豪州ミネルバ炭鉱プロジェクト

権益96%を保有し、双日自ら炭鉱を経営・操業

2012年4月

(所属組織、役職名等は本記事公開当時のものです)

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双日は1994年、豪州クィーンズランド州に位置するミネルバ炭鉱の権益を30%取得。2005年11月に高品位の燃料用一般炭の生産を開始。2006年8月に権益を45%に増加し、2010年12月にはさらに51%を追加取得した。

今回は双日のミネルバ石炭事業における生産・販売基盤の強化に向けた戦略にクローズアップ――。
本事業の推進に携わった5人のメンバーに今日に至る軌跡を聞いた。

[ニュースリリース] 双日、豪州ミネルバ炭鉱の権益を追加取得し、炭鉱操業へ進出
[双日PR映像] ミネルバ炭鉱プロジェクト

自然災害を乗り越えて

双日は2010年12月の権益追加取得により豪州ミネルバ炭鉱の持分権益が96%になった。日本の商社では唯一、炭鉱経営・操業機能を直接保有することとなった。

権益の買い増しを決意した当時について石炭部プロジェクト開発課の秩父俊治課長は次のように振り返る。

「これまで商社は石炭サプライヤーとパートナーシップを組んで少数権益参画者の立場で主にマーケティングを担当することが主流であった。しかし、今後は商社が少数権益参画者として参画する意味合いが徐々に薄くなっていくと予想され、石炭サプライヤーと同じように自ら炭鉱を経営・操業し、今後の成長への舵取りを自ら取っていきたいと考えるようになった」。

その場合、商社にいる人間だけで炭鉱のマネジメントとマーケティングを行うことは難しい。操業するにあたってのいちばんのキーポイントは「どういう人材を集めるか」だった。そこで豪州在住の炭鉱経営経験者をスカウトすることになった。ミネルバ炭鉱の操業・経営管理を行う双日コールマイニング社(SCM)のキャメロン・ヴォリアス社長はそのうちの一人だった。

2010年12月、権益を取得した日の3日後にクィーンズランド州東部で集中豪雨による洪水が発生。この影響で石炭の輸送に使う鉄道の一部が被害を受け、積み出し港までの輸送ルートが完全に閉ざされてしまった。炭鉱内にも水がたまり、その排水対策などいきなり苦境に立たされた。ミネルバ炭鉱が位置する地域は元来干ばつ地帯。突然そこを襲った洪水に「線路の復旧には3ヵ月、いや半年はかかるだろう」という情報が流れた。

現地に詰めていたヴォリアス社長は、「まず考えたことは従業員の安全確保および従業員家族の生活を守ることだった」と話す。そのうえで、「災害からの復旧後、いかに滞っている生産量をキャッチアップするか、政府と排水規制緩和に関する協議を行うとともに輸送の遅れを挽回するための計画を綿密に立てた」。
鉄道会社のクィーンズランドレールに出向き、ミネルバ炭鉱から石炭を運ぶ貨車を線路が復旧次第増加してほしいと談判。その後も1ヵ月半は出荷ができない状況が続いたが、素早い交渉が功を奏し、2月に入って輸送が再開。しかも洪水前よりも多くの数量の輸送が可能となり、2011年度の出荷量は、予定していた280万トンに対して実質10ヵ月で285万トンを達成することができた。

双日グループとしてのブランディング戦略

炭鉱オペレーションでいちばんの要となるのは、そこで働く従業員である。元は別会社の従業員であった者が、その会社からの権益買い取りを境に双日のグループ社員となる。そこで注力したことは「双日ブランディング戦略」。現場の総従業員数は250名。もともと少数株主として炭鉱事業に参入していたため、双日がまったくの無名ということはなかったが、今度は大株主となって経営・操業を開始することに対して、「本当にできるのか」という不安の声が従業員から少なからず聞こえてきた。
また、ミネルバ炭鉱の従業員にとって双日は3社目のオーナー。炭鉱従業員が一丸となるためにも、彼らに双日を身近に感じてもらう必要があった。

ヴォリアス社長はデイタイム、ナイトタイムの時間帯で働く従業員それぞれの業務終了後に、操業会社の変更について、双日の事業について、そして、現場の安全と家族に配慮した経営を行う会社であることを説明。また、従業員が着るTシャツ、車、文具類、名刺など炭鉱内の至るところに双日ロゴを記載した。 SCM社のオープニングセレモニーでは、加瀬社長(当時)をはじめ日本側の経営陣が現地を訪れ、SCM社、SCR社の従業員との夕食会に参加。時には炭鉱現場で一緒にバーベキューパーティを行った。

次第に現地のスタッフの間から「双日にとってこの炭鉱開発事業の優先順位が高いことが実感でき、自分たちの頑張りが認められていると感じる」との声が聞こえるようになった。一方、石炭部プロジェクト開発課の堀部篤弘は、「彼らは双日グループの一員という意識を持ち、モチベーションを高く保ってくれている。現場のさらなるモチベーション向上のためにも、東京側でできることはやっていきたい」と語る。

熱い思いを未来へ

最後に、本案件に携わる意気込みを各担当者に聞いた。

秩父課長:本案件に携わって感じることは「充実感がある」ということ。案件のスタートから会社のセットアップ、会社運営まで、すべての局面で充実感があり、日々の経営を一から考えていくことにやりがいを感じる。ミネルバの炭鉱寿命には限りはあるが、ミネルバで学んでいることはぜひ次の案件でも活かしていきたい。

ヴォリアス社長:25年間、豪州石炭業界で仕事をしてきたが、双日の熱意、チャレンジ精神は際立ったものがあり、その一翼を担えることに魅力を感じた。それが本事業に携わった動機。目標は、双日を豪州で名の知れた炭鉱操業会社に育てること。過去を振り返るより、未来を見る。オポチュニティは常に未来にあり。

吉岡慶(石炭部プロジェクト開発課):現在、順調に進んでいる本案件から得たノウハウや知見を次に活かしてこそ初めて意味がある。本案件でスタートラインに立ったという意識を持ち、今後につなげていきたい。

崔明吉(同) :前回の洪水の時のように、有事の危機管理も現地側でしっかりと対応してくれている。会社・部・課、そして個人としても大切にしている本事業がスムーズに運営されるよう、今後も思い入れを持って携わっていきたい。

堀部篤弘:炭鉱運営事業は会社に対しての影響も大きい。収益分析など日頃の業務に気合いを入れて取り組みたい。

今後の目標について秩父課長は、「貨車確保の問題、または保有設備・炭鉱の地質条件により、生産量を急速に伸ばすことはできないが、来年以降、コンスタントに290万トンの販売をめざす」と力強く語る。

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