双日株式会社

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ベトナム 植林・木材チップ生産事業

森林回復と木材チップ生産の両立を実現する独自のビジネスモデルを構築

2014年2月

(所属組織、役職名等は本記事公開当時のものです)

「森林を回復させながら、木材チップを生産・販売し続けることは可能なのか」。森林の回復と伐採してチップを作るという、一見相反する2つの行為。双日は植林という切り口からその答えを見出し、独自の植林・木材チップ製造ビジネスを推進している。ベトナムにおける植林・木材チップ生産事業会社、VIJACHIP社。ステークホルダーと歩み続けてきた20年超の歴史がここにある。

植林経営者の自立を促すビジネスモデル

ベトナムでにおけるチップ植林事業の双日の拠点「我が国で植林と雇用創出に協力してもらいたい」。事業のきっかけは、1987年に開催された双日(旧日商岩井)との合同会議において、ベトナム政府から受けたそんな一言であった。当時ベトナムの森林面積は、戦争と伝統的な焼畑農業の影響から、1990年には29%(1943年:43%)にまで落ち込んでおり、荒廃地の森林回復という環境課題が背景にあった。

ベトナム政府からの協力要請を受け、双日はベトナム国営系林業会社5社をパートナーに迎え、1993年にベトナム、植林・チップ生産会社VIJACHIP社を設立。

そこでVIJACHIP社が着手したのは「植林経営者の自立」を促すビジネスモデルの構築であった。まずは農家へ植林を始めるための融資と植林技術を提供し、植林を始めやすい環境を整え、植林した樹木の買い取りを保証。従来は焼き畑農業の原料であった樹木を「安定収益が見込める農作物」へと変え、多くの農家に植林経営者としての自立を促した。さらに、2001年にVIJACHIP社が開始した小規模農家への苗木の無償配布は、植林従事者のすそ野を広げることに奏功し、2010年末までに無料配布した苗木の本数は約3,000万本(*)に上る。

VIJACHIP社と、そのビジネスモデルを受け継ぎ設立されたVIJACHIP Vung Ang社(2001年設立)、VIJACHIP Cai Lan社(2004年設立)は、2010年末までに累計39,274haの植林と、年間約50万人の雇用創出に成功。この持続的な植林を促すビジネスモデルは、地域の環境保全と経済発展に寄与し続けている。

* VIJACHIP社、VIJACHIP Vung Ang社、VIJACHIP Cai Lan社の合計


VIJACHIP社のビジネスモデル

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植林の大半は地力(ちりょく)を回復させるアカシア・ハイブリッドを採用。将来は他の樹種との混植も検討していく 植林作業の様子。日当たりを考慮して苗木は約2m間隔で植えられる

設立メンバーの声
下忠宏 生活産業部門 食料担当部門長補佐
木ノ下忠宏
生活産業部門 食料担当部門長補佐
「事業にかかわる人すべてが幸せでなければ、やる意味がない。」それがVIJACHIP社の創立当初から受け継がれてきた事業精神です。

木材チップ生産会社の運営は、農家の皆さんから原木の安定供給をしてもらわねば成り立ちません。植林の普及による原木の安定供給と、持続的な森林の回復の取り組みには、同じサプライチェーン上にいる農家の皆さんにも利益がもたらされる仕組みづくりが不可欠だったのです。
下忠宏 生活産業部門 食料担当部門長補佐
首藤典昭
双日ハノイ店 支店長
私がホーチミンに赴任した直後に担当したのが、VIJACHIP社の立ち上げでした。当時はその設立に向けて本社から多くの社員が出張に訪れため、出張者を連れて東奔西走する毎日でした。ベトナム政府、パートナー企業、農家、社員など、さまざまな立場のステークホルダーとの協力によりこのビジネスモデルが出来上がっていく躍動感は、今でも忘れられません。
Nguyen Duc Them 植林農家
Nguyen Duc Them
植林農家
20年前、いま私がプランテーションを運営している場所は荒地で、周囲にも誰も住んでいませんでしたが、VIJACHIP社との植林事業によってここに経済と社会が生まれました。私自身の生活レベルが向上したことももちろんですが、植林事業によって、森林の回復と、ここに経済と社会を生むことに貢献できたことが私の誇りです。

生産事業会社としての責任

松本隆文 Vietnam Japan Chip Corporation Ltd. 社長
松本隆文
Vietnam Japan Chip Corporation Ltd. 社長
Nguyen Phuc Vietnam Japan Chip Corporation Ltd. 副社長
Nguyen Phuc
Vietnam Japan Chip Corporation Ltd. 副社長
「生産事業会社は従業員の安全が最優先。従業員に安全な職場環境を提供するのが私の責任です。」VIJACHIP社の松本社長は、こう断言する。

「生産事業会社の経営には、従業員の安全確保が第一です。第二に環境。社会に迷惑をかけるようでは、事業継続はままなりません。“安全第一”という考えは日本では当たり前ですが、海外の現場で浸透させるには、経営側が「安全が最重要課題だ」ということを繰り返し発信することに加えて、さらに従業員に実感してもらうための取り組みが不可欠です。
当社では5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の外部コンサルタントを起用したり、抜き打ちで監査を実施したりとさまざまな施策を実行していますが、その狙いは“実感する機会”を従業員に積み重ねてもらうことにほかなりません。

経営からの発信と従業員が実感する機会の提供という2つのアプローチによって、少しずつ現場に根付いた安全性向上の取り組みや工夫が生まれてきます。それが従業員にとって"安全第一が当たり前"に変わった瞬間だと思います。“安全第一”が当たり前に変わるまで取り組み続ける。その結果、安全な労働環境を提供する。それが経営者の一番の責任と考えています。」

また、Nguyen Phuc副社長も「ベトナムの社会・環境へのVIJACHIP社の貢献は大きいと感じています。我々の仕事は会社経営にとどまらず、国にとっての有益な結果に結びついています。このような影響を与える仕事に携われることを誇りに思っています。従業員は言わば第二の家族。家族が安全に、且つ健康的に働ける環境整備は経営にとっては当然のことです」と語る。

かつて軽微なものを含めると年間50件を超える年度もあった構内での事故件数が、“安全第一”のための施策を強化した2007年度以降、件数は大幅に減少し、2012年度は2件。従業員が働きやすい環境の整備を目指して、さらなる取り組み強化を図っている。

木材チップ生産工程 ~安全のための取り組み~
各方面の契約農家から植林後約7年経過した樹木が毎日VIJACHIP社に搬入される

各方面の契約農家から植林後約7年経過した樹木が毎日VIJACHIP社に搬入される
樹木を木材チップ生産設備まで運ぶ従業員。重機と並走した作業のため、安全確保が第一。抜き打ちで監査も行う
樹木を木材チップ生産設備まで運ぶ従業員。重機と並走した作業のため、安全確保が第一。抜き打ちで監査も行う
木材チップを生産する従業員。構内では作業ごとにチームが分けられ、リーダーを中心に就業規則順守・安全への意識向上を図る
木材チップを生産する従業員。構内では作業ごとにチームが分けられ、リーダーを中心に就業規則順守・安全への意識向上を図る
従業員が集まり易い場所に無事故日数を掲示し、安全への意識向上を促す
従業員が集まり易い場所に無事故日数を掲示し、安全への意識向上を促す
生産された木材チップは最大30mの高さまで積み上がる。重機の扱いには危険が伴うため、定期的に操作研修を実施
生産された木材チップは最大30mの高さまで積み上がる。重機の扱いには危険が伴うため、定期的に操作研修を実施
日本・中国を中心とする製紙会社向けに輸出
日本・中国を中心とする製紙会社向けに輸出

20年超の実績が日本向けベトナム産木材チップ取扱量No.1へ

高尾佳孝 生活産業部門 林産資源部 製紙原料課 課長
高尾佳孝
生活産業部門 林産資源部 製紙原料課 課長
阪本旬二 生活産業部門 林産資源部 製紙原料課
阪本旬二
生活産業部門 林産資源部 製紙原料課
木材チップは木材をフレーク状に細かく切り砕いたもの。これを蒸解釜で薬剤とともに煮ることでリグニンという物質を除去して取り出された繊維質“パルプ”が印刷・出版用紙の原料となる。

ベトナム産木材チップの強みは、現地での原料・生産コストの低さと、他の主要な木材チップ輸出国と比較し日本への距離が近いことで物流コストを抑えられることによる割安感。さらにその輸出量を見ると、ベトナムは2011年に540万トンと過去最高を記録しオーストラリアを抜いて世界最大の木材チップ輸出国に成長。2012年も576万トンと輸出量世界一を維持している(出典:RISI社統計)。そのうち日本には、日本の木材チップ総輸入量1,113万トンの約14%にあたる約160万トンが輸出され(出典:林野庁「2012年木材輸入実績」)、当社はその約5割を扱い、日本におけるベトナム産木材チップの取扱量No.1を誇っている。

「製紙会社やサプライヤーがベトナムを含むアジア産木材チップの市況を知りたいときには、まず当社に問い合わせをいただけるため、我々はその期待に応えるために、日頃から多方面の情報を集めて発信するとともに、しっかりと相談に乗るようにしています。当社とのビジネスを通じて、商売上のメリットだけではなく、プラスαの付加価値を享受できる。そうして信頼を積み重ねていけることが、No.1であることの最大のメリットだと思います。

先人が築いたベトナムでの人脈を土台に、取引先をはじめとするさまざまなステークホルダーからの期待に対し、あきらめることなく実行し応えていく。この姿勢が、20年もの事業継続という結果につながっているものと確信しています。

今後も「相手のニーズに応えたい」との思いを原動力に、それを実行という形に変えて、「双日ならかなえてくれる」という多くの信頼を得て、本事業の継続と新ビジネスの機会創出につなげていきたいと考えています。」(高尾)

「めまぐるしく事業環境が変化する中で、20年以上も続くVIJACHIP社の植林・木材チップ生産事業の担当者であることに誇りを感じています。今後も現場のニーズに対応していきながら、本事業を通じて日本とベトナム双方の発展に貢献し、また次の世代へとバトンをつないでいけるよう引き続き頑張っていきたいと思います。」(阪本)

「植林と雇用創出に協力してもらいたい」というベトナム政府からの要請をきっかけに始まった双日の植林・木材チップ生産事業。20年超に亘り、現地政府、林業会社、植林農家、従業員などの幅広いステークホルダーと取り組んできた実績と信頼を礎に、さらなる事業継続・拡大と、新たなビジネスの創出を目指す。

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