生物多様性

方針・基本的な考え方

双日は、事業活動において、食料資源や水産資源、林産資源を取り扱うほか、資源開発や工場建設などを行っており、その原産地や加工地、採掘地などの森林や海洋、河川などの生態系を支える生物多様性の維持・保全への配慮は重要な課題であると認識しています。
また、昨今、生物多様性への企業の取り組みは、国際的な関心も高まっており、同時に当社に対するステークホルダーの皆様の期待も高まっています。双日グループの持続的な事業運営、及び企業価値向上には、生物多様性への配慮が欠かせません。

その為、双日グループは、マテリアリティ(サステナビリティ重要課題)の「環境」や、双日グループ環境方針においても、生物多様性を掲げて取り組んでいます。

ご参照:

また、生物多様性は、地域やセクター別にその深刻度が異なる為、このような地域やセクターに関連する事業においては、個別に方針を掲げて対応しています。

ご参照:

目標

全体目標

生物多様性への対応を図り、事業にかかわる環境負荷の最小化に取り組みます。

個別目標

木材調達における取り組み

輸入木材については、一部の地域において、生物多様性への脅威等が問題視されており、双日グループでは木材調達方針を掲げ、各取引先と協力し、方針に掲げる合法性や、伐採現場の環境・社会配慮の確認・改善に取り組んでいます。具体的には、以下の定量目標を掲げています。

定量目標

「2025年度迄に、認証材(レベルA)、及び認証以外で環境配慮が出来ている材(レベルB)の取扱いを100%にします。」

  • レベルの定義
    「①原産地までのトレーサビリティ」と「②森林管理の適切性」について、下記4レベルに分けて評価しています。

レベルA:認証材(*)、または認証材相当の高度な管理が確認できている木材
レベルB:トレーサビリティに加え、認証以外で環境・社会に配慮した森林管理の適切性が検証済の木材
レベルC:トレーサビリティが確保されている木材
レベルD:トレーサビリティの確保が不十分な木材

  • =FSC®、PEFCなどによる認証木材。FSC®による認証材を最高得点としています。

ご参照:

体制

体制

生物多様性を含む環境への対応については、サステナビリティ委員会にて討議し、経営会議、及び取締役会に報告のうえ、取締役会より監督・指示を受けています。

また、事業投融資の審議にあたっては、生物多様性を含む、各種環境社会リスクの観点からの分析・評価も行った上で、サステナビリティの観点からの当該案件の推進意義を確認し、投資の実行を決議しています。

上記をサポートする実務組織として、IR・サステナビリティ推進部を設置しており、サステナビリティ委員会の指示事項を遂行するとともに、投融資審議会の審議案件について、生物多様性を含むサステナビリティの観点からの確認を行っています。

サステナビリティ委員会

サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する全社方針や目標の策定、それらを実践するための体制の構築・整備、及びISO14001の管理体制を活用した各種施策のモニタリングを行っています。

サステナビリティ委員会メンバー(2025年4月1日現在)

委員長
  • 社長 CEO
委員
  • 専務執行役員(CFO 兼 コーポレート管掌)
  • 執行役員(広報、IR・サステナビリティ推進担当本部長)
  • 執行役員(経営企画、EX事業戦略、M&A・投資戦略推進担当本部長)
  • オブザーバー
    • 取締役 監査等委員
    • 法務部長
    • 経営企画部長
    • 人事第一部部長
    事務局
    • IR・サステナビリティ推進部

    リスク管理

    新規事業投融資の環境リスク管理

    新規投融資案件の審議にあたっては、申請部署に『環境・社会リスクチェックシート』の作成を義務付けています。申請部署は、『環境・社会リスクチェックシート』を活用して、生物多様性に対する影響などの各種リスクについて、必要なデューデリジェンスを行い、対策に漏れが無いように確認を行っています。

    既存事業における環境リスク管理

    当社では、環境方針の確実な遂行、社員の意識向上、法規制対応などのリスク管理の徹底、ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを目的とし、社長を最高責任者としたISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を導入しています。当社のEMSでは、先ず、経営が全社的な方針を示し、その判断に至った外部動向、内部の課題、及び当社にとってのリスクと機会を整理した上で、各部署がその方針や、リスクと機会に則した環境目標を設定し、経営がこれをモニタリングするとともに、内部環境監査や、外部機関による監査を経て、各部署の継続的な改善に繋げるといったPDCAサイクルを実践しています。

    また、双日グループにおける環境・社会リスクの高い事業分野を特定し、双日グループ、及び仕入先を含むサプライチェーン全体の対応状況に対する調査・評価を実施しています。

    取り組み

    TNFD提言に基づく開示

    双日グループは、自然関連リスク・機会についてTNFD(*)提言のフレームワークを活用し、積極的な情報開示と透明性向上に努めています。

    • Taskforce on Nature-related Financial Disclosuresの略。国連開発計画(UNDP)等によって設立された「自然関連財務情報開示タスクフォース」の略称であり、企業が投資家や市場に対して自然に関連するリスクや機会等を開示するためのフレームワークを策定しています。

    ガバナンス

    社長が委員長を務める「サステナビリティ委員会」を、年に4回以上開催しています。また、サステナビリティ委員会で検討・協議された方針や課題等は、経営会議及び取締役会へ付議または報告され、取締役会はこのプロセスを定期的に監督し、必要に応じて対応の指示を行っています。

    リスク管理

    サステナビリティ委員会において、双日グループが行う各事業におけるCO2排出リスクを評価・特定しています。
    加えて、投融資審議会での審議過程において、個別事業リスクの確認を行うとともに、経営会議を通じて各本部への周知を行い、また、ステークホルダーダイアログにおいても気候関連の「リスク」と「機会」が当社事業に与える影響について討議・確認しています。

    戦略

    TNFDガイダンスを参照し、下図の手順に従って当社事業における自然への依存と影響を確認しました。

    【自然への依存と影響の重要度が高い事業・分析対象を特定】

    TNFDのガイダンスを参照し、分析ツールのひとつであるENCORE(*)を活用し、まずは世の中一般の事業が自然資本にどのように依存し、また、どのような影響を及ぼす可能性があるかを確認しました。その結果、ENCOREで依存・影響の重要度が高いと評価されている25事業を特定し、さらに「依存」「影響」ともに水に関する項目のスコアが一般的に高い傾向を確認しました。特定した事業のうち、当社が注力領域として掲げている水産バリューチェーン(マグロの養殖を行う双日ツナファーム鷹島、水産品加工を行うマリンフーズとトライ産業等)をTNFDのLEAP(Locate、Evaluate、Assess、Prepare)アプローチによる分析の対象としました。

    • 民間企業による自然関連の依存や影響の大きさを把握することを目的に、国連環境計画・自然資本金融同盟(UNEP-NCFA)等が共同開発した分析ツール

    ENCOREを用いた当社ポートフォリオにおける概観分析図およびその抜粋

    【水産バリューチェーンのLEAP分析】

    Locate(自然との接点の発見):
    双日ツナファーム鷹島の自社養殖、上流の飼料・種苗調達、および下流のトライ産業やマリンフーズといった国内加工工程を対象とし、生物多様性や生態系サービスの質の低下につながるリスクが大きい箇所を優先地域として特定し、各地域の特徴を整理しています。

    Evaluate(自然との依存・影響の診断):
    Locateで特定した優先地域について、リスク要素や分析ポイントを洗い出しました。さらにそれらポイントについて、まずは自社養殖である双日ツナファーム鷹島における自然の状態の確認や規制の調査、及び各社へのヒアリングによる実態把握を実施しました。

    Assess(重要なリスク・機会の評価):
    以上を踏まえ、TNFDのセクター別ガイダンスに沿ったリスク・機会の洗い出しを実施した結果、重要性が高いと評価されたリスク・機会と当社グループの取り組みは次の通りです。

    想定される主なリスク・機会 双日グループの取り組み
    リスク ・海水温の上昇及び赤潮発生に伴う製品の品質低下、死亡率の増加
    ・脱走魚による生態系の劣化と経済的損失
    ・餌の食べ残しによる水質汚染による養殖適地の変化 等
    ・IBAT* による対象地点周辺の調査
    ・水温、塩分などのデータ収集と分析
    ・赤潮の発生予測アプリの開発
    ・AIを活用したマグロの尾数把握
    ・生簀網の定期検査
    ・給餌量や出荷タイミングの最適化
     
    機会 ・生態系への影響を軽減する技術への投資
    • Integrated Biodiversity Assessment Tool (IBAT) : IUCNレッドリスト、保護地域、生物多様性上重要地域(KBA)などのデータベースへのアクセスが可能な地理空間データを提供するツール。

    Prepare(対応と報告の準備):
    双日ツナファーム鷹島では、飼育にICTを積極的に導入し、「国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)」との産学連携によるスマート養殖システムの構築を進めています。また、国立大学法人九州大学と赤潮の発生予測アプリの開発及び実証を開始しました。これらの技術を双日ツナファーム鷹島に限らず、他の養殖場が抱える課題の解決にも活用し、サステナブルな海洋資源の保全に取り組んでいます。

    ご参照:

    今後は、LEAPアプローチによる分析を通じて得た知見を個別事業の運営に活用していくとともに、分析対象を上流の飼料・種苗調達、および下流のトライ産業やマリンフーズといった加工工程に拡大します。また引き続き、自然資本(生物多様性・水リスク)を注視し、事業ポートフォリオに対する依存度・影響を見極めていきます。

    【鉱山開発・操業事業における環境保護、社会貢献の取り組み】

    当社グループは鉱山などの上流資源の開発や採掘に当たって、自然資本の毀損や生態系への影響を想定した適切な環境・社会影響評価、管理やモニタリング計画に加え、閉山計画も含めた事業計画を策定し、国や地方自治体の定める法令の順守や必要な許認可取得を通じ、環境保全に配慮した活動を行っています。

    開発段階では対象地域の生物多様性への影響を最小限に抑えるように環境負荷の低減に努めながら進め、操業段階への移行後では採掘域内に流れる小川の水流を維持すべく移転工事を実施する等、定期的な環境影響のモニタリングと共に万が一に備えた防止策なども十分に講じた上で活動しています。終掘後のリハビリテーションにおいては、閉山を待たず採掘活動と並行しながら植林や緑化活動をすべての鉱山において徹底することで、自然資本の毀損リスクの顕在化や拡大の未然防止を図り、環境負荷の低減と環境保全を進めています。

    具体的には、豪州に保有するグレゴリー炭鉱やミティオ・ダウンズ・サウス炭鉱の露天掘操業では、採掘の為に剥がした表土を別の場所で一時保存し、採掘終了に併せて再度その表土で覆い被せながら再緑化を行うことで、採掘前の状態に回復させる取り組みを行っております。さらに、両炭鉱の敷地内や周辺地域において、開発・操業活動で影響を受けかねないライチョウバトやキンググラスなどの希少動植物の生息区域を関連法令に則って確保し、且つ承認された計画通りの保全活動を行っています。

    【木材調達方針の取り組み】

    1,500社ある双日グループの木材関連の仕入先のうち、原産地のカントリーリスクの高さ、仕入金額の多さや当社方針への適合性などを考慮して、木材関連の全体仕入金額の80%以上の木材を重点調査対象として選定し、トレーサビリティや環境社会配慮状況を調査すると共に、取引先に啓発活動を行っています。

    ご参照:

    また、当社および必要なグループ会社は、適切な森林管理を認証する「FSC認証」を取得し、持続可能な森林資源調達に努めています。

    ご参照:

    指標と目標

    2004年に制定した双日グループ環境方針において、気候変動防止に向けたCO2をはじめとする温室効果ガスの削減、生物多様性への対応など、事業にかかわる環境負荷の最小化に取り組むことを掲げています。以下については、個別の指標と目標を定めています。

    ご参照:

    本まぐろの養殖事業

    人工種苗認証であるSCSAを取得

    SCSA認証は、人工種苗に関する認証で、これを有することによって、当社が完全人工養殖魚として出荷するマグロは全てトレーサビリティーの確保が可能となります。また、人工種苗を利用した養殖を行う事で、近年課題とされているクロマグロの天然資源の保全が可能となります。

    ご参照:

    本まぐろの養殖事業を通じた次世代育成活動

    2021年5月からは、次世代育成の観点から、共立女子大学と東京家政大学の学生の皆さんに実際のビジネスの場を体感してもらうために、当社の本まぐろ養殖事業をテーマとした学びの場を提供しています。

    • 大学生に学びの場を提供
      (共立女子大学へのオンライン講義)
    • 小学生によるまぐろ加工場見学の様子

    ご参照:

    水産物(漁業)認証の取得

    MSC認証

    双日グループで水産物を取り扱う双日食料、トライ産業、マリンフーズおよび大連翔祥食品は、MSCのCoC認証を取得しています。

    • MSC:Marine Stewardship Council。将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際非営利団体。
    • CoC認証:Chain of Custody。製品の製造・加工・流通の全ての過程において、認証水産物が適切に管理され、非認証水産物の混入を防ぎ、認証水産物のトレーサビリティを確保するための認証。

    環境教育・啓発

    • 「環境マネジメントシステムや環境に関する知識向上のため、各組織に設置した環境責任者·担当者を中心に全社員に向けた環境教育を年2回実施するほか、内部環境監査員向け研修、全社員が受講可能なe-ラーニングによる廃棄物処理法の教育等を行っています。また、イントラネットでは、環境関連の情報発信を行っています。

      また、eco検定の受験を継続的に推奨しているほか、双日グループ社員とその家族が参加し、荒川河川敷においてごみ拾いを実施。本活動は、社員のボランティア意識の高揚を図るとともに、海ごみやマイクロプラ問題、生物多様性の保全について考える機会として企画しています。
      後日、回収したマイクロプラスチックを材料とし、アクセサリーを作成するセミナーを開催。社員が身近な環境問題を考えるきっかけとなっています。

    ステークホルダーとの協働

    TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)フォーラムへの参画

    当社は、民間企業や金融機関が生物多様性に関するリスクや機会を評価し、開示することを目的として2021年6月に発足した国際的な組織である自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフォーラムに参画しています。

    ご参照:

    経団連生物多様性宣言・行動指針への賛同

    CDP Forestsへの参加

    当社は、CDPが提供する企業のサプライチェーン上の森林マネジメントを評価するCDP Forestsの質問書に回答しています。CDPは、企業の気候変動などの環境課題への取り組みについて、世界的なデータベースを有するNGOであり、2023年の回答の結果、Forests (timber)において上位に相当する「マネジメントレベル(B)」と認定されました。

    パフォーマンス

    木材調達における取り組み

    2020年度までに、トレーサビリティが確認できる調達木材の取扱いを100%(=レベルD材を0%)にするという目標を掲げておりましたが、2018年度から2023年度まで、6か年連続でこれを達成しています。
    また、現在、2025年度目標である、環境社会配慮木材(レベルA・B材)を100%にする目標に向けて取り組んでいます。

    ご参照: