環境マネジメント
1. 方針・基本的な考え方
双日は、サステナビリティヘの取り組みを経営の最重要課題の一つとして認識し、事業活動のあらゆる面において地球環境の保全を目指した取り組みを積極的に進めています。
その為、下記を目的として、社長を最高責任者としたISO14001に基づく環境マネジメントシステム(EMS)を導入しています。
- 環境方針の確実な遂行
- 社員の意識向上
- 法規制対応などのリスク管理の徹底
- ステークホルダーとの円滑なコミュニケーション
当社のEMSでは、先ず、経営が全社的な方針を示し、その判断に至った外部動向、内部の課題、及び当社にとってのリスクと機会を整理した上で、各部署がその方針や、リスクと機会に則した環境目標を設定し、経営がこれをモニタリングするとともに、内部環境監査や、外部機関による監査を経て、各部署の継続的な改善に繋げるといったPDCAサイクルを実践しています。
1-1. 当社にて整理したマテリアリティ(サステナビリティ重要課題)別の 「リスクと機会」
| マテリアリティ (サステナビリティ重要課題) |
サステナビリティ チャレンジ |
各部署 個別目標の類型 |
基本SDGs | 双日のリスクと機会 | |
|---|---|---|---|---|---|
| リスク | 機会 | ||||
| 人権 | 人権 | 人権確保のための 取組み |
自社やサプライチェーン上の人権侵害事件が、当社のレピュテーション・取引へ影響 | サプライチェーンも含めた人権配慮による、商圏の持続性強化 | |
| 環境 | 脱炭素 | 脱炭素に向けた 全社施策 |
環境規制、炭素税、排出権取引の導入・強化 | CO2排出削減による環境規制への耐性強化 | |
| 脱炭素に 貢献する事業 |
(炭素依存型製品・サービスの)市場の縮小例:石炭火力発電市場など | (低炭素、脱炭素製品・サービスの)市場拡大例:再エネ市場 | |||
| 脱炭素に向けた 事業見直し |
(炭素依存型工場の)座礁資産化 | (低炭素・脱炭素型工場の)建設・参画 | |||
| 気候変動リスク への対策 |
洪水、干ばつなどの『水リスク』の発生山火事の頻発食料作付け地域の変化 | リスク対応による事業耐性の強化 | |||
| ---- | 脱炭素(気候変動) 以外の環境対策 |
自社やサプライチェーン上の環境汚染が、当社のレピュテーション・取引へ影響環境法令の遵守違反 | サプライチェーンも含めた環境汚染予防による、商圏の持続性強化 | ||
| 資源 | --- | 資源循環・効率利用に貢献する 事業機会の創出 |
使い捨て製品・サービスの市場縮小 | 循環型製品・サービスの市場拡大 | |
| 資源循環への自社内取り組み、法令対応 | 廃棄コストの増加資源循環に係るルールからの逸脱 | 3R+Renewable等、資源循環の推進による耐性強化 | |||
| 食糧資源の確保 | 将来の世界人口増加、および経済成長に伴う食料資源不足 | 食料需要、及び食料関連市場の拡大 | |||
| 水資源の確保 | 事業地の水不足による操業への影響 | 水資源確保の需要増加 | |||
| 水産資源の確保 | 乱獲による漁獲資源枯渇、レピュテーションリスク、事業継続への懸念 | 循環型漁業、養殖の需要増加 | |||
| 森林資源の確保 | 林産資源の枯渇、糾弾によるレピュテーションリスク | 認証材循環型事業 | |||
| 地域社会 | --- | 新興国の社会テーマ への貢献 |
新興国の発展が阻害されることによる、当社事業機会の減少 | 各種インフラ関連の事業機会 先進技術・文化の導入ビジネスの機会 |
|
| --- | 先進国の社会テーマ への貢献 |
少子高齢化、地方の過疎化、一次産業の衰退など。 先進国の課題が解決できないことによる、当社事業環境の毀損と、事業機会の減少 |
課題先進国の課題解決による、事業機会の世界的な拡大 | ||
| --- | 地球規模の危機 への対応 |
--- | サプライチェーンの分断、資源価格の高騰、各国の政策変更など | 医療関連の事業機会 | |
| ガバナンス | --- | 透明性の高い開示 への貢献 |
--- | 外部評価の悪化によるレピュテーション低下 | 外部評価の向上による資金調達の効率化 |
1-2. 環境目標の業績評価への反映
これらの取り組みは定性面、定量面から評価され、各本部の業績評価に反映される仕組みを導入しています。
1-3. 双日EMSにて重視している各種方針
当社のEMSにおいて、重視している各種方針は下記の通りです。
1-3-1. サステナビリティ重要課題(環境、資源、地域社会、人権)
当社のEMSでは、環境に留まらず、資源、地域社会、人権といった、サステナビリティ重要課題についても、目標を設定するとともに、実行状況のモニタリング・指示を行っています。
| テーマ | 内容 |
|---|---|
|
環境 |
事業に関わる環境面の持続可能性を追求し、環境保全に努めると共に環境性能の高い競争力ある事業に取り組む。 気候変動防止/CO2排出削減、生物多様性対応などを含む、事業に関わる環境負荷の最小化に取り組む。 |
|
資源 |
持続可能な資源*の開発・供給・利用を追求する。 省資源化、適切なエネルギーミックスの提案、資源の安定供給に取り組む。 *エネルギー資源、鉱物資源、食料資源、水資源、林産資源、水産資源などを含む |
|
地域社会 |
地域社会と共に発展する事業を推進。 事業を通じた地域社会の環境・社会影響負荷の削減に取り組む。 地域社会と継続的にコミュニケーションを図り、事業の持続可能性の追求と地域社会の課題解決、次世代教育支援等にも取り組む。 |
人権 |
事業に関わる人々の権利を尊重する。 その対象範囲は、自社従業員のみならず、サプライチェーン全体における事業の影響力が及ぶ範囲である。 児童労働、強制労働などが発生した場合は、その是正に取り組む。 |
1-3-2. 双日グループ環境方針
双日グループは、グローバル企業として、地球環境問題を経営上の重要な課題の一つとして認識し、持続可能な社会の実現に向け、事業活動において環境保全および汚染の予防に取り組むとともに、環境性能の高い競争力ある事業を推進します。
- 環境関連諸法規の順守
事業活動の推進にあたって、環境関連諸法規、国際条約および合意した協定等を順守します。 - 環境負荷の最小化
脱炭素社会の実現に向けた温室効果ガスの削減をはじめとする気候変動対応、生物多様性への対応、水資源の保全など、事業にかかわる環境負荷の最小化に取り組みます。 - 省資源および廃棄物の削減・リサイクル
エネルギー・水の節減をはじめとした省資源および廃棄物の削減・リサイクルに取り組みます。 - 新規事業における環境配慮
新規事業の開始、既存事業の拡大・追加開発等を行うにあたって、環境負荷の低減および汚染の予防に取り組みます。 - 持続可能な資源の追求
資源の安定供給や、適切なエネルギーミックスの実現に向けた取り組みを推進します。 - 情報開示とステークホルダーエンゲージメント
環境方針や環境課題に対する取組みを公開して透明性を確保するとともに、多様なステークホルダーとのコミュニケーションを推進します。 - 環境マネジメントシステムの継続的改善
環境パフォーマンスを向上させるべく、環境マネジメントシステムの下、環境目標の設定および定期的な見直しを行い、その継続的改善に努めます。 - 環境教育・啓発活動
本方針を全役員・従業員に周知するとともに、教育・啓発活動を行います。
2. 目標
2-1. 双日グループのCO2削減目標
2-1-1. SCOPE1とSCOPE2の目標
| SCOPE1+2 | 2030年までに6割削減、2050年までにネットゼロ *1 (内、SCOPE2は、2030年までにネットゼロ *2) |
|---|---|
| 石炭火力発電 | 現在保有無し。今後も保有しない |
*1 *2 2019年度を基準年として、双日単体、国内外全連結子会社および経営支配力アプローチにて報告対象となるUnincorporated JVが対象。
2-1-2. SCOPE3(資源権益事業)の目標
| 一般炭権益 | 2025年までに半分以下、2030年までにゼロ *3 |
|---|---|
| 石油権益 | 2030年までにゼロ |
| 原料炭権益 | 2050年までにゼロ |
*3 2018年を基準とした権益資産の簿価ベース。2019年5月に公表の「2030年までに半分以下にする」目標を前倒し。
2-2. 双日グループの主な環境目標
上記目標に加えて、各部署が本社方針に基づき設定している環境目標は、事業に関連する活動とオフィス内での活動に大別されます。基本的に全ての営業部署において、事業に関連する目標を設定しており、これに加えて、オフィス内での活動にも注力しています。
2-2-1. 事業に関連する活動
- 再生可能エネルギー事業
国内外での太陽光、陸上/洋上風力、バイオマス発電事業の開発から運営を通じて得た知見を活かし、さらに主体的な事業開発を成長市場で進めるとともに、RE100企業をはじめとする再生可能エネルギーを必要とする需要家向け供給サービスを積極的に提供することにより、世界的な脱炭素の流れの中でさらなる業容拡大を目指しています。 - ガス関連事業
長期安定的に需要が増加する新興国などの地域においてLNG受入基地や天然ガス供給事業を展開しています。天然ガス供給による低炭素化の推進に加え、再生可能エネルギーや新技術との組み合わせによるエネルギー利用の最適化を図り、脱炭素化の実現に取り組んでいます。 -
サーキュラーエコノミー事業
脱炭素化や省資源化などの潮流を踏まえて、リユース・リサイクルを含むサーキュラーエコノミー事業を拡大します。これまでの具体的な取り組みとして、IT Asset Disposition 事業者であるTES-AMM JAPAN株式会社、カナダ最大手の家電電子機器リサイクル業者のeCycle Solutions Inc、PET(ポリエチレンテレフタレート)のケミカルリサイクル事業を推進するペットリファインテクノロジー株式会社に対してそれぞれ出資を実行しました。これら金属リサイクルやプラスチック等廃棄物の再資源化を含むサーキュラーエコノミー領域において、規模感のある事業の構築を行い、循環型社会の実現に向けた取り組みを進めていきます。
2-2-2. オフィス内での活動
ごみリサイクル率目標:継続的にリサイクル率90%の維持を目指します。
- 2016年度に95%を達成。この水準の維持と向上に努めています。
ご参照:
3. 体制
社長を最高責任者とし、IR・サステナビリティ推進部長が環境管理責任者としてEMSの運営を担い、本部責任者・環境責任者等と連携の上、従業員全員参加によるEMSを推進しています。
このシステムを通じ、環境関連法規制の遵守並びに気候変動関連を含む環境リスクの未然防止及び環境保全型ビジネスの推進を目指しています。また、環境リスクの未然防止や環境保全型ビジネス、省エネルギー・省資源・CO2排出量の削減等気候変動リスクに関する項目等に関する目標を策定し、進捗状況の評価・分析を行い、確実に目標達成していくPDCAサイクルを回すことにより、目標を運用・管理しています。
また、社長を最高責任者とするサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ委員長は、EMSの継続的な適切性、妥当性、有効性を確実にするために、EMSのレビュー (環境マネジメントレビュー)を行っています。前回までのマネジメントレビューの結果や、外部/内部の課題、リスクと機会、環境目標が達成された度合い、内部環境監査の結果などの報告を受けたサステナビリティ委員長が、継続的改善の機会などに関する結論の表明、決定及び処置を指示しています。
ご参照:
3-1. 双日環境マネジメントシステム 体制図 (ISO14001)
3-2. ISO14001認証取得状況
双日本社及び下記会社はISO14001を取得しており、EMSを運用しています。
| 認証機関 | 日本検査キューエイ株式会社 |
|---|---|
| 登録番号 | E1436 |
| 登録事業所範囲*1 | 双日株式会社 本社、関西支社 双日九州株式会社 本社 双日プラネット株式会社 東京本社、大阪支社 双日食料株式会社 本社、関西支社、北日本支社 双日ファッション株式会社 大阪本社、東京支店 双日マシナリー株式会社 東京本社、大阪支社、名古屋支社 |
| 登録日 | 2006年3月16日*1 |
| 更新日 | 2025年1月24日 |
| 有効期限 | 2028年1月23日 |
- *11999年8月20日にISO14001の認証を取得。認証機関の統合に伴い2006年3月16日付で登録移行しました。
3-3. 双日グループにおけるISO14001の取得状況
双日グループにてISO14001を取得している会社は下記の通りです。
| ISO14001を取得している企業(2025年6月30日時点) | |
|---|---|
|
|
以上、国内外合計 19社
ご参照:
3-4. リスク管理
総合商社として世界規模で事業活動を行っていく中で、新規投融資案件においては計画段階で環境・社会リスクを未然に防ぐための『環境・社会リスクチェックシート』の作成を義務付け、ライフサイクル全体を踏まえた環境影響評価を実施しており、地域の社会環境や自然環境との調和を図ることを重要視しております。
3-5. 環境監査
当社では、ISO14001に則り、JICQAによる外部審査の他に、内部環境監査を毎年実施しています。各本部・グループ会社のEMSが有効に推進されているかを確認し、監査内容を最高責任者である社長に報告しています。
3-6. 環境コミュニケーション
顧客や外部の利害関係者から双日の環境に関する情報提供を求められた場合、ISO14001の規格で求められているプロセスを踏んだ上で、情報を公開しています。求められる情報の中にはアンケートやISO認証の取得に伴った認証コピーも含まれます。2024年度に対応したアンケートは158件、認証コピーの提出数は23件でした。
4. 取り組み
4-1. 環境教育
EMS推進のため、毎年期初にISO14001規格についての全社説明会を開催しています。また、内部環境監査の監査員に対する研修や、関連業務を担当する社員を対象とした産業廃棄物処理などの環境法規制等に関するE-learning、全組織において全員を対象に年2回の部署内教育を実施しており、意識の向上や専門的知識の習得に努めています。また、eco検定の受験を継続的に推奨しており、延べ164名が合格しています。
4-1-1. 24年度環境教育実績(本社および一部グループ会社)
| 研修名 | 対象者 | 受講者数 |
|---|---|---|
| 部署内教育(年2回) | 全社員 | 約3,100名 |
| 廃棄物処理法 E-learning | 産廃実務担当者、行政報告担当者 | 1,120名 |
| 内部環境監査員養成研修 | 内部環境監査の監査員候補者 | 41名 |
4-2. 分野毎の取り組み
4-2-1. 環境分野の取り組み
脱炭素化推進の方針策定と低炭素事業の推進やリサイクル事業への参画
当社事業活動のCO2排出量の調査、および火力発電や石炭権益における1.5℃シナリオ分析により、当社の気候関連に関わる「リスクと機会」を踏まえ、脱炭素化を推進すべく脱炭素化推進の方針を策定しています。
再生可能エネルギー事業、石炭からガスへの燃料転換プロジェクトなどの脱炭素事業、および脱炭素を見据えた低炭素事業展開が加速しています。また、各分野におけるリサイクル事業への参画により循環型社会の形成に向け体制を整えました。
4-2-2. 資源分野の取り組み
環境・社会配慮材の取扱い推進と持続的食料システムの実現への貢献
木材分野では、木材調達方針に則り、環境・社会配慮材の取扱い比率の向上を図っています。食料分野では完全養殖魚の取扱いを開始するなど、持続的な食料システムの実現に貢献しています。