サプライチェーンを含む人権尊重への対応
双日グループは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて対応を進めています。

方針
方針の策定
グローバルに事業を展開する総合商社は、多岐に亘る業界のサプライチェーンを通じて、様々なステークホルダーの人権に直接・間接的に関わっています。
万が一、サプライチェーンにおいて、環境汚染や土地収用などステークホルダーの人権侵害を助長している場合、それは環境・人権リスクとしてサプライチェーン全体のサステナビリティに大きく影響します。
このため、双日グループではサプライチェーンCSR行動指針を掲げ、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)において「事業に関わる人権の尊重」を掲げ、また「サステナビリティ チャレンジ」においても「サプライチェーンを含む人権尊重への対応」を掲げており、環境・人権リスク低減の取り組みを通じて、ステークホルダーの人権が尊重される社会の実現と、持続可能的なサプライチェーンの構築を目指しています。
方針の周知
中計2023(2021年度~2023年度)においては、これらの方針、及び課題認識を双日グループ内で徹底すべく、全てのグループ事業会社(特定目的会社を除く連結子会社183社)に対して、以下の施策を実行しています。
①方針認知、及び課題認識の徹底につき、「確認書」を回収(183社中179社:回収率98%)
②全グループ事業会社との直接対話
■高リスク地域関連会社9社
2021年6月迄に対話済み
■高リスク事業分野関連19社
2021年8月迄に対話済み
■高リスク事業分野以外129社
2022年3月迄に対話済み
■高リスク事業分野以外7社
2022年6月迄に対話済み
また、高リスク分野における取引先から、上記、双日グループの対応方針の周知を行っています。
リスク評価
リスクの高い事業分野では、リスク所在国において課題が発生しやすい構造の分析や、固有リスクに特化した調査・評価の実施など、リスクマネジメントの深化を進めています。
サプライチェーン上の人権課題は様々であり、特に人権対応が強く求められるセクター(事業分野)を分析した上で、優先順位を付けて取り組んでいくことが重要と考えています。
その為、先ず前中計の中計2020(2018年度~2020年度)を人権への取り組み体制構築の準備期間と位置付け、双日としてのリスク評価の考え方を整理し、高リスク事業分野を特定、その上で、グループ内で継続的にリスク対応状況を確認し、改善に繋げるPDCA体制の構築を進めてきました。本中計「中計2023」においては、高リスク事業分野におけるPDCAの取り組みを深化させると共に、これを基盤に当社グループ方針の周知と人権課題への認識の徹底を行っていきます。

リスク評価手法
NGOのデータベースから抽出された、「環境・人権の高リスク分野」について、リスク特性に応じた双日グループ、及びサプライチェーン上の対応状況を調査・確認しました。

●外部分析:一般的に環境・人権リスクが高い事業分野
英NGO「ビジネスと人権リソースセンター」が保有するデータベースより、2000年以降に世界各国で発生した環境・人権リスクの発生事例をもとに、一般的にどういった事業分野のリスクが高いかを分析しています。

分析を踏まえ、グループ会社、取引先のそれぞれについて以下の優先順位をつけ、対応しています。
■グループ会社(連結子会社・持分会社)
国を問わず全ての事業会社をリスク評価の対象としています。優先順位としては、リスクの高い事業分野に当てはまる事業から評価を行います。
■取引先
取引金額や収益規模が小さくとも、そのサプライチェーン上流の開発・生産過程において環境・人権への負の影響が想定されるため、双日グループが間接的に加担しないよう取り組む必要があります。
従い、取引金額や収益の多寡を問わず、リスクの高い事業分野に当てはまる取引先からリスク評価を優先します。

●内部分析:双日グループの事業からリスクの高い事業分野を特定
双日グループの事業の中からリスクが高い事業分野を特定し、川上から川下までの一連のサプライチェーンにおいて、一般的に環境・社会課題が発生し易いのはどの位置で、当グループの事業はサプライチェーンのどの位置を担っているのかを分析・確認しています。
双日グループが直接かかわっている場合はもちろん、その川上で環境・社会課題が発生し易い場合でも、調達することによって間接的に川上での課題悪化を助長する可能性があり、これらがリスクとして当グループの事業のサステナビリティに大きく影響することが想定されます。
中期経営計画2020においては、当グループの事業におけるこれら事業分野固有のリスク調査やマネジメントの体系化に注力してきました。
対象は全連結子会社の約300社とし、うち59社(含、持分法適用会社23社)がリスクの高い事業分野に該当したことから、環境・社会の各課題への対応状況を確認しました。
- 事業領域別 環境・社会課題の位置

改善・救済
改善
上記、「方針」における「周知・課題認識の徹底」や、「リスク評価」における「高リスク分野への対応確認」における、グループ会社や取引先との対話・コミュニケーションにおいての「気付き」や、外部専門家による「第三者意見」を踏まえて、継続的に「改善」を実施しています。
●取り組み事例
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双日グループでは、現場における具体的なリスク低減の取り組み状況を把握するため、グループ会社と改善に向けたコミュニケーションを図っています。
2018年6月、サステナビリティ推進室が外部の専門家とともに、在ベトナムのKyodo Sojitz Feed Co.,Ltd.(以下、KSF)を訪問しました。同社は主に豚・鶏の畜産用飼料の製造・販売を行う連結子会社であり、ベトナムにおいて畜肉の需要増加が見込まれる中、安心・安全な食料資源の安定供給に貢献しています。
訪問実査は同社マネジメントとのサステナビリティに関わる対話を含め、2日間に渡り、双日グループ サプライチェーンCSR行動指針にて掲げる6つの重要分野(※)について、各種書類の整備状況や敷地内の工場・施設での取り組み内容を確認しました。
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外部の専門家からは良好な労務管理・書類整備の実状や、農業生産事業の環境・社会・経済的持続性を証する「Global Gap」認証取得を通じた経営品質向上の取り組みなど、全体的に高評価を得ました。一方、工場内の一部において「職場の安全・衛生」分野に関わる潜在的な人権リスクにつき指摘があり、マネジメントを含む実査後の総括において共有し、今後、優先的に改善を図ることとしました。
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重要分野(※) 実査結果 人権・労働 軽微な指摘有り 職場の安全・衛生 改善検討箇所を特定 環境保全 軽微な指摘有り 公正取引・腐敗防止 問題なし 品質・安全性管理 問題なし 情報開示 問題なし -
●取引先への取り組み
双日グループでは、現場における具体的なリスク低減の取り組み状況を把握するため、取引先やサプライヤーへの訪問実査および改善に向けたコミュニケーションを図っています。
2019年度においては、第三者機関を起用し、木材サプライヤーの森林管理状況につき現地調査を行いました。概ね、適切な森林管理が為されていることを確認しましたが、一部、生物多様性の保全策や、伐採地での労働安全対策での不備が指摘されたため、当社から改善を要請し、その進捗をモニタリングしております。
2020年度は、コロナ禍の影響により、予定していた木材サプライヤーへの訪問DDが延期となっておりますが、各サプライヤーとは情報交換を続けており、また、アンケート調査などにより、リスクへの対応、改善状況を確認しています。詳細は、木材調達方針ページをご参照ください。
<救済>
双日グループは、ステークホルダーとの直接的なエンゲージメントを図るべく、社内・社外ともにホットラインを設置しており、「改善・救済」に必要な被害者からの情報連絡を直接受け取る仕組みを構築済です。
■社外ホットライン 2言語対応(日本語、英語)
■社内ホットライン 25言語対応
中計2023においては、上記ホットラインに加え、「改善・救済」の重要性につき、双日グループ内およびリスクが高い業界に属するサプライヤーに対しての啓発活動を行っています。
実績開示
双日グループは、今後も、上記取り組みの実績と、今後の方向性を、透明度高く開示して参ります。