現在値
円
円
(%)
齋木
中計2023策定当初に掲げられた数値目標は、全て達成しました。「PBR1倍超」については、難航したものの、中計期間終了間近の2024年3月、遂に実現することができました。純利益については、2022年度には初めて4桁億円台に乗せるとともに、2期連続で過去最高益を更新しました。市況や為替等の外部環境の影響はあったにせよ、数字にこだわって結果をしっかり出した点は高く評価しています。また、キャッシュ・フローの大幅な改善により成長投資を積極的に行えたことにも一定の評価をしています。他方、安定的な収益基盤が計画通りに構築できたかというと、いささか心もとない印象です。すなわち成長投資4,500億円の実施自体は取りあえずそれとして、リターンは十分か、という点です。明らかに物足りないと認識しています。案件によっては相応の時間がかかることは理解していますが、さらなる奮起を期待したいですね。なお、一部PMIが遅れていることがその背景にあるというのが執行から受けている説明ですが、当初の見込みに甘さがなかったかどうかも含めて、今後のためにもさらに精査していくことが重要です。
朱
中計2023で掲げた業績目標は全て達成したことに加えて、非資源分野など市況の影響が少ない分野の収益貢献の拡大や、事業投資におけるダイナミズムが一層高まった点、積極的な成長投資と同時に株主に対する還元拡大を図ってきた点など、質・量ともに優れた結果を残すことができたと評価しています。一方で、当社の株価がまだ安定してPBR1倍を上回る水準に至っていない点については、謙虚な振り返りが必要です。おそらく中計2023期間中に、商社セクターに対する業績要請が一段高いものに至ったのではないかと推測しています。平均して1桁後半とされる日本の上場企業の資本コストに対して、当社がPBR1倍以上を維持し続けるためには、2桁から2桁半ばの資本利益率を安定的に達成する必要があり、また、すでに大手商社の資本利益率がその水準を超えている中で当社が投資家から選ばれるためには、資本利益率の水準だけでなく、他社と比べて当社ならではの訴求点が求められていると思います。中計2023の結果に満足することなく、一層高い目標に対峙する必要があります。
亀岡
お二人と同様に、中計2023で掲げた全ての数値目標について達成できたことは良かったと思います。株主の皆様への還元という意味では3期連続増配ができました。課題は本部によって収益規模に差があることです。当社では営業部門は7本部体制ですが、全社当期純利益の40%以上を金属・資源・リサイクル本部で上げています。
中計2026は、「次なるステージ、2030年当期純利益2,000億円」への足固めを行うと位置づけています。収益規模を現在の倍にするには、各本部が少なくとも本部で合計200億円以上の利益を上げるような体制にしていくことが必須です。これまで当社では、「点から線、面に」を掲げ、全社を挙げて既存のビジネスを広げていく活動を続けてきました。中計2026ではさらに進化させ「塊へ」としています。いかに収益に結びつく塊を数多く創り出し、それぞれを大きく成長させられるかが中計2026の命題です。
齋木
中計2026は、2030年の目指す姿として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を引き続き掲げつつ、2030年までには当期純利益2,000億円及びROE15%超の次なるステージに入るとの意気込みを示しています。この実現のためには、何といっても、強みある事業群を形成して、安定的・継続的に高い収益を上げられる基盤を確保しなくてはなりません。まさに先程申し上げた、中計2023において物足りないと指摘した点に関わってきますが、事業投資からのリターンの質・量をいかに高めていけるかが喫緊の課題と認識しています。この時大切なことは、競争優位性を活かして既存事業を着実に拡張・進展させるとともに、これまでの実績を踏まえた上で新たな事業領域や新たな国・地域にも果敢に挑戦していく、そして不断に資産入替を検討する、この3点だと考えています。「点から線へ、線から面へ、そして塊へ」のキーワードで、議論を重ねてきていますが、この方針が実を結ぶかどうか注目しています。「双日らしい成長ストーリー」とは、実績に裏打ちされた夢にほかなりません。
朱
中計2026において、これまで以上の優れた業績を達成するためには、他商社とは一線を画したドミナントなニッチ領域を構築し、増やしていく必要があるのではないかと思います。お二人が指摘されている通り、当社がこれまで取り組んできた、「点から線、線から面」の事業投資が安定した収益につながるかどうかが新たな中計期間のカギであり、国内での水産加工チェーンやアジアにおける農業・食料・卸・リテール領域での利益貢献に期待しています。事業投資が優れたリターンにつながるかどうかは、投資の入り口における適切な価値評価に加え、投資後の対象先に対する業績改善と、必要に応じて投資価値がピークを過ぎる前に回収できるかにもかかっており、これまで積極的に行ってきた投資先の業績改善を実現し得る優れた経営力の重要性が一層増すことになります。投資先のバリューチェーン全体を俯瞰してPDCAサイクルを回し、変えるべきことを迅速に変えることができる経営者層の厚みが、各営業本部において増してくることが成功の条件であると考えています。
亀岡
双日は、前身の日商岩井、ニチメンにおいて厳しい経営危機に直面し統合を経て、弱体化したバランスシートを、着実に構造改革を重ね収益を上げ続けることによって改善し、当期純利益1,000億円を上げる企業に成長しました。この過程で社員が一丸となって意識改革を行い、規律ある財務マネジメントを徹底することにより、競争相手に比べて多くの制約がある中でもトレーディングにおいて収益率を改善し、また新たな収益を生む事業を立ち上げていくことができました。まさしくこのどん底から再生するプロセスを経験した社員こそが双日の強みだと思います。
また、大局的な課題としては、当社が他の総合商社に比べ規模が小さいことを活かして、全社的に部門の垣根を越えたビジネスを数多く組成し、育てていけるかだと思います。DXを最大限活用し、全社に散らばる情報や機能を最大限活用することにより、双日らしい事業展開が可能になると思います。
朱
商機を見出す目利き力、共創関係を創り出すネットワーク、利益最大化を実現するための構想力、事業運営のマネジメント能力などが当社の培ってきた強みです。一方でこれらの強みは当社にだけ固有のものではなく、また、時価総額が10兆円を超える大手商社と比べると、投資効率やリスク許容度に関して当社との間に大きな差があることも事実です。しかし、再編が進む国内中堅・中小企業が中心のいわゆるミドルマーケットでは、企業規模が大きい大手商社にとっては必ずしも優先対象にならない一方で、当社にとって魅力的な商機が十分にあるのではないかと考えています。
また、優れた企業間での競争環境において依拠すべき差別化の源泉は、結局のところそこで働く人の仕事ぶりとそれが総合した企業文化の力に尽きるといえるのではないでしょうか。いわゆる能力の高さや優秀さにとどまらず、最高の結果をもたらすことに決して妥協しない目線の高さと、いかなる時も顧客や同僚からの信頼を裏切らない誠実さが会社全体で共有されていることが、持続的な企業価値向上につながるものと考えています。
齋木
亀岡さんや朱さんがそれぞれ指摘された点に同感です。双日自身他の総合商社と比較して人員予算等の面において規模が小さいという特徴を捉えて、機動的かつハンズオンで業務を遂行するのが強みと標榜していますが、もっともっと徹底してもらいたいですね。言葉を換えれば、本当に機動的に戦略を立案実施できているか、投資先においてしっかりハンズオン経営ができているか等について、改めて検証するようお願いしたいですね。
人材戦略についても一言お話しします。当社の企業価値向上のためには、「社会が得る価値」と「双日が得る価値」、加えて「社員の一人ひとりが得る価値」を最大化することが求められます。新人事制度が始まりましたが、一人ひとりの社員が新制度を十分に理解し納得感を持って働くこと、そして当社が働きがいのある会社であり続けることが極めて重要である点を強調したいと思います。
齋木
社長の選任は、人事異動や育成を経て最終的な決定に至る長期にわたるプロセスです。指名委員会において、交替の時期についてあらかじめ決めてはいませんでしたが、長い期間をかけて候補者を複数上げ議論を重ねました。その過程で、いろいろな候補者について、幅広い経験とより重い責任を負わせるべく、可能な範囲で人事異動等も行ったところです。
また、毎年夏にはサマーセッションを実施していますが、社外取締役も参加して、各人の能力・人物の見極めを試みました。本部長ブリーフィングの機会なども活用して、評価を高度化するようにしました。そういう意味でいわば定点観測は行えていたと認識しています。併せて、候補者とは非公式な懇談の場も設け、人となりを観察するなど検討を深化させました。
最終的に、中計2023終了時、すなわち2024年4月に社長交替を行うことを決定し、これに合わせ、最終候補者を絞り込み、指名委員会メンバーによる面談を複数回にわたって行いました。2023年10月には結論を得、この結果を取締役会に報告し、承認されたということになります。
社長に求められる要件としては、高い倫理観、先見力、決断力、実行力、変革力、ストレス耐性と健康力などを念頭に、議論を進めました。当然、リーダーシップや人間的な魅力や個性は備わっているという前提ですね。
植村新社長には、内外の環境が極めて大きくまた急速に変化する中、当社が次の成長の段階に進んでいくための舵取りをしっかり行っていただくことを期待しています。植村さんは先読み力と変革力に長けている方だと確信しています。組織変革力はもちろん大切ですが、それ以上に自己変革力が大切だと考えています。是非、新社長には、双日を変えていくとともに、ご自身もまた日々変革・成長を遂げていっていただきたいと考えています。
亀岡
就任から1年が経ち、改めて双日に抱いているのは、着実にガバナンス体制を整えられてきているという印象です。従前から「取締役会実効性評価」の結果に真摯に向き合い、毎年着実に改善を積み重ねてきた成果だと感じます。実際2023年度も実効性評価の結果を受けて、取締役会事務局との個別面談が設定され、さらなる改善点について議論をしました。
社外取締役が経営に対してチェック機能を発揮するのに最も大切なことは、経営の透明性だと思います。当社では社外役員に対して、投融資審議会や執行役員が泊まり込みで議論するサマーセッションへのオブザーバー参加をはじめ、本部長が自部門の取り組みについて詳しく説明する本部報告、社長と社外取締役との情報共有セッション、取締役会前の事前説明会等、経営の重要課題について詳しく理解する機会が設けられており、取締役会が経営のモニタリング機能を果たすための仕組みづくりができていると感じました。
昨年1年間社外取締役として取締役会に参加してきましたが、事前説明会を含め活発に議論が行われ、取締役会に求められる実効性は高いと思います。さらに、2024年度から監査等委員会設置会社へと移行しました。これにより、従前以上に重要な業務執行の決定を業務執行取締役に委任することができ、迅速で機動的な意思決定が可能になります。現在世界で起こっているさまざまな事象を見ると、急速に変化しており、世界各地で事業展開する当社にとって有効な制度変更だと考えます。一方、当社にとって移行初年度であり、取締役会の中でしっかりとコミュニケーションをとりながら、実効性を上げていく仕組みづくりを続けることが必要だと思います。
朱
監査等委員会設置会社への移行で特に意識した点は、監査等委員が取締役になることで取締役会の規模が大きくなり、それによって取締役会における議論が形式的で通り一遍のものにならないようにするためにはどうすればいいのかという点でした。取締役数増加の回避のため、監査等委員会規模を最小化することで監査機能を弱体化させるわけにもいかない中で、社内監査等委員を常勤の委員長1名に限定し、社外委員を3名にすることで監査等委員会における客観的な観点を担保する一方、監査等委員会と連携・支援するシニア・オーディターという役割を導入することで監査機能の充実を図りました。取締役会の規模が大きくなりがちな監査等委員会の課題に対して、当社らしくクリエイティブに対応できたのではないかと評価しています。
齋木
監査等委員会設置会社へ移行した目的は、取締役会の監督機能を強化するとともに経営判断を迅速化することにあります。同時に、私個人としては、双日は常に変わっていく会社であるという基本姿勢を改めて社内外に明らかにするという意義も少なからずあるように感じています。現時点において一見問題がないので現状維持でよしとするのではなく、常にさらなる良いものを目指して変わり続けていく、ということですね。また、監査等委員会設置会社は、一般に、海外企業や投資家からの理解を得やすいことがメリットといわれますが、今回の変更が海外からの投資の呼び込みにつながれば、結構なことですね。なお、監査等委員会の職務を補助するポストを新設するなど、体制面の工夫もなされています。実効性の担保・向上のためには、関係部局の連携強化が鍵を握ると考えていますので、現場目線を持って私もしっかり関わっていくつもりです。
朱
加えて今般、役員報酬制度の一部改訂が行われました。ESGの各主要項目の中でも脱炭素とヒトが当社の企業価値向上に与える影響が大きいとの考えから、この2項目の配点を高め、脱炭素ではScopeごとに設定された目標の達成状況、ヒトについても全社員のエンゲージメントとDE&I促進に関する成果等にリンクさせ、具体性と客観性が担保された仕組みであると評価しています。当社はガバナンスに関する形式上の要請の多くをすでに満たしている中で、ESGの評価項目からは削除しましたが、ガバナンス改善が引き続き重要であるとの認識は何ら変わらず、それが究極的には株価に示されるものとして考え、役員報酬のKPIにおいて株主総利回り(TSR)のウェイトを高めることで対応しました。また、今般の役員報酬制度改定にあたっては、経営層と株主との間の利害の一貫したアラインメントを一層高めることとし、基本報酬のウェイトを下げる一方で、中長期の業績連動部分のウェイトを高めたこと、さらに中長期の業績指標として市況要因に影響されがちな利益の絶対水準のウェイトを下げる一方で、TSRのウェイトを高めたことが主要な改正点になります。ガバナンス体制と同じように、役員報酬制度自体もまだ過渡期にあり、PDCAを回しながら引き続き改善に取り組まなければならないものと考えています。
亀岡
最後に、私たち社外取締役は株主の皆様に代わって経営をチェックし、株主や投資家の皆様との対話を通して独立社外取締役の立場で会社のことをよりよく知っていただく役割があります。加えて、当社では日ごろから活発にIR活動を行っており、経営トップの皆さんが国内外の株主や投資家の皆様と数多くの対話を行っています。現在行っている活動に加え、株主、投資家の皆様からの情報開示のあり方へのご要望について真摯に対応していくことが大切だと思います。
※所属組織、役職名等は2024年7月時点です
当ウェブサイトは、当社に関する情報の提供を目的とするものであり、当社株式の購入や売却を勧誘するものではありません。
投資に関する最終決定は利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。また、当ウェブサイトに掲載された予測および将来の見通しに関する記述等は、資料作成時点での入手可能な情報、一定の前提や予期に基づくものです。よって、実際の業績、結果、パフォーマンス等は、経済動向、市場価格の状況、為替の変動等、様々なリスクや不確定要素により大きく異なる結果となる可能性がありますが、当社グループは、当ウェブサイトの情報の利用により生じたいかなる損害に関し、一切責任を負うものではありません。
また、当社ウェブサイトの情報の掲載にあたっては細心の注意を払っておりますが、掲載した情報の誤りや、第三者によるデータの改ざん、データダウンロード等によって生じた損害に関し、当社は一切責任を負うものではありませんのでご了承ください。
なお、当ウェブサイトの内容は予告なく変更、掲載を中止することがあります。