双日株式会社

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米国における天然ガス火力発電事業

~バーズボロー天然ガス火力発電所~

2017年12月

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バーズボロー天然ガス火力発電所の建設現場

(所属組織、役職名等は本記事公開当時のものです)

双日にとって北米市場では初となる大規模発電事業への投資案件。バーズボロー天然ガス火力発電所は、ペンシルバニア州バークス郡バーズボローにて建設が進められている合計出力488MWのコンバインドサイクル方式(*1)の発電所。ジェネラル・エレクトリック(GE)社製の最新鋭のガスタービンおよび蒸気タービンを採用し、完工・商業運転開始予定は2019年5月。運転開始後は米国最大の電力卸売市場であるPJM(*2)を通して米国北東部に電力を供給する。

*1: ガスタービンと蒸気タービンの組合せにより通常よりエネルギー効率を向上させた発電方式
*2: 米国を代表する電力卸売市場の一つ。ペンシルバニア、ニュージャージー、メリーランド、ワシントンD.C.などを含む米国北東部13州を管轄

新しい地域、新しいスキーム

環境・産業インフラ本部の現中期経営計画の目標のひとつは、ビジネスに新機軸を打ち出すことと地域の幅出しによりビジネスチャンスを広げること。本件はその両方にあてはまる案件という位置付けとなる。

双日が取り組んできた東南アジア、中東湾岸地域でのIPP案件は、20年、25年という長期の売電契約に基づくもので、大化けはしないが堅実で安定した収益性が見込めるスキーム。

一方、今回は、双日として初めて長期の売電契約が付いていないタイプの投資案件に参入するもの。これはセミマーチャント(*3)といわれ、事業収入の一定割合を3、4年先まで確保ができ、その先は毎年契約を更新することで一定の収入を押さえていくという米国では一般的な事業スキーム。「そういう意味ではリスクもあるが、その見返りに長期売電契約のビジネスより高い収益が見込まれることが特徴。地域も広がり、かつ新しいスキームの案件への取組みであり、双日として初めてこのタイプのビジネスに踏み出すことができた」。電力プロジェクト部の浅野琢司部長はこの事業の意義を説明する。

*3: 基本的には電力の自由取引市場の中で、一定の投資支援が得られる制度。詳しくは下記。
セミマーチャント市場とは

1年間の発電容量をコミットする対価として実際の発電量には関係なく一定の収入が確約される制度(容量収入制度)を備えた電力卸売市場。容量収入制度は、過去の過度な市場自由化による大停電などの反省から、新規発電所建設に対する投資誘致のためのインセンティブとして、PJMが他市場に先駆けて1999年に導入した。

現中計から取組み開始

そもそも米国市場に目を付けた理由は何か。双日は東南アジア、中東湾岸地域での発電事業の実績が多々ある中、本部方針として、新しい地域、新しい仕事の分野を作っていこうという大号令があり、そこで米国においてインフラ事業系で何かできないかを現中計で取り組み始めたという背景がある。

「米国は、いうまでもなく市場規模が大きく、かつ制度が確立している。それと、現地に行ってみればわかるがインフラが古い。橋も道路も古い。ハイウェイなどはボコボコ。同じように発電所も古い。60年代、70年代に作ったアメリカが華やかしい頃の発電所で回している。それがもうもたなくなってきていて、新しいものを建てる需要が結構ある。本件はシェールガスを中心としたアメリカのエネルギー革命とインフラ再生に向けた動きがまさに交差したところにある案件だ」(電力プロジェクト部・横井八満)。

過去最大のIPP事業投資

社内的には初めての取組みとなるため、関係者全員がセミマーチャントというスキームを理解するために勉強するとともに、そこにあるリスクを分析する必要があり、事前準備に膨大な時間がかかったという。ビジネスモデルの勉強は1~2年前から始め、その流れの中で昨年の9月頃には案件候補を6件ほどに絞り込んだ。その案件内容を順番に精査・検討しながら買収のオファーを出していく。それは机上のものなどではなく、リーガルアドバイザイーや会計コンサルタントを雇うなど大きなコストをかけて行ってきた。

「今回の案件は10月頃からスタディを始めてぎりぎりのタイムラインの中で成約に至った。当社としてはIPP事業の中では過去最大の投資規模であることに加え、双日としては初めてのビジネスモデルであり、それも米国での挑戦という点では、モニュメント的な事例といえるのではないか」(浅野部長)。

タスクフォースで動く

電力プロジェクト部では、昨年の7月頃から、既存の課の枠を取り払った新しいタスクフォースのメンバーで、収益性が高く、早期に収益に結び付く新規案件を発掘しようと動いてきた。本案件はそれが非常にうまく機能して実現した事例だといえる。もちろん、法務部やストラクチャードファイナンス部をはじめとした職能のスピード感を持ったサポート、双日米国会社の各部署のサポートがあってこそ結実したプロジェクトだといえる。

「非常に濃厚な半年だった。今まで中東地域で携わってきたEPC案件の契約に比べると契約書の量が比べものにならないくらい多い。EPCの部分を含めて勉強しなければならない領域が広範で大変だった。事業期間が単発の工事案件と比べ何十年も続くことが大きな違いであった」(第二課・武岡 脩)

「このチームに異動して1年でこんな大きなチャンスに巡り会え、商社パーソンとして非常にラッキーだった」(第一課・清水卓哉)

次期中計に貢献する案件

環境・産業インフラ本部では、本件も含めて米国市場でのビジネス拡大を図っていくため、今年度から本部戦略要員としてニューヨークに1名派遣している。同様に東南アジア、インドを中心に複数名の戦略要員派遣を計画している。本部としては、次期中計の中で大きな規模感を持って貢献できる久々の新規大型案件の受注を契機にして、新規案件の連続受注につなげていきたいと考えている。

「佐藤社長(当時)は常々、スピード経営の重要さをメッセージとして発信している。本件は初めての案件ということで投資が確定するまで社内的にも紆余曲折がいろいろあったが、結果的にスピード経営が反映された案件だと思っている」と浅野部長。

新たな市場開拓のきっかけに

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完成予想図

現在、シェールガスの開発が世界的に非常に盛んになっている。トランプ大統領になってからインフラ開発・整備に拍車をかけようとしている。本件はまさにそういったトレンド案件のひとつになっている。

PJMでは石炭火力発電所や原子力発電所の退役に伴って新設の電力供給源への期待が高まっている。バーズボロー発電所では高いエネルギー効率を持つ最新鋭の機器を採用し、環境負荷を抑えた電力を安定的に供給することで、米国の電力インフラの安定化に貢献していこうとしている。また、価格的競争力のある天然ガスを世界で最も多く産出している米国のユティカおよびマーセラス・シェールガス田より調達することで、収益性の確保が可能となる。

双日は、北米市場では本件が初めての大規模発電事業への投資となる。米国において電力をはじめとする大規模なインフラ投資への期待が高まる中、電力・エネルギー分野で培ってきた実績を基に、今後も積極的に発電事業に取り組んでいく考えだ。

「セミマーチャントは将来的に日本でも導入されるかもしれないビジネススキームであり、今回の事例を新たな市場開拓のきっかけにしたいと考えている。また、自由化市場は豪州、シンガポール、トルコ、英国、メキシコなど他の地域にもあり、本案件をテコにして、各国の事情を見極め、検証しながら、同種の案件を応用できる機会を狙っていきたい。そういう点でも非常に大きな意味がある」と浅野部長は締めくくった。

アレン・ミンディ・アンから一言(法務部 第二課)
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入社早々、このようにチャレンジングなプロジェクトに関与することできて光栄です。母国アメリカでの重要な投資案件をお手伝いできたことを誇りに思いますし、米国人弁護士としての知識や過去の米国電力案件での経験を活かしてチームを支援できたことをうれしく思います。営業部の皆さんが、新しいプロジェクトモデルを擁し、新市場に果敢に参入する姿はとても印象的でした。今後も「挑戦する営業部」への支援を続けていきます。

本案件に携わった電力プロジェクト部のメンバー

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浅野 琢司部長

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横井 八満

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清水 卓哉
第一課

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武岡 脩
第二課

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建設現場にて

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