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機関設計の変更と経営体制の刷新から1年が経過し、さまざまな変化を乗り越えながら、Next Stageを見据えた双日の挑戦は続いています。
今回は、監査等委員会設置会社への移行による変化や新経営陣のリーダーシップ、そして2030年に向けた「2倍成長」実現のために必要な投資戦略と資本市場との対話のあり方について、社外取締役の亀岡氏、朱氏にお話を伺いました。
亀岡
2024年度におけるガバナンス面での最も大きな変化は、監査等委員会設置会社への移行でした。特に重要だったのは、従前以上に、重要な業務執行の決定を業務執行取締役に委任したことです。そのため、スモールミーティングなどの場で投資家の皆様から、「それでガバナンスは大丈夫なのか」といったご質問をいただくこともありましたが、かえって執行側から「この案件は取締役会にも知っておいてほしい」という情報が積極的に上がってくるようになりました。また、社外取締役も投融資審議会にオブザーバーとして参加していますので、小規模な案件であっても情報を把握できる体制が整っています。このような仕組みがありますので、ガバナンス面での懸念は感じていませんし、取締役会としても時間的余裕が生まれ、本来議論すべき中期経営計画、DX、人材、サステナビリティなどの重要テーマに、より一層焦点を当てられるようになりました。これは、取締役会の審議時間や案件数を見ても、初年度から思いどおりの成果を達成できたと確信しています。
朱
監査等委員会設置会社として直面するであろう課題は、多くの他社事例から比較的明らかになっており、当社はその教訓を自社の移行プロセスに積極的に活かしてきました。主要な課題としては、監査等委員である取締役が、監査等委員としての役割と取締役としての役割をいかに両立させるか、その両立に際して監査等委員である取締役に生じる多大な負担にどう対処するのか、また、監査等委員である取締役とそうでない取締役との間の情報格差が生じることも課題でした。さらに当社に固有の問題意識として、取締役会の適正かつコンパクトな規模の維持と、監査等委員会の質と機能の強化という目的をいかに両立するのかということも課題でした。これらの問題に対処するため、監査等委員会委員長については、社外取締役が務めるべきではないかという議論もある中、常勤の真鍋取締役が委員長を務めることにより、監査等委員会の質と機能の強化を実現しています。また、シニア・オーディター*制度を導入し、監査機能を効果的に補強しました。ガバナンス体制を進化させていくにあたって、独りよがりにならず、社外のさまざまな経験や教訓からオープンな姿勢で学び、それらを自社に活かそうと真摯に取り組んできたと言えます。
亀岡
植村社長をはじめとする新たな経営体制への移行プロセスについても高く評価しています。新社長の選任にあたっては、指名委員会において徹底した議論を重ね、インタビューも実施しながら慎重に選定しました。また、選任後においても、私たち社外取締役は、選任した責任がある立場として、その動向を注視してきました。とりわけ重視していたのは、新たな経営体制のもと、当社が過去の延長線上ではなく、新たな双日像をどのように作り上げていくのかということでした。
私が考える双日の大きな強みのひとつは、ほかの商社と比較して少人数で運営している点です。もちろん、このことは通常弱みとなりますが、少人数だからこそ、柔軟かつ迅速に対応することができるという利点もあります。ただし、そのような利点を活かし、チームとしての力を最大化するためには、一人ひとりの知恵を寄せ合って価値を生み出していくという気概や企業風土がなければなりません。また、トップマネジメントと社員の距離感が近いなど、風通しの良いコミュニケーションが不可欠です。双日には、その基盤が備わっています。さらに、植村社長と同年代の方々が経営陣に参画したことによって、トップマネジメントと社員との距離感が一層近くなりました。より活発なコミュニケーションが促され、チームとして大きな成果を生み出すことにつながるのではないかと期待しています。
朱
私も当社の強みとして特にあげたいのは、極めてフラットなマネジメント構造のもと、植村社長のグリップの効いたリーダーシップが発揮されている点です。マネジメントレイヤーが多層化している伝統的な大組織では、現状認識が適切に行われなかったり、ボトムアップの意思決定プロセスに時間を要することで経営判断のタイミングを逸したりする傾向がありますが、当社ではそうした問題に陥ることなくうまく機能していると思います。植村社長はじめ経営層がハンズオンで経営のグリップを効かせており、投融資審議会の議論や経営幹部が泊まり込みで議論するサマーセッション等を通じても、経営の考えが幹部の間で共有されていることを感じます。新体制発足から1年しか経過していませんが、すでに安定した経営体制になっていると評価しており、植村社長にはそうした安定した体制の上に大胆な経営判断を積み上げていっていただきたいと期待しています。
亀岡
双日は過去、財務基盤が悪化し、経営的に厳しい時期がありました。そのころは投資したくても資金的に難しく、結果として投資に関する能力や経験が十分に蓄積されないという課題を抱えていました。ここ4、5年は一転して積極的な投資を行い、ようやく軌道に乗ってきたことを実感しています。2024年度も複数の事業への新規投融資案件を公表し、着実に種まきを行っており、2030年に向けた第一歩として順調なスタートを切れたと言えるでしょう。私は、Next Stageとして掲げる目標( 当期純利益2,000億円、時価総額2兆円、ROE15%)の達成は、実現不可能ではないと確信しています。双日は、当期純利益が300億円程度だった2014年ごろから、わずか10年でその3~4倍に当たる1,000億円超の水準へと成長してきました。そうした実績があることに加え、今では、中期経営計画2026で6,000億円の投資計画を掲げたように、資金も確保し、投資のノウハウや経験も蓄積しつつあります。もちろん、全ての投資が成功するわけではありません。重要なのは「失敗の仕方」です。赤字を引きずって状況をさらに悪化させるのではなく、どの時点で見切りをつけるか、常にレビューしながら進めることが必要です。現在は大きな問題はありませんが、今後さまざまな投資を進める中で常に意識すべき課題であると捉えています。特に不確実性が高まる時代においては、計画に固執せず、環境変化へ柔軟に対応する姿勢がより一層重要になっていくでしょう。
朱
中期経営計画2026の初年度として、2024年度は期待どおりの成果を上げることができたと評価しています。しかし、好調な業績を上げているにもかかわらず、株価への反映は限定的なものにとどまっていますが、それは市場の期待を超えるくらいの水準に達していないからだと考えています。そうした中で、当社の経営陣は単に計画どおりの業績達成に満足するのではなく、「2倍成長」という目標を掲げ、従来の延長線上ではない非連続の成長を目指しています。この目標は単なるスローガンにとどまらず、日々の経営判断や事業現場での意思決定の前提となっており、従来の延長線上を超えた業績をいかに実現するかという視点で会社運営がなされていると理解しています。
亀岡
双日は「事業や人材を創造し続ける総合商社」という2030年の目指す姿を掲げています。その実現のためには、単にお金を投じるだけではなく、双日ならではの付加価値を生み出すことが重要です。「事業を創造する」とは、投資案件に双日の人材がかかわり、双日のネットワークを活用することによって、その事業がどれだけ成長するかという点が本質です。「双日がやるからこそ」の価値創出を実現してこそ、投資の意義があると私は考えています。そのため、配置した人材が期待どおりの成果を発揮しているか、環境条件が前提どおりであっても人的要因でパフォーマンスが上がらないケースはないか、このような点も見ていく必要があるでしょう。
朱
会社の姿や事業ポートフォリオ、リスクプロファイルが大きく変わるようなトランスフォーメーショナルな投資では、社外取締役も緊張感を持ってかかわる必要があります。一方で、会社が許容するリスクの範囲内に十分に収まる通常業務としての投融資は、基本的には執行に委ねられており、その結果が当初の期待どおりのものであるかをモニタリングすることが社外取締役の役割です。当社では社外取締役が投融資審議会にオブザーバーとして参加できる仕組みがあり、そこでの議論を見る限り、投資評価のプロセスは適切に機能していると感じています。単に財務的な観点からチェックするだけでなく、「なぜ双日がこの投資をするのか」というそもそも論や、投資後の価値向上を実現するための「勝ち筋」についても深く議論されています。そうした中での社外取締役の重要な役割は、期待どおりの結果が出なかった案件について、「なぜ期待どおりにならなかったのか」「そこから得られる教訓は何か」「今後何をどう改善すべきか」という議論を促すことです。
これまでの経験では、投資後数年間のパフォーマンスが当初の想定を下回るケースが散見されます。この最初の数年間のパフォーマンスが十分でない理由を一般化することは難しいのですが、その理由としてあげられることが多いのが「想定外の環境変化」です。ここから学ぶべき教訓は、「想定外の環境変化は必ず起こる」という前提でPMIに取り組むべきだということです。不確実性の高い時代において、想定どおりに事が運ぶことを前提にするのではなく、あらかじめ変化を織り込んだ上で、手厚く万全な体制で臨むべきでしょう。十分な経営資源を投入することが不可欠な中、全ての案件にそのように対応することは難しいため、より戦略的な案件選別が今後さらに重要になってくるのではないでしょうか。
亀岡
投資判断プロセスについて、私も同様の評価をしています。過去に経営的に厳しかった時期の経験が活かされ、投資やそのチェック体制が非常に強固に構築されています。例えば、投資実行後は、事業計画の進捗状況につきモニタリングする仕組みが整備されており、計画どおりに進んでいない場合には、投融資審議会で事業計画変更等について再度審議されることになっています。社外取締役としての役割は、こうした仕組みが適切に機能しているかを確認することであり、個々の案件内容については執行側が責任を持って進めるべきだと考えています。
朱
現在1倍を割っている当社のPBRは、資本市場が当社に課す資本コストが高いことを示唆していますが、高い資本コストを前提としてそれを上回るリターンを上げるのは容易なことではありません。PBR1倍を安定的に超えるまでは、株主還元を通じて資本コストを下げ、より余裕を持ってリターンを上げられる状況を作ることも重要ではないでしょうか。成長投資と株主還元はそれぞれ別個のトレードオフの関係にあるのではなく、成長投資を確実に価値向上につなげるための環境づくりの一貫として株主還元を位置づけるという認識も必要であると思います。
亀岡
投資案件の利益率について補足したいのは、利益率が低い案件であっても、投入する人材リソースは大きな案件とほぼ同じだということです。この「人的アセット」をどう活用するかという視点が非常に重要になります。ほかの商社に比べて人数が限られている双日だからこそ、人材の配置とお金の配分を戦略的に考える必要があります。また、事業投資をした場合、投資先の会社にも「人」がいるわけです。双日がかかわることによって、その企業をさらに成長させると同時に、そこにいる「人」に活躍してもらうことも考えなくてはなりません。ひいてはそれが双日の成長につながります。さらに言えば、グローバルで事業投資を行っていく上では、国籍や文化、宗教も違う方々とも、しっかりとコミュニケーションを取りながら、ともに成長していかなくてはなりません。なかなか難しいですが、「双日ならそれをやり切れる」と言えるような人材を育てていくことが今後重要になってくると考えます。
朱
現在の株価水準は早急に改善すべき課題だと認識していますが、それが簡単ではないことも事実です。先ほども申し上げたとおり、株価は投資家の期待を上回る成果を示してこそ初めて改善します。当社は「2倍成長」という高い目標を掲げていますが、達成に向けた確からしさを訴求できなければ、株価改善につながりにくいのが現実です。目標の「達成確度」を市場に納得してもらうためには、事業投資・事業経営で着実に利益を上げるだけでなく、企業価値向上に寄与しない領域の資本は迅速に回収し、投資と回収のサイクルをより活性化させることが重要です。
社外取締役も資本市場と向き合い、株主・投資家の関心の有り様を常に適切に理解していなくてはなりません。株主・投資家との直接の対話では、書面だけでは伝わらない温度感を感じることが可能であり、このような機会を通じて感じ、考えたことを経営陣としっかり共有し、経営に活かしていく必要があると考えています。
亀岡
資本市場との向き合い方として重視しているのは、トップマネジメントから社外取締役まで、双日が一丸となって投資家と積極的に対話する姿勢を示すことです。このような姿勢があるからこそ、投資家の皆様と直接対話し、質問や評価を直接聞ける機会が得られます。これは双日にとって非常に有意義ではないでしょうか。スモールミーティングで投資家の皆様と対話すると、彼らが双日のことを大変よく理解していることが伝わってきますし、双日への期待値も高いことを肌で感じます。今後の課題として、朱取締役もご指摘のとおり、期待以上の成果を出して、それを市場にしっかりと伝えていくことが重要です。単に「こういうことをやりました」という報告だけではなく、「期待以上のことができました」と言えるようになることが、株価向上の大きなポイントとなるでしょう。私たちもその一助となれるよう、引き続き尽力していきます。
※所属組織、役職名等は2025年7月時点です
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