双日株式会社

閉じる

CEOメッセージ

「令和維新」の時代に双日が進むべき道とは

2021年4月、双日は「中期経営計画2023 ~Start of the Next Decade~」(以下、中計2023)を公表しました。副題が示すように、この3ヵ年は2030年に向けて新たな一歩を踏み出す期間と位置づけています。

では、2030年に私たちはどこを目指すのか。

企業理念や、「双日が得る価値」と「社会が得る価値」を実現し続けるため、2030年における「目指す姿」として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げました。これは、総合商社としての使命と考える、必要なモノ・サービスを必要なところに提供することを通じて、「マーケットニーズや社会課題に応える事業や人といった価値を創造し続けることにより、企業価値の向上を実現する」というものです。

この「目指す姿」の設定に至った背景をステークホルダーの皆様と共有することが、中計2023で掲げる目標や、それを実現するための戦略をご理解いただくための前提になると考えていますので、順を追ってご説明していきます。

まずは、外部環境の変化です。

私は、どのような商売にもそれぞれ「旬」があると思っています。旬を捉えることが商売を成功に導く要諦であると同時に、いつか必ず旬が過ぎ、陳腐化します。さらに、社会構造の変化によって、陳腐化が急速に進むことがあることに注意しなくてはなりません。

過去の苦い経験を例に挙げます。1990年代前半、当社は中南米において固定電話事業に投資しました。当時、中南米では固定電話網が発達しておらず、固定電話の旬がこれから始まると見込んでいたのです。しかし、その後携帯電話が先に普及し、日本が数十年かけて歩んできた道を、わずか数年で飛び越えてしまいました。

今、デジタル化の進展や、ESGに対する意識の高まり、価値観・ニーズの多様化といったメガトレンドの中で、さまざまな社会構造の変化が起きています。さらに、コロナ禍が引き金となり、その変化が加速しました。身近なところでは、これまで日本で定着が進まなかったテレワークやWeb会議が普及するなど、デジタルの活用により、働き方が大きく変わりつつあります。まさに、これらに関連するデジタルサービスが、瞬く間に旬を迎えました。一方、その裏側で、旬を過ぎた商売の陳腐化が急速に進むことが予想されます。

このように、コロナ禍を契機として、5年や10年をかけて徐々に変化していくと考えられていたさまざまな事柄が、この1年で一気に変化しました。あたかも260年以上にわたる江戸幕府の時代が終焉し、明治という新しい時代を迎えた明治維新のように、第二次世界大戦から復興し、高度経済成長期、バブル崩壊を経て延々と続いてきた日本の社会構造が大きく変わろうとしている。いわば「令和維新」が到来したといえるでしょう。

「令和維新」の時代に、双日はどのような道へと進んでいくべきなのか。一ついえることは、すでに旬を過ぎた商売に固執するのではなく、自らを変えていかなければならないということです。

非資源分野での資産の積み上げと収益化までのスピードが課題

次に、現状の課題認識について、ご説明します。2021年3月期は「中期経営計画2020」(以下、中計2020)の最終年度でした。中計2020では、初年度に当期純利益が700億円を超えるなど、順調な滑り出しとなったものの、2021年3月期はコロナ禍の影響に加え、脱炭素社会への移行動向を踏まえた一部の一般炭権益や油田権益に対する手当を構造改革費用として前倒しで計上したことにより、当期純利益は目標に対して大幅な未達に終わりました。しかしながら、この3ヵ年でみると、ROEは平均で9%程度と当社の株主資本コストである8%程度を上回る水準であり、最低限の価値創造はできたと評価しています。

一方で、この3ヵ年を振り返り、特に課題であると感じているのは、非資源分野での資産の積み上げと収益化までのスピードです。当社では、市況ボラティリティの高い資源分野から比較的市況に左右されにくい非資源分野への収益基盤の転換を進めてきましたが、収益へのインパクトでは未だ資源分野が大きいのが現状です。もちろん、非資源分野の収益化には時間を要すると私自身の経験からも理解はしています。例えば、私が1992年に携わったロシアへの日本車の輸出事業は、当時の年間販売数が300台程度で、極めて小さな事業でした。しかし、根気強くやり続けた結果、2000年を過ぎた頃には数十億円の利益を出す事業にまで成長しました。ただし、当時と現在では、世の中の変化のスピードが圧倒的に異なります。私たちは常にこの変化のスピードに対する危機感を強く持たねばなりません。

投資した事業を早期に収益化するためには、意思決定のスピードをさらに速めていく必要があります。その点で、双日の企業文化ともいえる風通しの良さは一つの強みになります。例えば、私自身も各本部長と10分や20分といった短い時間であっても最優先で話をする機会を設け、毎日のように対話しています。こういった対話が双日の至るところで、上下あるいは、部署間の垣根なく行われています。頻繁にコミュニケーションをとることで、いざ意思決定が必要になった場面で迅速に動き出すことができるのです。2021年2月に発表したロイヤルホールディングス株式会社との資本業務提携契約の締結は、この一例といえるでしょう。双日が展開する食品・リテール事業、航空事業と、同社が展開する事業との間でのシナジーの発揮が期待できることから、課題である非資源分野の強化に大きく貢献するものと考えています。コロナ禍という大きな危機を機会へと変える一手とすべく、同社との連携を深め、成果へとつなげていきます。

総合商社としての原点に立ち返る

これまでご説明してきたような外部環境の変化と、現状の課題認識を踏まえ、2030年に向けて双日はどのような姿を目指すべきなのかを、社外取締役や経営陣、各本部長との間で徹底的に議論しました。また、この議論を部長から課長、現場へと落とし込んでいき、そして、私たちがたどり着いた答えが、総合商社としての原点に立ち返るということでした。

では、原点とは何か。双日の源流の一つに鈴木商店という会社があります。鈴木商店は1874年に、洋糖引取商として創業しました。しかし、日本の工業化が進む中で、さまざまな製品の原料となる樟脳の可能性に目を付けると、台湾の樟脳油の販売権を取得し、そこから製造業にも進出していきました。樟脳を原料とするセルロイドや人造絹糸(レーヨン)を製造する会社を起こし、それが現在の株式会社ダイセル(なお、同社の設立には、鈴木商店だけではなく、双日の源流の一つである岩井商店も大きな役割を果たしました)、帝人株式会社へとつながっています。さらに、重工業分野にも手を伸ばし、現在の株式会社神戸製鋼所の基礎を作りました。このように、明治維新という時代が大きく変化する中で、「必要なモノ・サービスを必要なところに提供する」ために、次々と新しい事業に投資し、ビジネスモデルを変えてきた。これが、総合商社の原点です。

冒頭で私は「令和維新」という言葉を使い、双日が進むべき道を問いかけました。私たちは大きな変革期の真っただ中にいます。今こそ、総合商社の原点に立ち返り、世の中の変化を捉え、これから旬を迎える新しい事業、新しい土地に投資し続けていかなくてはなりません。加えて、双日は、一人ひとりが起業家精神を持ち、自由に発想して事業を創造していく集団です。そのために一人ひとりが強い責任感のもと、マーケットの課題を取り上げ、解決策を提案していける能力を個々人が持ち、組織としては風通しの良さとスピードを重んじる社風であること、これが双日らしさです。2030年における「目指す姿」として掲げた「事業や人材を創造し続ける総合商社」にはそのような想いが込められています。

「目指す姿」に向けて、4つのポイントを挙げました。

1つ目は、「マーケットインの徹底」です。明治維新の時代は、マーケットである日本にとって必要なモノ・サービスを、海外から取り入れ提供していました。マーケットインの思考がいわば当たり前だったのです。しかし、時を経て、マーケットの中心が海外に移ったにもかかわらず、いつしか日本にあるモノ・サービスをいかに海外に売るのかという、日本を起点としたプロダクトアウトの思考に囚われてしまうようになりました。マーケットである現地の人々の感覚で、今どのようなモノ・サービスが必要であるかを考えていかなければ、現地の人々が抱える真の課題を解決することはできません。プロダクトアウトの思考からの脱却を図り、マーケットインの思考を徹底し、商売を現地化していく。これが、事業創造への第一歩になります。

2つ目は、「共創・共有の実践」です。プロダクトアウトの思考では、すでにあるモノ・サービスが起点となりますが、マーケットインの思考から事業創造を目指した時には、そのモノ・サービスを用意するところから始める必要があります。しかし、一から創り上げていては、時間も労力も足りません。さまざまな人を巻き込みながら、社内外の情報や機能を活用していくこと、つまり共創・共有の実践が必要であり、総合商社の本領を発揮するところでもあります。

3つ目は「スピードの追求」です。商売は、旬が過ぎれば陳腐化します。先ほど中南米での固定電話事業を例に挙げましたが、その頃以上に、変化のスピードは格段に上がっています。この「令和維新」の時代において旬を捉えるためには、スピードの追求が欠かすことのできない要素になっていると認識しています。

最後が「組織・人材のトランスフォーメーション」です。「マーケットインの徹底」「共創・共有の実践」「スピードの追求」を推進するにあたっては、現在の組織や人材を抜本的に変革することが大前提だと考えています。

目指すべき姿・方向性

収益性を高め価値を創造していく

中計2023年の定量計画としては、「株主価値の創出」と「成長と財務規律」の観点から、それぞれ目標数値を設定しました。新規投資の着実な収益化と既存ビジネスの収益構造の抜本的な改革により、規模と収益性の両方を追求し、株主価値を創造していきます。

そのためには、収益性の高い規模感のある投資に挑戦していくことが必要です。過去2回の中期経営計画では、当社としてはそれぞれ3,000億円程度の投資を行うことを目標としました。結果として中計2020では未達には終わりましたが、以前と比較すると、積極的な投資を実行することができ、成果も出てきています。また、社員の投資に対する考え方やスキルの成熟も図ることができました。

一方で、規模感のある投資案件はまだ少ないのが現状です。目の付け所は良かったとしても、投資規模が小さいと、当然のことながら期待できる収益も小さくなります。当社発足当初など、財務基盤が脆弱であった頃の記憶から、大規模な投資案件に躊躇する思いが社員の中に残っているのかもしれません。しかし、ここ数年の私たちの実績に鑑みれば、そのようなステージは過ぎたことが分かるはずです。中計2023では、これまで十分に行えていなかった数百億円単位の投資にも果敢に挑戦し、成長の実現につなげていきます。そのためにも、引き続き規律あるキャッシュ・フローマネジメントを行うとともに、投資に対するモニタリング体制の強化を進めます。

また、中計2023ではPBR(株価純資産倍率)1倍超を定量目標に加え、社内外に対してその決意を表明しました。株価は自社の努力だけでコントロールできるものではないため目標とすることの是非について議論はありましたが、企業価値を創造できていないという市場の評価を看過すべきではないと判断したものです。また、この私たちの決意を配当方針にも反映しています。安定的かつ継続的に配当を行うとともに、内部留保の拡充と有効活用によって株主価値を向上するという方針のもと、連結配当性向30%程度を基本とすることに変わりはありませんが、下限配当を設定し、株主の皆様に対して、平均株価ベースではありますが、配当利回り4%相当を最低限お約束しています。

3つの注力領域に経営資源を集中する

中計2023では、サステナビリティを前提とし、競争優位性・成長マーケットを追求できる領域に経営資源を集中的に投下することを成長戦略として掲げています。具体的には、「社会課題としてのエッセンシャルインフラ開発とサービス提供」「3R(リデュース、リユース、リサイクル)事業の深化」「東南アジア・インド市場のリテール領域取り組み強化」「国内産業活性化・地方創生の取り組みを通じた価値創造」の4つの戦略を掲げるとともに、これらをデジタルや新技術、社内外での共創と共有により実現することを目指します。なお、この成長戦略を念頭に、営業本部体制を9本部から7本部にする機構改革を行いました。

続いて、成長戦略を踏まえた中計2023における3つの注力領域について、ご説明します。

まず、「インフラ・ヘルスケア」です。いわゆるエッセンシャルインフラサービスへの需要は世界的にも高まっているほか、双日としてもこれまでの投資実績などを通じて一定の知見を深めている領域でもあります。先ほど言及した機構改革により、インフラ・ヘルスケア本部を立ち上げましたが、工業団地の開発・運営を行っているチームと病院事業、電力事業のチームが連携を取りやすくなることで、共創・共有の実践が進むことを期待しています。「インフラ・ヘルスケア」についてはトルコの病院PPP*事業が成功事例の一つとして挙げられます。世界最大規模の病院運営事業で、すでに収益面でも貢献しており、社会的意義も大きいことから、まさに「双日が得る価値」と「社会が得る価値」を体現した事業といえます。また、当社が行った投資の中では特に規模の大きな投資を行った事業であることから、今後の投資に向けた自信にもつながりました。

次が、「東南アジアやインドといった成長市場でのマーケットイン志向」です。ベトナムやフィリピン、インドネシアなどは、私たちがこれまでも投資を行ってきた国で、今後も人口が増えていく予想であり、経済成長も見込めます。特にリテール領域での投資を是非実らせたいと考えています。双日は、鉄鋼や機械、化学品に強みを持つ総合商社であるため、リテール分野における知見が不足しています。しかし、リテール領域こそ、マーケットインの思考を発揮すべきところです。日本での成功体験がないからこそ、プロダクトアウトの思考に囚われる必要がないので、私はむしろプラスであると考えています。例えば、ベトナムのコンビニエンスストア事業をミニストップ株式会社と共同で展開していますが、生活習慣が異なる日本のモデルをそのまま持ち込んで成功するものではありません。ベトナムの人たちが必要とするモノ・サービスが、日本と同じわけはないのです。展開している店舗数がまだ少なく、全体としては黒字化できていませんが、コンビニエンスストアという業態が浸透しつつあることを実感しています。また、その運営を支える惣菜メーカーや物流卸、倉庫事業は黒字化するなど、着実に成果も上がってきていますので、マーケットイン思考に磨きをかけ、より大きな成長を狙います。

最後が、「素材・サーキュラーエコノミー」です。鉱山開発をはじめとする資源分野のビジネスは一度で1,000億円単位の投資になることに加え、市況次第で業績が大きく左右されるリスクの高いビジネスです。「素材・サーキュラーエコノミー」は、そういったボラティリティの高い従来型ビジネスとは異なる形での資源分野のビジネスといえるでしょう。すぐに結果が出る領域ではありませんが、脱炭素社会を実現するためには、今から取り組んでおくべきであると考えています。

* PPP(Public Private Partnership):官民連携事業

変化を機会に変える人材を創造し続ける

どのような事業においても人材が最大の経営資源であることは間違いありません。しかし、総合商社のように、事業そのものを入れ替えていくような変化を前提とした業態においては、その比重はさらに大きなものとなります。中計2023では、人材戦略における目指す姿として「多様性と自律性を備える『個』の集団」を掲げました。

多様性については、さまざまな観点で語られるべきではありますが、双日の持続的な成長の鍵を握る一つが、女性の活躍です。ここ数年、当社に入社する半数近くが女性です。ライフイベントなどを経ても女性がキャリアを止めることなく活躍できる環境を整えることが、当社の成長の大きな原動力になります。

次に、自律性についてお話します。私は総合商社の商売をしていく上で大切なものは、責任感、誠実さ、創造力、チャレンジ精神だと思っています。これが、自律性を育む基盤となります。また、当社は過去に経営難から採用を抑えていた時代があるため、40歳前後の世代が少ないという特徴があります。一方で、近年は毎年100人以上の採用を続けており、20代、30代の層が厚くなっています。その結果、必然的に若い世代の社員であっても広い範囲の業務に携わることができるほか、裁量権のある仕事を任せられる環境があり、早い段階から自律性を持って仕事に取り組むことができます。このことは、目指す姿に向けて果敢に挑戦していく上での双日の強みの一つであり、双日らしさを形づくる重要な要素となっています。

双日の強みである起業家精神や自由な発想を次の世代へと継承していくための試みとして、「Hassojitzプロジェクト」と銘打った新規事業コンテストを行っています。私の発案から2019年に始まり、2021年には3年目を迎えました。双日出身で、米国GE社のシニア・バイス・プレジデントや株式会社LIXILグループCEOなどを歴任した藤森義明氏にも審査員を務めていただきましたが、「自分のお金を投資してもいい。それくらい面白い“発想”に出会えた発表会でした」という評価をいただきました。やはり、商社の基本は、必要なモノ・人・技術・サービスを必要なところに届けること。時代が大きく変わる中で、新規事業創出は不可欠です。その思いを、この数年間本気で社員に伝え続け、情熱を持って取り組む社員の姿から、形になり始めていることを実感できました。これからも、その情熱を持ち続けられる環境を私自身が責任を持って作っていきたいと考えています。

加えて、顧客・社会ニーズを価値創造につなげる上での大前提であり、全社員が持つべき共通言語として位置づけているのが、「デジタル」です。事業モデル、人材、業務プロセス・データインフラの3つに対し、デジタルを活用した改革を進めています。業務プロセスの効率化については、中計2020期間中にビジネスイノベーション推進室を立ち上げ、ペーパーワークの見直しやRPAの導入を進めてきたことで、コロナ禍に伴うリモートワークにもスムーズに対応できました。人材に関しては、各現場が自律的にDXへの対応を進めることができるように、デジタル人材に関するKPIを設定し、全社員を対象としたデータ分析や解析の研修を開始しています。そして、私自身が最も重視しているのが事業のところで、マーケティングのDXに注力します。これまで勘に頼っていたような部分をデータ化し、マーケティングを行うことで、新規事業創出の確度を高めたいと考えています。2021年4月にはDX推進委員会を立ち上げ、その最終責任者・実行者である委員長を私が務めることとしました。全社におけるDXの取り組みの進捗把握や効果検証を行い、確実に成果へとつなげていきます。

2つの価値の実現のために

当社のサステナビリティへの取り組みは、「双日が得る価値」と「社会が得る価値」という2つの価値の考え方が土台にあり、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に基づくことを前提にしています。

ESGという言葉に対する関心が高まり始めたのが2016年頃、私が専務執行役員だった時代と記憶しています。当時は対応が十分ではなく、ESG評価機関からの評価も芳しくありませんでした。しかし、代表取締役社長に就任した2017年にサステナビリティ推進室を設置し、脱炭素や人権に対する取り組みの強化に本格的に着手しました。現在、私の予想を上回るようなスピードでESGに対する社会の関心は高まっており、日本でもさまざまな会社が2050年にカーボンニュートラルという目標を掲げるなど、社会課題の解決に取り組むことがスタンダードになりつつあり、当社としても、サステナビリティを経営の中心に据えて取り組んでいきます。

また、コーポレート・ガバナンスの強化にも引き続き注力しています。2021年6月の株主総会では、役員報酬のうち中長期の業績や企業価値に連動する割合の増加や、社外取締役の増員を決定しました。社外取締役比率は50%となり、経営の透明性と監督機能が強化されたことを実感しています。

自らが変化し、変化を乗り越え続ける

投資の神様とも呼ばれるウォーレン・バフェット氏が率いる米国のバークシャー・ハサウェイ社が、日本の総合商社に投資したことが話題となりました。当社自体は、そのスコープに入らなかったわけですが、この報に触れた時、私たち総合商社のビジネスに対する見方が変わってきたことを実感しました。

数年前のことです。米国の投資家との対話の中で、私たちの広範な事業ポートフォリオを見わたし、当社の経営に対する疑義を呈されることが多々ありました。欧米的な考え方でいえば、多くの事業を営んでいる総合商社という形態は、どこにリスクがあるか分からず、コングロマリットディスカウントの対象として敬遠されてきたのです。

しかし、「選択と集中」によってリスクは回避できるのでしょうか。私が米国のデトロイトに駐在していた1980年代に取引していた会社の多くは、自動車メーカーなら自動車、機械メーカーなら機械と、まさに「選択と集中」で事業を行っていました。しかし、そのほとんどが、今では生き残っていません。

時代は常に変化し、それに伴い必要なモノ・サービスは変わります。日本には私が知る限りでも、創業から100年以上続く会社が当社を含め多数ありますが、その歴史の中で、時には主たる事業を変えながら、創業から現在まで生き残ってきた会社が大半を占めています。つまり、自らが変化し、変化を乗り越え続けてきた。その代表格が、総合商社であり、変化を可能とする事業ポートフォリオを有していることが強みであると、私は確信しています。だからこそ、私たちは「事業や人材を創造し続ける総合商社」という旗印を掲げたのです。

総合商社としての使命を果たす

私自身が当社の扉を叩いたきっかけは、海外に出て働いてみたいという、ささやかなものでした。そして縁あって入社し、実際にさまざまな国や地域を訪れ、現地の人たちの暮らしの中に入り込んでいく中で、それぞれの土地で必要なモノ・サービスが異なることを直に感じることができました。それが、マーケットインの思考の入り口になります。代表取締役社長に就任して以降も、時間の許す限り、世界各地に足を運んできましたが、残念ながら、コロナ禍の影響で、なかなか海外には行けていません。その中で、2020年12月に私の故郷でもある九州の事業会社をいくつか視察した時の話をしたいと思います。

その中の一つが、2008年に設立した双日ツナファーム鷹島です。双日が30年以上にわたりマグロの輸入を行っている中で、マグロの枯渇という問題が顕在化してきたことを受け、本マグロ養殖により安定供給を行うために立ち上げた会社です。ここでは地元の高校などを卒業した人たち40人程度が働いています。視察の際に話をしていると、地元が好きで地元で働けることに喜びを感じていることが伝わってきました。このような時に、私は地方にもっと産業を創っていかなければならないという思いに駆られます。東京一極集中といわれる状況は日本が抱える大きな社会課題の一つです。地方に元気がない。その原因は、雇用が地方にないことです。では、そのために必要なモノ・サービスは何か。私はそれが、一次産業ではないかと思っています。双日が株式会社として資本を投入することにより、旧来の一次産業に変革をもたらし、効率的に運営していく。それが地方の元気を取り戻すと同時に、今後訪れることが懸念される食糧難の時代を乗り越える日本の力になると信じています。


九州視察で現場従業員と語らう藤本(写真右から2番目)

「必要なモノ・サービスを必要なところに提供する」という総合商社の使命。それを胸に刻み、世界中に広がる双日の社員の皆さんには、それぞれのマーケットの声に是非耳を傾けてほしいと思います。そこから新しい事業の芽が生まれ、社会課題の解決につながり、「双日が得る価値」と「社会が得る価値」という2つの価値が創出されます。

長引くコロナ禍の中で、リモートワークやオンライン面談が日常となり、不便に感じることが少なくなりました。一方で、人と人が直接向き合うコミュニケーションの大切さを改めて感じています。やはり自分の本音や思いを相手に伝えること、また、相手の本音や思いを感じ取ることは、Web越しでは難しいのではないでしょうか。新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、ニューノーマルな日常が進む中で、投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様との直接の対話の場というものを模索していきたいと考えています。

2030年における「目指す姿」の実現に向けて、双日は動き出しています。その道程を、投資家をはじめとするステークホルダーの皆様とともに歩み、その進捗を共有していきます。PBR1倍超を目指すということは、数字だけのことではなく、ステークホルダーの皆様の期待を超えていくという決意表明です。「令和維新」というこの大きな時代の変化の中で、私たちは今後も変化を機会に変えるべく、自らを変化させ続け、常に対話を重視しながら、皆様の期待を超えていく所存ですので、引き続き当社事業へのご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

2021年9月
代表取締役社長 CEO
藤本 昌義

CFOメッセージ(HTML版)

議長メッセージ(HTML版)

統合報告書2021はこちら

戻る

当ウェブサイトは、当社に関する情報の提供を目的とするものであり、当社株式の購入や売却を勧誘するものではありません。

投資に関する最終決定は利用者ご自身のご判断において行われるようお願い致します。また、当ウェブサイトに掲載された予測および将来の見通しに関する記述等は、資料作成時点での入手可能な情報、一定の前提や予期に基づくものです。よって、実際の業績、結果、パフォーマンス等は、経済動向、市場価格の状況、為替の変動等、様々なリスクや不確定要素により大きく異なる結果となる可能性がありますが、当社グループは、当ウェブサイトの情報の利用により生じたいかなる損害に関し、一切責任を負うものではありません。

また、当社ウェブサイトの情報の掲載にあたっては細心の注意を払っておりますが、掲載した情報の誤りや、第三者によるデータの改ざん、データダウンロード等によって生じた損害に関し、当社は一切責任を負うものではありませんのでご了承ください。

なお、当ウェブサイトの内容は予告なく変更、掲載を中止することがあります。

このページの先頭へ