HomeArticle悩みをオープンに。フェムテックブランド「re:juu」が変えていく女性の日常

2022.06.22 UP

悩みをオープンに。フェムテックブランド「re:juu」が変えていく女性の日常

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近年注目が集まっている「フェムテック」。Female(女性)とTechnology(技術)を合わせた造語で、月経や妊娠など女性の健康にまつわる問題を解決するサービスやプロダクトの総称です。日本でも少しずつフェムテックに関するプロダクトやサービスが増えてきています。そんな中、2021年にアパレルブランドを展開するバロックジャパンリミテッド(以下「バロック」)が「re:juu(リジュー)」というブランドを立ち上げました。その機能性素材や製品テクノロジーを提供しているのが、双日グループの繊維製品メーカー第一紡績。女性の心身に寄り添う製品づくりにおいて、大切にしていることとは。バロックで「re:juu」のブランド全般のディレクションを担う小倉えりさん、第一紡績営業第二課の右近みゆきさんと、フェムテックにも詳しい美容ライターの長田杏奈さんを迎え、「re:juu」の魅力に触れながら、フェムテックの本質に迫ります。

Photograph_Yoshimi Sugawara
Text_Mami Wakao
Edit_Shota Kato

女性の「つらさ」に寄り添うフェムテック

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長田:私は女性にまつわる執筆活動を長年続けてきて、その流れでフェムテックに関する情報収集や研究をしています。たとえば、吸水ショーツもいろいろなブランドのものを実際に試して、着用感や機能性を研究しているんです。海外の商品から大手メーカーのものまで、今はかなりブランドも増えてきましたね。お二人はもともと使われていましたか?

小倉:私はバロックの新規事業などを手掛ける部署で「re:juu」の立ち上げから携わっています。ブランドのコンセプトから、商品のカラーバリエーションなど、ブランド全般のディレクションを担当しています。「re:juu」のプロジェクトが始まる前から、吸水ショーツの存在は知っていましたが、本当にショーツだけで大丈夫なの?と多くの女性が抱く疑問が私にもあったのは事実で、それまで使ったことはありませんでした。

右近:私も以前から会社で吸水ショーツ用の素材を開発しているということは聞いていましたが、あまり自分ごととしてとらえていなかったんです。試したこともなかったですし、あまり興味を持てていなかったんです。

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長田:実際に使うとなると、なかなかハードルは高いですよね。フェムテックという言葉に対しても、「女性の身体をビジネスチャンスにするな!」という意見も一部あります。でも、そもそもこれまでは女性のヘルスケアに焦点を当てる機会が少なすぎた印象です。それによってマーケットが小さくとらえられ、資金も集まりにくかったなと。そんな中、ちゃんと目を向けてあげることで課題が浮き彫りになり、同時にその重要性が理解されて企業の取組みや投資が一気に増えたのが近年のトレンドです。

小倉:さまざまな企業が参画して、選択肢が増えるのはいいことですよね。実際、吸水ショーツの存在は知っていても、自分の気に入ったデザインのものがなかったり、金額が高すぎたりしたら、手に取らないだろうなと思います。

長田:そうですよね。月経にまつわるプロダクトをはじめとして、妊娠、出産、セクシャルウェルネス、更年期など、いろいろなフェーズでの女性の健康に寄り添ってくれるものの選択肢が広がってきています。それに、まさに今回のように、フェムテックという言葉が浸透してきたおかげで、これまでタブー視されていた月経や性のことをメディアでも取り上げやすくなったんです。客観的なデータや他の人の声で示されることで、ひとりでつらさを抱えていた人も、「みんなつらいんだ、悩んでいるんだ」ということが分かる。それは社会にとっても、いいインパクトなんじゃないかなと思います。

生理の時でも不安なく、ファッションを楽しみたい

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「re:juu」オフィシャルビジュアル

小倉:バロックは社員の9割が女性ということもあって、生理に対しての理解は他の会社よりもあると思いますし、生理休暇などの制度も整っています。それでも、吸水ショーツのプロジェクトが始まるとき、女性社員にアンケートを取ったりヒアリングをしてみたりすると、いろいろな課題が出てきました。生理休暇という制度があっても、なかなか当日休むことができなかったり、販売スタッフはシフト上の問題で出勤せざるを得ない場合もあります。また、そもそも生理休暇制度が導入されているのを知らない社員もいることが分かりました。

長田:立ち仕事の人は、本当につらいですよね。昔から日本の女性って、我慢が美徳みたいなところもありましたから、なかなか声をあげることができなかったのかもしれません。

小倉:そうですね。販売スタッフの中にはタイトなデニムや白いボトムスを履かないといけなかったりと、漏れが不安という声もありました。そういったリアルなスタッフの声を含め、さまざまな職業や年齢の方にテストモニターとして意見をもらいながら、商品開発を進めていきました。試作品を履いていただき、また意見を集めて、改善して、の繰り返しでしたね。

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吸水シート部分に水を垂らして、こだわりぬいた構造を解説。

右近:本当にギリギリまで改善しましたね。私たち第一紡績は、もともと糸や生地などをつくっている会社で、機能性素材の開発に力を入れています。その中で、布ナプキンなどの素材をつくっていたことから吸水ショーツにも注目していたところ、バロックさんとつながる機会があり、今回の共創に至りました。特に濡れ戻り感の少なさと、吸水量についてはこだわっていますね。吸水シート部分は4層構造になっているのですが、そのメッシュ穴の大きさを変えてみたり、生地に抗菌防臭や消臭機能のある糸を使っていたりと、目には見えないところでさまざまな工夫を凝らしています。

長田:私も試しに履かせていただいたのですが、これまで履いた吸水ショーツの中でもサラサラ感がダントツでした! シートのサイド部分が少し盛り上がっていて、横モレも防止してくれそうです。あと吸水素材ってどうしても生地代が高くなると思うのですが、しっかり後ろまでシートがあって、ケチってないですね(笑)。こういう微細なところに、女性のリアルな悩みに寄り添う本気の気遣いを感じます。

小倉:履き心地も、テストモニターの声を元に改善しました。お尻に縫い目が当たらないよう、縫い目の高さを数cm単位で調整したり、シームレスタイプのショーツは、安心感のあるハイウエストにしたり、皆さんのライフスタイルに合うように考えて商品化しました。

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右近:ショーツ全体の生地も、この製品に合わせて特別につくりました。ナイロン素材だと履いているうちに、伸びたままだれてしまったりもしますが、ストレッチがある編地にして、しっかりお尻にフィットするように改善を重ねました。

小倉:あとは、生理を気にせずファッションを楽しみたいという声にも応えられるよう、スキニーなどタイトなボトムスを履いてもショーツのラインが目立ちにくいように、縫い目のないシームレスタイプのショーツも用意しました。

長田:そのあたりが、ファッションの会社ならではだなと思います。カラーバリエーションもすごく多いですよね。サニタリー商品って、なぜかナチュラルカラーやアースカラーが多いですが、明るいカラーのラインナップがあるのもいいですよね。

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小倉:生理期間もちょっとでも気分を上げてもらえるように、ブライトカラーを選びました。日本人の肌にも合うよう、肌映りも考慮しています。

長田:あとは価格も3,960円(税込)とお手頃なのも嬉しいポイント!

小倉:そうなんです。あたらしい選択肢で、使うことに不安もまだまだあるからこそ、5,000円以上してしまうと、最初の一歩をなかなか踏み出せない。そこはこだわって、みんなで戦いました(笑)。

右近:コストとの戦いは大変でしたね(笑)。でもその企業努力も、女性の選択肢を広げるという視点からすれば、必要なことだと思います。

自分ごと化されたことで思いが強くなった

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長田:別売りしている同じカラーバリエーションのナイトブラやキャミソールと合わせて着られるのもいいですね。

小倉:社員のアンケートから、ナイトブラをつけて寝る人が結構多いということが分かったんです。コロナ禍で家にいる時間も増えたので、ノンワイヤーブラに切り替えた人も多くなっています。夜に胸の形をキープするためだけでなく、おうち時間のリラックスウエアや、授乳中のマタニティブラとしてなど、年齢も用途も幅広く使ってもらえるものにしました。

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右近:ストラップやカップにもこだわって選定した資材を使っています。結構いいものを使っているんですよ。毎日肌に直接触れるから、こだわらないと使い続けたいと思ってもらえません。何度洗ってもヘタれないような、耐久性にもこだわりました。

長田:お二人を含めて、つくり手の皆さんの並々ならぬ本気度を感じました。冒頭に、フェムテックの商品にあまり興味がなかったとお話しされていましたが、どこからスイッチが入ったんですか?

小倉:最初は、本当に大丈夫?って思っていたんですが、実際に私が試作品を初めて履いてみた時、こんなにすごいんだって感動したんです。私の場合は、長時間の着用でもにおいや不快感がなくて、生理の日のブルーな気持ちが晴れました。洗って繰り返し使えるのも良いです。それに、これまではお手洗いに行く度に、生理用品のポーチを持っていくことに抵抗があったのですが、これだったら全然大丈夫。そこから、製品づくりへの思いが強くなりましたね。

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右近:私は、わりと生理不順なタイプだったんです。いつ生理が来るかわからないという不安がありながら、常に生理用品を付けておくのも嫌だなと悩んでいて。でも、一度実際に履いてみると、生理がない時や少ない時に履いても不快感がない。これは自分にもぴったりだなと思いました。そこから実際にいろいろな商品を試着してみて、「re:juu」の商品も自分自身が心から良いと思うまでこだわり抜きました。

長田:私も最初に吸水ショーツを使って、当たり前にあるものだと思っていた不快感は無くせるものだったんだと気づきました。今ではもう手放せません。お二人の一人称での気付きや熱意が反映されているのが、素敵ですね。

つらさや悩みを隠すのではなく、前向きに向き合う

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小倉:自分の量がどのくらいかも考えたこともなかったし、生理痛は痛くても数日間我慢すればいいなんて思っていたんですが、「re:juu」の開発やテストモニターの経験を通じて、もっと自分の身体に対して知ってほしい、大切にしてほしいという気持ちが大きくなりました。    

長田:つらさを我慢して、目を背けるのではなく、前向きになれるのはいいことですよね。歴史を遡ると、日本に限らず地域特性や宗教上の理由などで、生理が「穢れ」(けがれ)として扱われることもありましたが、これからはもうタブー視する時代も終わっていくのかなと思います。

右近:開発メンバーには男性もいるのですが、当初、職場で男性がサニタリー商品やショーツを触るのに、多少なりとも抵抗があるようでした。私も試作品のショーツを自分のデスクに広げておくのはちょっとどうなんだろうと思ったりして。でも、一緒に開発していくなかで、その抵抗も無くなっていきましたね。

小倉:バロックの「re:juu」担当チームは、男性の理解も大切だと思っているので、男女2名ずつで構成しました。

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「re:juu」オフィシャルビジュアル

長田:今後、「re:juu」はどんな展開を予定していますか?

小倉:現在は、 The SHEL'TTER TOKYO東急プラザ表参道原宿店をはじめ、名古屋タカシマヤゲートタワーモール、博多阪急、なんばCITYのSHEL'TTER店舗、AZUL BY MOUSSYでも一部店舗にて取り扱いを始めました。オンラインストアだけだとなかなか良さが伝わらないので、今後は商品を手に取れるお店を増やしていきたいですね。

右近:吸水ショーツは、生理の時だけではなく、生理不順の人が普通の日に使ったり、尿もれショーツとしても使えます。生理が始まったばかりの10代の方にも使っていただけますし、生理が終わった方の悩みにも対応できる。今後は、そういったより多様なシーンで女性をサポートできるように、バリエーションも増やして、商品開発していけたらなと思っています。

長田:今回お二人とお話しして思ったのは、こうやって女性の悩みを変にタブーにするのではなく、普通に話ができることで、ひとりで悩みを抱え込まなくていい社会になるということです。私には小学生の娘がいるのですが、生理が始まる前からいろいろなことを包み隠さず話しています。もっと女性の悩みについてオープンな世の中になるように、「re:juu」の今後を楽しみにしています。

INFORMATION

re:juu公式通販サイト

SHEL’TTER WEBSTORE
https://www.ec-store.net/sws/secure/sws_220311rejuu.aspx

第一紡績

国内で唯一、同じ敷地内に紡績工場と染色加工工場を有する繊維製品メーカー。高品位製品のスピーディな企画・開発が強み。双日の主要グループ会社。

第一紡績
https://www.ichibo.co.jp/

PROFILE

長田杏奈

美容をメインとしたインタビューやフェムケアなど、数多くの雑誌・Webメディアで記事を執筆するライター。著書は『美容は自尊心の筋トレ』(ele-king books)、責任編集に『エトセトラVOL.3 私の私による私のための身体』(エトセトラブックス)など。podcast『なんかなんかコスメ』、ニュースレター『なんかなんか通信』も定期的に配信中。

Twitter
https://twitter.com/osadanna

Instagram
https://www.instagram.com/osadanna

小倉えり

バロックジャパンリミテッドの新規事業などを手掛ける部署、未来政策室室長。また、「re:juu」のブランド全般のディレクションを担当。

右近みゆき

第一紡績株式会社営業部営業第2課所属。営業として婦人製品製造販売を行い、社内のフェムテック関連商材の開発に携わる。

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