気候変動
方針・基本的な考え方
双日は、企業理念に掲げる「新たな価値と豊かな未来を創造」に向け、双日が得る価値、社会が得る価値の“2つの価値”の最大化を目指しています。
当社は、これまでも、事業を通じた「社会課題の解決」を「自社の強み」に変え、事業基盤を拡充、成長させてきました。エネルギーの供給・確保という社会課題に対しては、国内外で多くの資源ビジネスをおこない、解決の一端を担うとともに、それを自社の収益に繋げてきています。
一方で、新たな課題として、気候変動への注目が高まり、世界的にカーボンニュートラルに向けた潮流が加速する中、エネルギーは、単純な使用・供給から、よりグリーンな使用・供給への移行が求められています。
このため、当社は、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」にて、脱炭素社会実現への貢献を掲げました。当社は、自社グループの「既存事業」からのCO2排出削減を加速させ、脱炭素社会への耐性を高めるとともに、今後手掛ける「新規事業」では、この社会移行を新たな「機会」と捉え、エネルギー分野はもとより、幅広いビジネス構築をおこなっていきます。これにより、脱炭素社会の実現という「社会が得る価値」の構築までの過程で、様々な収益機会を「双日が得る価値」として増やしていきます。
目標
将来的な技術動向の見立てや、リスクと機会の精査を踏まえて、既存事業と、今後、新たに取り組む新規事業に分け、対応方目標を設定しています。
既存事業は国際的なCO2の排出定義(SCOPE)別に「削減目標」を策定、また、新規事業の取り組みにあたっては、脱炭素社会に向けた移行をグループの成長の「機会」と捉え、各種事業を積極的に推進します。
既存事業
SCOPE1とSCOPE2の目標
SCOPE1とは、自社が石炭やガス等を直接燃焼した際に発生するCO2であり、SCOPE2とは、主に自社が使用する電力が発電される際に発生するCO2を指します。共に「自社の直接的なエネルギーの使用」に起因するCO2であり、双日グループの年間排出量は1百万トン前後です。下記、権益事業(SCOPE3)の排出に比べ限定的ですが、双日の収益基盤の耐性を高めるためには、この脱炭素化も必要と考え、以下を目標とします。
SCOPE1+2 | 2030年までに6割削減、2050年までにネットゼロ *1 (内、SCOPE2は、2030年までにネットゼロ *2) |
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石炭火力発電 | 現在保有無し。今後も保有しない |
- *1、*2 2019年度を基準年として、単体および連結子会社が対象。
証書などによるオフセットを含む。取り組みを加速するために、インターナルカーボンプライスの導入を検討しています。
SCOPE3(資源権益事業)の目標
SCOPE3とは、主にサプライチェーン上の間接的なCO2排出を指します。商社は川上から川下まで広範なサプライチェーンを有しますが、現在、双日が保有する資源権益を、全て燃焼させた場合のCO2は約4億トンです。これは、双日グループが直接使用するエネルギーからのCO2排出量(SCOPE1+2)の1百万トン前後を大きく上回ることから、資源権益への対応は、より社会的な責任が高いと考えています。
このため、2021年3月に、従前掲げていた一般炭権益の削減目標を前倒しするとともに、新たに石油権益、原料炭権益についても、以下の方針、目標を掲げました。尚、原料炭に関するビジネスにおいては、CO2削減に向けた回収や新製鉄法などの技術革新に伴う新たな事業機会にも、積極的に取り組みます。
資源権益事業の目標
一般炭権益 | 2025年までに半分以下、2030年までにゼロ *3 |
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石油権益 | 2030年までにゼロ |
原料炭権益 | 2050年までにゼロ |
- *3 2018年を基準とした権益資産の簿価ベース。2019年5月に公表の「2030年までに半分以下にする」目標を前倒し。
新規事業
今後手掛ける新規事業においても2050年までのネットゼロを目指します。
また、これらの目標は、脱炭素社会に至るまでの、年代ごとの「技術動向・世の中の動き」を見立てたロードマップを整理し、その見立てに即して「双日の対応・考え方」を決定し、策定しています。
そのため、上記目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって、柔軟に見直しを行います。
この脱炭素ロードマップの策定・更新に当たっては、毎年、外部有識者をお招きして、ステークホルダーダイアログを開催し、最新の動向を把握するとともに、社内においては、各営業本部長との対話なども踏まえ、取締役会、経営会議、サステナビリティ委員会などでの議論も行った上で、決定しています。
サステナビリティの推進サイクル
ステークホルダーダイアログの様子(2020年度)
当社は上記方針のもと、CO2負荷の高い“ブラウン事業”の比率を減らし世の中のCO2削減に貢献する“グリーン事業”やその“トランジッションを支える事業”を積上げ ポートフォリオの一層のグリーン化を進めていきます。
グリーン、ブラウン、トランジッションの事業の定義付けについては先行する欧州タクソノミーの基準等も参照していきます。
体制
双日グループの気候変動への対応については、サステナビリティ委員会にて討議し、経営会議、及び取締役会に報告のうえ、取締役会より監督・指示を受けています。
また、事業投融資の審議にあたっては、気候変動に関連したリスクの分析・評価も行った上で、当該案件の推進意義を確認し、投融資実行を決議しています。
これらをサポートする実務機関として、サステナビリティ推進室を設置しており、サステナビリティ推進室は、サステナビリティ委員会の指示事項を遂行するとともに、投融資審議会の審議案件について、気候変動を含むサステナビリティの観点からの確認を行っています。
サステナビリティ委員会
サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する全社方針や目標の策定、それらを実践するための体制の構築・整備、及びISO14001の管理体制を活用した各種施策のモニタリングを行っています。
サステナビリティ委員会メンバー(2023年6月20日現在)
**代表取締役
*取締役
委員長 |
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委員 |
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オブザーバー |
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事務局 |
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取り組み
<1> TCFDへの賛同
双日グループは、気候変動に関する『リスク』と『機会』についてTCFD*1提言のフレームワークを活用し、積極的な情報開示と透明性向上に努めています。
*1 双日は、2018年8月にTCFDの最終提言への賛同を表明しました。
ご参照TCFDのフレームワークに則した開示、及びシナリオ分析についてはこちら
<2> CO2削減への取り組み
気候変動への取り組みは、方針・目標に掲げた各項目に即して実行しています。現在、グループ内の主要排出企業との対話を行い、削減策を検討しています。
SCOPE1とSCOPE2の削減
既存事業
- ・先ずは再生エネルギーという代替手段が明確な、使用する電気(SCOPE2)の切替を優先していきます。
- ・その上で、脱炭素の観点も含め、陳腐化が懸念される事業はEXITも含めて検討していきます。
- ・SCOPE1は、燃焼効率の悪い石炭や石油焚きの設備について、更新の時期を捉えて優先的に切替を検討していきます。
尚、ガス焚き設備の場合、水素やアンモニアなどの代替手段の経済合理性がなく、技術革新が必要なため、長期的な視点をもって切り替えを行います。 - ・残存したCO2は証書でのオフセットも検討しますが、その割合を極力少なくする方針です。
新規事業
- ・既存事業と同じく 2050 年ネットゼロを目標としますが、その中間である 2030 年は、個別にあるべきマイルストーンを検討していきます。
上記を円滑に推進すべく、各事業に対する支援制度を検討中。
本中計では、この支援制度を含む「人や組織変革の非財務投資」として、300 億円を予算化。
SCOPE3の削減
主にサプライチェーン上の間接的なCO2排出を指すSCOPE3ですが、商社は川上から川下まで広範なサプライチェーンに関与しており、そのすべてを精緻に把握することは困難です。
その為、当社は、当社の成長・業績へのインパクト、及び社会へのインパクトが大きい事業分野を特定し、その分野から「把握と計測」を行い、個々に対応方針を検討していきます。
その第一弾として、双日グループが保有する石炭権益を対象としました。現在、当社が保有する石炭権益(一般炭、原料炭)を、全て燃焼させた場合のCO2は約4億トンです。非常に潜在量が大きいため、現在すでに再生可能エネルギーで代替が可能な発電用石炭(一般炭)の権益については2030年までにゼロにする方針を、また鉄鋼生産の還元剤として使用する原料炭の権益については、代替還元剤の水素やアンモニアなどの普及期を2040年代以降と想定し、2050年までにゼロにする方針を掲げました。。
考え方 |
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方 針 |
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対 応 |
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<権益削減の考え方>
2018年度を基準年として、1.5℃シナリオに記載の石炭の海上貿易量の減少速度を上回る速度で、双日の一般炭と原料炭の権益合計を削減して参ります。

<3> 気候変動に関わる『機会』への対応
双日グループは、脱炭素社会への移行を新たな「機会」と捉え、エネルギー分野はもとより、循環型社会(サーキュラー)関連事業など、幅広いビジネス構築をおこなっていきます。
この推進のため、中期経営計画2023では、「環境(発電含む)」「ヘルスケア」「インフラ」系のリソースを「インフラヘルスケア本部」に集約し体制を強化するとともに、金属資源分野では、脱炭素社会の先にある循環型社会を見据え、「リサイクル」への幅出し・注力を図るべく、本部名称を「金属資源・リサイクル本部」に改称し、取り組みを増やしております。
2018年度以降の取り組み事例
2021年度の記事
ご参照双日、豪州でグリーン水素製造、太平洋島嶼国で利活用(2022年1月12日)
ご参照ベトナムにおける屋根置き太陽光発電事業への参画について(2021年10月22日)
ご参照双日、環境先進市場である欧州の電力小売事業に参入(2021年9月13日)
ご参照双日・ASF、グリーンEVインフラ事業の推進に向け資本提携を強化(2021年6月30日)
ご参照双日、バイオマスを原料とする非石油由来化学品の開発・事業化を手がけるGreen Earth Institute社に出資参画(2021年6月11日)
ご参照双日、豪州において日本企業が手がける中で最大規模となる太陽光発電所の建設を開始(2021年6月10日)
こうした脱炭素社会への貢献を図る指標として、SCOPE4の採用を検討しています。SCOPE4とは、事業が生み出す製品・サービスによる「世の中のCO2削減量」を指します。その算定方法は未だ確立されていないものの、現在、ISOなどでもその標準化が検討されています。
当社は、その動向も注視しつつ計測と把握に努め、将来の目標化を検討します。
<SCOPE4(削減貢献量)の積み上げ>
例えば、再生エネルギー事業の場合、その国の電力のCO2排出量平均(原単位=CO2量÷kwh) と、当社再生エネルギー事業のCO2排出量(=ゼロ)の差が削減貢献量となります。

計算式=(その国の1kwh当たりCO2排出量 - 双日事業の1kwh当たりCO2排出量) x 双日事業の発電量
※ 現在ISOで標準化中であり一例です。
<4> ステークホルダーとの協働
当社は経済産業省が主導する2050年カーボンニュートラルを目指す企業が官・学も併せて協働する場であるGXリーグに参画、またその傘下組織であるワーキンググループにも参加しております。
パフォーマンス
<1> SCOPE1、SCOPE2の排出状況
CO2排出量全体(双日グループ)
2019年度 | 2020年度 | |
CO2排出量 | 1,121,884t-CO2 | 912,090t-CO2 |
CO2排出量のSCOPE別内訳(双日グループ)
CO2排出量の内訳 |
2019年度 | 2020年度 |
---|---|---|
Scope1 (都市ガス等の燃料使用による直接排出) |
969,775t-CO2 | 705,807t-CO2 |
Scope2 (購入した電気・熱の使用に伴う間接排出) |
152,108t-CO2 | 206,283t-CO2 |
SCOPE1/2の削減目標の進捗状況
<2>再生エネルギーの使用状況(双日グループ)
※ 2019年度データには、2020年度以降に売却した会社も含めています。
19年度 | 20年度 | 増減 | 増減率 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
再エネ使用量 | 外部から購入 | 千kWh | 162.1 | 205.6 | 43.5 | +26.8 |
自家発電・使用 | 0 | 4.3 | 4.3 | - | ||
合計 | 162.1 | 209.9 | 47.7 | - |
<3> 一般炭権益の削減状況