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【NewsPicks掲載記事】
ビジネスジェットは、富裕層だけの贅沢品か?

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コロナ禍で航空業界が大きな影響を受ける中、新しい価値に注目が集まるビジネスジェット。
 双日が手掛けるビジネスジェットをテーマに、期待される役割や将来の目指すべき姿について、スカイマーク佐山会長との対談を通じ、現場の声をお伝えします。
(以下は2021年3月にNewsPicksで公開した記事です。)


新型コロナウイルスで、大打撃を受けた航空業界。そんな航空業界で、人知れず頭角を現している存在、それがビジネスジェットだ。

ビジネスジェットとは、公共の交通機関としてではなく、企業や個人がビジネス用にチャーターする(貸切で利用する)小型ジェット機のこと。従来はいわゆる「お金持ちの移動手段」と認識されてきたが、その常識がコロナを機に変わりつつあるという。

航空ビジネスで新領域を開拓してきたスカイマーク会長・佐山展生氏が、ビジネスジェットの先駆者である双日で、事業をゼロから創り上げてきた櫻井洋平氏に、ビジネスジェットが未来の移動をどう変えるのか聞く。

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ビジネスジェットの機体写真。双日は2021年3月より、最長航続距離を誇るボンバルディア社の最新フラッグシップモデル「Global7500」のチャーター運航をアジアで初めて開始。写真提供:双日

大打撃の航空業界で、問い合わせ3倍?

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1953年、京都府生まれ。76年、京都大学工学部卒業。94年、ニューヨーク大学(MBA)、99年、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。帝人、三井銀行(現三井住友銀行)を経て、98年にユニゾン・キャピタルを、2004年にGCAを、07年にインテグラルを共同設立。現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、京都大学経営管理大学院客員教授などを兼務。
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1953年、京都府生まれ。76年、京都大学工学部卒業。94年、ニューヨーク大学(MBA)、99年、東京工業大学大学院社会理工学研究科博士後期課程修了。帝人、三井銀行(現三井住友銀行)を経て、98年にユニゾン・キャピタルを、2004年にGCAを、07年にインテグラルを共同設立。現在、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授、京都大学経営管理大学院客員教授などを兼務。

佐山 航空業界はコロナ禍のこの1年、非常に苦しい時期を過ごしてきました。

スカイマークでは、昨年3月には利用者が激減しはじめ、4月に85%、5月には95%も減りました。1日平均2万2000人だった搭乗者は、一番少ないときで500人にまで落ち込んだんです。これは、大変なことだと。

搭乗者が減っても、もちろん固定費は出ていきますので、手持ちのキャッシュとどれだけお金を借り入れられるかが勝負。

私たちには幸い3月末時点で約130億円の現預金があり、その後も銀行から300億円の融資を受けることができました。需要が戻ったときに供給が間に合うよう、いまは辛抱して体制を整えているところです。

櫻井 双日の航空事業部も、コロナ禍で航空機需要が激減した影響を、大きく受けた1年でした。一方で、引き合いが増えている領域もあります。それがビジネスジェットです。

コロナ禍で通常の便数が激減するなかで、緊急で移動したいという需要が生まれたんです。問い合わせは通常の約3倍にも増えました。

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2001年、日商岩井(現双日)入社。民間航空事業部ボーイング課でシェアジェット事業の立ち上げから運営に携わり、06〜13年はチャーター運航会社(グアム・フィリピン)の営業担当副社長として出向、13年に本社に戻り18年にビジネスジェット事業課を新設。
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2001年、日商岩井(現双日)入社。民間航空事業部ボーイング課でシェアジェット事業の立ち上げから運営に携わり、06〜13年はチャーター運航会社(グアム・フィリピン)の営業担当副社長として出向、13年に本社に戻り18年にビジネスジェット事業課を新設。

佐山 具体的にどんな需要があったんですか?

櫻井 コロナ流行地域の駐在職員を帰国、または別の国へ移動させたいといったケースが、散見されました。アクセスが困難な海外の工場へ技術者を派遣したいというご相談も、増えていますね。

定期便が減ったことで、不便な場所へのアクセスは特に難しくなっているんです。

ビジネスジェットは従来、「お金持ちの重役だけが使うもの」という側面がやはり大きかった。それがいま確実に、別の使われ方が生まれているのです。

時間を創出するビジネスジェット

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佐山 同じ航空事業をやっている私でも、実はビジネスジェットについては知らないことも多いんです。ビジネスジェットを使うと、具体的にどのくらいメリットがあるんですか。

櫻井 最大の利点は、移動にかかる時間を大幅に短縮できることです。たとえば東京からニューヨークに行く場合は、1フライト当たり2〜2.5時間の短縮が可能です。

飛行機に乗るときは通常、2時間前に搭乗口に到着する必要がありますよね。ですが、ビジネスジェットなら、15〜30分前に着いていれば問題なし。民間機よりも高い高度で飛ぶためスピードも速く、多くの場合飛行時間も短縮できます。

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佐山 無駄な移動時間を減らして、有意義に使える時間を創出できることは、ビジネスパーソンにとって大きな価値です。単なる贅沢品だと思い込み、使ってみないのはもったいない

さらにビジネスジェットを使えば、自由に航路をカスタマイズできますよね。つまり、乗り継ぎの手間がない。私もスカイマークの民事再生を申し立てたとき、ビジネスジェットで地方空港を回ったことがありますが、無駄がなくて大変便利でした。

櫻井 おっしゃる通りです。たとえば、タイの工場を視察してからミャンマーに移動するなど、第三国同士を結ぶというような出張や、アメリカや中国といった広大な国での国内移動などでは、ビジネスジェットを使えば圧倒的に移動を効率化できます。

国内の地方の空港同士を繋いだり、国際空港であれば地方の空港から海外に飛んだりすることも可能。機内にも高速Wi-Fiがあるので、機内での時間も有効に使えます。

従来から大きなメリットとなっていた時間価値の最大化に加えて、昨今は感染症対策を目的とした利用も増加しており、今後もこのような需要が増えてくると予想しています。

機体の“シェアリング”というビジネスモデル

佐山 とはいえ総合商社である双日が、ビジネスジェット事業において、どんな役割を果たしているのでしょうか?

櫻井 ビジネスジェットの機体販売、チャーター運用、運航管理の3つを担っています。

販売に関しては、ビジネスジェットを買いたい企業や個人のニーズに合わせて、メーカー問わず最適な機体をご提案しています。大型ビジネスジェットの取扱高では、国内No.1の実績です。

さらに、機体を使わない時期は第三者に貸し出したいというオーナーに代わり、双日グループのビジネスジェット運航会社を通じてチャーター運用もしています。

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佐山 ビジネスジェットの機体売買だけでなく、オペレーションにまで乗り出したのは、どういう経緯があったのですか。

櫻井 双日は1956年にボーイング社の代理店となって以来、航空産業に長年携わってきました。小型ジェット機のビジネスチャンスを感じたのは、2000年頃。

いわゆる“ど真ん中”の民間機の領域は成熟しつつあったのですが、「ビジネス利用に特化した航空機」といった、ニッチ領域はまだガラ空き。そこに大きな伸び代を感じたのです。

そこで2003年から、新規事業としてビジネスジェット事業に参入しました。ですが実際始めると、代理店として航空会社に機体を売るのとは、全く次元が違うんです。

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ビジネスジェットはまだ全く普及していない時代でしたから、何もない更地にゼロから事業を創り上げるようなもの。

販売先のお客様も一般の個人や企業の方たちですから、「機体をどこに置くか」「整備はどうやるか」「故障したときはどう対応するか」といった業務も、私たちが担いました。

さらに「機体の維持費を減らしたい」というお客様の声も出てきたことから、お客様が保有する機体をチャーターし、有効活用するためのビジネスモデルも創り上げました。

それこそ最初は、カレンダーとにらめっこしながら手動で飛行スケジュールを作り、聞いたこともないマイナーな国への渡航要望に対しては、その国の空港事情を調べることから始める。試行錯誤の連続でした。

そして4年目の2006年に、ようやく黒字化を達成。2017年にはオペレーションを担う新会社を、2018年にはチャーター販売を担うANAホールディングスとの合同会社を設立。事業を本格化させているところです。

ビジネスジェットは、身近になるか?

佐山 ちなみにいま、ビジネスジェットの稼働率はどれくらいですか。

櫻井 稼働率は6〜7割強ですね。

佐山 まだまだ伸びる余地がありますね。リピーターが増えて稼働率が上がれば料金が安くなり、利用しやすくなりますよね。いくら便利とはいえ、やはり高価ですからね。

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ビジネスジェット機内の様子のイメージ。椅子は完全に倒すことができ、体を横たえて就寝することが可能だ。写真提供:双日
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ビジネスジェット機内の様子のイメージ。椅子は完全に倒すことができ、体を横たえて就寝することが可能だ。写真提供:双日

櫻井 いかにコストを下げて、料金に反映するかは、より多くの人にビジネスジェットを使っていただくために、重要な課題のひとつです。

価格が高くなってしまう背景には、空港関連のコストが高額である事情があります。着陸料や駐機料など、空港を使うにも料金が発生するのですが、特に日本は高額。空港によってはアメリカの7〜8倍です。

その結果、現状では一般的な渡航費用の5倍ほどかかってしまっています。

このような不便さ・コストを下げるために、当然安全水準は維持したまま、関係各所に働きかけることは必須で、いままさに取り組んでいるところです。

3〜5年のうちに環境を整えて、高級志向から実用的な使い方まで、機種やサービスといった利用メニューを多様化させて、様々なニーズに応えたいと考えています。

佐山 たとえば、新しい路線でビジネスジェットを飛ばすとき、「いまだけこんなに安く乗れます」とキャンペーンをするのは有効な手段です。

キャンペーン自体での収益は、見込めなくてもいいんです。それよりも話題になって、多くの人に認知してもらえることが重要。みなさん、いまはまだビジネスジェットを知らないだけなので。

ビジネスモデルも、幅を広げられそうですね。目的地が同じなら、相乗りにして価格を下げる手もありますよね。もしくは、モノを運んで、そちらで利益を上げる選択肢もあるかもしれません。

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新しい空の市場を切り開く

櫻井 私たちはいまビジネスジェットの市場を創り出そうと邁進していますが、佐山さんもスカイマークを通して航空業界に風穴を開けて、新しい市場を切り開いてきました。

佐山 新しい航空ビジネスには、ものすごいポテンシャルがある。スカイマークがシェアを伸ばしてきたのは、ある意味その証拠だと思います。

スカイマークに投資した2015年までは、定時運航率は最下位争い、サービスしない文化が浸透しているような、厳しい状況でした。

そこでまず取り組んだのは、「定時運航率日本一」を目指すことです。

定時運航率日本一は、社員全員が本気で頑張らないと実現できない、航空会社の総合力が問われるものです。そこを目指して全社一丸となり、2017年度から3年連続日本一を獲得しました。昨年は定時運航率に加えて、新幹線と航空会社の長距離国内交通の顧客満足度でも、日本一を獲得しました。

その結果、2015年以前は66%だった年間の平均搭乗率が、いまでは80%を超えているのです。料金が他より4割安くて、安全で定刻通りに運航し、心のこもったサービスでお迎えする。

一度乗ってみてそれがわかれば、お客様は自然とまた選んでくれるようになります。

需要を増やすには、とにかく知ってもらい、体験してもらうこと。ビジネスジェットなんてまさに、知っていて乗らないのではなく、知らないから乗らないんです認知度を上げ、一度でも体験してもらうことで、成長スピードはものすごく速まるのではないかと。

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櫻井 ありがとうございます。本当にその通りで、一度利用すれば、リピートしてくださるお客様が非常に多いですね。

私はこれから空の移動は、ますます多様化していくと考えています。空の移動の選択肢が増え、ライフスタイルやビジネススタイルに合わせて、利用者が“選べる”時代になっていくと思うのです。

定期便もあれば、ビジネスジェットもあり、スカイマークのようなMCC(ミドル・コスト・キャリア)もある。

機体という観点では、2025年には次世代超音速機が登場するという話もあります。そうすると東京−ニューヨークは片道6時間、シンガポールは2〜3時間で行けるようになるかもしれません。

時間の価値をより重視する方や、世界を飛び回って活躍する方、行きづらい場所でもご自身が現地に行く必要がある方にとっては、移動時間・コスト・メニューの多様性などの総合的な観点から、双日のビジネスジェットが最適な選択肢だと自負しています。

これからの航空ビジネスを、佐山さんはどう予想しますか?

佐山 コロナを経験して、「わざわざ現地に行かなくてもいい」ケースが往々にしてあることに、多くの人が気づきました。

東京から福岡に行かずとも、リモート会議をすればいい。その点では、航空会社の需要は減っていますし、コロナ後も元のレベルに完全に戻ることはないでしょう。

一方で、仕事のために、あえてオフィスにとどまる必要もなくなりました。ワーケーションに代表されるように、これまでなかった新しい移動の形も生まれているんですね。

そう考えると、目的やルートは変わっても、移動そのものはコロナ後も決して減ることはないはずです。

そういった多様化した移動ニーズに合わせて、多様な航空手段が生まれ、目的に応じて選ばれていくのだと思いますね。

そもそも競争があるからこそ価格も適正になるし、サービスの質も向上していくもの。スカイマークが定時運航率の1位を目指して頑張るのも、競合がいるからですよね。

切磋琢磨しながら、業界全体で空の市場を広げていく。そんな航空業界を、一緒に目指していきましょう。

空の移動を変えるビジネスジェット 詳しくはこちら TAP HERE!

制作:NewsPicks Brand Design
編集:金井明日香 写真:後藤渉 デザイン:田中貴美恵

関連情報

NewsPicks掲載記事(NewsPicksウェブサイト)

なぜ「商社」こそ、新規事業をやるべきなのか

(所属組織、役職名等は本記事掲載当時のものです)
2021年4月掲載

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