国家戦略に基づき発展性が見込めるインドでバイオメタン事業に注力
稲わら原料のバイオメタン製造・販売で、エネルギー安全保障の強化と脱炭素に貢献
2026年7月14日
2026年7月14日
「エネルギー安全保障の強化」と「脱炭素」。インドが抱える巨大な国家課題に対し、双日は農業廃棄物、特に「稲わら」からエネルギーを作り出すという画期的なアプローチで挑んでいます。2025年4月、双日はインド最大手の国営石油会社Indian Oil Corporation Ltd(以下、IOCL)とバイオメタン(Compressed Biomethane Gas/以下、CBG)プラントを手がけるGPS Renewables Private Limited(以下、GPSR)が共同で設立したIOC GPS Renewables Pvt. Ltd.(以下、IGRPL)への出資を通じて、CBG製造・販売事業に参画しました。2027年度までに30基のプラントを稼働させ、年間16万トンのCBGを製造・販売する計画です。
インドは、中国、米国に次ぐ世界第3位のエネルギー消費国です。原油の約8割、天然ガスの約5割を輸入に頼っており、今後の更なる経済成長とともにエネルギー需要の増大が見込まれています。そうした状況のなかで、インド政府は2047年までにエネルギー自給国への転換を果たすため「エネルギー自給(Energy Independence)」達成を宣言しました。実現に向けた具体的な施策として、2030年までに1次エネルギー消費における天然ガスの比率を6%から15%に引き上げる「ガスベース経済」への転換を目指すほか、ガソリンへのバイオエタノールの20%混合やモビリティ・鉄道の電化、再生可能エネルギーの導入拡大などを推進しています。
しかし、「ガスベース経済」への転換については、国内の天然ガス生産量が年々減少し、輸入量が徐々に増える中、安定調達の実現や輸入依存による外貨流出といった問題が生じています。そのため、天然ガスの輸入を抑制しながらもエネルギー自給率を向上させる切り札として、インド政府は農業廃棄物などを原料に国内で生産可能なガスとしてCBGに着目しました。
農業廃棄物や都市廃棄物を酸素の少ない嫌気性環境で微生物によって分解させるとメタンとCO2が混合するバイオガスが生成されます。発生したバイオガスを精製し、メタン純度を高め、圧縮したものがCBGです。CBGは、化石由来の天然ガスと比較しても温室効果ガスの排出を大幅に削減できる代替エネルギーの一つとして大きな注目を集めています。都市ガスにも一定量のCBGの混合を義務付けるなど、国家施策としてCBGの普及を後押ししています。
また、インドでは、農業残渣を野焼きする慣行が広く残っており、これによる大気汚染も大きな問題となっています。稲作農家は刈り取った稲わらを焼却する為に燃料を使用しており、農家の経済的な負担にもなっていました。この多面的な課題を解決するため、双日は、CBG製造プラントの設計、建設、運転保守を手がけ、多くの知見を持つGPSRと、インド最大手の国営エネルギー会社として石油ガスのバリューチェーンにおいて上流から下流に亘り事業を行うIOCLが共同で設立したIGRPLに出資しました。国家レベルで推進しているCBGの製造に参画し、稲わらを原料として回収することで大気汚染の改善が期待できることに加え、これまで焼却に必要だった燃料の調達が不要となることで、農家の所得向上にも貢献できます。
インド政府は都市ガス事業者に対して、CBGの利用を義務化し、自動車用圧縮天然ガス及び都市ガスへのCBGの混合比率を段階的に引き上げる方針を打ち出しました。総消費量に対し、2025年度は1%、2027年度は4%、2028年度以降は5%のCBGの混合が義務付けられています。その制度を後押しするために一部の州政府では一つのエリアに1事業者、最初に申請した事業者に補助金を支給する政策を打ち出すなど、先行者が利益を取りやすい制度設計とし、スピード感がある取組みを推進しています。さらに、プラントで製造されたCBGはカスケード(高圧シリンダー束)に充填されてトラックで輸送されるか、地域のパイプラインやインドガス公社(GAIL)の基幹パイプラインを通して運ばれ、都市部だけでなく全国至る所にあるCNGステーションから供給されます。そのため、稲作が盛んな地域を中心として、各所に中小規模のCBG製造プラントを分散的に建設することで、既存の供給網を利用した効率的な供給を可能としています。
双日は総合商社としてこれまでに培った多様な領域での事業投資や事業運営の経験・実績を活かして、インドのCBG事業に新たな付加価値を提供することに挑戦しています。
日本では日本版排出量取引制度(GX-ETS)(*1)が2026年4月から本格的に開始したことにより、排出権へのニーズが高まっています。こうした中で活用が期待されているのが二国間クレジット制度(*2) です。日本とインドでは2025年8月に二国間クレジット構築に関する協力覚書を合意しており、本事業で創出した環境価値を日本の企業に移転させることで、インド由来の環境価値に直接的な経済価値が付与されます。双日は二国間クレジット制度の活用により事業の付加価値創出を追求します。
(*1) 日本政府が二酸化炭素の直接排出量が一定量以上の事業者を対象に排出枠を割り当て、排出枠の過不足に応じて事業者間で排出枠の取引を促すことで、脱炭素と産業競争力強化の実現を目指す制度。
(*2)パートナー国に対し、日本の優れた脱炭素技術を導入し、実現した温室効果ガスの削減成果を日本とパートナー国で分け合う仕組み。インドを含め31か国と協議を行っている。(2026年5月現在)
双日は、2027年度までにインド国内で30基のCBGプラントを稼働させ、年間16万トンのCBGを製造、販売する計画です。その後、インドでのCBG事業の経験・ノウハウと双日が持つネットワークを活かして、稲作が盛んなその他のアジア地域を中心にCBG事業の拡大を図ることを計画しています。
また、2026年には米国のバイオメタン製造・販売事業者であるFidem Energy LCC(以下、Fidem)に出資ししました。Fidemは米国南東部を拠点に、都市廃棄物を埋め立て処分する過程で自然発生するバイオガスからバイオメタンを精製する事業を手がけています。双日はこの事業を通じて、Fidemが持つ埋立地由来のバイオメタンの開発・運営ノウハウと、双日が培ってきた事業開発力やグローバルネットワークを掛け合わせ、米国におけるバイオメタン事業の拡大を目指していきます。
双日は、今後もグリーントランスフォーメーション(GX)を戦略的強化領域のひとつと定めています。インドや米国でのバイオメタン事業を通して収益基盤の強化・拡大を図ると共に、地域のエネルギー安全保障の強化とグローバルな社会課題である脱炭素の解決に貢献していきます。
