グレンカル(株)と医療・健康などを核にしたQOLファンド(仮称)の設立
2003年10月29日
QOLファンド立ち上げの背景
現在、日本の健康・医療・医薬に関わる様々な分野は、大きな変革期を迎えており、特に、医療経営を取り巻く環境が大変厳しくなっている現状があります。
ミクロレベルでは、病棟建替需要が増加し、高額な最新医療機器への更新が恒常的に要求されている一方で、金融機関からの資金調達が様々な理由で難しくなっており、マクロレベルでも、医療保険医療費30.2兆円(2002年度厚生労働省まとめ)という巨大マーケットを形成する一方で、慢性的な赤字に苦しむ健康保険等の問題が山積しています。
健康・医療サービスを受ける顧客側の大きな変化としては、「自分の健康はお医者様に任せておけば安心」という意識は年々薄れ、積極的に情報やサポートを利用して自分の健康に自分で責任を持つ人々が増えているということがあげられます。このような人々は、一定以上のコストを払ってもQOL(Quality of Life = 生活の質)の向上を求めていると言えます。
このような背景の下で、医療行政改革、診療報酬体系改革が推進され、医療機関を取り巻く環境は厳しさを増し、患者による医療機関の選別、医療機関の淘汰が進んでいます。その一方で、QOL向上を求める人々のニーズに対応するがんの自由検診、がんの自費治療といった自由診療分野、予防医学分野、ビューティーヘルス分野などが飛躍的に市場を拡大しています(注1)。
また、巨額の開発費を必要とするナノ・バイオ全盛の中、SMO(注2)の台頭などによる治験システムの変化や拡大する医薬マーケット(注3)、IT化の流れが進んでいます。このような潮流の下、旺盛な資金ニーズに対応し、新たな資金調達手法としての 病院債(注4)発行の実現をめざす動きがありますが、十分に対応できるとは期待できない状況であり、医療従事者にとって、医療と金融に関わる諸問題は大変身近で切実なものとなっています。
QOLファンド設立の経緯
こうした医療・ヘルスケアビジネス全般における投融資など金融ニーズの拡大をひとつの大きなビジネスチャンスととらえ、この分野において果たすべき社会的使命の重要性を踏まえ、QOL向上を実現する事業を育てるというミッションを早期に具現化するための手段として、この度、総合商社である日商岩井株式会社(社長:西村英俊、以下 日商岩井)と、金融業界出身のプロスタッフが医療・医薬系顧客を中心に経営・ファイナンシャルコンサルティングをおこなっている グレンカル株式会社(社長:北里伸郎、以下 グレンカル)は共同で「QOLファンド」(仮称)の設立および、その運営にあたることになりました。
ファンドの運営方法
(1)投融資案件の発掘
投融資案件の発掘・選定には、現在、事業主体としても核医学の分野に進出を進めている グレンカル(故 北里柴三郎博士直系の曾孫である北里伸郎が代表取締役社長)と、医療・医薬関係の情報全般に幅広い実績・ネットワークを持つ(株)ウェルネス医療情報センター(注5)が中心となって進めます。
(2)投融資案件の選定
実際の投融資判断に際しては、現役の医師、大学教授、医療法人事務長、製薬会社役員、大手監査法人役員など、医療・医薬分野に造詣の深い専門家により構成する「投融資選定委員会」と緊密に協議し、独自の投融資ガイドラインに従って決定されます。
(3)ファンド設立・運営における実務
ファンド設立・運営における投資家募集などの実務面では、日商岩井を中核に 数社の金融機関がコンソーシアムを構成し、実際の商品設計・販売等を行う予定です。その他、医療・医薬に関連する周辺ビジネスの展開においても日商岩井グループの総合商社機能を活用して進めます。
投融資ガイドライン
投融資判断は専門家による「投融資選定委員会」と協議のうえ、以下の投融資ガイドラインに従って決定されます。
(1)顧客中心の経営か:
投融資先である組織・法人が、医療・医薬分野を"顧客中心のサービス業"と認識している経営者により運営されていること
(2)事業分野の範囲が適切か:
事業主体の強みを活かし、事業分野を十分に絞り込んで運営されていること
(3)サービス・商品の均質化の仕組みが構築されているか:
サービス・商品の強みが属人化しておらず、ある人がいなくなったら、一定レベルのサービス・商品を提供することが不可能というような事態を避ける仕組・手法が構築・確立されていること
(4)価格競争力・費用対効果において優位性を持っているか:
事業として十分に採算性があり、市場性があること
(5)時間対効果においても優位性を持つか:
競合する商品・サービスに比べて、より早く商品・サービスを提供することが可能であること
以上の投融資ガイドラインをクリアすることを前提とし、
A.医療情報分野
B.予防医学分野
C.自由診療分野
D.新薬開発分野
E.シニア分野
F.ビューティーヘルス事業
を中心に投融資の対象を選定していきます。
ファンドの特徴
(1)医療の専門家による 「投融資選定委員会」 の設置
このファンドの最大の特徴です。実際のファンド案件への投融資に際しては、関連分野の専門家により構成する「投融資選定委員会」と協議し、一定の投融資ガイドラインに従って対象事業を選定します。「投融資選定委員会」のメンバーは、グレンカル、日商岩井などの中核メンバーを中心に、案件毎に最適な人材が参加します。 既存の多くの医療ファンドでは、ファンドマネジャー、証券アナリスト等の金融専門家によって投融資判断が行われているのに対し、当ファンドでは、グレンカルの医療業界ネットワークを活用し、案件毎に最適な専門家チームのアドバイスを受け 専門的・客観的・中立的な視点で投融資判断をいたします。
(2) 幅広い投資対象
既存の医療ファンドは、バイオテクノロジー、医療機器、医療、介護サービス等の企業を中心に投資を行っていますが、当ファンドの投融資対象は、単にこれらの分野にとどまらず、QOL向上を実現する分野全般にわたります。 例えば、成長著しく高い収益性が見込める「ビューティーヘルス事業」、「アンチ・エイジング事業」
{キレーション(注6)・インプラント等の高度歯科医療など}
、「予防医学分野」、「スポーツクラブ経営」、「サプリメント事業」なども対象に含まれます。これらの分野は、今後シニア世代を迎え旺盛な消費意欲を持つ ベビーブーマー世代の潜在的ニーズを掘り起こす分野でもあり、高い市場性が見込めます。
(3)元本確保型を目指す商品設計
商品設計については、現在、大手金融機関と検討中ですが、高度な金融技術を駆使し、元本確保型の商品設計を目指しています。最近では、金融技術を駆使することで、一企業の信用力に頼ることなく元本確保できる金融商品も 増えています。大手外資系金融機関出身のグレンカルのスタッフが持つノウハウと 日商岩井の金融知識・ネットワークを最大限に活用します。
(4)投融資対象事業の経営支援
既存の医療ファンドの多くは、投融資先への経営サポートをおこなっておりませんが、グレンカルと日商岩井は、必要に応じ、投融資先事業に対しコンサルティングをおこなう ベンチャーキャピタル型のハンズオン経営サポートも実施します。 金融知識が不足気味な業界においても適切なアドバイスを提供します。
投融資検討中の案件例
現在、医用機器開発メーカー、新薬開発チーム、治験会社、医療情報開発会社、ビューティーヘルス事業に力を入れている医療機関、PET等の核医療施設(注7)、クリニック併設のシニア向け高級マンション開発案件、医療法人M&A案件など、既に 30以上にのぼる有力な投融資候補先を打診中です。
守秘義務上、全ての案件を具体的に挙げることは出来ませんが、現在交渉中の具体的案件例としては、
●(株)ウェルネス医療情報センターの「PETネットセンター事業」
●ニュージャージー発祥のフィットネスクラブチェーンである「ワークアウトワールド事業」(プール設備を放棄することで、投資・ランニングコストを大幅縮小し、チャック・ウィルソン氏指導のパーソナルトレーナー方式で顧客満足度を高め、高い収益を達成している。)
などがあります。
グレンカル・日商岩井のネットワークを活かし QOL向上を実現し、高い収益性の見込める分野の有望案件を掘り起こします。
商品設計
現在、大手金融機関と共に商品の詳細設計に入っていますが、設計中のファンド概要は、
- 期間8年〜10年
- 円建て
- ファンド規模100億円
- 最低目標利回りに関しては、精査中ですが、金融技術を駆使することで元本確保を目指します。
- 対象投資家は機関投資家中心に販売予定です。また、個人投資家向けにはPET割引券・無料券、医療情報提供などのメリットを還元する仕組みを検討中です。
ファンド運営の特徴としては、長期投融資・短期投融資の時間軸の分散、ハイリスク投資案件からローリスク融資案件までの属性軸の分散により構成され、十二分に分散効果が考慮された ローリスク・ミドルリターン型ポートフォリオの構築などがあげられます。
注釈
(注1)ビューティーヘルス分野:米国に於ける美容整形手術数を例にとると、コラーゲン注射35万件(1997年)→100万件(2001年)、脂肪吸引18万件(1997年)→38万件(2001年)、ボトックス注射6万件(1997年)→160万件(2001年)などといった大きな伸びを各分野で確認することができる。(データ出所「2003世界ヘルスケア・医療統計データ」MDIジャパン)
(注2)SMO(Site Management Organization):治験施設支援機関。製薬企業から臨床試験を受託した医療機関の治験業務を専門的にサポートする企業。
(注3)医薬マーケット:米国に於ける処方薬出費額の伸びを例にとると、1988年306億ドル、1998年852億ドル、2002年1550億ドル。
小売薬品出費の伸びについても、1999年から2000年の1年間だけでも成長率20%を越える薬が多数存在。抗うつ薬、抗潰瘍薬、コレステロール薬、経口非ヒスタミン薬(成長率各20%台)、抗関節炎薬、麻酔、鎮痛剤、経口糖尿病薬(成長率各30%台)とマーケット全体で大きな伸びを示していることが伺える。(データ出所「2003世界ヘルスケア・医療統計データ」MDIジャパン)
(注4)病院債:近年、難しさを増している病院の資金調達の多様化を目指し、病院による債券発行の議論が活発になっている。現状では、病院債の発行を規制する法令は無く、発行例も無い。
(注5)(株)ウェルネス医療情報センター:1991年に ニフティーサーブによる全国病院情報提供などから事業を興す。資本金4,000万円。業態としては、インターネット・ウェブサイトなどを駆使し、医療関連情報サービス・医療機関施設データベース管理など実施、医療機関・医療施設・提携企業などに幅広いネットワークを持ちサービスを提供している。
(注6)キレーション治療:かにのはさみのように、挟んでつかむ作用(キレート作用)のある物質(エージェント)を利用して、体内に取り込んでしまった毒性のある重金属(鉛、水銀、カドミウムなど)を取り除く治療。注射もしくは経口的に体内にキレーション作用のある物質を送り込み、身体を傷つけることなく治療をおこなうもの。同治療により、カルシウムやコレステロールの代謝機能を改善し、また、血流を良くすることで体中の細胞の活性化、若返りが図られる。動脈硬化防止、軽い記憶力低下の症状を回復させる脳のアンチエイジングにも効果がある。
(注7)PET等の核医療施設:陽電子放出断層撮影(PET)による高度画像検診や重粒子線がん治療センターなど。
以上

