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「中期経営計画2026 -Set for Next Stage-(以下、中計2026)」の初年度である2025年3月期は、資源価格が想定より低迷するといった外的影響を受けるなど、一部不振な事業領域があったものの、新規投資からの収益貢献と既存事業の伸長によりそれらをカバーし、期初計画を超過達成しました。市況に大きく左右される資源事業の収益割合が相対的に減る一方、非資源事業の収益が伸長し、利益創出基盤の安定性は向上しています。3年連続で当期純利益1,000億円を超える実績を上げられたことは、安定的に利益を稼ぎ続ける基盤が強化された証左であると評価しています。
しかし、現在、当社のPBRは0.77倍程度(2025年6月30日時点)と著しく低い水準にあります。NextStageで掲げる当期純利益2,000億円、ROE15%、時価総額2兆円という目標に対して、私たち経営陣は達成に確信を持っていますが、この確信が市場には十分に浸透していないと感じています。この市場評価と実力とのギャップを埋めるためにも、中計2026発表直後から多くの投資家の皆様と面談を重ねてきました。その中で寄せられるご意見は大きく2つあります。1つ目は「双日らしい成長ストーリー」がどのようなものであり、Next Stageに向けてどのように実現していくのかというものです。こうした声に応えるため、四半期ごとの決算発表において「双日らしい成長ストーリー」を実現している事業領域やセグメントを例にあげ、具体的な取り組みや考え方、目指す数字について継続的に説明し、双日の独自性や競争優位性をより理解していただけるような取り組みを行っています。本報告書でも、実例を用いてご説明を試みています。2つ目は、経営戦略や過去の実績、足元の進捗から、正しい方向に進んでいると評価していただきながらも、株価が低い水準にとどまっている理由を問うものです。株価については、将来にわたる持続的な成長性に対する資本市場からの信頼がまだ十分ではないこと、さらに当社の利益水準やROEと、投資家の皆様が求めるリターンの間にギャップがあることが低迷の要因と考えています。
資本コストについては、前期からの認識と変わらず9~10%程度とみています。一方で、市場が実際に求めているリターンは15%程度であると認識しています。当社のROE目標もNext Stageで15%を掲げており、現状の11.7~12.0%からさらに向上させる必要がありますが、達成不可能な目標ではありません。達成に向け、これまでも取り組んでいる「既存事業の稼ぐ力の向上」や「新規投資の領域を明確化し、多数の事業の点を有機的につなぎ、カタマリとする成長戦略の徹底」を愚直に実践し、その進捗については各本部に目指すべき水準として示したCROICターゲットと比較することで定量的に評価、向上していく体制を敷いています。そして、今後これらのスピードをさらに上げていきます。
株主還元については、安定的・継続的に取り組むという基本姿勢に変わりはありません。まだ成長フェーズにある当社としては、成長投資に重心を置きつつも、基礎的営業キャッシュ・フローの3割を株主還元に充てるという方針を設け、予見性の高い還元を行っています。株主資本DOE4.5%とした累進的な配当方針は、現状の株主の皆様には一定の満足をいただける水準と考えていますが、この株主還元を継続しながら、新規投資のリターンを高めていくことが重要だと認識しています。
当社の事業ポートフォリオマネジメントの考え方は製造業などとは異なり、特定のセグメントに集中するというものではありません。総合商社として、事業ポートフォリオは常に変化し続けるものです。その中で変わらないものは「人」です。「人」が新しい事業を創造し続け、厳しい環境下でもレジリエンスを発揮し、変えるべきものは変え、変えないものは守り抜く。それが双日のDNAとなっています。世の中は常に変化するものであり、特に現在は地政学リスクの高まりなど、毎週のように状況が変わっています。こうした環境下では一喜一憂せず、感度を高めていくことが大切です。私たち経営陣が実践するのはもちろん、現場に対しても、感度を高め、気づいたことを声に出し、提案し、迅速に行動に移すよう促しています。
中計2026では6,000億円の投資を計画しています。初年度の実行額は約1,000億円でしたが、すでに意思決定した投資額は1,500億円程度あり、進捗に問題はありません。ただし、予定どおりに進捗させること自体が目的ではなく、機会を見極めながら質の高い投資を実行していく方針です。中計2026では、事業ポートフォリオを変革するための新規投資として3,000億円の枠を設けたことで、戦略的な案件に対してスピード感を持ってチャレンジできるようになりました。各本部が自身の投資枠にとらわれず、会社全体として重要な案件を早い段階から共有し、迅速に意思決定することが可能になっています。投資実績を積み重ねることが、パートナーとの関係強化や新たな機会創出にもつながっており、成功事例が新たなパートナーシップを生み出す好循環を形成しています。
資本コストが高いと思われており、掲げている目標に対する信任が十分に得られていない現在の状況において、着実に成長し、安定して利益を上げられる事業の比率を高めていくことが重要です。成長期待を醸成するためにも、当社が機能を有しており力を発揮しやすく、変化を機会として取り込める領域への投資にも注力していきます。既存事業においては、収益性向上のために事業を磨き続けるのはもちろん、当社よりもその事業を発展させられるパートナーがいれば、そのパートナーに任せることも選択肢のひとつであると認識しています。
2倍成長の実現に向け、事業レベルでは、5倍成長を目指すものもあれば、まずは赤字の克服を優先すべき事業もあります。これまで、各本部と目線を合わせるため、経営陣と各本部との間でそれぞれが果たすべき役割を明確にするための対話を重ねてきました。その結果、会社全体としての方向性と各本部の目線が揃ってきたと感じています。
「双日らしい成長ストーリー」の実現に向けて、CFOとしての役割は主に3つあると考えています。1つ目は、「双日らしい成長ストーリー」とは何か、どのように実現し続けていくのかを資本市場に伝えていくこと。2つ目は、その実現スピードを高めていくこと。3つ目は、個別事業だけでなく、事業の集合体として「双日らしい成長ストーリー」が実現できるよう、ポートフォリオを構築していくことです。当社は良い企業であると同時に、良い投資先であることを強く意識した経営をしています。「双日らしい成長ストーリー」の実現とともに、社員の満足度向上と、投資家の皆様のご期待に応えることの両立を目指していきます。今後も当社にご期待いただき、ご支援賜りますようお願い申し上げます。
※所属組織、役職名等は2025年7月時点です
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