ベトナム 穀物飼料事業

~港湾施設を確保し、アジア地域における食料資源の安定供給に貢献~

2014年5月

(所属組織、役職名等は本記事公開当時のものです)

東南アジアの伝統的な主食といえばコメ。特にベトナムはフォー、ビーフンなどコメを原料とする麺類が豊富で、またタイと世界のトップを競うコメ輸出国でもある。しかし近年では、都市部を中心にパンやピザ、パスタ、ラーメンなどの外食産業が進出するなど小麦文化が急激に押し寄せており、ベトナムの小麦の輸入量は2001年からの10年間で約3倍に急増、今後さらに増加することが予想されている。また、豚、鶏を中心に肉食の消費も増加し、飼料原料としての大豆粕やトウモロコシの輸入が急増している。ベトナムの旺盛な穀物需要に対応するため、双日がベトナムで新規参入した港湾ビジネスを中心とした穀物飼料事業について紹介する。

[ニュースリリース]ASEAN域内で最大規模の穀物専用港が完成

ベトナム大手製粉会社に出資し、港湾インフラ整備事業に参画

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須藤拓也
CGG Trading S.A.取締役
(取材当時 穀物飼料部穀物課長)

2006年当時、日本国内のトレードが穀物ビジネスの中心であった双日は、日本のマーケットから、第三国の市場に出ていかなければ双日の穀物ビジネスの未来はないという危機感を感じ、活路を模索していた。その頃、シンガポール駐在となった須藤は、東南アジアでの新たな案件の発掘に奔走。特に穀物需要が大幅に伸びていたベトナムへの進出を考えていた。そういった中、長年小麦ビジネスのパートナーであったインドネシア最大の財閥サリムグループの協力を得て、2007年、双日はベトナム製粉大手のインター・フラワー・ベトナム社(Interflour Vietnam Limited/IFV社)の株式の20%を取得し、ベトナムで初めてとなる製粉および港湾インフラ整備事業への参画を果たした。この案件は、海外での穀物事業の展開の拡大、そして港湾事業への参入、という2つの点で双日にとって大きな意味を持っていた。

ASEAN域内で最大規模の穀物専用港の完成

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IFV社事務所
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IFV社はサリムグループとオーストラリア最大の農業協同組合コーポラティブ・バルク・ハンドリング社(Co-operative Bulk Handling Limited)との合弁会社であるインターフラワー・ホールディングス(Interflour Holdings Limited)が出資する事業会社で、2007年当時、年間の小麦製粉能力は約13万トン、ベトナム第二位の製粉会社であった。IFV社の製粉工場は、ベトナム南部では唯一となる、パナマックス級(6-8万トン)の本船が着岸可能な高深度港を建設できる地域であるチーバイ河岸に立地し、製粉工場に隣接しているIFV社が保有する船舶用岸壁は、同地域では唯一の穀物専用岸壁でもあった。

双日はIFV社への出資後、IFV社と共に港湾設備の大規模な整備プロジェクトを進めた。2007年7月にIFV社の製粉工場を中心に港湾インフラの整備・拡張、土地整備、穀物サイロ・倉庫の建設に着手。その後、2010年11月カイメップアグリ港(CAP)としての完成を果たした。

「CAPの荷役能力は年間約300万トン、穀物保管用の10万トンの倉庫や3万トンのサイロを備え、内航船への積み替え用埠頭を備えるASEAN域内で最大規模の穀物専用港となった他、新たな荷役設備の導入により格段に荷役スピードが上がり、高い港湾機能を有する施設にもなりました。そして、双日はこのCAPの使用権を得たことで、まさにこれまで切望していたプロジェクトが実現できると確信しました。」(須藤)

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2010年11月にIFV社の敷地に完成したカイメップアグリ港(CAP)。高い港湾機能で顧客からの信頼を得ている。載貨重量6~8万トンの本船が着岸可能であることが強みのひとつ。大量輸送により価格競争力のある飼料原料の供給を可能にする。

沸き起こる数々の課題の克服

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穀物専用港としては、ASEAN域内最高の荷役設備を備えており、荷役能力は年間約300万トン。張り巡らされたコンベアーシステムが効率的な荷役を可能にしている。
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穀物倉庫とサイロの総収容量能力は約20万トン。十分な保管施設を持つことで、滞船を避けることができる。
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施設入口のゲート。積載量検査のためトラックの重量チェックが行われる

現在IFV社と進めるプロジェクトは大まかに、製粉事業と港湾事業の2つのセグメントに分かれている。製粉事業のオペレーションはIFV社が行い、港湾使用権を持つ双日が穀物の輸入、および三国間取引を担当している。

もちろん初めからスムーズに事業がスタートしたわけではない。港湾拡張工事は土砂崩れにより完成は予定より1年の遅れ。港湾が完成してからも荷役設備の不具合や、貨物の欠減等、そのオペレーションにはさまざまな問題が発生した。その対応には苦労を重ねたが、それらの問題の一つ一つに誠実に向き合い、取り組んできた。

またこのようなエピソードも。ある時インドからのトウモロコシ本船が到着。これには少ないながらも双日の荷物も含まれていた。ところが、植物検疫の問題で2ヶ月もの間本船が港に足止め。滞船料が膨らむばかりで、複数のバイヤーがそれぞれのサプライヤーに個別交渉していては、まとまるものもまとまらない状況だった。そこで双日が音頭を取り、荷主の代表としてサプライヤーと直接交渉し、他国への転売と保障問題を解決。「双日はよくやってくれる」。そうした噂が広まり、多くの顧客からの信頼を獲得していった。

「なにか問題が起これば、東京・ベトナム・シンガポール総勢20名のチームワークをもって対処してきました。壁を乗り越えるたびに、一層チームが強くなり、結束が生まれる。私はこの強力なチームを心から誇りに思います。そしてこの事業で培った経験は、また新たな事業へと活かすことができると確信しています。」(須藤)

小麦粉生産能力を倍増し、ベトナムトップクラスの製粉会社へ

IFVが取り扱う小麦粉は80種類に及んでおり、ベトナム国内の旺盛な需要に対応する為、2012年には製粉設備を拡張し、製粉能力はそれまでの1日あたり500トンから1,000トンへと倍増。ベトナム最大の生産能力を持つ製粉会社となり、食生活の欧米化によりベトナム国内での小麦需要が高まる中、販売数量を伸ばしている。

また港湾事業では大豆かす、トウモロコシ、小麦などの穀物の輸入に関する各種港湾サービスを提供している。同国での穀物需要は大豆かす・トウモロコシで年10%、小麦で7.14%程度の伸びが予想されており、穀物輸入のための港の需要はますます増えると考えられている。双日はCAPを経由し、アメリカや南米から輸入した穀物原料をベトナムやカンボジアを中心としたメコン地域周辺へ供給しており、今後も地域周辺需要の高まりと共に事業の拡大と、穀物の安定供給を成し遂げていく。

また、双日はベトナム・カンボジアにおいて配合飼料の生産・販売事業にも参入している。また、グループ会社である双日ロジスティクスが行うベトナム、カンボジア、タイを結ぶ陸路輸送サービスにより、確実で効率的な国際複合一貫輸送が実現し、CAPを起点とした穀物バリューチェーンの構築が可能になった。

大型船での大量輸送によって価格競争力のある飼料原料を供給し、さらには双日ロジスティクスによる国際物流サービスの活用により、ASEAN域内におけるきめ細かい物流の要望にも答えていく。

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武田 浩文 CGG Trading S.A.取締役
(取材当時 食料本部長)

食料本部として国内トレード中心のビジネスからの転身を狙って実行した本案件。今やIFVはベトナム最大の製粉会社かつ有数の穀物港湾業者であり、双日はベトナム穀物業界の中で、穀物メジャーと並ぶ3本指に数えられるまでに成長。
ここまでの7年間どんな困難に当たってもあきらめなかったプロジェクトメンバーの頑張りと、IFV社を始めとする関係の皆様にこの場を借りて感謝するとともに、更なる飛躍を期待します。

プロジェクトメンバーの声
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Loan Nguyen ハノイ駐在員事務所

顧客の方々に荷揚げの速さやハイテク設備など、CAPの優位性や利点を理解して頂くにつれ、双日の取扱量も拡大していきました。当初、新しく知名度の低かったCAPが、今では顧客の誰もが知る有名な港であることは、とても感慨深いことです。
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塚本亮介 双日ベトナム会社

双日ベトナムの穀物トレードチームの顧客数はベトナムとカンボジア全体で約70社。CAPの優位性を活かし、南米および米国産大豆かすやトウモロコシを輸入し、ベトナムの飼料会社や問屋へ販売、あるいは他国へ輸出するスキームを構築しました。成長著しいベトナムでの事業だからこその大変やりがいを感じます。
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Viacheslav Zhurov 穀物飼料部 穀物課

海外のサプライヤーからの商品の調達、ベトナムのバイヤーへの商品の販売を担当しています。一つ一つの業務を確実に、かつ誠実に行うことによって、売上の拡大を成し遂げたことは最も印象的です。
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宇和島 徹 穀物飼料部 穀物課
(取材当時 Interflour Vietnam Limited)

IFV社はあらゆる点で進化を遂げ、質と量の両面で東南アジアのリーディングカンパニーになっています。伸びゆく市場であるベトナムでの今回の案件の経験によって、また新たな事業展開への想像力を掻き立てられます。

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