双日株式会社

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社長メッセージ

このたびの新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々、ご遺族の皆様に謹んで哀悼の意を表すとともに、罹患されている方々や困難な状況におられる方々が一日も早く回復されますよう心よりお祈り申し上げます。また、医療の最前線で感染症に立ち向かっておられる医療従事者の皆様には、深い尊敬と感謝をお伝えしたいと思います。

総合商社の役割を果たすために

私たちのビジネスの基本は、必要なモノを、必要なところに、必要な時に届けることです。「コロナ危機」の影響で人やモノの流れが滞って経済が停滞している状況下において、あらためて「ビジネスを止めない」という総合商社の役割をしっかりと果たしていくことの責任を感じています。また、その責任を果たしていくうえで、社員や取引先、ビジネスパートナーの安全と健康を守ることが最優先にあると考えています。

今般の感染症拡大にあたって、まずは当社から感染者を出さないよう、私たち経営陣が自ら先頭に立ち、「先手先手」で慎重かつスピーディーに対策を実行してきました。

具体的には、WHOがパンデミックを宣言する前から、交通機関の混雑を避けるフレックスタイム制を強化・徹底したのに加えて、3月からは本社の全社員に対して原則、在宅勤務を指示しました。その後も、政府の行動計画や要請を踏まえながら、出社率を20%以下に抑えるよう指示し、運用してきました。また、緊急事態宣言の発令下、お子さんを保育園に預けることができない社員や、家族のサポートのため落ち着いて在宅勤務ができない社員には、無理せずに有給休暇を取得することを奨励し、そのうえで年度末に有給休暇が不足することの無いよう「コロナ特別休暇制度」を新設しました。

現在の「ウィズコロナ」の下では、在宅勤務と通常勤務を併用しつつ、オフィス内では社会的距離をしっかり確保しながら、社員が安心して最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、新しい働き方と職場づくりに率先して取り組んでいます。

また、国内外の取引先やパートナーの皆様とは密にコミュニケーションを取り、感染症の影響を個別に勘案して柔軟に対応していくよう、現場の営業本部長に指示を出しています。

※ 2020年7月末時点では出社率を5割以下にて運用。

事業を通じて感染症拡大防止と医療の充実に貢献する

加えて、グループの事業を通じて、感染症拡大の防止と医療の充実に貢献する取り組みを国内外で行ってきました。

感染症の拡大が深刻さを増すにつれて、一時期マスクがほとんど手に入らなくなってしまったことは、皆様も記憶に新しいのではないかと思います。当社が手掛ける保育園事業の現場からも「マスクが全く足りない」というSOSが届いていました。そこで、感染症の拡大防止に貢献するため、かつ当社グループの事業継続のために、グループ会社の第一紡績株式会社にてマスク生産に取り組むこととしました。第一紡績ではすでに、他の製品に使用する素材を、マスク製造へ応用する準備を進めており、保育園事業の現場だけでなく、双日グループ全社員にマスクを配布することができました。

また、2020年5月、当社がトルコ・イスタンブールで手掛ける官民連携の病院運営事業、バシャクシェヒール チャムアンドサクラ シティー病院が開院しました。同院は、トルコ国内で増加する新型コロナウイルス感染症患者の方々を、一日でも早く、一人でも多く受け入れるために、竣工予定日を4ヵ月前倒しして全面的に開院する運びとなりました。

世界的な感染拡大を受けて大変多くの罹患者が発生しているなか、限られた人員と資材で奮闘する医療現場に対して少しでも貢献できることを誇らしく思うとともに、医療に携わる企業としての責任感に、あらためて身の引き締まる想いを感じています。

2020年3月期概況

実質利益は概ね見通しを達成

中期経営計画2020(以下、中計2020)の2年目にあたる2020年3月期は、米中貿易摩擦に端を発した世界経済の減速で厳しい事業環境でした。当社事業においても、化学、鉄鋼関係など素材関連事業の低調や、自動車事業、肥料事業が苦戦したことに加え、市況の低迷がみられたことから、第3四半期決算公表時には通期の業績目標を720億円から660億円に下方修正しました。コスト削減の徹底や発電事業等の資産入替を計画通りに取り組んだ結果、実質利益は修正見通しの660億円に到達しましたが、期末において急激な石油ガス価格下落による減損が生じたこと、2021年3月期のパンデミックによる収益見込みの減少に伴う税コストの増加を反映したことにより、最終的な当期純利益は608億円となりました。

その結果、収益性に関しては、ROA 2.7%、ROE 10.2%となり、ROEは中計目標の10%超をクリアしましたが、ROAは目標の3%から若干の未達となりました。今後も「コロナ危機」の影響で引き続き厳しい事業環境が続くことが見込まれますが、各本部の収益性を高めることでROE向上につなげていきます。

「有言実行」の非財務面への取り組み

また、2020年3月期は、非財務面においても、取り組みを着実に実行した1年でもありました。

当社は、2050年を見据えた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」の実現に向けて、各営業本部や外部有識者とのダイアログを行い、脱炭素に関わるリスクと機会について継続的に議論を深めています。脱炭素に向けた取り組みとして、2019年5月に発表した、「石炭権益事業及び石炭火力発電事業に関する取り組み方針」──すなわち「1.2030年までに一般炭権益資産を半分以下にする」「2.原則、一般炭権益の新規取得は行わない」「3.石炭火力発電事業の新規取り組みは行わない」に関しては、2020年3月に豪州一般炭権益を売却するなど、順調に進捗しています。

また、コーポレート・ガバナンス強化に向けた取り組みにも注力しています。2020年6月の株主総会以降、社外取締役1名を増員し、取締役会における社外取締役比率は4割を超えるまでとなりました。また、社外取締役である大塚氏に取締役会議長に就任いただくこととなりました。社外取締役の各氏には、客観的かつ冷静な意見を寄せていただいており、今後も形式にとらわれない取締役会をともに作っていきたいと考えています。指名委員会や報酬委員会の在り方についても日々議論を重ねており、経営の透明性確保と監督機能の一層の強化を図っていきます。

これらの取り組みは、世界的なESG評価機関からも評価されています。今後も全社を挙げて意識を高め、これらの取り組みを継続し、さらなる企業価値向上への推進力としていきます。

2021年3月期に向けて

厳しい環境のなかでも投融資による成長をしっかりとやり抜く

厳しい経営環境が続いた2020年3月期が終わりましたが、2021年3月期はより一層タフさを増しています。全世界でみられる外出自粛・禁止、操業停止・遅れ等の影響を受け、自動車関連、鉄鋼や化学品といった素材関連、リテール関連分野において、一部の事業活動の停止や遅れが生じています。特に、耐久消費財にあたるような車や家、マンション等については、今後買い控えが起こってくるだろうと推測しており、鉄鋼産業や、それを含む自動車産業における需要減が、業績に影響を与えていくことが予想されます。これらの情勢を踏まえ、2021年3月期の当期純利益の見通しは、期初にて、新型コロナウイルス感染症による影響額を△230億円として試算し、さらに、収益基盤や収益性を強化していくため、事業の売却やアライアンスを見据え、その構造改革費用として△50億円を織り込み、400億円としました。期初から3ヵ月経過して、主要事業の多くは概ね期初に想定した通りで推移していることが見えてきましたが、鉄鋼産業やそれを含む自動車産業における需要減やその回復の遅れが、業績に影響を与えることが想定されることから、誠に残念ですが、2021年3月期第1四半期決算を踏まえ、当期純利益を300億円に見直しました。

一方で、コロナ禍においても、これまで成長ドライバーとして掲げてきた投融資案件からの収益貢献で利益成長を図るという方針に変わりはありません。

中計2020の3年間を通じて、当社は3,000億円規模の投融資を実行するべく取り組んできました。2年目を終えた時点で1,700億円を実行済み、残り1年間で1,000億円程度の投資を見込んでおり、これを止めずにやり抜く体力は十分に残っています。当然、外部環境の変化に応じて収益化のタイミングがやや遅れることはあるかもしれませんが、今後、1年ないし2年以内に稼働開始し、収益化される案件も見えています。厳しい環境下だからこそ、これまで継続して貫いてきた施策が間違っていないことを改めて感じています。

成長基盤の充実によるレジリエンスの実証

話は過去に遡りますが、世界的に猛威を振るう新型コロナウイルス感染症の拡大に直面し、10年以上前に世界経済を襲ったリーマンショック当時の双日を思い返しました。

当時と今では、当社は大きく変わりました。

まず、ここ10年近くの財務戦略においてキャッシュフロー重視の経営を続けてきた成果によって、「コロナ危機」を経てもなお、当社の財務基盤は揺るがないことを実感しています。加えて、私を含めた代々の経営者は、事業ポートフォリオを資源から再生可能エネルギー事業や病院運営事業などの非資源に軸足を移すことで、安定した収益基盤の構築を目指した経営を心掛け、非資源分野において稼ぐ力をつけることに注力してきました。同時に、資産効率の低い案件だけでなく、バリューアップされた資産も含めた資産売却を行うと同時に、優良資産の積み上げを図ってきました。

今の双日における安定的な収益基盤と揺るがない財務基盤は、これまで積み上げた努力が成果として実ってきており、当社の自律的な回復力(=レジリエンス)を実証できていると認識しています。引き続き厳選した投融資の実行を基本とし、経営と現場が一体となりスピード感をもって優良資産を積み上げ、「資産の質の良化」を推進していく計画です。

基本方針に従い、安定的かつ継続的な配当を実施

最後に株主還元については、2020年3月期の年間配当は17円、連結配当性向は34.8%となりました。また、当社として初となる、3,000万株の自己株式取得を実行しました。2021年3月期においても、前期と同様、連結配当性向30%程度という中計2020の基本方針に従い、安定的かつ継続的な配当により株主の皆様への還元を果たしていきたいと考えています。新型コロナウイルス感染症の影響は依然として不透明な部分はありますが、2020年8月において、2021年3月期の年間予想配当は10円としました。連結配当性向は40%となりますが、「安定的かつ継続的に配当を行う」当社の基本方針の下で、新型コロナウイルス感染症の影響による業績水準が永続的でないこと及び期初のガイダンスで通期業績見通しを400億円としていたことを総合的に勘案したものです。コロナ禍においてもこれまでと変わらず収益を積み上げ、成長サイクルのスピードを軌道に乗せ、企業価値を向上させることで、株価・配当額の上昇につなげていきたいと考えています。

アフターコロナ時代の「2つの価値」

「アフターコロナ」では、人々の価値観も大きく変わっていきます。サプライチェーンや物流システムの進化はますます加速し、第4次産業革命が現実化していくでしょう。日本企業の中にはこれまで、“最適生産”という名目の下、生産コストを削減するためにサプライチェーンを海外に求め、特定の地域に集中させる動きが見られました。これは「コロナ危機」のなかで浮き彫りになった日本の産業全体の課題であり、迅速に見直していかなければいけないと感じています。ある程度、国内に生産を戻すということも必要かもしれません。さらには、供給体制の見直しとともに、値段が少し高くても良いものを見極めて、その価値を正しく伝えていく活動に並行して取り組むことも重要ではないかと思います。

「ポストコロナ時代」に突入する中計2020の最終年度は、ヘルスケア関連や、電力をはじめとするインフラ関連分野への投資を検討しています。また、東南アジアを中心とするリテール事業についても、安定的な収益化に向けて、さらなる拡張を計画しています。

それらのなかでも私は、一次産業、すなわち農業を強くすることに注目しています。今般の「コロナ危機」のなかで、国家を越えた人や物資の動きがややスピードダウンし、「自国を守らなければ」という意識が強くなりました。その一環として、食料自給率を確保していくことは喫緊の課題であろうと思います。

さらには、地方に雇用を創出することです。日本の経済は都市部に集中しており、地方では過疎の問題が非常に大きくなっています。地方の産業がどんどん消失し、雇用が無くなっている。それがさらなる地域格差を生み出している。この負のスパイラルを止めることは、さまざまなステークホルダーとともに地域に根差した経済を創り上げていくべき私たち総合商社が、真っ先に取り組んでいかなければいけない問題だと思っています。

これは理想論かもしれませんが、国を挙げて今の農業システムを変え、“農業株式会社”を一般に株式公開するような仕組みを構築してはどうかと考えています。事業として農作物の豊作・不作のリスクをマネジメントしつつ、しっかりと利益を創出し、“農業株式会社”の会社員として雇用される人々が増えれば、地方で生活する人口も増えていくのではないでしょうか。

例えばベトナムでは、農業人口において小作農家の割合が大きいことが知られています。当社は、経験値に頼らずデータで農業を行う“工業化”を支援するべく、2020年2月、農業のスタートアップ企業に出資しました。パートナーは農業分野におけるAI・IoTサービスのソフトウェア開発から、ハードウェアのデバイスの製造に至るまで、生産性向上や環境配慮を実現するソリューションを提供する機能を有しており、当社はベトナムの農業のスマート化を推進するとともに、かねてから育んできたベトナム内外の食料・農業分野におけるネットワークを活用し、付加価値の高い食料・リテール関連事業の開発を加速させることで、地域の雇用創出と経済の活性化に貢献していきたいと考えています。これらは、SDGsの17のゴールに直結する活動でもあります。ビジネスによって自社の利益を積み上げながら、あらゆるステークホルダーにとっての価値を追求していく。この2つを両立させることが、総合商社のミッションであり、当社が企業理念として掲げる「豊かな未来」のあるべき姿です。

「コロナ危機」においてはデジタルの威力が発揮された一方で、人同士の交わりや、対面でコミュニケーションすることの大切さが見直されました。人々の暮らしに深く根ざし、寄り添う総合商社ならではのノウハウ、ネットワーク、多様な機能をより強くしていき、これまで以上に多様な価値を生み出していくことで、双日が描く「豊かな未来」を追求していきたいと思います。

新しい価値を生み出す人材づくり

2019年4月、中国の自動車メーカーを視察しました。実は約15年前、私が自動車本部の部長時代に訪れたことがある工場だったのですが、自動車の性能や工場設備の著しい進歩に大変驚かされました。日本が50年くらいかけて取り組んできたことが、たったの15年で成し遂げられている。産業の進歩が加速度的に早くなっていることを肌で感じました。

このような時代のなかで、これまでの先入観に捉われない「モノの良し悪し」を見極め、新しい価値を生み出していく原動力となるのは、やはり人材です。2020年3月期には、若手社員を集め、在籍する部署の垣根を越えて自由な発想でビジネスのアイデアを出し合う、「Hassojitz プロジェクト」と銘打った取り組みを行いました。2050年の社会環境を構想し、そこからバックキャスティングして、現在の取り組むべき課題や戦略を考察するものです。

社員に期待しているのは、変化が激しい今の時代に、若い視点で新鮮な発見を見出すことと、その発想の実現に責任と覚悟を持つことです。「身近なニーズを形にするためには、どのようなネットワークを活用するのが良いか?」「世の中の仕組みをどんなふうに変えていかなければならないのか?」と、在るべき姿から遡って考えるバックキャスティングの思考力と、とことんやり抜く探求心と自立心を求めています。そのような人材を育てるために、海外経験や本部の垣根を越えた育成の機会を提供して成長を促す制度を導入しているほか、若いうちから国内外の現場をマネジメントする裁量を与えています。風通しのよい組織とスピーディーな意思決定によって若い芽を育て、双日らしい真にグローバルな「現場力」を育んでいく環境を作ることが、私の使命です。

海外事業会社を訪問し、現場社員との交流で「現場力」を育む

新たな時代に向けて

当社はこれまでも、時代の目まぐるしい変化に対応しながら、ニーズを把握し新しい発想で商社機能を培い、多彩な事業を通じて数多くのステークホルダーの皆様と信頼関係を築いてまいりました。この独自の機能と強固な事業基盤こそが、当社の成長戦略を支えてきたといっても過言ではありません。

今後も変化をチャンスと捉え、新たな発想で挑戦を続けていくことで、機能や事業基盤のさらなる強化と、ステークホルダーの皆様の発展への貢献を追求していきます。来たる新たな時代においても、すべてのステークホルダーの豊かな未来を創造し続けている、そんな双日グループを築けるよう、「2つの価値」創出を積み重ね、持続的な成長を実現してまいります。

CFOメッセージ(HTML版)

議長メッセージ(HTML版)

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