日本初の「総合ネット商社」をNTT-Xと合弁設立
2000年3月17日
日商岩井株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長:安武史郎)とNTT-X(※1)(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:池田茂)は、この度、インターネット上で企業間の取引を仲介する“総合ネット商社”を設立することで合意いたしました。
これは、既存の商流・業界知識・顧客のニーズを理解している総合商社と、ポータルサイト運営に実績を持ち、ECおよびWebマーケティングのノウハウ、コンテンツの編集能力などを有する情報流通企業が、互いのノウハウを持ち寄り“総合ネット商社”を創業するもので、新会社は、多くの業界に対する“企業間(BtoB)電子商取引(EC)のオープンマーケット・メーカー”として、新しい商環境の創造を革新的に進めて参ります。
新会社は、産業ごとに「業界ポータルサイト」を開設し、総合的なECプラットフォームを提供することをはじめ、BtoBマーケット運営に関するナレッジの蓄積と、その有効活用によって、各業界に別会社(業界ポータルサイト運営会社)を独立させていく形態をとります。
1.新会社の概要
新会社名:イービストレード(※2)株式会社
設立予定:2000年3月下旬
資本金:4億円(設立時)、2年以内に15億円に増資予定
出資者:日商岩井 66%、NTT-X 34%
(当面は2社とするが、その後は広く出資を募り、事業強化を図ります。)
2.新会社の事業内容
新会社は、まず、いくつかの産業に「業界ポータルサイト」を開設し、バイヤーとサプライヤーが、従来の取引形態ではカバーできない商取引を行なう際の「総合的なECプラットフォーム」を提供いたします。
業界ポータルサイトは、しばらくの間、新会社にて運営いたしますが、各業界におけるオープンマーケット運営が軌道に乗った段階で、当該業界のパートナー企業の出資も募りながら、別会社(運営会社)として独立させる方針です。その際、新会社は、独立会社に対して、ノウハウ、事業モデル、システムインフラ、資金・人材・情報の調達、ブランド、およびコンサルティングを提供し
ます(※3)。
新会社は、各々の業界ポータルサイト/EC事業の運営、および独立会社のインキュベートを通じて得られる各種データをナレッジデータベースとして蓄積し、さらに異なる特性をもつ他の業界におけるオープンマーケット運営モデルや、業界特性に最適なポータルサイトの構成への評価・分析に活用します。この“ナレッジデータベースを活用して、業界ポータルサイト及びその事業の
インキュベート(※4)するシステム”は、『ビジネスモデル特許(※5)』として、平成12年2月25日に特許申請いたしました。
3.新会社による「業界ポータルサイト」の概要
「コンテンツ」(業界ニュース、商品データベース等)、「業界コミュニティ」(フォーラム、ネットイベント等)の提供をはじめ、「オークション」や「逆オークション」(※6)、“goo”(※7)の検索エンジン活用による「バーゲニング情報検索」(※8)、中小バイヤーによる「グループ購入」(※9)等を実現いたします。また、業界によっては、売り手/買い手の匿名性を保ちながらの商談・取引を実現するアプリケーションも開発します。
ECを行なう場合の重要な要件となる審査・与信・決済機能の提供については、日商岩井のノウハウをはじめ、電子証明書などの活用による企業認証システムを構築するとともに、インキュベートする全ての業界ポータルサイトにおける取引総額を管理することで、“なりすまし”や倒産などによる不正取引を防止します。さらに、物流・保険についての自動手配システムも構築し、スムーズかつ安全な取引遂行を目指します。
これらにより実現する“商品流通の新しいオープンマーケット”は、中小をはじめ多くの企業に、販売・購買ルートを増やし、系列・商慣習を超えたビジネスチャンスを提供するとともに、調達・販売等にかかわる一切のサイド業務を支援し、コアコンピタンス(ものづくり)に集中していただけることを目指します。
新会社は、オープンマーケットの効果が出やすい業界から、BtoBポータルサイトを開設していく予定です。たとえば、メーカーから最終バイヤーまでの流通が何段階にも分かれ、流通コストが比較的高くなっている業界や、業界としてIT化が進んでおらず一層の効率化が図れる業界、最終バイヤーの規模が小さくかつ多い業界、あるいはスポットによる販売/購入が多い業界などが対象になります。具体的には、食品業界、繊維業界、建材業界、化学品業界、紙パルプ業界などを検討しております。
4.事業規模
2000年6月より順次、業界別ポータルサイトを開設していく予定です。新会社がインキュベートするポータルサイト数は、設立から3年で100程度を想定しており、参加企業数は3万社、取引総額は3兆円程度になると考えています。
また、本格的BtoBオープンマーケットの取引安全性、決済利便性を確保するために、大手都市銀行などにも出資参加を呼びかけております。2003年には市場規模68兆円と予想される企業間電子商取引市場へのアプローチを、異業種企業の共同事業で開始することは、まったく新しいマーケットを創造することに相応しい、と考えております。
5.背景(両者のねらい)
(1) 日商岩井
日商岩井は商社の未来像としてBtoBビジネスへの展開を志向しております。当社の最大の財産は業界知識とお客様(企業)との関係であり、そのお客様に新しい時代の新しいサービスを提供することこそ日商岩井の役目であると認識しております。新会社はこの志向を最も効率的に実現する手段であり、「BtoBマーケットメーカー」として多くの業界に対し、新しい商環境の創造を革新的に進めていきます。日商岩井は新会社を通し、各営業部課の『ネット商社』化をダイナミックに加速させBtoBマーケットを運営します。また与信、決済、物流等の機能に関しても日商岩井の専門知識を利用してネットに対応したサービス会社を設立し、BtoBマーケットのバリューを上げる戦略です。さらにITX等日商岩井グループ各社も本件への参画を検討しております。新会社「イービストレード株式会社」はそれらのネット商社・サービス会社を生み出す「起業会社(インキュベート会社)」の位置づけです。またこのノウハウ・環境を利用し、日商岩井以外の個人・組織のBtoB起業支援も積極的に行っていきます。
なお日商岩井が先日発表しましたアジア域内におけるBtoBビジネス展開(インドネシアのシナルマス財閥との合弁会社設立(※10)も世界的に進めているBtoB展開のひとつであり、順次世界規模でのマーケット連携を行っていきます。
(2) NTT-X
NTT-Xは、BtoC市場における実績(ポータルサイト「goo」の運営、ECおよびWebマーケティングに関する各種プラットフォームの提供など)を基盤に、BtoC市場の10倍以上の規模になると見られるBtoB市場へ本格参入することとしています。「BtoBポータル/EC」事業を展開するにあたっては、業界独特の商慣習や会社間の繋がりに関するノウハウが必要不可欠であり、今回、第一
として、日商岩井と合弁会社を設立することとしたものです。新会社においては、日商岩井との協力に基づき、同社の得意な分野を中心とするビジネス展開を行うほか、新会社によるBtoBポータルサイトへの参加企業に対する、インターネット環境の提供やシステム構築、ASPサービスの提供も行なっていく予定です。
(※1)「NTT-X」
正式社名:株式会社エヌ・ティ・ティエムイー情報流通NTT再編に先立ち、1999年4月1日営業開始。資本金115億円。NTTのマルチメディアビジネス開発部および研究所からの201名(平均年齢29.5歳)で構成。
国内最大級のポータルサイト「goo」(http://www.goo.ne.jp)を運営するほか、ITプロフェッショナル養成サイト「イーキューブ」(http://e-cube.ne.jp)、オンラインマガジン「HotWiredJapan」(http://www.hotwired.co.jp)など、数々のオンラインビジネスを展開し、また、先ごろ(2000.3.1)発表された「NTTグループのASPサービス」の企画・設計・開発も担当しています。他方、多数企業へのITコンサルティングおよびSI事業・アウトソーシング受託も展開しています。
(※2)「イービストレード株式会社」
社名の「イービストレード(ebisTrade)」は、「ebis」(エレクトロニック・ビジネス・インフォーメーション・システム)と、「Trade」(商業、貿易)の合成語で、業界別ポータルサイトを通して行われる取引を表す造語です。
(※3)独立会社からは、サイト参加料、売買手数料、インターネット広告料に関する「配当」と「運営費」(システム使用料、情報費、コンサル費など)、および「ロイヤリティ」を徴収します。
(※4)「インキュベート」
“Incubate”とは、「ふ化させる」という意味です。
(※5)「ビジネスモデル特許」
はっきりとした定義はありませんが、コンピューターやインターネットといった情報インフラを使って実現した新規のビジネスのやり方や仕組みに対して与えられる特許。ビジネスの手法の部分に特徴が置かれているコンピュータ・ソフトウェア関連の特許。
(※6)「逆オークション」
買い手側が購買したいものの条件を提示し、それを見た売手側が条件に合致する商品で販売できる価格を入札していき、もっとも安い価格をつけた売り手が販売することができます。通常のオークションとは異なり、販売価格がどんどん下がっていくことから逆オークションと言われます。
(※7)「goo」
世界最高レベルの検索エンジンと、日本最大規模のWebデータベースを中核に、Eビジネス・プラットフォームとしての安定性、コンテンツの編集力を誇る、NTT-Xが提供するポータルサイト「goo」には、現在1日あたり1,100万のページビューがあります。ニュースからエンターテインメントまでの最新情報に加え、六法や辞典にいたる専門性の高い情報まで、多彩なコンテンツを提供しています。また、手軽で便利な「フリーメール」、こだわりを満足させる「gooショップ」、インターネット・アンケートを実施する「gooリサーチ」なども提供しています。また、「日経goo」は、日本経済新聞社と共同で提供するビジネスサイトです。
(※8)「バーゲニング情報検索」
商品のキーワードや商品の価格帯などをトリガーに、いろいろな商品の中から条件にあった商品をリストアップする機能です。価格による並べ替えや、機能による並べ替えなどを行い各種比較をすることにより、ユーザーは簡単に最も適切な商品を手にすることができます。
(※9)「グループ購入」
同じ商品を小口ロットで買い手を集め、大口ロットでの発注とすることにより、購入価格を低く抑えることが可能になります。また売り手側にとっても大口の在庫を効率よくさばくことが可能で、販売価格は多少低くなりますが、在庫ロス等が少なくなるメリットがあります。
(※10)「シナルマス財閥との合弁会社設立」
日商岩井、インドネシアの大手財閥シナルマスグループ、米国BtoBソフトベンダーの最大手CommerceOne等の共同事業。アジア全域のBtoB事業展開を目的としたASIATRADEALLIANCE.COMを設立します。
以上