グローバル・ニッチトップの戦略で自動車ディストリビューター事業を展開
パナマをハブに中南米地域での事業強化を目指す
2025年12月24日
2025年12月24日
双日は、アジア・ラテンアメリカなどの成長市場、日本・米国などの成熟市場を中心に、自動車事業を展開しています。双日は50年以上前から自動車メーカーの海外進出をサポートし、進出先での輸入販売事業を展開し、これまでに50か国を超える国々で自動車販売実績を積み上げてきました。ただ、近年では、自社として未開拓の国や地域が少なくなっていることに加えて、経済規模の大きな市場では自動車メーカーが直接海外進出を果たす、さらに安価なEV(電気自動車)を中心に新興の自動車メーカーが市場シェアを拡大させるなど、自動車販売事業は新たな局面を迎えているといえます。
自動車流通における3つの主要なプレイヤーとして、自動車の生産を行う「メーカー」、メーカーとディーラーの橋渡し役となる「ディストリビューター」、顧客への販売とアフターサービスを担う「ディーラー」が存在します。それぞれが異なる役割を担いながら連携し、最終的に製品を顧客に届けます。
双日では、自動車の輸入販売代理店にあたるディストリビューター事業と顧客に車を販売するディーラー事業の両方を展開しています。ディストリビューターとは、自動車メーカーとディーラーの間に立ち、その国での自動車販売に関するブランディング方針や販売戦略を決める事業者を指します。メーカーが生産した自動車を特定の国や地域に流通させ、ディーラーが滞りなく販売活動を進めるための下地作りを担うことから、ディストリビューターはその地域における「自動車流通の司令塔」であり、海外で自動車販売を進めていくうえで不可欠な存在となります。
双日の自動車事業には3つの成長戦略があります。まず1つ目が、これまで蓄積してきた知見とグループ会社の力を生かして、特定の市場や地域で、独自性を発揮することで相応のシェアを目指す「グローバル・ニッチトップ」。2つ目が、特定の地域において、資本や人的リソースを集中し、複数のブランド展開を図る「ドミナント」。3つ目が、販売にとどまらずアフターサービスや保険、ファイナンスなど、特に川下領域の派生事業までの様々な機能を提供する「バリューチェーン」の構築です。
双日は、ブラジルやアルゼンチン、プエルトリコなど中南米の国や地域で事業を長らく展開しており、中南米地域の文化や商慣習などへの知見を有します。一方で、この地域はアジアの自動車メーカーにとっては地理的に距離があることもあり、メーカー単独では進出しづらい「敷居の高さ」がありました。パナマは中南米における経済・物流の要衝として位置づけられており、高い成長潜在力を持っています。政治的にも安定しており、今後も継続的に人口の増加が期待されること、経済成長に伴う中間層の台頭による内需拡大も含めて、自動車市場も拡大が期待されています。こうした点を踏まえ、双日は2024年に中米パナマのSilaba Motorsの全株式を取得し、自動車販売事業に参入しました。
Silaba Motorsは1991年の創業で、パナマ国内にある8拠点でディストリビューター事業とディーラー事業を運営しています。同社のディストリビューター事業ではパナマ国内での販売戦略や在庫管理、ロジスティクスを担い、ディーラー事業では顧客に対する販売活動とアフターサービスの業務を担います。これにより輸入から販売、アフターサービスまで自社ネットワークで一気通貫で提供できることが強みです。これまで双日が取り扱うブランドはSilaba Motorsの韓国のKia車、日本のMazda車を中心としていましたが、2025年6月に韓国Hyundai車の正規ディーラー事業を手掛けるPetroautos, S.A(以下、Pertroautos)を買収したことで、取り扱いブランドを増やしています。年間の販売台数はSilaba Motorsはパナマ第2位、Petroautosは第3位の実績(いずれも2024年)を持ち、パナマの自動車販売においては大きなプレゼンスを発揮しています。
パナマにおける自動車の需要の約9割はパナマ市に集中しており、Silaba Motorsではパナマ市近くに自社の保税ヤード(*1)を保有しているのも強みの一つです。保税ヤードを持つことで在庫の品質管理や物流効率が上がり、多種多様な在庫のなかから顧客の求める自動車を丁寧かつスピーディーに販売できることが他社との大きな差別化ポイントになっています。
(*1)保税ヤード:輸入関税を支払う前の状態で一時的に保管・管理するためのエリア
自動車事業は、仕入れから販売、アフターサービスまで、顧客との接点を持つ現場に入り込み、ワンストップでサービスを提供することで、事業の永続性強化と顧客満足度の向上を図ることを目指します。それにより、事業収益の向上はもちろんのこと、パナマでのプレゼンス拡大、グローバル・ニッチトップの実現を果たすことができます。そのために特に重要になってくるのが現地人材です。現地の文化や商慣習、顧客のことを十分に理解している人材を採用し、育てていくノウハウを持つ力が事業の成長のカギを握ります。
中南米地域の自動車事業の特徴のひとつとして、マネージャークラスの外国人比率が高いという点があります。プエルトリコなど他国出身の人材もマネージャークラスとして活躍できる素地があるため、双日は、15年超の実績を持つプエルトリコ事業や、過去に製造工場を有していたベネズエラ事業の人材をパナマ事業で活用し、事業成長の源泉とすることを目指しています。


