岩井勝次郎の経営哲学②

貿易商、そして事業家としての精神

岩井勝次郎は、様々な場で自分の経営哲学を語っており、貿易商として事業家として重要な点を説いている。


【人がやらない仕事】
「私は妙な癖がありまして、人のあまりやっておらん仕事に手をつけてきました。直接貿易、セルロイド、鍍板、薄鉄板、ソーダ灰などです。」


【経営者・技術者・職工の一体化】
「工業というものは、経営者と技術者と職工の三者の意気がぴったり合ってこなければ成功はむつかしいものです。特にセルロイドのような高度工業製品は、いくら技術が立派であっても職工の知識や気合が合ってこなければ完全な製品はできないことを痛感しました。そんなわけで外国人を雇ったから大丈夫と思ってはいけません」


【やり始めたら成し遂げなければならぬ】
「事業というものは事前調査に最善を尽くしたうえでないと手がけてはいけない。が、ひとたび手がけたからには、どんな困難に遭ってもこれを成し遂げなければならぬ。」


【仕事を目的とした仕事】
「いま利益があるか、あれは誰が儲けているから、俺もやってみようという考えと、もう一つは、この仕事は必ず将来見込みがある、国家からいっても必要な仕事であるという風に、利益を目的とするものと仕事を目的にするものとは自ずから違うのです。利益を目的にした仕事は、景気が変わってくると、それが出来あがった時分にすぐいけなくなる。仕事を目的に始めた仕事は、困難が多いかもしれませんけれど、やはり最後はどうもその方がよくないか、という考えを私は持っています。」


【声なくして人を呼ぶ】
「いい物を安く売っておけば、裏店で売っておっても買いに来る。粗末な物を高く売っておったら、銀座の真中で売っていても買いに来ない。」


【先方を第一に考える。与えて取る。】
「なるべく先方に儲けさせる。先方で儲かりさえすれば、アフリカの山奥からでも注文が来る。儲からなかったら、上海、ロンドンからでも注文が来ない。取引先の利益を第一に置かなければならない。すなわち与えて取るという主旨で、なるべく先方に儲けさせて、そうして自分の方も取るということが必要である。」

  • 1931年、大阪での商工経営実歴講座にて