鉄道車両メンテナンス事業

北米・鉄道市場での新たな挑戦

2017年5月

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戦後初となるアルゼンチン向け鉄道輸出の船積みの模様

鉄道車両の取扱いにおいて60年以上の歴史を誇る双日の交通部隊。
世界各国で1万2,000両を超える車両納入実績があり、その中でも北米市場での実績は商社随一だ。
1956年に戦後初の鉄道輸出をアルゼンチン向けに成約。東京オリンピックの開催に合わせて新幹線が1964年に開通すると、日本の鉄道輸出の技術が世界的に評価され、双日(当時:日商岩井)は南アフリカ、ザンビア、スーダン、モザンビーク、ナイジェリアなどアフリカや新興国向けの初輸出を次々と成約。1968年の輸出シェアは50%を超えた。

最近では、インドでの日印政府共同プロジェクトの貨物専用鉄道敷設の大型案件を連続受注し、累計3,500億円超の契約を積み上げて他日系企業の追随を許さず、鉄道業界での存在感をさらに増している。
一方で、市場構造や商社を取り巻くインフラビジネスの環境は常に変化し続け、商社に期待される役割やその存在意義も刻々と変わってきている。今後の部隊のさらなる飛躍には、長い歴史を持つ鉄道車両の納入や大型プロジェクトにおける建設・工事の受注に加えて、市場規模が今後も拡大し、かつ持続的な収益獲得になりうる鉄道サービス事業への進出が必要とされていた。

そんな中、2015年12月4日、「双日、北米における鉄道車両の総合メンテナンス事業へ参画」をリリース。

戦略

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鉄道車両のメンテナンス事業の新規参画に投資先として狙いを定めたのは、カナダ東部で車両メンテナンス市場の一角を成すキャドレイルウェイ社。双日が培った北米鉄道業界でのネットワークも駆使し、各方面への幅広いアプローチの末にようやく辿り着いた投資候補先だ。カナダ東部において、同国政府・ケベック州・オンタリオ州政府の都市交通当局の旅客車両メンテナンスで盤石なシェアを確保し、米国およびカナダで“ClassI(クラスワン)”と分類される大手貨物鉄道事業者も顧客としている。

キャドレイルウェイ社が提供するのは、修理・改造・改装による車両の“安全かつ快適な走行”と“延命化”。このようないわゆるメンテナンスサービスは車両の使用に応じて必要なため、多額な調達資金が一度に必要とされる新車の納入ビジネスと比して、景気耐性が高く安定的な成長が見込める分野」(キャドレイルウェイ社小野寺秀執行役員:当社より出向)。

同社は、メンテナンス事業での米国・大手貨物鉄道事業者などとの関係を軸に、米国にも拠点を構えて事業を拡大する戦略を描く。

「同社経営者の米国進出への熱い想いが、我々が実績と知見を持つ米国を最注力国としている交通部隊の戦略と一致しました」(倉本英樹ニューヨーク駐在員:2015年当時)。

米国、カナダ、メキシコの国境をまたぐ北米大陸は、世界最大の運行路線長と鉄道輸送量を誇る。国土が広く、資源が豊富で、輸送に鉄道インフラが必要な国々だ。鉄道はCO2排出量が自動車の8分の1といわれるほど環境負荷が低く、米国の中長期的な経済成長と人口増加などを背景に、今後も着実な市場の拡大が見込まれている。

契約交渉

キャドレイルウェイ社とは、双日が出資することで同社が成長していく将来の絵姿を共有できたものの、お互いに相手を長期的に必要なパートナーと認め合うからこそ、投資に至るまでには膝を突き合わせての契約交渉を徹底的に重ねた。成長戦略や事業に対する想いは共有しても、出資における条件交渉はまったく別なのはビジネスにおいて当然のこと。M&Aの経験豊富な先進国カナダの企業を相手に、日本・ニューヨークの交通部隊が一丸となってアイデアを練り直しながら、厳しい交渉に臨んだ。

昼は契約交渉を徹底的に行い、喧々諤々の議論でお互いの主張を一歩も引くことなく戦わせながら、夜は酒を酌み交わしながら、お互いの想いや事業構想を夜中まで語り合う日々が続いた。

「一進一退の長期にわたる交渉の過程で支援してもらったリスク管理部、コントローラー室、法務部ほか、本件を担当した多くの関係者も遅くまで大変だったと思います。労を一切惜しまず客観的なポジションから支援してくれた各職能の方々には本当に感謝しています」(交通・社会インフラ事業部社会インフラ開発課・前原崇史課長)。

2015年11月13 日――。最初の面談から1年半にも及ぶ交渉が合意に至り、契約締結。同時に、双日はキャドレイルウェイ社の41%の株主となった。

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キャドレイルウェイ社出資セレモニーにて

出資直後の市況変化

あれから1年。

「鉄道業界での反響は予想以上に大きかった。日本の企業が海外の車両メンテナンス会社に出資し、鉄道業界に入りこんで現地の会社と固いパートナーシップを組むというケースは、我々が知っている限りではほとんどありませんでした。さらに、北米という地域性。日本の会社にとってアジアは地理的にもハードルは低く、比較的参入しやすいですが、一方で、先進国として成熟している北米市場、特に鉄道関連は日系企業へのハードルが非常に高い。そういう意味でもエポックメイキングであり、大変な反響でした」。
(交通・社会インフラ事業部社会インフラ開発課・前原崇史課長)

だが、出資直後の2015年末から、貨物鉄道市況の低迷という厳しい局面を迎えた。これは、中国経済の停滞が大きく影響したもので、資源の輸送を中心に北米内における貨物輸送量が一時的に減少し、必然的に車両の稼働率が悪くなり、メンテナンスの需要も落ち込んだ。

「ただし、この市場環境下でも収益を上げているのは、同業者の多くが貨物鉄道に過度に依存しているものとは異なり、キャドレイルウェイ社がカナダ州政府の都市交通当局の旅客車両メンテナンスで盤石なシェアを確保しているからです。一時的な貨物量減少の影響で貨物用の車両が減ることはあっても、我々の日常生活に必要な移動手段である旅客用車両が減ることはまずありません。一例を挙げれば、不景気でも山手線の運行本数が変わらないのと同じで、旅客輸送量が減らなかったことでメンテナンスに回る車両の数も大きく影響を受けず、収益の下支えとなっています。もちろん、旅客・貨物の両方に対応できるキャドレイルウェイ社の独自性を高く評価しての戦略的な出資だったわけですが」(交通・社会インフラ事業部・廣瀬正佳副部長)

変化=チャンス

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交通・社会インフラ事業部・廣瀬正佳副部長

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交通・社会インフラ事業部 社会インフラ開発課・前原崇史課長

もともとキャドレイルウェイ社は、米国への進出戦略という熱い想いがあり、双日グループの交通部隊の戦略と合致したことで出資が決まった。市況の変化に伴い、底堅い旅客需要を確実に取り込むために必要な経営施策を実行する。だが、変化は新たなビジネスの機会と捉えて、常に前を向いている。

「今の市場環境を冷静に判断して必要な対策を打ったうえで、チャンスを見極めて今まで以上に米国市場へ積極的に出て行って、新しい顧客を取り込める環境になってきました。実際に新規取引などの結果にもつながってきており、そういう意味では足元を固めつつも攻めるという状況になっています。また、企業の再編が起こりやすい環境でもあり、工夫次第では企業にとって大きく飛躍できるチャンスも増える。我々は当初の戦略から軸をぶらさずに、積極的に取り組んでいます」(前原崇史課長)

まずは交通部隊の新たな一歩を着実なものにしていく。そのうえで、将来的にはメンテナンスサービス事業の北米以外の地域への展開のみならず、鉄道の運行サービス事業にも参入し、事業領域を広げることを目指している。また、キャドレイルウェイ社と日系企業との協業機会を創出の上、北米市場における日本技術の導入、日本のインフラ輸出にも貢献していく。

交通・社会インフラ事業部の交通プロジェクト課では、インドにおいて貨物鉄道インフラの整備を進めている。今、アジア諸国では鉄道インフラの整備に注目が集まっているが、近い将来には先進国と同様にインフラを上手くメンテナンスし、いかにして安全に長い期間使い続けるかが大きな課題となって、そこにビジネスのチャンスが必ずあるはず。そのチャンスをいち早く捉えて、将来は北米以外でもメンテナンス事業を拡大させていく。

60年前に鉄道車両を輸出した先駆者からその歴史が始まり、他商社に先んじたインドでの大型案件の連続受注で際立った存在感を示し、そして今、メンテナンス事業でさらなる飛躍をめざす、交通部隊のチャレンジし続ける姿勢は今後も変わらない。

担当者から一言

2016年1月に双日に入社しました。大学卒業からずっとコンサルティング会社で働いていて、アドバイザーとしていろいろな会社に携わってきましたが、自分が主体的に、現場感をもって仕事をやりたいという想いを抱くようになりました。

その中でも特に双日が、インフラビジネス、鉄道事業という興味深い領域で人を募集していたのでエントリーしました。 双日の鉄道事業は、トレーディング、建設・工事プロジェクト、投資(M&AやPPP)と営業の携わるビジネスは多岐に渡っています。また、営業にいながらも、会計、税務、法務など経営全般についても学べる、やりがいのある仕事だと感じています。

自分がこれまで培ってきたM&Aや経営管理業務の経験と知見を活かして本事業を成長させ、第二、第三の案件を作っていきたいと思います。

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久保田 政延
(交通・社会インフラ事業部 社会インフラ開発課)
鉄道車両メンテナンス事業に携わる双日のメンバー

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