HomeSpecial心も身体もリトリート。五島で出逢う光の風景

Vol.04

津々浦々、地域の魅力を再発見

2022.11.02 UP

心も身体もリトリート。五島で出逢う光の風景

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長崎県の西に位置する「五島列島」。潜伏キリシタンの歴史をつなぐ教会や想像を超える美しい自然、日本随一の釣りの聖地。観光地としてだけでなく、移住者も増えているという、いま注目の離島です。そんな五島に、新たに「五島リトリートray」というラグジュアリーホテルがオープン。実はこのホテルを含め、双日は五島を舞台に地方創生の事業に取り組んでいます。盛り上がりを見せる島の魅力を探るため、caravan編集部は五島へ。心と体を整える、リトリート旅。後編では、双日が新たにオープンした「五島リトリートray」を旅の出発点として、福江島の自然と文化にフォーカス。写真家・砺波周平さんの写真と詩人・若尾真実さんの文章によるフォトエッセイにしたためてお届けします。島を旅しながら見つけた、「祈り」と「光」。

Photograph_Shuhei Tonami
Text_Mami Wakao
Edit_Shota Kato
Special Thanks_Susumu Kawaguchi, Tomoyuki Torisu, Tsubakino

五島の島と「五島リトリートray」で出会った、やさしい祈りと光の風景

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五島の朝は早い。

小さなあかりを灯した漁師たちの船が、夜明け前の水面をすべる。

一秒ごとに変わる雲の形、海の色、島の影。

山の鳥と海の鳥がいっせいに鳴き始めて、朝を呼び寄せる。

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すべすべしたなめらかな鬼岳の山肌。草の色が空に映える。

もう何億年も昔からずっと、山は山のままだ。

はるなつあきふゆを何億回と繰り返して、

数え切れない生き物や植物たちが生きて死んで、

山は山のままだ。

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祈り(いのり)の「い」は、生命(いのち)の「い」。

生命を宣る(のる)から、いのり。

 

神様は人それぞれだけど、心臓の前で手を合わせるのはみな同じ。

生命を、いただきます。生命を、ありがとう。

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遠浅の海でたわむれ続ける、光と波の粒。

太陽が輝く限り、地球が潤う限り。

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静寂(しじま)の中に、ゆらぎを宿す

「五島リトリートray」。

 

景色が、水に映り、心に映り、

外と内が溶け合って、風景になる。

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五島の暮らしに深く根付いてきた、椿。

葉はお茶に、種は油に、木は櫛に。

海風にも冬の寒さにも負けない強い生命力が、人々の身体を整えてきた。

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乾いた実から種をとり、殻を割って潰して絞る。

人の手で、自然が文化になる瞬間。

一滴、一滴と、香ばしい木の実のかおりが広がる。

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ごつごつとした溶岩の海岸線に、日が落ちる。

 

地球を照らす光源といえば、

太陽と月と、そして火山の炎だった。

まだ人間がいなかったころの話。

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旅をすること。

 

先の分からぬ道を進み続けること。

足元にふと美しさを見つけること。

なにもない空を仰ぐこと。

遠い日の記憶を思い出すこと。

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福江島の南西にある富江港は、珊瑚の港。

漁師たちはこの港を出て、100キロ沖まで1週間の船旅をする。

 

今日もちょうど陸に帰ってきたところだよ、と

珊瑚屋の店主が捕れたての珊瑚を見せてくれた。

夕焼けがこぼれ落ちてきたような、鮮やかなピンクのかけら。

 

職人の手によって美しいジュエリーやオブジェになって

百貨店のガラスケースの中でおすましする。

 

綺麗な海が育む、自然の宝石。

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五島の日暮れは長い。

日本の西の端で、海の上に日が落ちるから、

東京と比べると1時間ほど遅く感じる。

 

西の空がほんのり赤く色づいて、島々の影が少しずつ暗くなる。

空から落ちてきた星のように、漁火がぽつらぽつら浮かびはじめる。

日が沈みきって鬼岳に上ると、星々が川のように群れをなしている。

 

遠いところでゆらめく光が、いつも私を安心させてくれる。

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悠久の自然と、そのめぐりの中にある人の営み。

 

五島の島と、「五島リトリートray」で出会った

やさしい祈りと光の風景を、胸にそっとしまう。

 

私たちはいつも、大きな大きな存在に抱かれている。

ということを思い出すために、またここに来るのだろう。

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PROFILE

砺波周平

1979年北海道出身。 北里大学獣医畜産学部 生物生産環境学科卒業。 大学在学中から写真家の細川剛氏に師事する。キャンパスのあった青森県十和田市で、パートナーと廃材で古い家を直しながら暮らすうちに、日々の何気ない時間の中にたくさんの感動があることを知る。現在は八ヶ岳南麓(長野県諏訪郡富士見町)で、妻と3人の娘、犬、猫と暮らす。生活をテーマにした作品は大きな注目を集め、『暮しの手帖』の巻頭写真連載をはじめ、『dancyu』の連載「色の絶滅危惧種」、企業広告、雑誌などで幅広く活動している。 

Webサイト
http://tonami-s.com/

 Instagram
https://www.instagram.com/tonamishuhei/

若尾真実

10歳から詩を書きはじめる。PR会社、企業広報を経て、2020年に独立。コピーライター・編集者として、企業やブランドにおける言葉と空気のデザインに携わる。同時に詩人としての活動も始め、2021年に写真詩集『汽水』を出版。自然と人を見つめる言葉を書く。 

Instagram
https://www.instagram.com/mami_wakao/

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