ビジネスで、人の暮らしを良くする仕事 伊藤 響子/新卒/生活産業・アグリビジネス本部
2025年11月20日
2025年11月20日
小学生の頃、妹を亡くした経験から、「困っている人をもう見たくない」という強い思いを抱くようになりました。
安直な発想ではありますが、当時「困っている人が多そうな場所=途上国」と考え、
途上国で働くことに興味をもつようになりました。
大学では農学部に進学し、農業を起点にアジア・アフリカとの関わり方を模索しました。
大学院在籍中の留学先では、現地の農家とともに課題を設定し、農地で栽培実験を行うなど、実践的な経験を積ませていただきました。
現場に足を運び、対話を重ね、共に働く。そうした経験が、今の私のスタイルに繋がっています。
商社で働くきっかけになったのは、国連の活動現場を視察するプログラムで訪れたアフリカ・ルワンダでの景色です。
首都キガリの活気ある街並みを目の当たりにし、「ビジネスには国を成長させる力がある」と実感しました。
また、途上国・新興国の発展における公的機関とビジネスセクターのアプローチを比較する中で、
ビジネスの持つ「提供するモノやサービスの価値を、お金という対価で評価してもらえる」という仕組みに強く惹かれました。
こうした経験を通じて、ビジネスの力で人々の暮らしを良くしたいという思いが芽生え、
就職活動では総合商社という業種、そして双日という会社に出会い、入社を決意しました。
入社3年目、私は本部外トレーニー制度を利用し、ケニアにあるインスタントヌードルの製造会社に1年間出向。
現地では、「Nala」というブランドの袋麺を展開しており、今でもケニアのスーパーに並んでいます。
もしケニアに行かれる機会があれば、ぜひチェックしてみてください。
私は会社の立ち上げと同時に赴任しましたが、初期の混沌とした現場に、
バックグラウンドゼロの自分が飛び込んだことで、なかなか価値を発揮できず、もどかしい日々が続きました。
状況が目まぐるしく変化する中で、少しずつ自分にできることを探し、
最終的には販売状況の整理・分析や、フレーバー開発プロジェクトの推進などを担当させていただきました。
私ができた貢献は本当にわずかなものでしたが、ケニア人やインド人の同僚、顧客、そして何より日本人の上司に多くを教えていただきながら、
双日としても未開拓だったアフリカの消費財マーケットに挑戦することができました。
今振り返っても、毎日が発見の連続で、心が躍るような経験でした。
私にとっては出会うすべてが新しく、現地のダイナミズムに刺激を受けながら、
「今この環境で何をすれば出向先のためになるのか?」を日々考え、試行錯誤を重ねました。
トレーニー制度のため1年で帰任となりましたが、もし再び現地に行く機会をいただけるなら、
より長期的に現場に入り、人々の暮らしに向き合いながら“売れるもの”をつくっていきたいと考えています。
私が所属する生活産業・アグリビジネス本部は、肥料を中心に、畜産や製粉、飼料など多岐にわたる事業を展開しています。
本部の強みは、東南アジアに根ざしたアセットがあること。
特に肥料や畜産、小麦といった分野で、多くの人が力を合わせ長年にわたり現地に根を張ってきた事業会社が複数存在しており、
地域に密着したビジネスを築いてきました。
こうしたローカルアセットは、単なる拠点ではなく、次の事業展開の起点となる“戦略的な足場”でもあります。
現地のニーズを肌で感じながら、持続可能なビジネスを構築できるのは、こうした基盤があるからこそだと実感しています。
もちろん、強みだけでなく課題もあります。
現在は、そうした現状を改めて整理し、次の一手をどう打つかについて、さまざまなレイヤーで議論を重ねているところです。
学生時代にやっておいてよかったと感じているのは、“正解がない中で動く”という経験を積んだことです。
サークルの立ち上げや、留学先でのフィールドワークなど、どれも最初から明確な答えがあるわけではありませんでした。
「何をすればいいかわからない。でも、何かしなければならない。」
そんな状況に身を置くことで、まず一歩を踏み出す力が自然と身についたように思います。
一歩を踏み出すことには不安も伴いますが、動いてみることで初めて見えてくるものもあります。
そして、この経験は、常に変化と不確実性の中にある総合商社の仕事にも確実に活きています。
だからこそ、“正解はない”という前提のもと、状況に応じて判断し、前に進む力が求められると日々感じています。