「産業のビタミン」として製造業で幅広く使われるレアアース
サプライチェーン多角化を推進し安定的な供給に貢献
2026年3月18日
2026年3月18日
電気自動車や産業用ロボットなどの先端技術製品の製造に欠かせない原料であるレアアース。製造業にとって欠くことのできないレアアースは「産業のビタミン」とも称され、長期的な安定供給が求められます。双日は半世紀以上前からレアアースの輸入・販売事業に取り組んでおり、日本の製造業を支えてきました。早い段階からサプライチェーンの多角化を模索し、オーストラリアでレアアース鉱山の資源開発を行うLynas Rare Earths Ltd(以下、ライナス)と戦略的に提携。ライナスより豪州由来のレアアースの輸入を始めるなど、特定国に依存しない供給体制の構築に努めています。今回は、双日が展開しているレアアース事業について、その全容をご紹介します。
EVや風力発電機向けなどの永久磁石、電池、自動車助触媒、石油精製触媒、工業製品の研磨剤など様々な最先端の製品に欠かせないのがレアアース(希土類)です。レアアースは、スカンジウム、イットリウム、ランタノイド属の15元素からなる17元素の総称で、比較的豊富で磁石、触媒製造などに使用される軽希土類と、希少性が高く磁石の耐熱性向上などに用いられる中重希土類に大別されます。他の金属に混ぜ込むことで磁力特性や耐久性を向上させることから「産業のビタミン」と称されています。
レアアースは世界中のあらゆる地域に存在しているものの、放射性物質と共に存在することが多く、また17元素の集合体をそれぞれの元素に分離・精製する工程が難しく専門的な技術・設備が必要なことから、特定の国からの供給に依存している状態が長く続いていました。
エレクトロニクス産業などの製造業を中心に経済発展を続けてきた日本にとってレアアースは重要な原料で、カラーテレビが普及した1980年代のレアアース黎明期から、レアアースを活用した技術開発において世界を牽引するリーディングカントリーでした。しかし、レアアースの分離・精製は高度な技術が必要なため、レアアースを供給できるサプライヤーは世界でも限られていました。
日本ではレアアースは精製・生産されておらず、ほぼ100%を海外から輸入していた状況を鑑み、双日は中国からレアアースの輸入を60年近くにわたって手がけていたことから、長期的な安定供給体制構築のためにサプライチェーン多角化の必要性を早くから感じ、取り組みを進めていました。
2010年に双日はサプライチェーンの多角化、安定供給のためにオーストラリア・西オーストラリア州のマウント・ウェルド鉱山でレアアース資源の開発を行うライナスと提携交渉開始し、2010年11月に戦略的提携に関する基本合意を締結しました。
ライナスを新たなサプライヤーとして選んだのは、マウント・ウェルド鉱山での開発を具体的に進めていたライナスの潜在能力の高さが決め手でした。翌2011年3月には経済産業省の支援を受け、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(現 独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、JOGMEC)と共同で、ライナスに2億5,000万米ドル(当時の換算レートで約200億円)の出融資を行いました。これにより、対日総販売代理店権と、年間最大9,000トン(*1)の優先供給権を獲得し、ライナスから日本へのレアアースの安定供給が可能な体制を構築することができました。
(*1) 当時の日本におけるレアアース需要量の約3割に相当
オーストラリアのマウント・ウェルド鉱山で採掘・選鉱されたレアアース鉱石は現地で濃縮処理をされたのち、マレーシアの工場に輸送されます。そしてレアアース製品に分離・精製されたものが日本を中心とした需要地に供給されています。化学産業の成熟度や日本・オーストラリア双方へのアクセスなど様々な要素を加味し、ライナスはマレーシアに精錬工場を構えています。
2013年にライナスが生産を開始した当初は、需要家の求める品質・スペックを満たす製品を安定的に供給することが難しい時期もありました。それに対して、双日はライナスのマーケティングパートナーとして、長年のレアアース事業で蓄積してきたノウハウや需要家からの要望を提供し、ライナスとともに課題解決のための様々な工夫を重ね製品の品質向上に努めました。需要家の企業が必要とするレアアースのスペックを正しく理解し、市場動向やニーズを的確に把握することで、ライナス・需要家双方の期待に応え、現在では軽希土類(ネオジム)においては、双日が国内需要の約7割を供給する体制を構築しています。
半世紀以上にわたる双日のレアアース事業は、順風満帆だったわけではなく、国際情勢の変化に伴う地政学的な問題や、法制度の変更といった外部環境への変化といった様々な困難に見舞われてきました。しかしながら、常にニーズを先読みし、日本のモノづくりを支える緊張感と使命感、そして責任感をもって必要な手を打ち続けること、この姿勢が今日の双日のレアアース事業を築いてきたといえます。
ライナスでは、当初より生産を行っていた軽希土類に比べて鉱石中の含有率が低いために高度な生産技術が求められ、希少性が高く、レアアース磁石(希土磁石)などの最先端の製品の原料として需要が高まっている中重希土類の商業生産に向けた開発を長年進めていました。そして、中重希土類の生産に目途が立ったことで、2025年10月よりジスプロシウムとテルビウムの2元素について日本国内向けの輸入を開始しました。これは、オーストラリアで採掘されたレアアース鉱石をマレーシアで分離・精製して得られた中重希土類としては、初の輸入事例で(*2)、最終的には国内総需要の3割程度の供給を見込んでいます。
(*2)双日調べ
このように、双日は需要家が求める製品の品質やスペック、市場の動きやニーズを的確に把握し、それをライナスに提供できる体制を通じ、必要なものを必要なところへ届けられるサプライチェーンを築いてきました。このサプライチェーンがレアアースの安定供給を実現し、日本のみならず世界の製造業を支えています。双日は、今後も世界中のレアアース関係者と連携を深め、更なるサプライチェーンの多角化を推進し、需要家への安定供給に努めることで、レアアース事業を成長させていく考えです。


