脱炭素社会実現に向けた双日グループの対応方針

~2050年カーボンニュートラルに向けた挑戦~

双日は、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」に掲げる「脱炭素社会実現への貢献」への責務を果たすべく、双日グループの対応方針と目標を策定しました。

2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ・チャレンジ」ページは こちら

「TCFDへの対応」ページは こちら

双日グループの「脱炭素」対応方針・目標

双日は各種事業を展開する上で、脱炭素社会の実現には、自社のCO2排出量(Scope1、 Scope2)の削減を責務と考えており、加えてサプライチェーン全体のCO2排出量(Scope3)までを含めた取り組みも必要であると考えています。

サプライチェーン上でのCO2排出量(Scope3)の多い箇所は、将来的に排出削減ストレスがかかる可能性が高い「リスク」と捉えておりますが、同時に削減貢献を実現する新たな事業創出の「機会」であるとも認識して取り組みを進めています。双日は、この削減貢献したCO2量をScope4と定義して積み上げていきます。

具体的には、将来的な技術動向や、リスクと機会の精査を踏まえて、既存事業と、新たに取り組む新規事業に分け、対応方針・目標を設定しました。

既存事業は国際的なCO2の排出定義(Scope)別に「削減目標」を策定、また、新規事業の取り組みにあたっては、脱炭素社会に向けた移行をグループの成長の「機会」と捉え、各種事業を積極的に推進します。

<既存事業>

既存事業SCOPE1とSCOPE2の目標

SCOPE1とは、自社が石炭やガス等を直接燃焼して発生するCO2であり、SCOPE2とは、主に自社が使用する電力が発電される際に発生するCO2を指します。当社は、各種事業を展開する上で、Scope 1、 Scope 2の削減を責務と考え、2019年度時点の既存事業に関して、2030年までに6割削減(内、Scope 2はネットゼロに)することを目標としています。それ以降の事業についても、2050年までのネットゼロ達成を目指しています。

SCOPE1+2 2030年までに6割削減、2050年までにネットゼロ *1
(内、SCOPE2は、2030年までにネットゼロ *2
石炭火力発電 現在保有無し。今後も保有しない

*1、*2 2019年度を基準年として、単体および連結子会社が対象。
(2021年3月の目標発表時は基準年を2018年度としていたが、2019年度に買収した環境負荷の高い海外製紙事業会社を「既存事業」に含めるべく、基準年を2019年度とした。)
証書などによるオフセットを含む。取り組みを加速するために、インターナルカーボンプライスの導入を検討しています。

SCOPE3(資源権益事業)の目標

SCOPE3とは、主にサプライチェーン上の間接的なCO2排出を指します。商社は川上から川下まで広範なサプライチェーンを有しますが、現在、双日が保有する資源権益においては、全て燃焼させた場合のCO2は約3億トンです。これは、前述の双日グループが直接使用するエネルギーからのCO2排出量(SCOPE1+2)の1百万トン前後を大きく上回り、資源権益への対応はより社会的な責任が重いと考えています。

このため、以下の方針、目標を掲げます。尚、原料炭に関するビジネスにおいては、CO2回収や新製鉄法などの技術革新に伴う新たな事業機会にも、積極的に取り組みます。

資源権益事業の目標

一般炭権益 2025年までに半分以下、2030年までにゼロ *3
石油権益 2030年までにゼロ
原料炭権益 2050年までにゼロ

*3 2018年を基準とした権益資産の簿価ベース。

<新規事業>

新規事業においても2050年までのネットゼロを目指します。

尚、上記目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって、柔軟に見直しを行います。

双日が脱炭素への貢献を責務と考える理由、考え方

双日は、企業理念に掲げる「新たな価値と豊かな未来を創造」に向け、双日が得る価値、社会が得る価値の“2つの価値”の最大化を目指しています。

双日は、これまでも、事業を通じた「社会課題の解決」を「自社の強み」に変え、事業基盤を拡充、成長させてきました。エネルギーの供給・確保という社会課題に対しては、国内外で多くの資源ビジネスをおこない、解決の一端を担うとともに、それを自社の収益に繋げてきています。

一方で、近年、新たな課題として、地球温暖化への注目が集まっており、世界的にカーボンニュートラルに向けた潮流が加速する中、エネルギーは、単純な使用・供給から、よりグリーンな使用・供給への移行が求められています。

このため、双日は、自社グループの「既存事業」からのCO2排出削減を加速させ、来たる脱炭素社会への耐性を高めるとともに、「新規事業」では、この社会移行を新たな「機会」と捉え、エネルギー分野はもとより、幅広いビジネス構築をおこなっていきます。これにより、脱炭素社会の実現という「社会が得る価値」の構築までの過程で、様々な収益機会を「双日が得る価値」として増やしていきます。

2021年より開始した中期経営計画2023においては、上記方針も含め、各種施策を推進していくとともに、Scope3や削減貢献量(Scope4)の計測と把握を行っていきます。

加えて、2023年12月26日公表「機構改革および一般人事の件」で公表の通り、新エネルギー・脱炭素領域における専門組織として「EX 事業戦略室」を新設し、 各営業本部との連携のうえ、プロジェクト・事業の創出、拡大を加速していきます。

方針策定までの経緯

双日は、サステナビリティ推進のプロセスの中で外部の動向や視点の把握に努め、各種方針や事業活動に反映しています。その上で、適切な開示や対話を通じ、ステークホルダーの皆様から新たなご意見をいただくといったサイクルを実践しています。
「脱炭素対応方針」の策定においては、ステークホルダーダイアログにおける社外有識者の皆様との意見交換や、将来的な外部動向の見立てを参照した上で、社内議論を重ねて参りました。

関連ページはこちら

【双日の脱炭素ロードマップ】
年代ごとに技術動向や世の中の動きを見立て、リスクと機会別に双日としての考え方や対応方針を整理しています。今後も外部動向を注視し、見立てと双日としての考え方を更新して参ります。

SCOPE1/2の削減策

<既存事業>

  • 先ずは再生エネルギーという代替手段がはっきりしている電気( SCOPE2 )の切替を優先
  • その上で、脱炭素の観点も含め、陳腐化が懸念される事業はEXITも含めて検討していく。
  • SCOPE1は、燃焼効率の悪い石炭や石油焚きの設備について、更新の時期を捉えて優先的に切替を検討。
    尚、ガス焚き設備の場合、水素やアンモニアなどの代替手段の経済合理性がなく、技術革新が必要なため、もう少し長い目で見ている。
  • 残存したCO2 は証書でオフセット。ただし、その割合を極力少なくする方針。

<新規事業>

  • 既存事業と同じく2050 年ネットゼロ目標は変わらないが、中間目標である2030 年は、個別にあるべきマイルストーンを検討していく。
    方針策定までの経緯

上記を円滑に推進すべく、各事業に対する支援制度を検討中。
本中計では、この支援制度を含む「人や組織変革の非財務投資」として、300 億円を予算化。

実績

Scope1、Scope2削減の進捗

  • 2019年度データには、2020年度以降に売却した会社も含めています。

<双日グループの電力消費量>

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
総電力使用量 136,636 千kWh 220,930 千kWh 263,805 千kWh 266,035 千kWh 295,770 ★千kWh
-うち、再生可能エネルギー使用量 162 千kWh 210 千kWh 760 千kWh 3,015 千kWh
-うち、自社で発電した再生可能エネルギー使用量 0 千kWh 4 千kWh 70 千kWh 1,582 千kWh
-うち、購入した再生可能エネルギー使用量 162 千kWh 206 千kWh 680 千kWh 1,433 千kWh
-うち、非化石証書の権利行使量 0 千kWh 0 千kWh 10 千kWh 0 千kWh

SCOPE3/サプライチェーン上のCO2排出

考え方
  • SCOPE3はサプライチェーン上の年間CO2排出量 (フロー)
  • 自社の排出削減に加えて、サプライチェーン全体までを含めた取組みも必要
  • サプライチェーン上でCO2排出量の多い箇所を将来的に削減圧力ストレスがかかる可能性が高いことからリスクとして認識
方 針
  • 一般炭は25年迄に半減。30年迄にゼロ。
  • 原料炭は50年迄にゼロ。
対 応
  • 世の中のCO2が多い業界において当社のサプライチェーン全体の定性分析を実施
  • CO2排出量が多く、当社への収益貢献も大きい一般炭と石油ガスに関連する発電セクターを優位なセクターと認識
  • 発電セクターの一般炭と石油ガスに関するScope3の定量化を実施
  • 双日と世の中への影響が大きい権益資産(ストック)の削減方針を策定

実績

資源権益事業の削減状況

サプライチェーン上のCO2排出量

一般炭

スコープ 排出量
(t-CO2)
算定方法他
Scope1,2排出量 - 連結対象権益を保有する子会社におけるScope1、2排出量を計上しています。
カテゴリー(※)
Scope3
排出量
1 購入した製品・サービス 1,293,426 トレード(持分権益分を含む)で取り扱う一般炭生産量に、排出原単位を乗じて算出しています。
2 資本財 - -
3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 - -
4 輸送、配送(上流) 182,569 トレード(持分権益分を含む)で取り扱う一般炭販売量に、輸送距離と排出原単位を乗じて、または、燃料使用量に排出原単位を乗じて算出しています。なお、販売先がトレーダーであり、トレーダー以降の販売先を当社で把握できない場合は、トレーダー迄の輸送について算定しています。
5 事業から出る廃棄物 - -
6 出張 - -
7 雇用者の通勤 - -
8 リース資産(上流) - 事業特性上の理由等から該当なし
9 輸送、配送(下流) - -
10 販売した製品の加工 - 事業特性上の理由等から該当なし
11 販売した製品の使用 19,433,869 トレード(持分権益分を含む)での販売重量に排出原単位を乗じて算出しています。
12 販売した製品の廃棄 - 事業特性上の理由等から該当なし
13 リース資産(下流) - 事業特性上の理由等から該当なし
14 フランチャイズ - 事業特性上の理由等から該当なし
15 投資 350,617 持分権益を保有する炭鉱におけるScope1、2排出量として算出しています。
小計 21,260,481
サプライチェーン総合計 21,260,481★
  • GHGプロトコルが定めるサプライチェーン分類

石油・ガス

スコープ 排出量
(t-CO2)
算定方法他
Scope1,2排出量 193,886 連結対象発電所におけるScope1、2排出量を計上しています。
カテゴリー(※)
Scope3
排出量
1 購入した製品・サービス - 事業特性上の理由等から該当なし
2 資本財 - -
3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動 28,232 連結対象発電所で使用した燃料及び電力量に、排出原単位を乗じて算出しています。
4 輸送、配送(上流) - 事業特性上の理由等から該当なし
5 事業から出る廃棄物 - -
6 出張 - -
7 雇用者の通勤 - -
8 リース資産(上流) - 事業特性上の理由等から該当なし
9 輸送、配送(下流) - 事業特性上の理由等から該当なし
10 販売した製品の加工 - 事業特性上の理由等から該当なし
11 販売した製品の使用 - 事業特性上の理由等から該当なし
12 販売した製品の廃棄 - 事業特性上の理由等から該当なし
13 リース資産(下流) - 事業特性上の理由等から該当なし
14 フランチャイズ - 事業特性上の理由等から該当なし
15 投資 2,278,968 持分発電所で使用した燃料及び電力量に排出原単位を乗じたもの、及び持分権益の採掘量に排出原単位を乗じたものの合計です。
小計 2,307,199
サプライチェーン総合計 2,501,086★
  • GHGプロトコルが定めるサプライチェーン分類
  • (※)<権益削減の考え方>

    2018年度を基準年として、1.5℃シナリオに記載の石炭の海上貿易量の減少速度を上回る速度で、双日の一般炭と原料炭の権益合計を削減して参ります。

SCOPE4/削減貢献量

考え方
  • 事業が生み出す製品・サービスによる「世の中のCO2削減量」をScope4(削減貢献量)と呼んでいる。 
  • 双日は、脱炭素社会への移行をCO2回収やCO2削減に向けた技術革新が伴う「機会」と捉えScope4を増やしていく。
対 応
  • サプライチェーン分析にて特定した、「CO2削減の圧力」や「代替される脅威」に晒されやすい箇所において、削減貢献による新たな事業創出の「機会」として定性分析を実施
  • 定量分析は、Scope3と同様に、当社にとって有意と考えられる発電セクターから実施
  • <SCOPE4(削減貢献量)の積み上げ>

    例えば、再生可能エネルギー事業の場合、その国の電力のCO2排出量平均(原単位=CO2量÷kwh) と、当社再生可能エネルギー事業のCO2排出量(=ゼロ)の差が削減貢献量となります。

計算式=(その国の1kwh当たりCO2排出量 - 双日事業の1kwh当たりCO2排出量) x 双日事業の発電量

  • 現在ISOで標準化中であり一例です。

<発電セクターのScope4>

削減貢献項目 Scope4
(t-CO2)
1 高効率ガス火力発電 86
2 再エネ発電※ 26
  • 再エネ発電は太陽光発電を対象とする

発電事業の考え方

【以下の考え方を基に、CO2排出効率を1.5℃シナリオ以下にコントロールしていきます】

考え方
  • 再エネ発電は不安定であり、脱炭素へのトランジション期間を支える火力発電は必要。
  • 双日は、特にアジアの石炭・軽油発電が多い地域のガス火力発電事業に着目。
  • 双日は、グループの火力発電のCO2排出効率(=CO2/kWh)を、1.5℃シナリオの原単位推移(※)以下にコントロール。
  • これら事業によるScope4(同地域のCO2削減貢献量)の計測を検討。
  • 保有資産に対してはシナリオ分析を行い、座礁資産化の懸念を注視。
  • (※)<原単位推移コントロール>

    原単位は「発電あたりのCO2」であり、計算式は「発電に伴うCO2量÷発電量」になります。

    1.5℃シナリオの原単位の年代別の推移は、右記の緑色の線になります。

    1.5℃シナリオの原単位の年代別の推移は、右記の緑色の線になります。
    双日は、自社事業の原単位をこの1.5℃シナリオの原単位以下に抑えます。

【社会に、再エネ発電事業を創出し続けます】

考え方
  • 再エネは、社会に継続的に絶対量を創出。
  • 双日は、これまで保有のみならず、 一部事業については、撤退し回収した資金から、再投資を図る回転モデルを推進。
  • 総開発持分容量の累積を開示すると共に、Scope4の計測を実施。

事業資産転換のイメージ

【資産ベースでのグリーン比率の増加を目指します】

  • <考え方>

    CO2負荷の高いブラウン事業の比率を減らし世の中のCO2削減に貢献するグリーン事業やその“トランジションを支える事業”を積上げ ポートフォリオ全体でのグリーン化を図ります。

    グリーン、ブラウン、トランジション事業の定義付けについては先行する欧州タクソノミーの基準等も参照して参ります。