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2006年4月に発足した「資源エネルギー事業開発室」では、深刻化する地球環境問題の解決に欠かせない循環型エネルギーの事業に着手しています。なかでもブラジルでのバイオエタノール・砂糖製造事業は、サトウキビ栽培から製造・販売まで一貫して行う大規模なプロジェクトです。総投資額は約4,200億円。2021年には、ブラジル国内のサトウキビ圧搾量の5〜10%のシェアを目指しています。
環境ビジネスで、地球環境問題解決に貢献します
地球規模の長期的な視点で、資源エネルギー事業に注力
近年、化石燃料の使用が地球環境に大きなマイナス影響を与えていることが解明され、環境に配慮した新しい資源エネルギーの開発・利用が急務となっています。
従来から石油・石炭を中心に資源エネルギー事業を展開してきた双日は、こうした社会的な要求に積極的に応えるために、エネルギー・金属資源部門の部門長が室長を兼務する資源エネルギー事業開発室を、2006年4月に発足させました。この組織再編成によって、さまざまな分野の技術と経験をより一層活かし、バイオ燃料、排出権取引、化石燃料の高効率利用などの環境ビジネス事業の推進に力を入れています。
需要が高まるブラジルで、バイオエタノール事業に進出
資源エネルギー事業開発室が第一に手がけている大規模な事業は、ブラジルのバイオエタノール・砂糖製造事業です。ブラジル大手複合企業オーデブレヒト社(ブラジル バイア州)が2007年7月に設立したエー・テー・アガー・ビオエネルジア社(ブラジル サンパウロ州)の発行済み株式33.3%(約92億円)を取得し、オーデブレヒト社と共同して、農園でのサトウキビ栽培から、バイオエタノールと砂糖の製造、販売までを手がけます。
ブラジルでは、1970年代からガソリン代替燃料としてサトウキビ原料のバイオエタノールの普及が進み、今では一般のガソリンスタンドでガソリンとともに日常的に販売されています。2003年にエタノール100%でも走行可能なFFV(フレックスカー)の販売が開始されてからは、新車販売台数の8割を超えるペースで増加。今後も、自動車燃料におけるバイオエタノールの需要がさらに高まる見通しです。

アマゾンの熱帯雨林からも遠く、多くの放牧地帯が広がるブラジル南部に
耕作地を展開

活用されていなかった広大な大地を
サステナブルな農業用地に転用
地元企業と協調して、循環型エネルギー事業の可能性を追求
ブラジルは、バイオエタノールの世界第2位の生産国であると同時に、主要消費国でもあります。そのブラジルでの事業参画は、バイオ燃料の安定供給に貢献するとともに、世界市場での競争力強化にも繋がります。
双日は、オーデブレヒト社と協調しつつ、現地の事業会社のM&Aを実行しながら事業拡大を進めています。現在、すでに生産を行っている事業会社1社を買収。今後新たに3社を傘下に入れて設備増強を進め、順次生産を増加させる予定です。第一段階の目標は、2016年のサトウキビ年間圧搾量約1,600万トン(年間生産量:エタノール98万キロリットル、粗糖79万トン)。第二段階では、さらに拡張を進め、2021年に約4,400万トン(エタノール260万キロリットル、粗糖240万トン)まで生産規模を拡大し、ブラジル国内のサトウキビ圧搾量の5〜10%のシェアを目指します。


ガソリン(Gasolina)とエタノール(Alcool)を販売するブラジルのガソリンスタンド
環境や社会への影響を最大限に配慮して、工場運営と耕作地拡大を推進
バイオエタノールは、サトウキビの成育過程で吸収されるCO2と、使用過程で排出されるCO2が、プラスマイナスゼロとなる「カーボンニュートラル」な燃料と言われ、地球環境への負荷が少ないことで優れています。特にサトウキビを原料とする場合、糖分からエタノールへ直接変換できる点で、デンプンを糖分に変換してからエタノールに変換するトウモロコシ等を原料とする場合よりも生産工程が少ないことと、バガス(サトウキビのカス)を工場で使用するエネルギーに活用できるため、CO2削減効果が高くなります。バガス発電は余剰電力を売電できるほどの発電量であるため、外からのエネルギー供給を必要としない、持続可能な工場運営が可能です。
サトウキビの耕作地拡大にあたっては、放牧地からの転用や遊休地の利用を進め、他の穀物などの栽培地からの転用は行いません。従って、エタノール用トウモロコシの生産地拡大によって引き起こされているような食糧問題は発生しません。当事業では、生産性を安定させるために、6〜7年サイクルでの区画ごとの植え替え・休耕を計画しながら、環境負荷を高めることなく、最終的には和歌山県とほぼ同じ約47万ヘクタールまで耕作面積を広げていく予定です。
生産したバイオエタノールは、当面はブラジルでの「地産地消」を基本とし、将来は、ブラジルでの国内需要を満たしつつ、ブラジル国外への輸出も検討していきます。
エネルギー分野以外の事業や、他国での事業への展開も視野に
双日は、ブラジルでのバイオエタノール・砂糖製造事業を、多方面での環境ビジネスに発展させたいと考えています。例えば、エタノールの燃料から原料への用途拡大として、オーデブレヒト社の子会社で、南米最大の石油化学会社のブラスケン社のエタノールを原料とするグリーンプラスチック事業へのエタノール供給を検討しています。また、排出権つきの電力販売、バイオマス燃料による発電事業も推進し、将来的には、世界的に需要が高まっているバイオ燃料の原料生産から販売に至る一貫体制の整備を目指します。
総合商社ならではの商人魂と技術力を環境問題の解決に活かします

エネルギー・金属資源部門
資源エネルギー事業開発室
室長
布村 義行
環境問題の解決が急がれる今、環境ビジネスには活気があります。私たちが総合商社として培ってきた商人の感覚と多分野の技術力を効果的に組み合わせれば、大きな可能性を切り開けると確信しています。今回のブラジルでのバイオエタノール・砂糖製造事業では、初めて農場運営にも参画します。この経験は、食糧問題の解決にも繋げていけると考えています。
2008年1月には、資源エネルギー事業開発室が事務局となった「環境・新エネルギー事業推進コミッティー」が発足しました。「環境」をキーワードとして社内の機能を有機的につなげ、環境ビジネスの推進を加速させていきたいと考えています。

森林の適正管理という考え方の広まりとともに、森林伐採による環境への配慮が進んできた現在、荒廃した土地での植林による地域社会への貢献を可能にした、双日の新しい林業モデルが注目を浴びつつあります。その成功の鍵は、双日とその合弁会社VIJACHIPにおける、ステークホルダーとの対話に基づいたWin-Winの関係を重視するという姿勢でした。
新たなビジネスモデルで、地域社会の発展に貢献します
チップ生産と並行しての植林事業で環境保全に配慮
世界でアメリカ、中国に次ぐ紙生産国である日本では、その原料となる木材チップの多くを輸入に頼っています。しかし、紙の消費量が増大するにつれ、発展途上国で森林伐採が進み、深刻な環境破壊を引き起こしていることが、しばしば指摘されるようになりました。
森林を守りつつ、重要な資源である木材チップを安定的に供給していくためにはどうすればよいのか。この問いに応えるべく、双日の前身の一つである日商岩井では、ベトナムに現地企業との合弁会社「V I J A C H I P」を1994年に設立。港湾都市のダナンを中心とする、中部ベトナムの4つの省でチップ工場を設立すると同時に、その近郊での植林事業に着手しました。
1975年に終結したベトナム戦争の際に爆撃や枯れ葉剤で大きな被害を出したこの地域では、伝統的な焼き畑農業の影響もあって、多くの土地が荒れ果てたまま放置された状況にありました。VIJACHIP社によるチップ生産・植林活動は、そうした荒廃地を緑化し、環境修復を進めたいとするベトナム政府の意図とも合致するものでした。

中部4省で植林事業を展開

事業展開に伴い、加工、運送などの新たな雇用も多く創出されている

無料で寄付されるアカシアハイブリッドの苗木は林業家が自由に植樹する
土壌の地力回復をアカシア植林によって達成

荒廃した土地が広がっていたベトナム中部
当初、植林される木の種類は、それまで政府などの主導で行われていた植林の場合と同じくユーカリが中心でした。しかし、ユーカリは成長こそ早いものの、中部の気候により病害虫被害が出やすいという問題点がありました。そこで、土中に栄養分となる窒素を固定して地力を回復させる効果のあるアカシアを導入。現在では植樹種の大半を占めるようになりました。
土壌改良のほかにも、アカシアを植えることで熱風の発生が防がれたり、一時は姿を消していた動植物が戻ってきたり、また地下水が豊かに保たれるなど、環境改善へのさまざまな効果が確認されています。また、農地利用で低下した地力をアカシア植林によって回復させ、再び農地として用いるといった試みも、一部で行われています。
地域の経済発展にも貢献

紙需要の継続的な上昇により大量の
木材チップが常に必要とされている
全体での植林地が、26,000ヘクタール以上にのぼるこのプロジェクトの最大の特色は、従来行われてきたような、単なる「外国企業による大規模な植林」事業ではないところにあります。VIJACHIP社には、地元の5つの林業会社が株主として参加しており、同時に「パートナー企業」として同事業に参画。そして、これらのパートナー企業を通して融資や無料の苗木配布を受けた地元の農民たちが、植林や木々の生育事業の主体となっているのです。
植えられた樹木は7年ほどで伐採され、VIJACHIP社が買い上げてチップに加工、日本へと輸出されます。樹木の買い上げ量が当初から決まっていることから、農民たちは木を植えて育てることによる一定の収入を保証されることになり、それがさらなる植林へのモチベーションとなっているのです。
資金や苗木をただ寄付するのではなく、融資という形で提供することで、人々の就労意欲を引き出し、林業家としての自立にも繋げてゆく。現地企業だけでなく行政とも対話を重ねながらつくり上げられてきたこの植林モデルは、持続可能な産業の基盤を築き、人々の生活水準を向上させることで、地域全体の経済発展に大きく貢献したとして、現地でも高い評価を受けてきました。
今後の展開について

鳥の姿も見られるようになったアカシアハイブリッドの森
双日では、ベトナムでの一定の成果を受け、今後はこのモデルの、ラオスやカンボジアなどのASEAN諸国を中心としたほかの国々への拡大も視野に入れ、事業展開の検討を進めています。その際に、環境保全と地域経済への寄与、収益の拡大の、三方すべてにおいて、さらに進化を図っていくことは言うまでもありません。
また、このビジネスモデルのノウハウを、木材チップだけではなく、さとうきびやパーム椰子といった非食糧系バイオマスなどの他分野にも適用し、対象を広げていくことも検討しています。
地域社会との共存共栄という事業精神を広げていきます

生活産業部門
繊維・物資本部
物資部 部長
木ノ下 忠宏
「事業にかかわる人すべてが幸せでなければ、やる意味がない」。それが、VIJACHIP社の創立当初から現在まで、変わることなく受け継がれてきた事業精神です。そのとおり、当社とVIJACHIP社、そして地元農民の三者すべてに利益をもたらしたことが、この事業の最大の意義だと考えています。
今後、他国や他分野で同様のモデルを展開していく際にも、地元の人たちと私たちとは「同じ船」に乗っている仲間なのだということを常に忘れずに、対話の上に成り立たせていきたいと思っています。



