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> 社長の部屋 [第2話] 神様のいたずら ―― 学生時代
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若い時に、価値観が180度変わってしまうなどという経験は、めったにできるものではない。でも、神様のいたずらにしては、きつい仕打ちを受けたものだ。
手術後、意識を取り戻したら、文字通り「真っ暗闇」だった。
病院のベッドの上で、両目には、光をすべて遮るゴーグルのような器具がはめられ、頭はベッドに固定されていた。動けない。
長崎大学のサッカー部で、学部対抗と大学対抗試合を次々と制し、長崎県代表としてインターカレッジの出場権を得て、仲間と一緒に試合に勝つことだけを考えて走りまわっていた私が、いま、ひとりぼっちで暗闇の中にいた。
インターカレッジ出場の直前、練習試合で、至近距離から仲間が蹴ったボールを避けきれず、ボールは、私の顔面を猛打した。
目から火花が出るような痛みと、とたんに灰色になる視界。内出血を起こした目から見える景色は、映画のスローモーションのワンシーンのように、ゆっくりと歪んでひずんだ。これは、絶対に変だ。
病院に駆け込むと、即、入院を言い渡された。
診断の結果は、網膜剥離。
手術前、サッカー部のメンバーが、インターカレッジの試合用に新調したユニフォームを持って見舞いに来てくれた。私は、みんなと一緒にこのユニフォームに袖を通すはずだった。
「これ持って、手術室に入れ。がんばれよ!」
仲間のやさしさに泣けた。後で知ったことだが、私が病欠で留年しないように、教授を必死に説得してくれたのも、同級生の一人だった。
病院のベッドの上で、真っ暗闇の中、手さぐりでユニフォームを探し、握りしめる。手術前に見たユニフォームの色を、仲間の笑顔を、私は、再び見ることができるのだろうか。
目が見えなくなったら、私は、これからどうやって生きていくのだろう。
もう二度と、サッカーはできないかもしれない。
手術してから目を保護するゴーグルが取れるまでの一週間、真っ暗闇の中で、私は、この恐怖に打ち勝ちたくて必死に念じていた。
絶対に、もう一度サッカーをやってやる。
再び視界が戻ったら、世界のすべてを見てやる。
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佐藤洋二の「私が歩んだ60年」
[第1話]大きな力 ― 社長就任
[第2話]神様のいたずら ― 学生時代
[第3話] 涙の理由 ― 初めてのニューヨーク駐在
[第4話]思い出の交差点 ― ニューヨーク
[第5話]強みを作る ― 2012年入社式後記
[最終話]最後の宿題 ― これからの双日