ビジネスを支え続ける経理でありたい。
中澤 瑞枝/執行役員 主計・営業経理担当本部長
2024.09.20
![](/art/article_file/file/nenw_6_01.webp)
まず私が入社したきっかけは、就職活動中に友人から「女性総合職向けのセミナーがあるから一緒に行かない?」と誘われたことでした。最初は、総合商社は視野に入れていなかったのですが、社員の方と話し、選考が進むにつれてだんだんと興味を持つようになりました。元々私は、財務や経理など数字に関係する仕事に関心がありましたが、社員の方から「同じ数字を扱うにしても、金融業界より、総合商社の方が面白いよ」と言われたことも興味を惹かれた一因です。総合商社という選択肢に様々なことにチャレンジできる可能性のようなものを感じたのかもしれませんね。
入社後、最初は人事部に配属されて、社内の制度設計などの仕事に携わっていましたが、私の適性を見た上司から税務部への異動を打診され、3年目になる直前に異動しました。それ以来一貫して、会計・税務を専門とする経理の道を歩んできました。
私が携わった業務の中でも、2013年のIFRS(国際会計基準)の導入は、日本企業としては先駆者で、とても大変なミッションでした。日本の会計基準は、規則が細かく決められている細則主義です。一方、IFRSは原則主義で、基本的な考え方は示されていますが、具体的にどのような会計方針をとり、どう会計処理をするのか、どう記載するのかは、会社の判断に委ねられています。日本基準とは全く異なる対応が必要で、参考にする先行事例もほとんど無かったので、まさに新しい道をつくるチャレンジでしたね。IFRSにおいては情報開示を受ける側の視点が重要なため、IFRSを導入したことで投資家などの目線に立って財務情報を発信するようになったこと、会計においては非常に大きなプロジェクトを先駆者として成し遂げられたことは、とても大きな成果だと思っています。
入社してこれまでの間に総合商社自体も大きく変わりました。従来は売買・仲介といったトレーディングがメインでしたが、今は事業投資が増えてきています。商流の間に入るだけでなく、事業会社の起ち上げから行うビジネスや、パートナー企業と組んで会社を買収するといった事業も多くなっています。以前は、適切な会計処理をして、適切な決算を行うことが経理業務の重要な目的でした。それは今でも変わりませんが、事業投資の増加にともない、会計・税務面も戦略的な要素が増えてきたと感じています。最近は新しい事業を始めるときには、早い段階から私たちがプロジェクトチームに入ることも多いですね。より収益性を高めるための配当方針の検討や、どの国を経由して投資した方が良いか投資スキームの検討などがより重要となっていて、経理のメンバーも、営業組織と一体となって一つのチームでビジネスを構築していると実感しています。
私たちの部署では、この4月に経理関連のDX(デジタルトランスフォーメーション)を担当する課を新たに設置しました。経理の仕事は、数字やデータを扱うものですし、労働集約型の側面もありますので、デジタルやDXとの親和性は非常に高いと思っています。新しい課を中心に、デジタルやDXによる経理業務の効率化と高度化を進めようとしています。
効率化という面では、やるべきことは多岐にわたりますが、今は経理処理に関する社内からの質問に対して生成AIが答えるというシステムを構築しようとしています。たとえば、このような場合に経理や税務の観点ではどのように処理するのが適切か、ある国の税法はどうなっているのかなどの質問に対して、これまでは担当者が調べたり、外部の専門家に相談することで解決していましたが、これからは生成AIを使って分析・対応できるようにしようとしています。
高度化という面の一例として、これまでは伝票チェックなどのさまざまな確認作業をガバナンスのベースとしてきましたが、これからは会計データを活用してイレギュラーなことが起きている予兆を事前に検知できるのではないかと考え、そのための仕組みをつくりました。事後ではなく、予測型の対応にシフトすることでガバナンスの向上を図るということです。
こうした経理DXによる最終的な目標は、経理のメンバー一人ひとりが人間にしかできないことだけをやるようになることです。ITに任せられることは任せ、事業投資における方針の検討やガバナンスの向上など、より戦略的な部分に人が注力できるようになれるといいなと考えています。営業部署とともに会社のビジネスを広げていける経理組織になるために、これからも一歩ずつ進んでいきたいと思います。
また、組織を統率する立場として、DXでの取り組みだけでなく、人材育成がとても重要だと考えます。今年は、若手の育成に対する取組みを体系化し、「会計税務人材のキャリア体系とスキルマップ」をつくりました。経理を担う人材のキャリア形成には様々なパターンがありますが、それぞれのペルソナを可視化し、そのためにどういうスキルを身に着けていくかを示すことで、若手の成長意欲を高めると同時に、一人ひとりが自身のキャリアを考えるためのツールになればと思っています。
一人ひとりの成長を促すためには、ストレッチの利いた仕事を任せることもとても重要ですね。ちょっと難しいかなというミッションに取り組んでもらった結果、それをクリアして、大きく成長してくれる人材が多くいます。現在の担当業務に加え、将来のジョブローテーションなど、それぞれのキャリア形成に適した育成方針を、日々組織内で議論しながら考えています。本人のためにも、チームのメンバーのためにも、会社のためにも、これからもベストな内容で人材育成に取り組んでいきたいと思います。
私は、双日が誕生した時から、ずっとこの会社と共に歩んでいます。これからもこの会社の中で、一人の人間としてどこまで成長できるか、会社としてどこまで社会に新しい価値を生み出せるか、どこまで世の中に存在感を示せるかということが、私の目標であり、それが楽しみでもあります。そのためには、ビジネスを主体的に担う営業組織だけでなく、私たち経理のメンバーも一緒になってビジネスをつくっていくことがとても重要になります。経理のメンバーも、「このプロジェクトは私たちの仕事だ」と胸を張って言えるようになるといいなと思います。
個人的な話になりますが、私は旅行が好きで、これまでにプライベートだけでも50か国近い国に行きました。この先も多くの旅をすると思いますが、旅先で私たちの会社がつくった商品やサービス、設備、そして私たちの会社とかかわった人々に出会えたら、こんなにうれしいことはありません。