ケニアの道は、ビジネスの道につづく。
伊藤 響子/生活産業・アグリビジネス本部食料事業部食料原料課
2024.08.30
私は、小学生の時に家族を病気で亡くして、その頃から将来は、困っている人の役に立つ仕事がしたいと思っていました。困っている人はどこにいるんだろう?と考えたときに、漠然と「途上国」を思いついたのが、私が海外に興味を持った最初のきっかけです。
その後、農業が海外で働くツールとして使えるのではないかと思い、大学は農学部に進学しました。大学3年の時には、国連が活動する現場を実際に訪問するスタディ・プログラムで、アフリカのルワンダに行きました。その頃、ルワンダは、さまざまなビジネスが生まれようとしているタイミングで、すごく活気にあふれていました。私もその熱気に触発され、国連などパブリックサイドが得意とするマイナスを0にするようなアプローチよりも、ビジネスのように1のものを無限に成長させられるような関わり方をして、途上国の役に立ちたいと思うようになりました。その後のフィリピンへの留学では、農村に実際に住んで農業の研究をすることで、私は改めて海外でビジネスをやりたいと確信しました。
双日に入社したいと思った理由は、3つあります。1つ目が、社員のみなさんの話を聞いてみて、双日は若手のうちから仕事を任せてもらえて、自分が大きく成長できる会社だと思ったこと。2つ目は、のびのびと働ける会社だということ。みなさん、とても個性豊かで、自分らしさを活かしながら働いている印象でした。3つ目は、社員訪問で最後に会った先輩の働き方がとてもかっこよくて、仕事への熱量も高くて、こんな人が上司だったらいいなと思ったことからです。
私は、双日に入社した後も、海外への夢を持ち続け、早く途上国に行かせてくださいと、いつも上司に伝えてきました。困っている人の役に立ちたいという小学生の頃からの思いと、ルワンダで感じた新しいビジネスが生まれる期待感やワクワク感をもう一度味わいたいという願いからでした。双日には、「キャリアの早回し」を目的とした、若手のうちからさまざまな経験を積めるトレーニー制度があります。双日はさまざまな商材を扱っているため、7つの事業本部に分かれていますが、私の場合は、事業本部の垣根を越えて現場に行く本部外トレーニー*として、入社3年目にケニアで即席麺の製造販売事業を行っている会社に派遣されることになりました。
*本部外トレーニー制度・・・当社は経営人材の育成・確保のため、国内外へ派遣、MBA派遣・語学自己研鑽制度など、様々な研修を行っています。特にユニークな取り組みとして、現所属組織とは異なるミッションを持つ本部外トレーニー制度があります。
詳細はこちら: 人的資本経営|Sojitz ESG BOOK|サステナビリティ|双日株式会社
ケニアでの派遣先は、双日とケニアの消費財製造大手と共同で設立した合弁会社Kapa Foods Innovations Limited(カパ・フーズ・イノベーションズ)でした。ちょうど、新商品の即席麺「nala(ナラ)」を開発し、まさに販売しようとするタイミングでした。nalaは、東アフリカで人気のチキン味の即席麺で、本当においしいです。日本の大手メーカーがつくるカップ麺には及ばないかもしれませんが、ケニアだけでなく、東アフリカの中でもいちばんおいしい即席麺だと、胸を張って言えます。
赴任した当初は、それまでの仕事とはまったく畑違いの内容でしたので、会話すらできない状態でした。また、決められた仕事もなかったため、その状況の中で私にできることをただ模索する日々でした。まさに未知の場所で、自分の仕事を0からつくり出すチャレンジでした。そして、私が役に立てると気づいたのが、今まで活用されていなかった販売データなどの整理と分析の業務でした。それは、データを起点にマーケティングを戦略的に行うためにとても重要なプロセスでした。続いて、チキン味の次のフレーバー開発を担うプロジェクト管理も任せてもらい、自分の仕事の幅を広げることができました。
また、私と同時期に日本からマネージャーとして出向した上司の下で仕事ができたことも、とても勉強になりました。その事業会社の業務には、原料調達、製造、マーケティング、販売の4つの大きな柱があります。マネージャーの役割は、それぞれの分野における専門性の高いスタッフの仕事を理解し、オペレーションを統率し、次のアクションを決めていくことです。そのためには、働くスタッフの話をきちんと理解すること、みんなからの信頼を得ること、必要な時に必要なことを自信を持って伝えることが求められます。時には内外からの批判に耐えながら、必要なピースを一つひとつ積み上げるように、新しい事業をつくっていくマネージャーの姿を隣で見ることができたことは、とても貴重な経験になりました。
私が引き続きやっていきたいことは、私の子どもの頃からの夢である途上国の人たちにより良い暮らしを届けることです。その夢を実現するために、今は少しずつ経験を積ませてもらっています。これからも、彼らが本当に何を求めているのか、何があったらその国がよくなるのかというのを、自分をアップデートしながら考えていって、どういった方法が最適なのかを探していきたいと思っています。
幸いにも、双日は、自分たちが持っている機能やアセットをベースに、新しい価値提供の手段を考え、選んでいける会社です。それが双日の良いところだと思っています。途上国の人たちのより良い暮らしを実現するための方法を、これからも現場の中で見つけていきたいと思います。
そして、最後にもうひとつ大事なのが、自分自身がワクワクできるかどうかです。社会に新しい価値を届けることは、世の中のために頑張るというイメージが強いと思いますが、決してそれだけではありません。私は、異なる環境に飛び込み、人やものに出会い、次のビジネスができないかと挑戦をすることが大好きです。その結果、誰かの役に立ち、少しでも感謝されることがあれば、とてもうれしく思います。そういう仕事を重ねていくことで、自分自身も楽しくて、なおかつ誰かに貢献できるというのがベストではないでしょうか。
これからも、世界のさまざまな場所で新しいビジネスの創出を目指して、ワクワクしながら働き続けていたいです。