仕事も、子育ても、私らしく。
宮田陽子/双日欧州会社 パリ支店 エネルギー部 部長
2025.02.27

私は、元々、海外志向が強かったように思います。高校時代は、海外の音楽や映画などへの興味に端を発してアメリカに留学しました。今振り返ると、留学時代のダイナミックで自由でポジティブな人たちとの出会いが、私らしい人生の出発点になったような気がしています。その後、社会経験を積みながら違う世界をもっと見たいと思い、大学時代には、1年間、台湾の工業団地のホテルでインターンシップをさせてもらいました。工業団地ということで、日本から来ている駐在員の方とお話をする機会も多く、海外で働くことの意義や醍醐味を伺い知ることができました。その頃から、私は、海外駐在員として働くことに憧れを抱きはじめていたのかもしれません。
就職活動でも、海外と関わる仕事がしたいという思いから、メーカーやシンクタンクに加え、いくつかの商社を訪問しました。商社の方々は総じて快活で魅力的な人材の宝庫という印象を受けました。特に、双日のみなさんは話しやすくて、就活生としてというより一個人として向き合ってくれる感じがして、応援してもらっているような気持ちにさえなりました。内定後に交流をはじめた内定者面々も優秀で個性的だったので、刺激的な人種と仕事をしていけると確信し、胸が高鳴ったのを覚えています。
入社後3年間は、管理部門にいました。海外の子会社を管理する部署の後、海外におけるリスクマネジメントの基盤をつくる部署に配属されました。その後、原子燃料関連の営業部に異動となりました。最初は、何の経験もない私がいきなり営業の最前線に立つこととなり、戸惑うことだらけでした。空回りや失敗で落ち込むこともたくさんありましたし、残業が続く日々もありましたが、先輩や同僚に支えられながら試行錯誤を繰り返して自分なりの営業スタイルをつくっていき、少しずつ営業の仕事が面白くなっていきました。当時苦楽を共にしたお客さまやパートナー企業の方々から数年経っても連絡をもらったり、再会することがあるのは、この仕事をやってきてよかったと感じる瞬間です。
その後、結婚して3人の子どもを授かり、子育てをしながら営業の仕事を続けてきました。夫と二人三脚でなんとか切り抜けてきましたが、毎日が戦いのようでした。実は私は今回の駐在よりだいぶ前にもパリ赴任を打診されたことがあるのですが、その時は家族の不幸が理由で赴任が叶いませんでした。そのような経緯があったので二度と海外駐在の打診はないだろうとあきらめていましたが、時は巡り再度パリ赴任の話があり、2020年9月にようやく念願だった海外駐在が叶いました。双日での仕事はきびしいですが、このように寛容にチャンスを提供してくれる懐の深い会社でもあると思います。
そして、パリでの私の仕事は、双日が掲げる目指す姿である「事業や人材を創造し続ける」を実践するものになりました。日本とフランス間の原子力プロジェクトに従事するだけではなく、フランスひいては欧州の情報収集全般や、複数の営業本部と地域を横断して新たなビジネスを生み出すための努力を続けてきました。たとえば、昨年は新規事業創出プロジェクト「Hassojitzプロジェクト(*1)」に海外からの初チャレンジャーとして参加し、パリの公衆トイレを充実させるデジタル構想を提案しました。私が海外にいるため、チームメンバーたちとのコミュニケーションは遠隔でしかできず、しかも8時間の時差を考慮する必要がありましたが、メンバーたちの商社員としての柔軟な感性のおかげでそのような制約を障害とも感じず、前向きに検討推進し、私にとって大きな糧となりました。
また、パリのオフィスでは管理職の立場でもあります。同僚はほとんどがヨーロッパ人なので、ここでは私が異文化圏からのマイノリティです。そのような職場環境で、日々「感謝」と「尊重」と「日本人として恥ずかしくない毅然とした立ち振る舞い」を念頭に置いて同僚と接しています。社内とは言え思想や文化が異なる現地の方々とのコミュニケーションは時に難しく、時に楽しく、ある程度の緊張感も持ちながら接するようにしています。想定外の解釈をされたり、目から鱗が落ちるような指摘をもらうこともあり、日々考えさせられ、成長させてもらっています。
仕事ではありませんが、家庭でも母親業に終わりはありません。3人の子供たちそれぞれの学校との連絡や進路の悩みや細々とした采配など、数をあげればキリがないですが、頭を抱えながらも頑張ってきた甲斐もあり、子供たちのみならず私もフランス語の上達や当地の慣習の体得に非常によい訓練となりました。こうして私は今、パリの地でも仕事と子育てを両立させるべく相変わらず切磋琢磨しながら、それでも充実した駐在員生活を送っています。
(*1) Hassojitzプロジェクトについてはこちら:人的資本経営|Sojitz ESG BOOK|サステナビリティ|双日株式会社
仕事をしながらの子育ては、たとえるなら短距離走ではなく、マラソンのような長距離走だと思っています。若い時は無我夢中に働いていましたが、出産後は仕事も子育てもすべてに完璧をめざすとどこかに歪みが生まれると思うので、今はメリハリをつけながら長距離を走る術を身につけたと思います。家族の幸せや友人との関係も、自身の心身の健康も大事にすることが、複数の役割を長期間果たすための私にとっての必要条件です。
双日は、子育てに理解のある会社です。一人ひとりの社員の良識レベルが高いため、社内にはさまざまな境遇の人がいることを理解しようとする気持ちがあると感じます。だからこそ、お互いを思いやり、支え合いながら、多くの社員が仕事を続けられているのではないでしょうか。また、子育て支援制度も充実しています。私は、出産までずっと仕事での挑戦や成長を優先してきたので、せめて出産時は子どもにちゃんと向き合いたいと思い、産前・産後休暇(*2)をしっかり利用させてもらいました。1年近く後に仕事に復帰した時にはみんなに歓迎してもらえたおかげで、大変でしたがその後も頑張れたと思います。また、子どもが病気になった時に看護休暇を何日か取得したこともありますし、ベビーシッターの費用補助を受けたこともあります。
(*2) 産前・産後休暇に関する詳細はこちら: ダイバーシティマネジメント|Sojitz ESG BOOK|サステナビリティ|双日株式会社
時代は大きく変化しています。より若い世代には、子育てのためにやりたいことを躊躇するのではなく、子育ても仕事も趣味もどんどん欲張れる社会が理想的だと思います。そのようなポジティブな思いが、自分自身と家族の幸せにつながると信じています。最近活用されはじめた男性の育休取得もより浸透すべき制度だと思います。出産は女性にしかできないことですが夫が寄り添って支えることにより家族の絆も深まるし、仕事と家庭の比重のバランスが取れる社会になっていく一歩なのかもしれないですね。
仕事においては、パリ支店の双日内における認知向上と活性化に貢献したいと思っています。商社なので、日本だけではなく世界の国々で商売を繰り広げるのが私たちのDNAであり存在意義だと思います。そのため、私たち駐在員は非常に重要な役割を担っていると日々自分を鼓舞しています。私がパリ支店に赴任してわかったのは、その役割は駐在員だけの力だけでは十分に果たせず、現地のスタッフの存在に支えられるものだということです。当地の同僚はとても優秀で、真摯に仕事に取り組んでおり、そのことを日本の本社社員にも知ってもらうことでシナジーが生まれ、現地スタッフのやりがいにもつながり、双日グループで働くことに誇りを持ってもらうのは、双日が当地で成長するためのポイントではないかと感じます。フランスの同僚と協力してビジネスを生むことを目標とし、充実した駐在員ライフを全うしたいです。