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「2倍成長」という目標を掲げ、
事業・組織の両面で変革を加速させる双日。
監査等委員会設置会社への移行から2年が経過し、経営のスピードや意思決定のあり方にも確かな変化が見られています。
本対談では、社外取締役の亀岡氏、武田氏に、変革の進捗の捉え方や、ガバナンス改革の実効性、事業投資を通じた非連続な成長の実現に向けた論点について伺いました。
亀岡
「2倍成長」は、非常にインパクトの強いメッセージだと受け止めています。現状の延長線上の成長ではなく、既存のやり方を変え、新たな取り組みを行わなければ達成できない目標であり、社員に対してマインドセットの変革を促す強力なメッセージになっていると感じています。一方で、こうした意識が全社的にどこまで定着しているかという点では、道半ばだと感じています。「2倍成長」というメッセージ自体は浸透してきているものの、それを自分の持ち場でどう実現するのかという「自分ごと化」のレベルでは、まだ十分ではないように感じます。
武田
私は就任から一年程度ですが、これまでの延長ではなく、非連続な成長を目指す経営陣の強い意志は伝わってきますし、経営のスピードを上げようとしている動きも感じています。「赤字事業の整理」や「資源から非資源へのシフト」「トレードに加えて事業投資による収益基盤の構築」など、変革は着実に進んでいます。一方、亀岡さんのご指摘のとおり、現場への浸透には課題があります。グループ連結経営という観点では、職能と営業、あるいは本社と事業会社の間に依然として距離があり、グループとしての一体感は十分とは言えません。現場では目の前の課題への対応に追われ、「2倍成長」が日常的に語られるまでには至っていない印象です。また、DXや多様性といったテーマについても、外部からの評価と現場の実態との間にギャップを感じる場面があります。DX銘柄に選定されていながら、現場でデジタルの取り組みが積極的に語られていないケースや、なでしこ銘柄に選ばれながらも、グループ会社では経営層・現場ともに男性かつ日本人が中心であるケースも見られます。形式としての変化は進んでいるものの、それが実態として十分に根づいているとは言えないというのが率直な認識です。
亀岡
これまで双日は、バランスシートの改善や収益性の向上に向けて、本社が方向性を示し、それに基づいて各拠点や事業会社が動く、いわば「中央集権的な運営」で成果を上げてきました。しかし、「2倍成長」という非連続な成長を実現するためには、そのやり方のままでは限界があります。「2倍成長」は本社が掲げているスローガンではなく、株主に対するコミットメントであり、企業価値向上に向けて全員で背負うべき目標である、と社員一人ひとりが捉えることができるようにならなければ達成は難しいでしょう。それぞれの現場で、「私たちの2倍成長はこうなんだ」と考えて実行してもらわなければなりません。
他の総合商社と比べて規模が小さいことも、見方を変えれば、2倍成長に向けて活かすべき強みになりうると考えています。小さいからこそ、本部の縦割りを越えて一つの塊として動きやすい面もあります。本部同士、あるいは本部と海外拠点が連携して案件をつくる動きも出てきており、こうした動きをさらに増やしていくことが重要です。
亀岡
あるべき姿についてはまだ模索している段階ではありますが、成果も着実に出ています。移行の目的は大きく2つありました。1つ目は決裁権限を経営会議に委任することで経営のスピードを上げること、2つ目は取締役会に上がる案件数を絞り、中期経営計画や人事、内部統制、DX、サステナビリティといった重要事項の議論を充実させることです。実際、取締役会に上がる案件数は、移行前後で約4割減少し、取締役会決議件数も約5割減少しました。これは、その手前の経営会議で迅速な意思決定がなされていること、また取締役会においても、案件数の減少によって生まれた時間を重要テーマの審議に充てられていることの表れであり、移行の目的は相当程度達成できているのではと考えています。
武田
決裁権限の委任は、単にスピードを上げるというだけでなく、アカウンタビリティ(説明責任)を明確にした点にも大きな意義があると考えています。執行側が責任を持って判断する領域と、取締役会で議論すべき重要案件を切り分けたことで、誰が何に責任を持つのかが明確になりました。
特に大型投資や非連続な投資、ポートフォリオの入れ替えといった重要な意思決定については、取締役会としても深く関与すべきであり、その基準が整理されたことは、ガバナンスの観点から高く評価しています。
亀岡
当初は、決裁権限を経営会議に委ねることで、執行側だけで意思決定が進んでしまうのではないかという懸念もありました。しかし、実際には経営会議の議論内容は社外取締役にも共有されており、投融資審議会にもオブザーバーとして参加することで、意思決定のプロセスを把握できています。また、経営会議の決裁権限内の案件であっても、執行側が重要と判断したものは取締役会に報告されており、単発の案件にとどまらず、将来的な広がりが見込まれるテーマは早い段階で共有されています。こうした仕組みによって、スピードを確保しながらも、リスクを適切にコントロールすることができていると感じています。監査等委員についても、独立性を重視するあまりに情報が分断されてしまうと、実効性のある議論ができなくなってしまいます。双日では、監査等委員であるか否かにかかわらず、社外取締役の情報格差が生じないよう、会議体を工夫するなどの取り組みも進めています。必要な情報を共有した上で、それぞれが異なる視点から意見を出すことで、取締役会の意思決定の質を高めていく。そのような状態に近づきつつあると感じています。
武田
監査等委員という立場から少し補足させていただくと、今お話のあった情報共有のあり方については、必ずしも全員が均一な情報を有している必要はないと考えています。なぜなら、社外取締役それぞれが異なる経験に基づき、独自の視点で情報を収集し、解釈することが、多角的な議論につながる側面もあるからです。
ただし、経営に影響を与える重要な情報については、亀岡さんのおっしゃるとおり、適切に共有され、同じ目線で議論できる状態を確保することが前提になります。必要な情報基盤を整えつつ、多様な視点を活かす形で議論を深めていくことが重要だと考えています。
武田
私が投資を判断する際に重視しているのは、「戦略整合性」「経済合理性」「PMI」の3つです。現状、戦略整合性や経済合理性については一定程度の検討が進んでいますが、最大の課題はPMIにあると感じています。投資後に想定どおりに進まなかった場合に、どのように立て直すのか、あるいは成長に向けてどう手を打っていくのかという視点が十分とは言えず、結果として目の前の課題対応に終始するケースも見受けられます。投資の本来の目的は成長であり、「どうやって事業を成長させ、企業価値向上につなげるのか」という議論を、投資判断の前後を通じて一貫して行っていく必要があります。
亀岡
例えば、Capella Capital Pty Ltdの案件では、その少し前に同じような業界の事業投資を検討していたことが奏功しました。類似ビジネスの検討を重ねていた経験から、取締役会として当該領域への理解が蓄積され、「双日としてこの領域にどう取り組むか」という共通認識を持った上で、スムーズな投資判断ができました。
その際にも重視したのはPMIと人材です。単に投資による収益を得るだけでなく、現地の専門人材とともに事業を深め、双日としての知見を獲得し、それを次の成長につなげていくことが重要です。エキスパート集団の中に双日の人材を派遣し、実地での経験を通じて次世代を担う人材を育成していくことが重要ではないでしょうか。
武田
投資に「絶対」はありません。だからこそ、期待どおりにいかなかった際に、どうやって迅速にピボット(方針転換)するか、またそれをタイムリーに高速回転で実行していく必要もあると思います。市場の関心、そして私たち社外取締役の目線も、すでに2027年3月期以降の成長に向かっています。次期中期経営計画に向けて、取締役会でより深く議論する必要があるのは、成長戦略です。個別の投資案件の積み上げにとどまらず、全体としてどのような成長ストーリーを描き、どのように実現していくのか。そのストーリーが形式的なものではなく、投資後の成長実現まで見据えた戦略になっているのかを議論させていただきたいと思っています。
亀岡
その成長ストーリーを実現していく上で、重要なのはやはり「人」です。双日は過去に、厳しい財務状況の中で、思うように投資ができない時期がありました。それでも、歯を食いしばってお客様との関係性をつくりながら、ビジネスをつないできた経験があります。その経験から得た粘り強さや現場力は、双日にとって大きな財産です。これを若い世代にしっかり継承していくことが重要です。
同時に、社員が自らの成長を実感し、「双日で働くことは素晴らしい」と思える会社であることも欠かせません。能力の高い個人が集まり、働き甲斐を持ってチームとして力を発揮できる状態になれば、2倍成長は十分に実現可能だと思います。逆に、それがなければ、口で2倍成長と言っても社員は動きません。こうした人材と組織の力を高めていくことが、非連続な成長の実現には不可欠だと考えています。
武田
企業価値向上に向けては、ROEに表れる稼ぐ力と資本コストの双方を意識した経営を徹底していく必要があります。リスクマネジメントや内部統制を形式的な仕組みにとどめず、投資判断や投資後の成長実現に向けた議論に実質的に活かしてこそ、資本コストの低減にもつながると考えています。一方で、より重要なのは成長に向けて「どこで稼ぐのか」を明確にすることです。個別案件の良し悪しだけでなく、ポートフォリオ全体としてどの領域で収益を伸ばし、資本効率を高めていくのか。こういった点を議論することが次のステージでは一段と重要になります。社外取締役としても、全体感をもって経営戦略の議論に関与し、成長に向けた意思決定の質を高めていきたいと考えています。
亀岡
双日には大きなポテンシャルがあります。「2倍成長」は決して不可能な目標ではありません。その非連続な成長の実現を後押しし、企業価値向上につなげていけるよう、引き続き取締役会の実効性をより高めていくための取り組みを積み重ねていきます。
※所属組織、役職名等は2026年7月時点です
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