挑戦がキャリアになる仕事。
小島孝典/経営企画部総合企画課
2025.11.28
大学では経済学を学び、その後、公共政策大学院に進学しました。というのも、大学在学中はまだ自分のやりたいことが明確に見えておらず、もう少し時間をかけて考えたいと思ったからです。ただ、大学院でも簡単には答えが見つからず、いろいろ模索しながら就職活動を始めました。そんな中で出会ったのが総合商社という業界でした。一つの会社の中に、多様な事業があり、働きながら自分の興味や方向性を見つけることができる。そして、やりたいことが見つかれば異動して新たな挑戦ができるかもしれない。そんな事業領域の広さに大きな可能性を感じました。
さまざまな業界の企業を訪問しましたが、仕事もプライベートも全力で楽しみ、人生そのものを充実させているように見えた総合商社の社員の方々は特に印象的で、「自分もこんなふうに働きたい」と強く思いました。選考を通じて一番自分を必要としてくれていると感じた双日に入社することを決めました。
入社して最初に考えたのは、「自分のキャリアをしっかり築くこと」でした。営業に出る前に専門性を磨きたいと思い、全社を俯瞰できる部署を希望しました。リスク管理企画部(当時)に配属され、カントリーリスクや貿易保険などを担当し、事業の表側からは見えにくい「事業の安全性を支える仕組み」を一から学びました。最初は正直、保険とは何か問題が起きたときに損失を補填するためのもの、というネガティブな印象を持っていました。しかし、実際に担当してみると、保険は新しい挑戦を支える「万が一のバックストップ」という前向きな面もあることに気づきました。保険があるからこそ安心して新しい市場に踏み出すことができる。そのことに気づいたとき、この仕事の見え方が大きく変わりました。保険約款を読み込み、保険会社と交渉を重ね、少しでも良い条件を引き出すことができれば、PL(損益計算書)にも直接プラスの影響を与えることができます。
実際にベネズエラの自動車案件では、営業部と何カ月もかけて数百件にものぼる書類を準備し、保険会社と交渉を重ねることで、最終的に保険金を受領することができました。そのとき、「職能の仕事でも会社を大きく前に進められる」と強く感じました。もちろん、失敗もありました。保険約款の読み込みが浅く、理解したつもりになって判断を誤り、上司から厳しく指導されたこともあります。しかし、その経験が、自分の気持ちを引き締めてくれました。どんなに慣れても、基本を疎かにしない「一事が万事」という姿勢は、今でも自分の仕事の土台になっています。
職能部門で5年半働いた頃、「もう一段階、成長したい」と思うようになりました。そこで自ら希望して営業へ異動し、再生可能エネルギーを手がける環境インフラ事業部(当時)に配属され、難易度の高いプロジェクトファイナンスの案件に関わることになりました。プロジェクトファイナンスでは、英語で数百ページに及ぶ契約書を幾つも読み込み、複雑な財務モデルを分析し、多くの関係者と何度も調整を重ねながら、資金調達のベースとなる事業モデルを作り上げます。一つひとつの作業は地道でも、それらを積み重ねることでプロジェクト全体が前に進む、そんな思いで日々の業務に取り組みました。
中でも、台湾での双日初の洋上風力発電プロジェクトは、入社以来最も困難な経験でした。工事の遅れやコストの膨張、事業パートナーの変更など、当初の事業モデルを大きく覆す問題が次々と発生し、正直、「もうダメかもしれない」と思う瞬間が何度もありました。それでも、職能部のサポートも得ながら、チームと共に一つひとつの課題を粘り強く乗り越えていきました。銀行とのリファイナンス交渉、建設会社とのEPC契約(※)の変更、投資スキームの再構築など、どれも簡単なことではありませんでしたが、「双日は逃げない会社だ」と証明したい、その想いで最後までやり切り、最終的には完工までたどり着くことができました。とても苦労しましたが、あの経験が今の自分の基盤をつくってくれたと感じています。
職能と営業、両方を経験したことで、私の中には「攻守のバランス」が生まれました。職能では「事業を守る力」を、営業では「事業を進める力」を学びました。職能と営業では意見が対立することもありますが、両方の視点を理解できるようになった今は、部署を超えた調整でも双方の立場を踏まえて動けるようになりました。
そして今年からは、経営企画部でコーポレートガバナンスの強化を通じて、双日の企業価値を高める業務を担っています。今度は経営と現場の間に立ち、両方の視点を理解しながら橋渡しをする。これまで、職能と営業、両方の経験を積んできたことを活かしつつ、一段高い視座から会社全体を見ることができる仕事だと感じています。
(※)Engineering/設計、Procurement/調達、Construction/建設の頭文字を取った言葉で、これら3つの工程を一貫して請け負う事業や契約形態)
私が双日でずっと大切にしているのは、「どこにいても、自分の軸をしっかりと持つこと」です。誰かに答えを求めるのではなく、自分で考え、自分で決め、その結果に責任を持つ。そうやって積み重ねていくことが、信頼につながり、自分自身を強くしてくれると考えています。双日は挑戦を応援してくれる会社ですが、同時に自律を求める会社でもあります。だからこそ、チャンスをつかむためには自分から動くことが大切です。そして、目の前の仕事を一つひとつ丁寧にやり切ることで、信頼が生まれ、次のステップが開けていく。私自身も、そうやってキャリアを築いてきました。
私のこれからの目標は、社員一人ひとりが「双日で働くことをより誇りに思える会社」にしていくことです。入社時からこの想いは変わりません。「自分の力で会社をより良くしたい」「双日の存在感をもっと高めたい」。その気持ちを胸に、どんな部署、どんな環境にいても「小島がいてよかった」と思ってもらえる存在でありたいと思っています。
驕らず、弛まず、真摯に、誠実に。一つひとつの仕事に向き合いながら、信頼と知見を積み重ねていく。その先には、また新しい挑戦が待っている。そう信じて、これからも一歩ずつ前に進んでいきます。


