくことだと考えています。Next Stageに到達できるかどうかは、個々の施策だけで決まるものではありません。これらの取り組みをどこまでやり遂げられるかにかかっています。その実現に向けて、意思決定の質と実行のスピードの双方を引き上げ、確実に結果につなげていきます。

2026年7月
代表取締役 社長CEO 植村 幸祐

※所属組織、役職名等は2026年7月時点です

当ウェブサイトは、当社に関する情報の提供を目的とするものであり、当社株式の購入や売却を勧誘するものではありません。

投資に関する最終決定は利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。また、当ウェブサイトに掲載された予測および将来の見通しに関する記述等は、資料作成時点での入手可能な情報、一定の前提や予期に基づくものです。よって、実際の業績、結果、パフォーマンス等は、経済動向、市場価格の状況、為替の変動等、様々なリスクや不確定要素により大きく異なる結果となる可能性がありますが、当社グループは、当ウェブサイトの情報の利用により生じたいかなる損害に関し、一切責任を負うものではありません。

また、当社ウェブサイトの情報の掲載にあたっては細心の注意を払っておりますが、掲載した情報の誤りや、第三者によるデータの改ざん、データダウンロード等によって生じた損害に関し、当社は一切責任を負うものではありませんのでご了承ください。

なお、当ウェブサイトの内容は予告なく変更、掲載を中止することがあります。