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2022.01.28 UP

"弱いつながり"が、超高齢社会をポジティブにする

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「団塊の世代」800万人が75歳以上の後期高齢者となる2025年。どの国も経験したことがない超高齢社会のはじまりは「2025年問題」と呼ばれています。高齢化・少子化、医療費・介護費・それに伴う現役世代の負担・社会保障費の増大。ネガティブな印象が先行する中、シニアがあふれる世の中は暗いものではないはず。双日が投資するスタートアップ「あんしんサポート」は目前に迫った2025年問題を視野に入れながら、シニア向けの在宅見守りサービスを中心に、高齢者が暮らしやすい世の中づくりの準備を進めています。今回は人がつながる仕組みをつくり、コミュニティデザインという手法から日本各地の地方が抱える問題を解決してきた山崎亮さんとあんしんサポート代表の古賀功一さんをゲストに迎え、超高齢社会における、心地良い人と人のつながり方を考えます。

Interview_Shinri Kobayashi
Photograph_Masayuki Nakaya
Edit / Text_Shota Kato

大都市に集まってきた人たちが高齢者になるタイミング、それが2025年

――2025年問題についての見解をお聞きしたいのですが、山崎さんはコミュニティデザインの観点から超高齢社会の訪れをどのようにとらえていますか?

山崎:特に深刻な影響があるのは大都市部だと思います。日本全体の問題として「2025年問題」と名付けられていますが、75歳以上になる人たちを一定時期に大量に集めた最たる場所、それが東京であり首都圏なんですね。

――主に東京に特化した問題だと。

山崎:人とのつながりを切ることで快適に暮らそうとしてきたのが東京なんですね。人とつながることの煩わしさや、しがらみも引っ括めてうまく付き合ってきたのが地方だとすれば、つながりから抜け出して自由に生きていきたい人たちが集まってきたのが、東京を代表とする大都市部だったんだろうなと思います。

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――つながりを絶ってまでして、なぜ人は大都市に住みたいと思うのでしょう。

山崎:高齢者のお世話、見守りなんかは当たり前のこと。それが地方の生活でした。でもそれって、自分が年長でないときは面倒なんですよね。以前は、長男以外は自由に家から出ていけばいいという時代でした。この"自由"がややこしくて疑わしいもので、とても煌びやかに見えたわけですよ。

東京にはおしゃれな服が売っている、最先端の情報がある、職業選択の自由がある、出会いがたくさんある。でも、それって宣伝だったわけです。その自由が実はそうではないということに後で気付かされたといいますか。

古賀:東京は魅力的な街だという憧れを持って、地方の人たちがこぞって上京してきたと。逆に今はコロナ禍をきっかけに東京を離れる人も増えていますよね。

山崎:そうですね。では、なぜ東京は魅力的だと宣伝したのか。それはそうやって訴求したい企業がたくさんいたから。つまり、消費地に人を集めることで経済を回すためにたくさんの広告を打ってきたんですね。それをきっかけに集まってきた人たちが高齢者になってくるタイミングが2025年と重なっていると僕には映っています。

そこに対して画期的なアイデアがあるかと問われると、いかに東京につながりをつくっていくのかということに尽きると思うんです。お金を払うサービス以外のつながりをどうつくっていくのか。それをデザインしていくことが僕の役目だと思っています。

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家族に言えない「畑に行ってくるよ」という他愛もないこと

――古賀さんは高齢社会の現状をどのようにご覧になっているでしょうか?

古賀:私たちは福岡、大分、愛知に、シニアやその家族を対象としたコールセンターを展開しています。3拠点には介護士・看護師の資格を持ったオペレーターが所属していて、24時間365日、シニアのみなさんの安否確認や緊急連絡の対応をしています。山崎さんがおっしゃる互助は地方でも難しくなってきています。お子さんが大都市で働いていて、親御さんは地元で独り生活している。子どもや近所にも迷惑をかけたくない。でも自分は弱っていく。

そこで私たちがシニアの方たちをサポートさせていただいています。山崎さんが生業にしているコミュニティデザインは、まさにつながりをつくることだと思いますが、それはどうやってできていくんですか?

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山崎:たとえば、公共的な空間を設計する場合、僕には使い手である住民の意見を聞きながらデザインしなければいけないという問題意識があるんです。個人宅の設計では当たり前のことじゃないですか。お金を出す人と使う人が同じですから。でも、公共施設はそれが違うように見えてしまいます。

古賀:山崎さんのクライアントは自治体ですが、自治体のクライアント、つまり実際に公共施設を使用するのは住民ということですよね。

山崎:まさに。施設って使い手の話を聞かないと使いにくいものになってしまいます。だからこそ、市民参加型のワークショップを開くんです。どうやって施設を使いたいのかを議論していく。それを1年間くらい続けていくと、参加者同士の関係性が構築されて本音で話ができるようになっていくんです。その中で出てきた意見を設計に反映させていきます。話し合っている人たちが仲良くなってくると、つながりが生まれてくる。そうやって、いざオープンを迎えるときには、「ようこそ!」と市民が利用者を迎え入れられる立場になっています。

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古賀:そうやって自分ごと化して、おもてなしできる状況になっていくんですね。

山崎:お互いを支え合っていた結果として、結婚したり起業したりという縁も生まれているんですよ。あんしんサポートはコールセンターを展開しているとおっしゃっていましたが、重要なことは利用者がコールセンターに毎月いくら払っているということだけではないと思っていて。

古賀:といいますと?

山崎:地域の人たち同士で支え合うのは限界がありますし、昔のように土足で他人の家に入り込むことは難しくなっています。そんなところに、何かあったときに電話すれば24時間365日対応してくれる人がいる。その仕組みが整っている安心感は地域のつながりを超えたものになっていかざるを得ないと思うんです。

たとえば、サービスのメンバーになったら、地域SNSのように登録者同士が集まれるようになるとしますよね。そうやってリアルなつながりが生まれるプラットフォームを地域ごとにつくっていけたら、より魅力的なサービスになっていくと思います。

古賀:コールセンターのスタッフとシニアが顔の見えない形でつながっていますが、現地に行って何かできるかといえばそうではなくて。今は生活支援している企業と連携してお困りごとに対応しています。電球交換ひとつできない、ブレーカーが落ちたらあげられない、と言った相談は少なくないんですよ。

利用者の中には毎日朝起きたら「畑に行ってくるよ」という連絡をしてくださって、「こんなものが採れたよ」と教えてくださる方もいます。そうやって何気ない日々のやりとりを重ねていくんですね。

山崎:それって家族にはなかなか連絡しにくいことだったりしますよね。

古賀:利用者さんいわく、赤の他人だから、家族の関係ではないからこそ本音が言いやすいという部分があるそうで。そういった方々はつながりを求めているんですよね、根底に。その気持ちがうまく噛み合うと、私たちはシニアと強いコミュニティをつくれると思うんです。

山崎:本人の中でどうでもいいことでも誰かに伝えたい。だからこそ毎日、息子や娘にこの電話をすると迷惑になるとわかっているんですよね。関係性が濃いからこそ気を遣ってしまうというか。でもあんしんサポートはそこに対価が発生しているので、本当に緊急なことから他愛もないことまでお願いできるわけであって。

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弱いつながりがあるからこそ、強いつながりを実感できる

――あんしんサポートの利用者間につながりが生まれたら、というコミュニティ形成の話はとてもおもしろいなと感じました。

山崎:あんしんサポートを通じて利用者間につながりができると、シニアの方たちが「自己有用感」を得ることにもつながっていくと思うんですよ。「私は誰かのために役に立てている」ということです。その気持ちを得られると、すごく元気になります。

以前、「弱い紐帯」という言葉が流行りましたが、あんしんサポートはまさにそういった存在だなと。家族、職場、学校は自分と強く関係する場所ですが、弱みを見せられるかというとそうではなくて。第3の空間、つまりサードプレイスが弱い紐帯に当たるのですが、たとえば、バーや飲み屋で出会う人たちは生涯付き合い続ける関係じゃないけど、そこでしか話せないこともあったりします。というのも、本音を話して何か問題が起きたら、その店に行かないだけで関係は終わらせられますから。ですが、家族のような強い関係だと、ちょっと嫌なことがあったくらいで縁を切るわけにいかない。そういう意味では、弱いつながりをつくっておくのも、心を健康に保つために大切なことだと思いますね。

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古賀:コールセンターは紛れもなく「弱い紐帯」ですね。あえて言い方を選びませんが、もし関係がこじれたらサービスを切ればいいという安心感が利用者の方にはあります。だからこそ、他愛もないことから神妙な相談をしても後を引かないというか。

山崎:そのサバサバした感じは担保しておくべきだと思うんです。家族、友だち、同僚の強いつながりって、弱いつながりがあるからこそ、その価値がずしんときますから。

古賀:そうですね。もともとは私が以前住んでいた近くの団地で起きた孤独死がきっかけになって、あんしんサポートの事業を始めました。団地というコミュニティがあるのに、亡くなってから数日が経って、やっと住民の方たちは気づいた。その言葉にしにくい虚しさに大きなインパクトを受けました。それで、シニアや独り暮らしの方がいつでも気軽に相談できる窓口として、NPOのコールセンターを2008年に立ち上げたんです。

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山崎:すばらしいお話ですね。まさに今回の重要なストーリーだという気がしていて。もしかすると、その方には人とのつながりがなかったために、自分でなんとかしないといけないと思っていた。これはとても苦しい出来事ですよね。きっと最初は誰かに助けを求めようと模索したはずなんです。強いつながりは誰にでもあるわけではない。だからこそ、弱いつながりのなかで助け合える関係をつくってくれるサービスは大切ですね。

古賀:ありがとうございます。今は海外に駐在している会社員の方向けに、日本国内で暮らす親御さんを私たちが見守るサービスも展開しています。従業員の方に親御さんからの様子を伝えたりすることを福利厚生の一環として採用していただいていたりします。そういった弱いつながりを意識しながら、シニアの方もご家族も安心して暮らせる環境づくりに貢献していきたいと思います。

INFORMATION

あんしんサポート

「高齢者を孤立させない社会づくり」をビジョンに掲げ、シニアが安心して暮らせるように24時間365日の見守りと生活支援をサポートするスタートアップ。福岡、大分、愛知にコールセンターを構え、利用者の定期的な安否確認から高齢化社会のインフラづくりに貢献している。

あんしんサポート
https://anshin-senior.com/index.html

PROFILE

山崎 亮

山崎 亮

コミュニティデザイナー / studio-L代表 /関西学院大学建築学部教授

地域の課題を地域に住む人たちが解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクト多数。著書に『コミュニティデザインの源流(太田出版)』、『縮充する日本(PHP新書)』、『地域ごはん日記(パイインターナショナル)』などがある。

古賀 功一

古賀 功一

あんしんサポート / 代表取締役社長

2008年NPO法人在宅医療サポート協会にて見守りサービス、緊急通報システム事業、安否確認を行うコンタクトセンターの構築を行う。2017年にはあんしんサポート(コンタクトセンター事業)を設立。シニア向けの見守り・安否確認サービスを展開し、高齢者が安心して暮らせる社会づくりをめざしている。

2025年問題 スタートアップ ヘルスケア 学び 超高齢社会

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