双日株式会社

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ブラジル・ニオブプロジェクト

レアメタル"ニオブ"の安定調達という使命

2012年2月

(所属組織、役職名等は本記事公開当時のものです)

近年注目を浴びるレアメタルは、双日の得意分野である。なかでも今回取り上げるニオブは、双日の取り扱いが国内総取引量のトップシェアを占めている。世界的な資源獲得競争のなかで、先見性ゆえに業界をリードし続けてきた双日のニオブプロジェクトを追跡する――。

ニオブという名の希少資源(レアメタル)

ニオブの結晶<
ニオブの結晶

ニオブとは、レアメタルと呼ばれる金属のひとつである。産出は地球のマグマ活動に由来し、ブラジル・カナダだけで世界の産出量のほとんどを占める。なかでも、ブラジルのアラシャ鉱山はその内でも圧倒的な埋蔵量、産出量を誇っている。

ニオブ添加により粒子が細かくなった鉄鋼<
ニオブ添加により粒子が細かくなった鉄鋼

ニオブが注目されるのは、鉄鋼に加えることで、強度や靭性(粘り強さ)を向上させることができるためである。ニオブ以外にも同様の特性を持つ物質(モリブデン、バナジウム)は存在するが、ニオブでしか実現できない特性もあり、その代替は容易ではない。

現在は主として高級鋼材の副原料として利用されており、近年中国やインドなどの新興国における高級鋼材の需要は飛躍的に高まってきている。ニオブは自動車の鋼板やパイプライン、ジェットタービンエンジンなどにも用いられるため、日本の鋼材メーカーにとっては世界市場で、競争力を発揮する重要な生命線ともいえる役割を担っている。

鋼材以外では、屈折率の高い光学レンズの原料や、人体診断装置のMRIに使用するコイルへの利用をはじめ多用途への利用が広がってきている。

素材に添加する比率、工程の段階によって、その素材の持つ特性はまったく別物になってしまう。これがレアメタルが「産業のビタミン」と呼ばれるゆえんである。

このニオブの特質に、双日は早い段階から着目し、経済成長に伴い、積極的に用途開発に協力しながら販路を広げてきた。

近年、中国を中心に世界のニオブ需要は拡大している。日本の素材メーカーは先んじて高品位素材の開発に奔走している。強靭な鋼板を用いて安全性を損なわずに軽量な自動車をつくれば、燃費面で優位性を築くことができるからだ。レアメタルはまさにこの開発の主役といって過言ではないし、鋼材という汎用的な製品をターゲットとするニオブは、その多様性からレアメタルのなかでも需要拡大への大きな可能性を秘めている。

双日とニオブの長くて深い付き合い

双日がニオブを扱い始めたのは、1969年にさかのぼる(当時は日商岩井)。

ニオブを安定的に生産、供給できる企業は世界的に多くはない。そのなかで、ブラジルのカンパニア・ブラジレイア・メタルジア・イ・ミネラソン(CBMM)社は、ニオブの世界生産量のトップシェアを占める。CBMM社は当時日の出の勢いだった日本の鉄鋼メーカーとの取引を望み、双日が仲介役を務めることでそれが実現した。そのころは、ニオブの持つ特性や将来性があまり注目されていない時代だった。

双日には先見の明があったといえるのではないか。メーカーとの間で仲介役をするだけではなく、みずからもメーカーの研究者を顧問として招くなどして、積極的に研究開発・用途開発に乗り出していった。“レアメタルに強い双日”の基礎はこの時代に築かれたといっていい。

1974年にCBMM社との間で日本における独占販売代理店契約を締結。1999年には日本他、アジア・オセアニア11カ国への独占販売権を取得し、直需家への技術サポートなどを含めた営業販売活動を展開。2001年には南米5カ国でも販売代理店契約を締結。すぐれたネットワークをもつ双日はCBMM社にとって貴重なパートナーとなり、両社は厚い信頼関係を構築していった。

一方で、中国、インド、韓国等における鉄鋼の増産は徐々に高品位鋼材にも及び、ニオブへの需要も年々高まってきたため、日本の鉄鋼メーカーが将来にわたってこれまでと同様にニオブの安定供給が得られるかどうか、不安の声も聞かれるようになってきたのであった。

日韓ニオブ連合

2010年、双日はCBMM社から出資参加の打診を受けた。提示されたのは、株式の15%で総額1500億円超にも及ぶ。

中国やインドなど新興国における高級鋼材の需要の拡大から資源獲得競争が起きている現状を考えると、日本側としては何としても15%の株式を取得し、安定調達体制を整えたい。

CBMM社が日本側に求めたのは、双日と、長年のニオブの顧客である日本の鉄鋼メーカーがコンソーシアムを組み、CBMMの戦略的パートナーとして出資参画することだった。日本の鉄鋼メーカーは協力を約束してくれた。彼らにとってもニオブの安定供給は重大問題である。次は韓国の鉄鋼メーカー。日韓が協力することによって、スケールメリットを発揮し、イニシアティブをとることが可能となる。

追い風も吹いてきた。日本の独立行政法人JOGMECが、法改正を受けてCBMM社に出資することが可能になった。日本の国策としてレアメタル調達の重要性が認められて、その第1号案件に適用されたのだ。

かくして、日韓連合によるCBMM社への共同出資が日の目を見ることとなった。

CBMM社と双日の関係は40年以上。時代とともに双日に求められるポイントは、時にマーケティング力、時に開発力、時に販売力など変化してきた。今回の共同出資プロジェクトへの参画により、双日とCBMM社は戦略的パートナーとして協力体制がより強化できたと考えている。これからも双日は業界のリーダーとしてニオブを初めとするレアメタルの安定調達を目指し、商社としての役割を果たしていく。

コーポレートの立場として本プロジェクトに関わって・・・

法務部第二課上家 卓也
リスク管理第二部 エネルギー・金属課課長 松岡 敏彦
ストラクチャードファイナンス部 資源金融課 密田 明

2010年より本案件について営業部署と協議をしました。協議開始当初は、金額が大きい案件であり、乗り越えなければならないハードルがいくつもある難しい案件であることが想像されました。ただし、ニオブの安定調達の主導権確保という目的のため、ぜひ実現させたいという思いがありました。また、新日鉄、JFE、POSCO とのパートナーとして、様々な利害関係の調整役を任されたのは、CBMM社と合金鉄部の40年来の信頼関係があったからだと思います。実際に現地に行き、営業部と一緒に交渉のテーブルに着くこともありました。契約が成立した後も、それぞれの立場で事業計画通りに進んでいるのかフォローアップしています。

契約に向けて本件に関わる当事者がどんどん増えていきました。案件をまとめ上げるには、スピードを落とすことなく着実に自身の役割を果たす必要がありますが、レアメタルの確保ということで、パートナーと共に優良案件を進めることができ、また双日の旗を立てたという結果に満足しています。ビジネスチャンスを逃さないという強い姿勢を営業から学ぶこともできました。今後、この案件を通して得た経験を生かし、総合商社のネットワークを通してのシナジー展開というものも期待できるのではないかと思っています。

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