双日株式会社

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豪州/マレーシア レアアース開発・生産事業

供給安定化と価格安定化を実現しマーケット拡大をめざす

2013年3月

(所属組織、役職名等は本記事公開当時のものです)

世界的に中国の生産シェアが非常に高く、日本市場への供給の大半を中国からの輸入に依存しているレアアース。中国の輸出制限の影響などにより需給構造が変化する中、長期安定供給と価格の安定化を図ってレアアース市場を維持・拡大するためには新規調達先の確保および多様化が課題となっている。双日が新たな供給源として戦略的提携を締結した豪州の鉱山会社ライナス社とのレアアース開発・生産事業について紹介する。

[ニュースリリース] 豪鉱山会社ライナス社とのレアアースの供給・拡張プロジェクトに関する戦略的提携の基本合意について

供給源多様化への取組みをより加速化



2010年11月、双日は豪州の鉱山会社であるライナス社との間でレアアースの供給・拡張プロジェクトに関して戦略的提携を行うことで基本合意した。その背景には、レアアースの供給に関わる大きな変化があった。

2010年当時、レアアースの供給は中国が9割以上のシェアを有していたが、中国は大きな需要国でもあり、国内産業への供給を優先させるとして輸出制限措置を打ち出し、輸出枠は5万トンから3万トンへ前年比4割減という大幅削減を発表、レアアース・ショックとも称される状況が出現した。さらに日本が中国政府と輸出拡大の折衝を行っている中で尖閣問題が起こり、対日輸出は非常に厳しい事態に直面した。

双日はこれまで中国との間で40年にわたってレアアースの取引実績があるが、中国の内需の高まりによって供給がかなりタイトになり、将来的に輸入国に転じることになると、新興国の成長とも相まってレアアースの需要はさらに拡大すると予想。新たな供給源を開発して安定供給を実現し合理的な価格を維持することは商社の重要な使命であるとの認識があった。こうした需要増を見込み、ベトナム(ドンバオ鉱床)でのレアアース開発に取り組んでいるが、中国の輸出制限により供給源の多様化に向けた取組みをさらに加速化する必要が生じた。

資源化学品部エレクトロマテリアル課でレアアースを担当する左藤富士紀は、「ベトナムでのプロジェクトは採掘開始が2013、2014年頃と即効性はない。一方、即効性があるプロジェクトという点でライナス社がターゲットとなりアプローチを仕掛けました。ライナス社は、仏系多国籍化学企業でありレアアースのパイオニア的な存在であるローディア社の技術サポートを受けていることもあって非常に有力株と判断。他商社とも競合したのですが、最終的には双日がパートナーとして選ばれました」と話す。

双日が商社として約40年にわたりレアアースに携わってきた実績が、その背景にあったという。

片野 裕課長(エレクトロマテリアル課)
「レアアースの双日」を全国に知らしめたプロジェクトがまさにライナスプロジェクトでした。ファイナンス契約まで約4ヵ月間、プロジェクトリーダーがほぼ毎晩徹夜で、社内関係職能や外部F/Aの皆様と打合せや資料作りを行っている姿は今でも忘れることができません。その苦労を無駄にしないためにも、レアアースの将来性をお客様にアピールし、安心して使っていただける原料を安定供給していきたいと思っています。

各職能部署の多大なサポートを力に

ライナス社では1万1000トンのレアアースを生産するフェーズ1プロジェクトの資金調達はすべて完了。まずフェーズ1を立ち上げて、ある程度資金を確保したうえで、フェーズ2を立ち上げる計画であったが、供給が逼迫したことからフェーズ2を前倒しで行う方針に舵を切り、その資金調達を双日がサポートすることになった。

最終的にはJOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のサポートを得て、2億5000万ドルのうち6%を双日が負担、94%をJOGMECが拠出。スキームは、10%が出資、90%が融資。その対価として、日本向けに8500トン(プラスマイナス500トン)の枠を確保した。双日は、ライナス社との間で締結した、同社が生産するレアアース製品の日本市場における独占販売契約および総代理店契約に基づき販売する。

「大変だったのはパートナー決定までのスケジュールが非常に短期間であったこと。ライナス社は、総額2億5000万ドルという投融資を前提に、10月中旬から月末までの半月間でどの商社と組むかを決めるという。他商社はファイナンスのスキームなどを提案していましたが、双日はそれでは特長を出せないと判断。販売に際してのマーケティングに絞って、課題や双日がサポートできる強みについて提案を行いました」(左藤)。

そして、ライナス社から双日と一緒にやりたい旨の連絡が来たのが11月3日。その翌週には香港において資源化学品部の舩橋弘典部長、エレクトロマテリアル課の片野裕課長、左藤らがライナス社側と具体的な協議を行い、24日に戦略的提携締結の運びとなった。

「翌年の2011年3月31日までに2億5000万ドルの最終的なファイナンス契約をすべて締結するという覚書だったため、期間は4ヵ月。3月11日には東日本大震災が起こり、実質的には3ヵ月ぐらいしかなく、非常にタイトな作業でした。私自身、初めての経験となる投資案件だったのですが、リスク管理や法務、ストラクチャードファイナンス、財務、さらには税務といった社内職能の多大なサポートを得て、期間内に無事ファイナンス契約を完了することができました」(同)。

板倉 寿美(法務部第一課)
NDA締結からClosingまできわめて短期間で進んだため、法務担当として最初から最後まで携わることができた非常に有意義かつ印象深い案件でした。契約交渉をしていた当時は、毎日のように社内関連部署との打合せやライナス側との電話会議があり、体がいくつあっても足りないような忙しさでしたが、一緒にプロジェクトを作っていく楽しさ、充実感はあったものの辛かった記憶はありません。当時も今も、そんな案件への出会いをうれしく思い、また、感謝しています。

双日が中心となり供給と価格を安定化


レアアースの生産(分離・精錬)はマレーシアに建設した工場で行う。完成は当初の予定より半年ほど遅れ2012年5月。

2012年11月には最初の原料が豪州から到着し、マレーシア原子力庁の仮操業許可の下、11月末より原料投入を開始し、2013年2月には市場への供給が始まった。双日は日本向けとして総生産量の40%を扱うことになっており、現状の3000トンから将来的には8000トンの扱いをめざしている。工場の見学ツアーも行われており、クアラルンプールにいる駐在員およびライナス社営業スタッフと連携を図りながら、ライナス社製品の需要拡大を図っている。

レアアースの市況は、例えば酸化セリウムは2013年2月現在キロ当たり10ドルを下回っている。2010年の4月頃は3ドルだったものが、2011年8月には150ドルまで急上昇するなど、変動率が非常に高い。そうした中でレアアースを使わない製品開発やレアアースの使用量の削減も行われており、需要はかなり減っているのが昨今の状況。日本の需要も約3万5000トンから約1万5000トンまで減少している。

「レアアースは、日本企業が過去40年にわたって技術・用途を開発、市場を拡大してきた分野であり、今後の市場拡大の可能性は非常に高いと期待されています。しかし、一昨年来のレアアース・ショックによりマーケットはかなりシュリンクしているのですが、それは価格のボラティリティが高いことと供給が不安定であることが大きな原因だと思います。これだけシュリンクしたマーケットを今後、維持・拡大するためには、まず当社が先頭に立ってレアアースの供給を安定化させ、価格も安定化させていくことが重要だと考えています」と左藤。

まずはライナス社との事業を軌道に乗せるとともに、今後もさまざまな形で安定供給に貢献する取組みを行い、商社としての役割を積極的に果たしていきたいと意気込みを示す。

舩橋 弘典部長(資源化学品部)
スケジュールを含め制約条件の多い案件でしたが、途中、もう無理だとは一度も思いませんでしたね。社内関係者はもとよりJOGMECやライナス社とも実現への強い意志が共有され、厳しい交渉の中にもお互いに対するリスペクトとチームスピリットがあったからだと思います。大詰めにきて東日本大震災が起きた時はさすがにスケジュールの遅れを覚悟しましたが、期限内に無事調印できました。相手側F/Aに“Sojitz, so good.”といわしめたのは痛快でした。

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